特別企画
【特別企画】岡本幸一郎のマツダ「CX-3」で夏の北海道を走る
北の大地で“CX-3を選ぶ価値”を再確認
(2015/8/12 00:00)
恒例のロングドライブを、今回は北海道で
2015年2月の登場以降、まったく新しいニューモデルでありながら、BセグメントSUVの国内販売で3~4割のシェアを占めているというマツダの「CX-3」。実際、街なかでもよく見かけるし、サイズ自体は大きくはないものの存在感のあるルックスゆえ、印象に残ることもあってなおのことたくさん見た気になっている面があるかもしれない。
さて、マツダと言えば、これまで「CX-5」が登場してから以降、毎年恒例のように鹿児島で中距離の試乗会を開催してきたのだが、今回のCX-3では、それが時期的に最適との判断もあって、舞台を北海道に移して実施されたわけだ。
旭川空港に降り立ったあと、試乗に出る前に、空港内の会議室でCX-3の開発責任者を務めた冨山道雄氏から、このクルマのポイントや販売状況などの現状を解説する場が設けられた。
マツダの新世代商品群の第5弾となるCX-3は、「魂動&スカイアクティブを継承・進化」「ライフスタイルのクロスオーバー」「次の時代のスタンダードを創り出す」「幅広いシーンでお客さまの創造的なライフスタイルをサポート」といった特徴を持つ。
また、この「幅広いシーンでお客さまの創造的なライフスタイルをサポート」という特徴には、「都会的で先進的なライフスタイルを表現」「ドライバーとして純粋に運転が楽しめるクルマ」「家族や仲間と楽しく刺激的な移動体験ができる」という3つのキーバリューを内包しているという。
購入者層はヤングファミリーやカップルが38%、シニアが49%となり、狙ったユーザーに届けることができていると自負しており、他銘柄からの買い替えと新増で7割に達しているとのこと。また、CX-3が登場したことでCX-5とシェアの食い合いが起こるのでは?とも危惧していたところ、CX-5も順調な販売を続けており、結果を見るとCX-3が増えた台数がほぼ純増となっているという。
操る楽しさを感じさせる6速MT
北海道には冬季に来ることが多く、今年もすでに1月から3月にかけて7回ばかり足を運んでいるのに対し、雪景色でないときに北海道に来る機会はそれほど多くない。初夏の北海道は気温もそれほど高くなく、湿度が低いこともあってとても気持ちがよい。
初日は旭川空港から、「日本一美しい街」といわれる美瑛、富良野にかけて一般道を通り、大自然のなかにある宿泊地の「リゾナーレ トマム」までを走行する。ズラリと並べられた試乗車から、我々が往路に選んだのは、6速MTの2WD(FF)車。
走り出してまず感じるのはシフトフィールがよいこと、そして「SKYACTIV-D」ならではのトルク感とスムーズな吹け上がりだ。小気味よく節度感のあるMTを操ること自体に楽しさがあるし、北海道のように60km/h程度の速度をキープして巡航することの多い状況でも、この力強い動力性能は頼もしい。平均燃費の表示を見ていると、60km/h程度でエコランを意識して走ると26.0km/Lを超えたときもあった。
ディーゼルであることはもとより、このセグメントでは貴重なMTが設定されていることを理由にCX-3を選んだ人も大勢いるはずだが、その期待にも十分に応えていると思う。また、ディスプレイに適切なギヤが何速であるかをガイドしてくれたり、MTでもACC(アダプティブクルーズコントロール)を設定して、クルマに追従走行を任せられるのもありがたい。
走り始めてしばらく経ったところで「白金 青い池」に立ち寄る。名前のとおり本当に水が青く、それでいて透明度の高い水面と、ちらほら生えている樹木(種類は分からないが)のコントラストが幻想的だ。
その先をしばらく走ったところにはちょっとしたワインディングがあり、持ち前の軽快なハンドリングを楽しむこともできた。ただし、その背反なのか、乗り心地にとっては不利なところどころに継ぎはぎの見られる路面では、前席はまだしも、後席ではやや硬さを感じることもあった。もう少しマイルドなほうが、後席乗員には歓迎されることと思う。
夏場とはいえ日の入りの早い北海道。ほどなくリゾナーレ トマムに到着したころには、あたりはやや薄暗くなっていた。
より上質な走りを持つ4WD
2日目の朝。復路は6速ATの4WDに乗り替え、ほかの参加者よりも少し早めに出発した。軽快で素直な走り味を楽しめることはMTの2WD車と同じくCX-3の美点。それに加えて、ドライの舗装路でも走りには全体的に安定感があり、ステアリングフィールは4WDのほうが据わりもよくしっかり感がある。降雪地に住んでいたり、ウインタースポーツをたしなむわけでなくても、より上質な走りを求めて4WDを選ぶというのは大いにありだと思う。
まる2日間に渡って雄大な景色のなかをドライブしても、疲労感は小さくすんだ。その理由としてはシャシーの仕上がり加えて、シートのつくりやドライビングポジションのよさもある。座った瞬間からしっくりきて、なにも気になることがない。すべてが自然な位置関係でフットペダル類の配置も適正だ。メーターフード奥にあるヘッドアップディスプレイの「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」も、わざわざ見ようと意識しなくても常に視野の中に自然に入っている。
CX-3は出た当初に何度か集中して乗る機会があったところ、しばらく間があき、ほかにいくつかの車種を見た上でひさびさに触れると、あらためて気づくこともあった。
まずはやはり、このセグメントらしからぬ上質感を身に着けていることだ。表情豊かなエクステリアデザインに、日本車らしからぬハイセンスなインテリアデザインやクオリティ感というあたりはCX-3ならではの魅力。
また、Bセグメントでは望外といえる先進的な危険認知支援技術や運転支援技術、衝突回避支援、および被害軽減技術の数々が盛り込まれていることの価値もあらためて実感できた。これらの技術がドライブをより快適なものとしてくれるし、なにかあったときにも被害を最小限に食い止めてくれることが期待できる。
メカニズム的には近い関係にあるデミオとも、先進安全装備の点では大きな違いがあるし、一方、兄貴分のCX-5に対しても、走りやデザインなどのよさを受け継ぎつつも巧みにダウンサイジングを図っており、いずれに対しても“上手く棲み分けができている”と思う。いろいろな面で、CX-3を選ぶ価値をあらためて再確認できた2日間であった。