特別企画

【特別企画】岡本幸一郎のマツダ「CX-3」で夏の北海道を走る

北の大地で“CX-3を選ぶ価値”を再確認

恒例のロングドライブを、今回は北海道で

 2015年2月の登場以降、まったく新しいニューモデルでありながら、BセグメントSUVの国内販売で3~4割のシェアを占めているというマツダの「CX-3」。実際、街なかでもよく見かけるし、サイズ自体は大きくはないものの存在感のあるルックスゆえ、印象に残ることもあってなおのことたくさん見た気になっている面があるかもしれない。

 さて、マツダと言えば、これまで「CX-5」が登場してから以降、毎年恒例のように鹿児島で中距離の試乗会を開催してきたのだが、今回のCX-3では、それが時期的に最適との判断もあって、舞台を北海道に移して実施されたわけだ。

ボディーサイズは4275×1765×1550mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2570mmというBセグメントSUVの「CX-3」
余談だが、北海道までの行き帰りには「AIR DO」に搭乗した

 旭川空港に降り立ったあと、試乗に出る前に、空港内の会議室でCX-3の開発責任者を務めた冨山道雄氏から、このクルマのポイントや販売状況などの現状を解説する場が設けられた。

 マツダの新世代商品群の第5弾となるCX-3は、「魂動&スカイアクティブを継承・進化」「ライフスタイルのクロスオーバー」「次の時代のスタンダードを創り出す」「幅広いシーンでお客さまの創造的なライフスタイルをサポート」といった特徴を持つ。

 また、この「幅広いシーンでお客さまの創造的なライフスタイルをサポート」という特徴には、「都会的で先進的なライフスタイルを表現」「ドライバーとして純粋に運転が楽しめるクルマ」「家族や仲間と楽しく刺激的な移動体験ができる」という3つのキーバリューを内包しているという。

 購入者層はヤングファミリーやカップルが38%、シニアが49%となり、狙ったユーザーに届けることができていると自負しており、他銘柄からの買い替えと新増で7割に達しているとのこと。また、CX-3が登場したことでCX-5とシェアの食い合いが起こるのでは?とも危惧していたところ、CX-5も順調な販売を続けており、結果を見るとCX-3が増えた台数がほぼ純増となっているという。

美瑛や富良野に点在する北海道ならではの観光スポットを巡りながらCX-3のロングラン性能をチェック

操る楽しさを感じさせる6速MT

富良野にある「ジェットコースターの路」は、約4kmに渡って直線区間が続くという道路

 北海道には冬季に来ることが多く、今年もすでに1月から3月にかけて7回ばかり足を運んでいるのに対し、雪景色でないときに北海道に来る機会はそれほど多くない。初夏の北海道は気温もそれほど高くなく、湿度が低いこともあってとても気持ちがよい。

 初日は旭川空港から、「日本一美しい街」といわれる美瑛、富良野にかけて一般道を通り、大自然のなかにある宿泊地の「リゾナーレ トマム」までを走行する。ズラリと並べられた試乗車から、我々が往路に選んだのは、6速MTの2WD(FF)車。

 走り出してまず感じるのはシフトフィールがよいこと、そして「SKYACTIV-D」ならではのトルク感とスムーズな吹け上がりだ。小気味よく節度感のあるMTを操ること自体に楽しさがあるし、北海道のように60km/h程度の速度をキープして巡航することの多い状況でも、この力強い動力性能は頼もしい。平均燃費の表示を見ていると、60km/h程度でエコランを意識して走ると26.0km/Lを超えたときもあった。

 ディーゼルであることはもとより、このセグメントでは貴重なMTが設定されていることを理由にCX-3を選んだ人も大勢いるはずだが、その期待にも十分に応えていると思う。また、ディスプレイに適切なギヤが何速であるかをガイドしてくれたり、MTでもACC(アダプティブクルーズコントロール)を設定して、クルマに追従走行を任せられるのもありがたい。

直列4気筒DOHC 1.5リッター直噴ターボディーゼルのS5-DPTS型(i-ELOOP装着車はS5-DPTR型)は、可変ジオメトリーターボや吸気管一体式水冷インタークーラーなどを採用。最高出力77kW(105PS)/4000rpm、最大トルク270Nm(27.5kgm)/1600-2500rpmを発生する
独自の安全技術「i-ACTIVESENSE」の充実もCX-3の大きな魅力。ステアリングスポークのスイッチを操作すると、MT車でも「マツダ・レーダー・クルーズ・コントロール」(MRCC)による前方車両の追従走行が利用できる

 走り始めてしばらく経ったところで「白金 青い池」に立ち寄る。名前のとおり本当に水が青く、それでいて透明度の高い水面と、ちらほら生えている樹木(種類は分からないが)のコントラストが幻想的だ。

 その先をしばらく走ったところにはちょっとしたワインディングがあり、持ち前の軽快なハンドリングを楽しむこともできた。ただし、その背反なのか、乗り心地にとっては不利なところどころに継ぎはぎの見られる路面では、前席はまだしも、後席ではやや硬さを感じることもあった。もう少しマイルドなほうが、後席乗員には歓迎されることと思う。

 夏場とはいえ日の入りの早い北海道。ほどなくリゾナーレ トマムに到着したころには、あたりはやや薄暗くなっていた。

ドライブ中に立ち寄った「白金 青い池」。季節や見る位置などによって水面の色が変化するとのことで、このときはターコイズブルーに輝いていた。これほどの色味にもかかわらず、沈んでいる葉っぱや枝が鮮明に見える不思議な光景が楽しめる
山あいを抜けるワインディングを抜け、宿泊地となった「リゾナーレ トマム」に到着。早起きすると雲海の幻想的な光景が眺められる

より上質な走りを持つ4WD

 2日目の朝。復路は6速ATの4WDに乗り替え、ほかの参加者よりも少し早めに出発した。軽快で素直な走り味を楽しめることはMTの2WD車と同じくCX-3の美点。それに加えて、ドライの舗装路でも走りには全体的に安定感があり、ステアリングフィールは4WDのほうが据わりもよくしっかり感がある。降雪地に住んでいたり、ウインタースポーツをたしなむわけでなくても、より上質な走りを求めて4WDを選ぶというのは大いにありだと思う。

 まる2日間に渡って雄大な景色のなかをドライブしても、疲労感は小さくすんだ。その理由としてはシャシーの仕上がり加えて、シートのつくりやドライビングポジションのよさもある。座った瞬間からしっくりきて、なにも気になることがない。すべてが自然な位置関係でフットペダル類の配置も適正だ。メーターフード奥にあるヘッドアップディスプレイの「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」も、わざわざ見ようと意識しなくても常に視野の中に自然に入っている。

CX-3 XD Touringのインパネ
シート、ステアリング、ペダル類のレイアウトにこだわり、チルト&テレスコピックステアリングも全車標準装備。自然なドライビングポジションをセットできることがロングドライブの疲労軽減にもつながる。「アクティブ・ドライビング・ディスプレイ」も使いやすい配置
6速AT車のステアリングシフトスイッチはセットオプションとなるXD以外に標準装備。スポーティに走る以外にも、市街地走行時などのちょっとした速度調整にも利用でき、これも長距離ドライブなどで疲労軽減に役立てられる
ペダルレイアウトも適正で、アクセルペダルはオルガン式。大型でしっかりしたフットレストもCX-3の美点

 CX-3は出た当初に何度か集中して乗る機会があったところ、しばらく間があき、ほかにいくつかの車種を見た上でひさびさに触れると、あらためて気づくこともあった。

 まずはやはり、このセグメントらしからぬ上質感を身に着けていることだ。表情豊かなエクステリアデザインに、日本車らしからぬハイセンスなインテリアデザインやクオリティ感というあたりはCX-3ならではの魅力。

 また、Bセグメントでは望外といえる先進的な危険認知支援技術や運転支援技術、衝突回避支援、および被害軽減技術の数々が盛り込まれていることの価値もあらためて実感できた。これらの技術がドライブをより快適なものとしてくれるし、なにかあったときにも被害を最小限に食い止めてくれることが期待できる。

 メカニズム的には近い関係にあるデミオとも、先進安全装備の点では大きな違いがあるし、一方、兄貴分のCX-5に対しても、走りやデザインなどのよさを受け継ぎつつも巧みにダウンサイジングを図っており、いずれに対しても“上手く棲み分けができている”と思う。いろいろな面で、CX-3を選ぶ価値をあらためて再確認できた2日間であった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛