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アイシン、“オーナーの乗車意思”を推定する「インテリジェントピラーユニット」人とくるまのテクノロジー展2025横浜で初公開
2025年5月21日 19:36
- 2025年5月21日~23日 開催
- 入場無料(登録制)
神奈川県横浜市のパシフィコ横浜で、自動車技術展「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」が5月21日~23日の会期で行なわれている。入場料は無料(登録制)。
展示ホール・435にあるアイシンブースでは、カーボンニュートラルな社会の実現に貢献する「電動化」、乗車前から降車後まで安心で快適な移動空間を提供する「安心・快適・利便」に関する製品・技術を紹介している。
「電動化」
あらゆる電動車に対してフルラインアップで対応するアイシンの電動ユニットのなかから、BEV(バッテリ電気自動車)で必要となる駆動力、電力変換、熱マネジメントなどの主要コンポーネントを集約し、エネルギー効率や搭載性を大幅に向上させる「機能統合電動ユニット(Xin1)」や、走行性能や燃費の向上に貢献する「FR1 モーターハイブリッドトランスミッション」を出展。
「FR1 モーターハイブリッドトランスミッション」はトヨタ自動車が北米市場などで販売しているフルサイズピックアップトラック「タンドラ」にも搭載されている製品で、会場で展示されていたのは北米市場で販売されているトヨタ「ランドクルーザー"250"シリーズ」向けとなる、8速ATの「Direct Shift-8AT」をベースに駆動用モーターを組み合わせてハイブリッド化した製品。ハイブリッド化で大幅な燃費向上を果たしたほか、エンジンとモーターの組み合わせで走行シーンに応じて最適な出力調整を行ない、力強い走りや高いトーイング性能を発揮する。
また、部品を集約することで小型化を実現した「BEV用 水・冷媒モジュール」、グループ企業であるアドヴィックスが手がける「電動ディスクブレーキ」なども展示。
力の伝達を従来の油圧から電気信号に置き換えた「電動ディスクブレーキ」は、ブレーキ性能の向上や環境負荷の低減、電動車の電費や乗り心地を向上させる「将来ブレーキシステム」として期待されている。
ブースで展示されていた製品は2030年代の製品化を目指して開発中という後輪向け電動ディスクブレーキ。前輪よりも後輪の方が制動力などの負荷が小さいことに加え、一般的に車両前方のエンジンルーム内に配置されるブレーキのマスターシリンダーから後輪は遠く、油圧ブレーキだと配管を伸ばす必要があるため、配線での電気信号に置き換えられる後輪の方が需要が大きいことも理由となる。4輪の電動ディスクブレーキ化はまだ先の想定だが、一部の中国メーカーでは最初から4輪電動ディスクブレーキで製品化を目指す動きもあり、動向を注視しつつ開発を進めていきたいと説明された。
「安心・快適・利便」
車内にいる人の動きを認識し、先読みすることで快適な乗降性を実現する「インテリジェントピラーユニット」、より安全でシームレスな移動体験を提供する「生成AIを活用したLBSエージェント」を初公開。
製品化に向けて開発が進められている「インテリジェントピラーユニット」は、ミニバンのスライドドアなどのピラーガーニッシュにカメラを仕込み、スマートキーを持って接近してきたオーナーを検知すると、「行動検知」による「乗車意思推定」技術で、オーナーが車両の側面をただ通過するだけなのか、荷物を持ったままクルマに乗り込もうとしているのかを判断。オーナーの乗車意思を検知した時は先読みしてドアオープンを行ない、荷物などを持ってそのまま車内に入ることができる。
また、AIの活用で手荷物の形状やロゴマークなどを認識。オーナーが持っているのが小さな手提げカバンなのかゴルフバックなのか判別して、状況に応じたドアオープンを行なえるようにする学習も進めている。
「生成AIを活用したLBSエージェント」では、トヨタ車向けの純正カーナビ開発で長年培ってきた技術をLBS(位置情報サービス:Location Based Service)として発展。生成AI技術と組み合わせることで、自然対話による呼びかけで周辺検索やナビ操作などを行ない、視線や手の動きなどを運転に集中して安全運転に貢献し、より快適なドライブを実現する。
また、安心・便利なコミュニケーションを支援するリアルタイム音声認識アプリ「YYSystem(ワイワイシステム)」は、もともとはコロナ禍の時期に社内で働く聴覚障害のスタッフがマスク越しのコミュニケーションで苦労していたことから開発し、社内向けに配布していたアプリ。しかし、使い勝手のよさからプライベートでも利用されるようになり、クチコミで話題になったことから一般公開されるようになった。
iOS、Android、Windowsに対応し、個人利用については1アカウントにつき80時間/月まで音声認識を無料で利用可能。また、20カ国語以上に対応したリアルタイム翻訳機能も備えており、字幕機能を使って駅やホテルなどの案内所で訪日観光客向けの対応といった法人需要も拡大しているという。
ブース展示ではタブレットに搭載されたマイクでもかなり正確な音声認識を見せており、指向性のあるマイクなどを接続して利用すればさらに認識率を高めることができると説明された。