ニュース
ミシュラン、トレーラーのシングルタイヤ化による経費削減効果の事例を公表
産業廃棄物の収集運搬業においてタイヤ関連の経費を4割削減
(2014/12/5 00:00)
- 2014年12月4日開催
日本ミシュランタイヤは12月4日、報道関係者向けにタイヤ導入に関する事例を紹介するイベントを実施。トラック/バス用のワイドシングルタイヤ「X One」を装着し、産業廃棄物収集運搬会社 株式会社 貴(たか)に納車されたダンプトレーラーを披露した。X Oneについては、10月のユーザーミーティング(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/20141006_669894.html)でも語られたが、今回はコンセプトカーではなく、実際に業務を行う実業車両への導入となる。
最初に日本ミシュランタイヤ トラック・バスタイヤ事業部 執行役員 高橋敬明氏がX Oneの利点について解説。X Oneを使うメリットとして「軽量化による積載量アップ」「低燃費効果」「メンテナンスコスト削減」「運転負荷の軽減」の4点を挙げている。
まず、X Oneによりワイドシングルタイヤ化することで、組み合わせるホイールも2個から1個に減らすことができる。X Oneに専用設計されたアルミホイールを使用した場合、スチールホイールのダブルタイヤと比較して、1軸あたりの総重量を388kgから244kgに減らせるというモデルケースも紹介された。これにより、同じトレーラーでも軽量化した144kgの重量を積載量に使えるようになり、1回の積載量を増加させることが可能になる。これは運送業にとっては大きなメリットだ。
次に、シングル化による転がり抵抗の低減と足まわりの軽量化でエネルギーロスが減り、燃費が向上する。さらにタイヤ本数が減るということは、その分だけパンクのリスクやメンテナンスのコストや時間が削減できる。また、シングル化により旋回時の抵抗が大幅に減って旋回半径が小さくなり、運転がしやすくなって運転負荷も軽減される。日本では、後輪2軸にダブルタイヤを採用したトラックが多いため、シングル化することでこれらのメリットが大きく受けられるとのこと。
今回の貴におけるX Oneの導入は、貴の代表取締役を務める野本秀夫氏が2年前からシングル化の検討を続けていたことと、同社がすでにミシュランタイヤを採用しており、信頼性が確認できていたことから即導入になったとのこと。
次に、X Oneを採用したトレーラーを所有・運用する貴 代表取締役 野本秀夫氏から導入効果について語られた。
貴は群馬県に本社を置く産業廃棄物と一般廃棄物を収集・運搬する会社で、従業員数は27名、車両保有台数は29台。同社の課題として、ほかの運送業と同様に「燃料費高騰への対策」「輸送の効率化」「運用コストの増加への対策」という点を挙げる。これらに対する解決策として貴では、同じ業種では通常はダンプを使うところをトレーラーを使用している。さらにX Oneを採用したことにより、以下のメリットが出たとのこと。
1 燃費が9.6~11%向上
2 1台あたり500kg軽量化による積載量の向上
3 タイヤ関連のランニングコストを4割削減
4 ドライバーが運転しやすくなった
5 スペアタイヤを搭載しなくなった
燃費に関しては、実際のモニタリングデータで実証された。また、全車がシングル化されたことによってタイヤの交換やメンテナンスなどのコストが減り、来年度は4割のコスト削減になる予定だという。フルトレーラータイプの車両ではバックが難しかったが、シングル化による抵抗の軽減で取りまわしが楽になったとドライバーから高評価を得ているという。
さらに野本氏は、以前は国内メーカーのタイヤを使っていて月1回はパンクしていたが、X Oneにしてからはパンクが極端に減少し、これまでにパンクしたX Oneは2本だけだという。同社の車両は産業廃棄物処理場などに頻繁に乗り入れるため、釘などの廃棄物を踏んたり砂利を巻き込んでパンクする例が多かったが、X Oneが採用する、内部のワイヤーによりタイヤの形状を安定させる「インフィニコイル」の効果もあり、パンクが減ったためスペアタイヤを搭載しなくて済むようになった。また、パンクした場合でもタイヤの空気圧モニタリングシステムにより、空気圧の低下で影響が出る前にドライバーが察知できる。なおかつ日本ミシュランタイヤによるサポートが受けられるため、安心して使えるとのこと。難点としては導入コストがダブルタイプに比べて高額になるが、この差額は1年前後で取り戻せるとの試算を得ていると語っていた。
最後に、車両を納入した東邦車輌 北関東支店 支店長 生富一郎氏から、今回納車した2軸ダンプトレーラーの導入経緯などが語られた。2年前に野本氏からX Oneを使いたいという打診があったが、採用実績がないためブレーキ関係のデータがなく、国土交通省から許可が出なかったという。そこで、納車する予定のトレーラーを3日間借りてデータ取りを行い、そのデータを提出することでようやく車検に通るようになったとのこと。今回の納車を起点にして、ほかにも広めていきたいと語っていた。
運送業にとって、業務を担うトレーラーの維持費や運用しやすさの改善は業績に直結する部分だ。納入車両のメーカーである三菱ふそうトラック・バスの担当者に伺ったところ、ここ5年で急激に若年層のドライバー不足が深刻化しており、運送業などでは導入する車両を大型化して1度に輸送できる量を増やしてドライバー不足を補おうという動きがあるため、大型車の需要が増加しているという。また、首都高速道路などでは軸重超過車両の取り締まりを強化しており、タイヤを含む車両本体の軽量化は重要な課題。こうした流れを受け、積載量を増加でき、燃費も向上させられるワイドシングルタイヤ化は期待されている。そして、今回の貴における事例は、コストダウンのモデルケースとして今後の運送業にとって重要なものとなるだろう。日本ミシュランタイヤにとってもこの事例を軸にして、大型車両向けタイヤ市場におけるシェア拡大を図っていくもの思われる。