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【LAオートショー2014】マツダ「CX-3」チーフデザイナー 松田陽一氏に聞く

「8等身のプロポーションを目指してデザインを施しました」

2014年11月19日(現地時間)開催

CX-3のチーフデザイナーを務めたデザイン本部の松田 陽一氏。以前は、CX-9やMazda 6のフェイスリフトのチーフデザイナーとして活躍。インテリアデザインの経歴が長いという。バックのCX-3は新色のセラミックメタリックのカラーリングになる

 「魂動(こどう)-Soul of Motion」デザインの第6弾モデルとして登場したCX-3。2012年に販売が始まった「CX-5」が魂動デザインの第1弾となるが、その後に続いた「アテンザ」や「アクセラ」、「デミオ」、そして先日お披露目された新型「ロードスター」と、共通したデザインコンセプトの元にデザインされているが、どれも個性があり似て非なるものだ。

 コンパクトSUVのクロスオーバーとしてマツダの新たなラインアップの1台となるモデルは、どのような思いを込めてデザインされているのか。チーフデザイナーを務めた松田陽一氏にお話をうかがった。

──まずCX-3のエクステリアですが、魂動デザインのラインナップの中でもかなり尖った印象を受けるのですが?
松田チーフデザイナー:魂動デザインのキーとなるのは、クルマをただの鉄の塊ではなく生命感を持たせること。つまり、クルマからシンパシーを感じてもらう。これは、どのモデルにも共通した根本的な考え方ですね。

 生命感という共通した考え方があって、それ以外はモデルによって強調するところが異なってきます。例えばロードスターなら、妖艶でセクシーなプロポーションに仕上がっていると思います。CX-3は、その生命感の中でももっとも最先端のところを狙おうと思い、わりとシャープで攻撃的なデザインに仕立てています。

 エクステリアを見てもらえば分かると思いますが、サイドはシンプルな面構成になっています。Mazda 6(アテンザ)やMazda 3(アクセラ)などに比べるとグラフィックも極力排除しています。ただ、生命感のポイントとなるフロントまわりはできるだけシャープにしています。

──CX-5以外のモデルは既存の車種があって、そのフルモデルチェンジのタイミングで魂動デザインを取り入れました。ただ、CX-3は新規に導入するモデルなので、デザインする上で難しさはなかったです?
松田チーフデザイナー:デザインの初期段階ではSUVという表現はなく、単なるクロスオーバーでした。我々のクロスオーバーの解釈ですが、俗に言ういろいろな要素を掛け合わせるのではなく、発想を掛け合わせること。既成概念をなくしてゼロベースで考えることだと思っていました。

 それと与えられた条件の中でいかに小さくするかも課題でした。マーケティングやリサーチなどの意見を含めると、今のクルマはどんどん大きくなってしまいます。自分たちの欲しいのは、ちょうどいいサイズ。そして、格好よいフォルムでした。なので、各所の要望は入れつつも小さくして無駄なことは全部削ぎ落としていきました。

 エンジニアは数値を出してきますが、それを覆すくらいのデザイン性の高さを実現すれば、頷いてくれることもあります。CX-3は、デザイン先行で存在感を示せるモデルだと思っています。

CX-3はベルトラインを限りなく高くすることでキャビンを小さく見せ、実際のボディーサイズ以上の迫力を醸し出している。だが、ベルトラインは闇雲にアップするわけではなく、視認性を確保するためにフロントからリアにかけてウェーブしているのが分かる
北米仕様(写真左)と国内仕様(写真右)だとヘッドライトのリフレクターなどに違いが見える。これは各国の法規の問題となる

──CX-3を見ると4275×1765×1550mm(全長×全幅×全高)というサイズ以上に大きく見えるのですが?
松田チーフデザイナー:コンパクトなモデルは小さいから可愛く仕上げる、という風潮があります。ですが、小さくても格好よいということにこだわって作りました。そして、小さいけど大きく見えるようなデザインにしています。ボディーサイドは分厚く、キャビンが小さくなっているのが特徴で、キャビンが小さいとクルマが大きく見えるのです。ただし、実際にキャビンが小さいのではなく、室内に乗ってもらえば分かりますがリアクォーターのウインドーやベルトラインのウェービングした形状などによって広がったグラスエリアを感じてもらえるでしょう。

 小さく見えるキャビンを利用してボディーサイズを大きく見せています。目指したのは、8等身のプロポーション。顔が小さくて手足が長ければ、どんなものを着ても格好よいですよね。だからプロポーションに妥協はありません。

──では、インテリアについての特徴も教えてください
松田チーフデザイナー:内外装ともにですが、現行のラインナップは同一の方向性で仕立てています。なので、ほかのモデルと同じ形状を用いているところもあるのですが、CX-3では、細部まできっちりと作り込むことを意識しました。洋服の縫製でもそうですが、隅々までしっかりとできていると品質のよさを感じると思います。同様に、ステッチの表現とか使う素材、カラーなどに細心の注意を払いました。

 CX-3の独自性は、空間が醸し出す雰囲気です。ドライバーもパッセンジャーも包み込むような一体感のあるデザインにしています。ミニバンのように広い空間があって、そこで子供が遊ぶのではなく、乗員全員が一緒に移動しているという一体感を持てるような作りでしょうか。リアはベルトラインが高いので、包み込まれているような雰囲気があるはずです。

 乗員の一体感を生み出すことに加えて、マツダはドライビングをウリにしている会社なのでドライバーの視認性にはこだわりました。Aピラーが視界のじゃまにならないように角度を調整し、ミラーもボディーにマウントさせています。視界にこだわりつつ、さらに運転が楽しくなるような作りと機能性になっているはずです。

Aピラーの死角を低減するため、ドアミラーはフロントドアにマウントしている。デザイン性の高さもウリだが、機能性やドライビングのしやすさも追求している
Aピラーのポストは、視界の妨げにならない場所を選んでいる。ミラーの設置方法と同様で、ドライビングのしやすさを求めている
ドライバーとパッセンジャーを包み込むデザインを施したというCX-3のインテリア。乗車する全員が自然と一体感を持てるようにしている
ドライバーまわりの機能類は、ヘッドアップコクピットコンセプトの元に設計されている。つまり、ドライバーの目線を前方から移動せずにスイッチ類の操作ができるというもの
マツダコネクトも搭載する
メーターフードやヘッドアップディスプレイもCX-3には装備される
デザインの先鋭性も特筆すべきところだが、使用するレザーやバックスキンの素材、カラーも同クラスのライバル車を圧倒している
リアシートの乗降性もデザインとして考えている。ルーフに頭が当たらない高さと形状などをモックアップで何度も試して、実際の設計を行なっている

──最後に、CX-3の国内仕様は新色の「セラミックメタリック」でカラーリングされていますが、どのようなイメージの色ですか?
松田チーフデザイナー:ネーミングのとおりセラミックの素材感を表したカラーになります。なので、何色というよりもセラミックなのです。セラミックは、粒子が緻密に焼き固められたものなので、それを表現することにしました。全体的にセラミックの塊感が分かってもらえるといいですね。光の当たり方によってさまざまな色に見えると思いますし、艶っぽさやハイテク感があると思っています。

 マツダのコーポレートカラーはソウルレッドで変わりはないのですが。それをサポートしてより華やかにするためにセラミックメタリックがあると思っています。

(真鍋裕行)