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トムトム、世界の交通トレンドや通勤行動などを分析した2025年度版「TomTom Traffic Index」記者説明会

2026年5月15日 開催
「TomTom Traffic Index」2025年度版の記者説明会でプレゼンテーションを行なったTomTom シニアアカウントマネージャー 石橋紀彰氏(左)、同日本営業責任者 田中秀明氏(中央)、同プロジェクトマネージャー 長尾淳史氏(右)

 欧米を中心に地図・位置情報サービスを展開する蘭TomTom Internationalは5月15日、世界の交通トレンドや通勤行動などを分析した最新の年次調査「TomTom Traffic Index」の2025年度版に関する記者説明会を開催した。

 2011年から公表を開始して今回の2025年度版で15回目のアップデートとなるTomTom Traffic Indexは、車両やスマートフォンなどのGNSS(全球測位衛星システム)情報をベースとした3.65兆kmの走行データを活用し、都市単位での交通情報にアクセス可能とした包括的な調査データ。政府機関や企業、メディア、一般のドライバーなどが、交通行動の変化や移動に伴う影響を深く理解することを支援するほか、都市計画の担当者や意思決定者が直面する交通課題を解決し、都市の将来を形作っていく戦略を策定する重要な指針にもなっている。

「TomTom Traffic Index」は最新版と前年分をWebサイトで無償公開

TomTom 日本営業責任者 田中秀明氏

 説明会ではTomTomの日本営業責任者を務める田中秀明氏、シニアアカウントマネージャーである石橋紀彰氏、プロジェクトマネージャーである長尾淳史氏の3人が登壇し、TomTom Traffic Indexの調査手法や主な分析結果、日本の主要都市における道路交通の傾向と今後の見通しなどについて解説を行なった。

 最初にプレゼンテーションを行なった田中氏は、TomTom Traffic Indexの概要説明と2025年度版のハイライトなどについて説明した。

 TomTom Traffic Indexではグローバルの500都市以上で発生する移動のデータを収集、分析し、前年度のデータと比較した増減などもデータ化。都市ごとの交通動向やピーク値の算出、条件ごとの都市比較などを行ない、交通渋滞や道路の安全性、持続可能性といった社会課題の解決に向けて利用可能な調査報告となっている。

 最新版である2025年度版と前年分の2024年度版はTomTomのWebサイトで無償公開されており、それ以前の情報については有償対応となっている。

TomTom Traffic Indexはグローバルの500都市以上をカバー。都市だけでなく国単位での表示も可能となっている
東京における2025年の交通動向の概要
都市ごとのデータをランキング形式で表示することも可能

 2025年度版のハイライトでは、ロンドン、ニューヨーク、東京の3都市で発生した2025年度の交通動向について紹介。

 ロンドンは2024年度から平均渋滞レベル(一定区間を走行する際、渋滞の影響なく通過できる場合からどれだけ余分に時間が必要になるかを示す数値。10分で通過できる区間が平均渋滞レベル50%の場合、通過に15分かかることを意味する)が1%増加して、2025年に最も大きな渋滞が発生した9月12日の午後5時には渋滞レベルが138%に達し、15分間で2.6kmしか移動できなかったというデータが示された。

 また、ロンドンは古くから都市が急成長したことで道路政策が追いつかず、高速道路が整備されていないことで少しずつ渋滞や遅延が積み重なってしまう点を課題として指摘。こうしたデータは単純に混雑した記録ではなく、都市の成長と道路交通をどのようにバランスさせていくかについて考えるヒントになるとした。

ロンドンの2025年度交通動向

 ニューヨークは世界的に見ても道路交通が過密な都市の1つとして知られているが、2025年になって移動時間が1%減少。この背景となったのは、ニューヨーク市は数年に渡って渋滞対策に取り組んでおり、2025年には都心部で「渋滞税」が導入され、自転車インフラの整備が進められている。こうした取り組みの成果として、2025年前半には最大で3.3%ほど渋滞が緩和されたことがデータにも表われているという。

 しかし、このケースは同時に改善の効果を維持することの難しさも示していると田中氏は説明。交通が円滑化したことで交通量が増えていき、年後半では以前の水準まで近付いてしまっているという。このように、渋滞対策は1回では終わらず、継続的な改善と運用の積み重ねが重要だと浮き彫りになっており、正しい方向に向けた取り組みが成長につながる一方、それを持続させていくためには長期的な視点での努力が必要だとデータからも読み取れると解説した。

ニューヨークの2025年度交通動向

 2025年度に東京ではすべての月で2024年度よりも交通渋滞が増加。平均渋滞レベルは7.3%増の44.1%になっている。この背景としては、コロナ禍の影響を受けたリモートワークが通常の出社勤務に年々戻っていることに加え、円安などの追い風を受けた訪日外国人旅行者の増加があると指摘。人の動きが活発になったことが都市交通にも影響を与えていると説明した。一方、混雑のレベルはコロナ禍前に記録した最も高い状況までは届いておらず、増加傾向にある混雑はまだ過渡期でこれからも増えていくとの見方を示した。

 2025年度に東京で最も大きな渋滞が発生したのはお盆休み直前の金曜日である8月8日で、帰宅時間帯になる午後5時には渋滞レベルが105%となり、15分間での移動距離は3.6kmで、1時間に15km弱しか移動できなかったことがデータで示された。東京では都市の活気や人の動きが戻ってきている一方、交通インフラや移動のあり方をどのように調整していくかがあらためて問われていると総括した。

 このように交通データの変化を客観的に分析することで、都市が置かれた現状を冷静に理解できるのがTomTom Traffic Indexだと語った。

東京の2025年度交通動向

年末年始やGW最終日などは「クルマでの移動に適したタイミング」

 日本国内の都市を比較したデータについても解説を実施。主要12都市を比較した「渋滞ランキング」では、平均渋滞レベル56.7%の熊本が最も渋滞が深刻な1位にランク付けされた。熊本ではラッシュアワーの渋滞による年間損失時間が154時間となっており、アジア全体で見ても13位の水準になっているという。

 この渋滞は2024年から本格稼働を始めたTSMCの半導体受託製造子会社であるJASM(Japan Advanced Semiconductor Manufacturing)第1工場が局所的な交通集中の原因となっており、公共交通機関の選択肢も限定されていることが要因となっていると説明。産業の発展が地域の活性化につながっているものの、交通インフラに対する負荷を高めていることもデータから見えてくるとした。

 また、ランキングで4位となった京都にも独自の要因があり、平均速度17.5km/h、15分あたりの走行距離4.4kmという数値はいずれも12都市で最も低い数値となっている。これはグローバルでも低い数値で、世界で8番目に移動速度が遅い都市だと紹介。これは京都の中心部では道路が碁盤の目状に伸び、交差点が多いことを指摘。さらに近年は観光客の増加を受けたバスの混雑、駐車場の不足、道路幅の制約による走行速度の低下などを要因として挙げた。

国内12都市の渋滞について比較したランキング

 2025年に国内で発生した渋滞を時期で見た分析では、最も大きな渋滞が発生した日付けと場所は3月21日の鎌倉で、渋滞レベルは106.8%、平均速度は15.2km/h。日本全体で最も渋滞が起きたのはクリスマスの12月25日で、2位は3月21日、3位は8月8日となり、これは週単位と月単位で見た場合のトップ3とも相関関係があると指摘した。

 このデータを背景に、田中氏は日本国内で交通量がピークを迎えるタイミングが「祝日・大型連休」「行楽シーズン」「ビジネスの動き」の3つに大別されると説明。年末年始やお盆休み、ゴールデンウィークなどを利用して地元に帰省したり、お花見や紅葉を楽しむことが文化として根付いており、このほかには産業活動で新しい工場などが誘致されたり、テーマパークといった観光施設がオープンするといった要因で交通集中が起き、渋滞につながっていると述べた。

 また、この分析をさらに推し進め、混雑する時期の近くには渋滞が少ないクルマでの移動に適したタイミングがあることも分析によって見えてきたという。

 TomTom Traffic Indexのデータを見ると、大型連休や祝日の前後には意外なほど交通量が低下する日があり、2025年度ではトップは元日の1月1日で、12月は帰省や年末年始に向けた買い物などで交通量は増える傾向にあるが、多くの人が帰省を済ませた12月31日も3位になるなど渋滞レベルが大きく低下している。

 2位の5月6日はゴールデンウィークの最終日となっており、5位の8月3日はお盆休みの直前といずれも連休の前後で、混雑するタイミングに加えて交通量が少ない日を見極め、ルートの工夫と合わせて渋滞を避けた旅行や移動の計画を立てることが可能になると説明した。

 最後に田中氏は、TomTom Traffic Indexは単純に渋滞のデータを示すだけでなく、人々の行動のリズム、移動の特徴などを読み解くヒントを提供するデータになっているとアピールした。

2025年に国内で発生した渋滞を時期でまとめた分析データ
日本国内で交通量がピークを迎えるのは「祝日・大型連休」「行楽シーズン」「ビジネスの動き」の3つ
渋滞で混雑する期間の前後は逆にクルマでの移動に適したタイミングになるという

Area Analytics ツールを使った渋滞分析のレポート作成デモも実施

TomTom プロジェクトマネージャー 長尾淳史氏

 プロジェクトマネージャーの長尾氏は、TomTom Traffic Indexの2025年度版と合わせて新たに登場した「Area Analytics ツール」について解説し、製品内容を紹介するデモンストレーションを行なった。

 Area Analytics ツールではTomTom Traffic Indexにあるすべての都市データを活用し、エリアや日付け、時間帯といったタグ付けからユーザーが必要な項目を選び、1本の道路から都市単位、地域全体で発生する交通動向についてさまざまな角度から分析が行なえる。

 データ処理はTomTomのWebサイト上で動作する「TomTom Move」と呼ばれるツールが提供されるほか、生成したデータをGeoJSONやCSVといったファイル形式でダウンロードしてユーザーが使い慣れた分析用ソフトなどで利用するエクスポート機能も用意されている。

「Area Analytics ツール」の主な特徴
Area Analytics ツールに利用例。ここではイタリア・ミラノにおける2024年の渋滞データを一覧表示しており、最も大きな渋滞が発生した12月19日は渋滞レベルが92.2%となっていたことが示された
1週間で曜日ごとの渋滞発生状態についても表示可能
高速道路の路線ごとに見た渋滞レベルを表示しているところ

 製品デモではTomTom Move内にあるArea Analytics ツールを使い、5月のゴールデンウィーク期間に発生した渋滞分析のレポート作成を行なった。

 まずはエリアとして箱根が選択され、対象となる期間、除外する曜日などを選択。道路も高速道路を示す「0」を最大として、幹線道路から細街路まで9段階の「ロードクラス」によって取捨選択が可能となっている。取得したい情報を選択したあとは画面内にある「レポート生成」のボタンをクリックするだけで、今回のデモで選択された限定的なデータであれば数十秒ほどでレポート作成が完了する。

 生成されたレポートはそのままArea Analytics ツールで表示して、地図上に渋滞レベルの度合いを色分けして示したり、グラフなどを使って確認できる。今回対象としたゴールデンウィーク期間の箱根では、国道1号から芦ノ湖に続くルートで大きな渋滞が発生しており、日付けとしては5月5日、時間帯は18時ごろが渋滞のピークになっていることが示され、田中氏のプレゼンテーションでも取り上げられていたように、5月6日になると渋滞が少なくなっていることも分かった。

TomTom Move内にあるArea Analytics ツールで渋滞分析のレポート作成を行なっているところ。GUIで多くの人が使いやすいよう工夫されている
レポート生成はちょっとした待ち時間で完了。ユーザーごとに用意されるマイページ内に保存される
ゴールデンウィーク期間の箱根で発生した渋滞を、渋滞レベルごとに色分けして地図上に重ねて表示
地図表示は写真の3D表示のほか、カラー地図や衛星写真など多彩な表示変更に対応する

 さらに製品デモでは箱根と箱根に隣接する小田原の2都市で発生した同期間の渋滞についてもレポート作成を行ない、比較すると同じような傾向にはなるものの、夕方は箱根のほうが渋滞レベルが高くなっていることが分かるといった利用シーンが示された。

隣接する箱根と小田原の2都市で同期間に発生した渋滞についてもレポート作成
グラフで渋滞レベルを見比べることで傾向などを比較できる

豪雨災害や大規模地震でもTomTom Traffic Indexのデータを活用

TomTom シニアアカウントマネージャー 石橋紀彰氏

 プレゼンテーションの最後には、シニアアカウントマネージャーの石橋氏からTomTom Traffic Indexを提供して実現した活用事例について紹介された。

 基本となる渋滞のデータでは、沖縄県国頭郡のテーマパーク「ジャングリア沖縄」がオープンするにあたり、周辺地域の車両移動を効率化するためJARTIC(日本道路交通情報センター)に主要道路の交通状況データを提供。PCやスマホ、道の駅に設置しているデジタルサイネージなどで表示するリアルタイム交通情報を算出するため、とくにオープン直後の夏休み期間中は5分ごとの情報更新を24時間体制で行なったという。

「ジャングリア沖縄」のオープンにあたり、JARTICに主要道路の交通状況データを提供

 また、災害対応でもTomTom Traffic Indexのデータは活用されており、豪雨災害では車両によるプローブデータで通常は交通量があるはずの道路で交通量が0になっているアンダーパスや地下道などを特定。これらの道路が冠水によって通行不能になっていることを検出して、災害時にも利用可能な道路を選定したり、冠水対策が行なえるようにする。

 2024年1月に発生した能登半島地震では、地震発生後の交通状況について分析・判定を実施。主要道路における交通途絶や交通障害を道路ごとに分析して、地震後の支援物資の輸送ルート策定、道路復旧方針の策定などに活用できるとしている。

豪雨災害時には交通量が0になっていることで冠水している道路を特定
大規模地震の交通状況を分析・判定して、支援物資の輸送ルートや道路復旧方針の策定などに活用できる