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マツダ、新型「CX-3」で多くの部分を専用開発したボディーとシャシー

ダンパーなどは車重に合わせてアクセラから流用。最終確認は首都高で徹底的に走り込み

新型「CX-3」のホワイトボディー

 東京オートサロンで国内に向けに初公開を行った新型「CX-3」。先日行われたプロトタイプ車両の撮影会(http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/photo/20150117_684154.html)では量産試作モデルがメディア向けに公開され、グレード展開や安全装備、価格帯などの情報が発表された。

 しかし、まだ公道での試乗機会がないので、CX-3がどのようなハンドリングや乗り味に仕上がっているのかは不明だ。ただ、今回の撮影会でシャシーや足まわりなどの特徴について話を聞くことができた。

 4275×1765×1550mm(全長×全幅×全高)というボディーサイズや、フロントがストラット、リアがトーションビームというサスペンション形式から想像すると、先行して発売されたデミオをベースにしているところが多いと感じるだろう。確かにプラットフォームなどはデミオと共通している部分なのだが、ハイテン鋼の使用率や板厚などはCX-3用に変更。ダンパーはアクセラ用をベースにしている。つまり、単純にデミオをベースにしたクロスオーバーではなく、CX-3専用に開発を行っている部分が非常に多いのだ。

CX-3 XD Touring

 前述のようにプラットフォームはデミオと共用になるが、CX-3が求める方向性に合わせるため全体的に剛性を向上。フロントまわりはデミオと比べて重量が上がっているため板厚を高め、ハイテン鋼もより多く使用している。特に運転席足下のバルクヘッド周辺はハイテン率をアップしているという。リアまわりはフロントよりもさらに剛性を上げ、各部に補強も追加している。全体的に剛性を高めたことで、Bセグメントの車両に起きやすい車体のビリビリした高周波振動を抑制している。

 また、デミオよりも車高が上がっているため、アームをそのまま取り付けると角度が斜めになってしまう。そこでフレームのペリメーターをカットし、取り付け位置の補正を実施。デミオと共通のプラットフォームを利用したと言いつつも、多くの個所をCX-3用に調整している。

CX-3の走行イメージ

 フロントがストラットでリアがトーションビームのサスペンションも、形式だけを見ればデミオと同様だが、ダンパーは減衰特性を重視するためにアクセラ用をベースとしている。セッティングの方向性については、キビキビと動き、しかも上質感のある乗り味を目指している。コンパクトカーのデミオはオールマイティな性能を求められるが、若年層やファミリー層を狙っているCX-3は、マツダが提唱している「Be a driver」の思想を根強く感じさせる仕上がりになっているという。長距離の移動やワインディングでの走行など、ドライブしていて楽しいと思えるハンドリングを実現している。

 足まわりの各部を見ると、シャープなハンドリングを生み出すためにフロントアームは板厚をアップさせて強度を確保。ブッシュも硬度を高めている。一方のリアまわりはトーションビーム式を採用しているので、乗り心地に対してネガティブな印象を持つ人もいるだろう。だが、タイヤとダンパーの減衰を最大限に活かし、トーションビームのブッシュも柔らかくするなど、可能な限り路面からの突き上げを抑制するように取り組んでいる。

 フロントとリアを全体的に見ると、スプリングレートやスタビライザー、ブッシュを固める方向にセッティングしていて、ロール量は抑えている。それでもダンパーはしなやかに動くようにチューニングしているので、路面からの突き上げは抑えつつ、車体はキビキビと動くように仕立てている。

CX-3のフロントサスペンション
CX-3のリアサスペンション
タイヤサイズはベースグレードのXDが215/60 R16 95V、XD TouringとXD Touring L Packageが215/50 R18 92V(写真)となる

 CX-3のタイヤサイズは16インチと18インチの2タイプ。タイヤサイズによるセッティングの違いはないが、プロペラシャフトを通すなど大きな変更を加えている4WDは、同じ足まわりのセッティングでは求めている乗り味が実現できなかった。そのため、2WD(FF)と4WDではセッティングを変えているという。

 足まわりのセッティングのほとんどの部分は、広島県にあるマツダのテストコースを利用していて実施している。だが、最後の煮詰めは一般道を使用して確認作業を行ったという。テストチームは広島をベースとしているのだが、わざわざ首都高速までクルマを運んで最終的な確認走行を実施。首都高は轍や道路のつなぎ目など、高速走行時に過酷な路面からの入力が多く、ここで乗り心地が確保できれば、ほかの道路でも満足いく仕上がりになるというのがその理由。そのため、首都高での最終確認は徹底的に行われたそうだ。

 このように、デミオと共通する部分が多いと思われていたボディーやシャシーだが、実際には多くの部分がCX-3専用品となっている。もちろん、セッティングもこれに合わせたオリジナルだ。クラスレスな存在を目指しているCX-3は、いったいどのようなハンドリングや乗り味に仕上がっているか? 期待して試乗できる機会を待ちたい。

(真鍋裕行/Photo:安田 剛)