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世界各都市の交通渋滞ランキングについてTomTom取締役会メンバーのアラン・デ・タイエ氏に聞く
日本の5都市で最も混雑度が高かったのは東京。ロサンゼルスと同レベル
2019年6月7日 17:27
- 2019年6月6日 発表
iOSのマップアプリなどに地図データを提供しているTomTom Internaionalは、世界各都市の交通渋滞の状況を報告する「トムトム・トラフィック・インデックス」の結果を同社のウェブサイトにて発表した。
8年前に始まったこのランキングでは、これまで日本は調査の対象となっていなかったが、2019年から新たに日本の5都市(札幌・東京・名古屋・大阪・神戸)が加わった。このうち最も混雑度が高かったのは東京で、世界403都市のうち25位(41%)。以下、大阪が43位(36%)、名古屋が71位(32%)、札幌が111位(30%)、神戸が139位(27%)。なお、最も渋滞が酷いランキング1位はインドのムンバイ(65%)となっている。
今回、このトムトム・トラフィック・インデックスについて、来日中のトムトム取締役会メンバーであるアラン・デ・タイエ氏にインタビューを行なった。タイエ氏は、1989年にオランダのTele Atlasグループに統合されたITコンサルタント会社であるInformatics&Management Consultants(I&M)を設立。その後はTele Atlasグループの代表を務めて、地理空間情報コンテンツのデジタル化と商用化に注力した。そしてTomTomがTele Atlasグループを買収した2008年以降は、TomTomの取締役会メンバーを務めている。
このタイエ氏と、セールスバイスプレジデントで日本代表も兼任する山田茂晴氏に、今回発表したトムトム・トラフィック・インデックスを中心としたTomTomの取り組みについて話を聞いた。
――「トムトム・トラフィック・インデックス」とはどのようなランキングで、何を目的としているのでしょうか?
アラン・デ・タイエ氏:TomTomのミッションの1つは、世界中の交通渋滞について把握し、それを解消することに寄与することです。そうすることで、世界中のモビリティをより安心・安全なものにしていきたいのです。そして大気汚染を減らし、最終的には世界の生活水準を高めることに貢献していきたいと考えています。そのために当社は、世界各都市でリアルタイムの交通情報をカーナビなどに配信しており、欧州のナビゲーションシステムの80%以上は当社のライブ情報を利用しています。このような交通情報を集計し、1年ごとに各国の渋滞状況をランキング化したのが「トムトム・トラフィック・インデックス」です。
われわれは世界中で約6億台のデバイスを介して、プローブデータを収集しています。デバイスは携帯電話や車載のカーナビゲーションシステム、ポータブルナビゲーション、テレマティクスシステム、フリートマネジメントシステムなどさまざまです。当社がOEM提供している機器から得られたデータもあれば、携帯電話会社からのデータや、ナビゲーションシステム・テレマティクスシステムのメーカーから得られたデータもあります。当社はそれらのデータを受け取り、彼らに対しては逆に交通情報を提供しています。これらのビッグデータの規模は1日につき、プローブデータをすべてつなぎ合わせると35~35億km相当の距離になります。
――東京の渋滞レベルは41%で、世界で25位となっています。渋滞レベルとはどのような数値でしょうか?
タイエ氏:渋滞レベルとは、渋滞がない状態に比べてどれくらい多く時間がかかるかを意味します。東京の場合は、高速道路と一般道を合わせて、総距離約20億kmにおよぶデータを調べており、高速道路の平均が37%、一般道の平均が46%となっています。また、2018年において渋滞レベルが最も低かった日は12月31日で15%、最も混雑が酷かったのは1月24日で78%となっています。このほか、1週間の時間帯別の渋滞状況も分かります。東京では朝のピーク時は渋滞レベルが64%で、夜のピークは63%です。たとえば朝のピーク時は、空いていれば30分で行けるところに49分かかってしまう計算になります。
東京の25位という順位はロサンゼルスと同じレベルで、渋滞解消のためにまだ改善するべきところがあると思います。東京は地下鉄など優れた公共交通があり、それが渋滞の緩和に役立っています。東京オリンピックに向けて色々な準備をしていると思いますが、今年のインデックスと来年発表される数値を比較することで状況が分かるでしょう。トムトム・トラフィック・インデックスを見ることで、渋滞レベルが36%のニューヨークや、37%のロンドンなど、ほかの都市と比較することもできます。日本では東京のほかに、札幌、名古屋、大阪、神戸の4都市のランキングを発表しました。なお、1年間の渋滞状況の集計ほか、各都市の過去48時間または過去7日間の渋滞状況をリアルタイムに確認することもできます。
――渋滞緩和のための取り組みによって、渋滞レベルが下がったことを確認できたという例はありますか?
タイエ氏:例えば、ジャカルタでは2018年はその前年に比べて渋滞レベルが8%も減少しています。今でも53%という高い数値ですが、1年前に比べて下がった比率としては最も大きいです。この背景には、ジャカルタ市によって行なわれた渋滞解消のための取り組みがあります。ジャカルタ市内では、偶数ナンバーしか走れない日と奇数ナンバーしか走れない日を分けました。さらに、地下鉄も開通しました。ランキングを見れば、ジャカルタの渋滞レベルが改善してきていることを確認できます。
一般的に何か課題を解決するためには、まず課題の大きさを知る必要があり、そのために測定をすることが大切です。交通渋滞は世界的な課題であり、ランキングを提供することで、渋滞を解決しなくてはならないと考える人たちが、ともに協力できるようにしたいと考えています。政府や自治体、交通センターなどが渋滞レベルのランキングを参考にすることで、適切な措置を講じることができます。
もちろん、政府や自治体が自ら渋滞状況を調査することもありますが、私たちはあらゆるプローブデータにアクセスすることが可能で、質の高いデータを入手できます。さらに、過去10年で培ってきたAI技術を使った独自のフュージョンエンジンにより、質の高い交通情報を作れるのが強みであり、このランキングはそのような高品質なデータを基に算出されています。
――渋滞情報については、TomTomは2017年10月に日本における高度でリアルタイムな交通情報サービスを、ゼンリンおよびゼンリンデータコムとともに共同開発すると発表しましたが、このプロジェクトの進捗状況はいかがですか?
山田茂晴氏:この件については、発表後、ゼンリンさんとゼンリンデータコムさんを通じて、多数の問い合わせをいただいています。最終的な製品はまだ開発途中ですが、今は当社の交通情報を組み込んだ製品を開発中です。また、TomTomの交通情報は現在「Maps API」としてデベロッパーに提供されており、このAPIを組み込んだ製品も開発中です。おそらく2019年中にはそのような製品が登場するのではないかと思います。
――TomTomは自動運転システムの開発にも積極的に取り組んでいますが、その進捗状況を教えてください。また、将来的にリアルタイムな交通情報サービスを自動運転システムにどのように活用していくのか教えてください。
タイエ氏:当社は自動運転のHDマップについてもマーケットリーダーであり、現在のところ世界で40万km相当の距離をカバーしています。その中には北米や欧州、日本の高速道路も含まれています。具体的に製品化するまでにはまだ時間がかかるとは思いますが、すでに主要な自動車メーカーとの事業を進めています。また、完全自動運転ではないですが、ADAS向けのHDマップはすでに利用されており、現在、50万台の車両が出まわっています。
リアルタイムのトラフィックデータは、現在のところ主にカーナビ用に使用していますが、将来的には自動運転システムにも活用されると思います。自動運転車は交通状況についてあらゆることを知っている必要があり、交通渋滞についても、それを回避するために情報が必要です。また、渋滞の終わりがどこにあるのかも知る必要があり、そのためにもトラフィックデータが必要となります。
――最後に、日本のユーザーに対してメッセージをお願いします。
タイエ氏:TomTomは運転をより安全にして、渋滞を減らし、環境によりよく貢献したいと考えています。トムトム・トラフィック・インデックスの渋滞ランキングは、人々に「まだまだやるべきことは多い」ということを示してくれるインデックスであり、ぜひこれを活用していただき、みんなで協力しながら渋滞の解消に取り組んでいきたいと考えています。