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日産京都自動車大学校、NISMOのデザイン&パワートレーン部門トークショーをオープンキャンパスで実施

東京オートサロン2026に展示した「オーラNISMO RSコンセプト」も登場

2026年7月25日 開催
日産京都自動車大学校で開催されたオープンキャンパスを取材。写真中央が日産京都自動車大学校 校長・常任理事の松川健一氏

 クルマに次々と新しい技術が搭載される時代は、クルマに乗る人にとってもメリットは多いが、その便利さを支えるためには、最新技術に対応できる技量と知識を持ったメカニックの存在が欠かせないものとなる。

 ただ、最近のクルマに搭載される技術は専門性の高いものとなるため、従来の自動車整備の勉強に加えて、時代に合った先端技術への対応法を学ぶことも求められている。そこで注目されているのが、最新の技術をより詳しく学べる自動車メーカー直系の自動車整備専門学校だ。

 日産自動車にも、日産自動車が指導的に関与する学校法人として「日産自動車大学校」という自動車整備専門学校があり、日産車の整備やアフターサービスを担う人材を育成するための重要な基盤となっている。

 日産自動車大学校は、「日産栃木自動車大学校」「日産横浜自動車大学校」「日産愛知自動車大学校」「日産京都自動車大学校」「日産愛媛自動車大学校」の5校があり、今回は、京都府久世郡にある日産京都自動車大学校で7月25日に開催された「トークショースペシャル・オープンキャンパス」の模様を紹介する。

日産京都自動車大学校内にある、整備の実習を行なう工場。日産自動車の直系だけに多くの実習車両がある。このほかにも、まだたくさんあるそうだ
こちらは学生フォーミュラチームの作業部屋。日産京都自動車大学校は、リーフのシステムを使ったEVフォーミュラカーで参戦している。以前はノーマルECUを使用していたが、現在は学生さんたちによりECUのデータ変更まで行なっている
2026年の学生フォーミュラは、8月2日~7日の期間、愛知県にある愛知県国際展示場で開催される。取材日は7月25日だったので、最後の調整が行なわれていた

ニスモのデザイン部門とパワートレーン部門のトップによるトークショー

 日産京都自動車大学校は毎年オープンキャンパスを実施しており、2026年は4月からスタートし、2027年3月まで毎月行なわれている。内容は学校見学会のほか、体験入学や学校の寮への宿泊、スペシャルイベントが行なわれるものもある。今回は宿泊&スペシャルイベント回だったが、寮に泊まることも体験できるのは、地方から進学する予定の生徒さんにとって、生活する場所がどのようなところなのかを確認できる機会でもある。この日は九州から来た生徒さんがいた。

 今回のスペシャルイベントは、日産モータースポーツ&カスタマイズのカスタマイズデザイン部 部長の森田充儀氏と、同じく日産モータースポーツ&カスタマイズでモータースポーツパワートレーン開発部の主管を務める片倉丈嗣氏によるトークショーとなっていた。

 また、トークショーの目玉として、東京オートサロン2026にて発表された「AURA NISMO RS Concept」も展示され、この車両の開発に携わった両名から解説が聞けた。そしてトークショー終了後は車両を間近で見学する時間も設けられたので、オープンキャンパス参加者はスマホ片手に、あちこち写真を撮りながら興味深く車両を観察。車両のそばでは森田氏と片倉氏が参加者からの質問に答えていた。

オープンキャンパスのスペシャルイベントとして、日産モータースポーツ&カスタマイズの片倉氏(左)と森田氏(右)によるトークショーが行なわれた
会場の様子
展示された「AURA NISMO RS Concept」
GT-R NISMOにも採用されたリアのスプリッターが特徴的
フロントビュー
リアビュー

 最初にステージに立ったのは森田氏。現在61歳の森田氏は、1970年代にあったスーパーカーブームも経験している世代で、子供のころからクルマ好きとして育ってきた。日産には2002年に入社。デザイン関連の数多くの要職に就き、現在は日産モータースポーツ&カスタマイズでカスタマイズデザイン部の部長を務めている。最近の車両では、オーラNISMO、GT-R NISMO、スカイラインNISMO、フェアレディZ NISMO、エクストレイルNISMO、リーフNISMO、さらにキャラバンやNV250をベースにする「マイルーム」のインテリアデザインにも関わっている。

日産モータースポーツ&カスタマイズ カスタマイズデザイン部 部長の森田充儀氏

 そんな森田氏が最初に取り上げた話題は、ニスモがユーザーに対してどのような価値を提供しているかという話。

 まずはオープンキャンパスに集まった人たちに向けて、「日産自動車には2つのスポーツブランドがあるのをご存じでしょうか? それはオーテックとニスモです。オーテックは、クラフトマンシップに基づいた上級な仕立てのクルマといったものです。そして今日お話するニスモは、モータースポーツの世界と直接関連性のある技術が生かされた、走りを重視した機能的にも美しいクルマになります」と説明。

 続けて、「最近はさまざまなものがコンピューター解析によって作れてしまう時代ですが、そういう時代だからこそ『人』による味付けの意味があります。つまり、人による磨き込みです。また、デザインについても、ニスモのクルマに施されるデザインはすべて性能のためのものになります」と、ニスモのクルマ作りの特徴を紹介。

 さらに、具体例を挙げながら、ニスモロードカーに採用されている空力パーツの考え方やその効果、使用される「色」などへのこだわりを説明。そして最後に森田氏は、「ロードカーからモータースポーツまで、一貫したメッセージを発信したいと考えています」と語った。

ニスモロードカーのボディ下部に入る赤いラインは、レーシングカーの空力パーツと共通する記号性を持つものとなる
インテリアもドライビングをサポートすることを重視した作り。ステアリングやシートの素材は滑りにくいものにしているなどの解説が行なわれた
電動車のニスモロードカーにも赤いラインが入っているが、空力性能のよさを際立たせるものではなく、「一見するとおとなしいけれど、内面がアツい」といったことをイメージして、赤いラインがボディの隙間からのぞくようなデザインに変更。これを「アルテリア マグマ」と呼んでいると紹介。ただ、どちらも誰が見ても「ニスモだな」と分かるようにしているとのことだ
形を作るだけがデザインではないという話。電動のニスモロードカーでは、専用のEVサウンドというものがオプションで用意される。こうした音作りも自分たちの仕事であると説明して、電動車の時代における仕事の面白さを伝えていた

 ニスモにおけるデザインの話の次は、クイズ形式のトークとなった。テーマは空気抵抗について。スライドでクイズをいくつか出すことで、空気抵抗のことを理解してもらう組み立てになっていた。クイズはまず、傘が壊れるような風のスピードは何km/hかといった設問から始まり、自転車で走ったときの空気抵抗を題材に、普通に走ったときよりも3倍のスピードで走ると、受ける風の力が何倍になるかといったものが出された。

 これらは3つの答えから選ぶものとなっていて、森田氏が順番に「Aだと思う人、Bだと思う人、ではCの人」と声をかけ、参加者はそれぞれの考えで挙手をする。設問自体は身近なものを題材にしているので、ぱっと思いつきそうだが、真剣に考えてみるとなかなか答えに迷うものがあるだけに、参加者の挙手もなかなかにばらけていた。

 ただ、その状況は話を聞く側の集中力が上がっている状態でもある。そこで回答が出ると、会場からは小さな声が上がる。そして最終的に「空気抵抗は速度の二乗に比例する」という回答が出されると、それまで語られていたニスモロードカーに対する空力の話などが頭の中でつながったようで、ステージを見る視線が最後には一番強くなったように感じた。

 森田氏は最後に、「今日はニスモのデザインについていろいろとお話しましたが、皆さんとはまたどこかで、ニスモの世界について語り合えたらいいなと思っています。ありがとうございました」と結んだ。

このようなクイズが出された。答えは「B」。強い風で傘が壊れるという体験は多くの人がしているので、そのイメージを思い出させる設問。これにより、風の強さへの意識が高まるものとなる
自転車を題材にした設問。これも想像しやすいもの。答えは「C」の9倍
3問目のクイズはこちら。答えは「B」。このクイズの前に、レーシングカーやGT-Rなどのスポーツカーに装着されるウイングは「飛ばないためのもの」であるという説明があった
GT-R NISMOの最高速についての問題。答えは「A」。旅客機の離陸速度よりも速いので、ウイングを含めた空力パーツが重要であると解説した
空気抵抗に関する問題のまとめ

モータースポーツにおける電動化のモチベーション

日産モータースポーツ&カスタマイズ モータースポーツパワートレーン開発部の主管を務める片倉丈嗣氏

 次にステージに上がったのが片倉氏。年齢は54歳。1997年に日産に入社して以来、設計の仕事に携わっている。エンジニアになって最初の大きな仕事が、S15シルビアの6速トランスミッションの設計だった。当時はまだ手で図面を描いていたそうだ。なお、R35 GT-Rのトランスミッションは片倉氏がすべて設計したものとなる。

 その後もエンジニアとして、ドライブトレーン設計や四駆車の駆動系開発を担当。日産の「e-4ORCE」もまさにそれで、制御だったり仕掛けだったりを作った人物。現在は日産モータースポーツ&カスタマイズ(NMC)に出向しており、NISMOモータースポーツ用の電動パワートレーン先行開発を担当しているという。

片倉氏が話をするテーマは「モータースポーツ 電動化モチベーション」

 片倉氏の話は、ニスモのレース活動の紹介から始まったが、本題となったのは自動車産業の歴史や技術の進化の話。スライドに表示されたのは、自動車産業で年代ごとにどのようなことが起きていたかを表すもの。

 54歳の片倉氏はこの表を見て、「私は表のうちの左半分の人間です。そして、ここにいる皆さんは右側の人ですね。現在の自動車産業は100年に1度の変革期と言われていますので、皆さんはこれからの100年に関わっていく人になります」と話した。

日産(ニスモ)のレース活動について。まずは、自動車メーカーとして参戦しているカテゴリーがあるという話
次にレーシングチームに販売する車両の開発、そしてサポートといったことを行なうカスタマーレーシングがある
ここからが片倉氏のプレゼンの本題となる。自動車産業の歴史と未来についての図で、自身はこれまでの100年の人、そして会場にいる人はこれからの100年の人と表現して、新しいことを行なう人材であることをはっきりと伝えた

 これからの時代の話を進めるうえで、まず触れたのがコンピューター技術の進化とバッテリの進化。片倉氏によると、クルマが急激に進化したのは2016年あたりとのこと。この時代に何が起こっていたかというと、スマホやパソコンの技術が急激に進化したタイミングでもあり、クルマの技術も「劇的に変われるチャンスになった」ということだ。

 その資料として用意されたのが、CPU(コンピューター)の処理速度や記憶媒体の容量(密度)、それに通信速度の進化の度合いを示す図。資料を見ると、CPUの処理速度は1995年から2015年のデータでは約30倍の速度アップとなり、記憶媒体では、なんと3000倍にもなっている。そして最大通信速度は、1990年代の第1世代と比べると現在の速度は1万倍である。

 こうした数字は、何となくすごいということは感じるが、数字が大きすぎると具体的にどれぐらい違うのか分かりにくいところ。その点について片倉氏は、スマホで写真を見るときのことを例に挙げた。

 現在のスマホのカメラで撮影した画像は1枚あたり2MBくらいで、高画質になると5MBほどになる。それがスマホの中には何百枚、何千枚と保存されている。

 また、それらの画像をクラウドにアップしている場合であっても、「過去の画像を見たいな」と思えば、すぐにダウンロードができるので、開くまでの時間は1秒未満、0.1秒だったりすることもある。そんな使い勝手なので、多くの人は「それなら使おうかな」となっているのではないかと話をした。

 このような性能は、クルマを走らせるには十分すぎるほどのもので、それにより、さまざまなものを自動で動かすことが容易になってきたと説明した。

コンピューター技術の進化と蓄電池の進化について表した図
これはバッテリの進化を表わしたもの。初代リーフは一充電での走行距離が200kmとなっていたのに対して、最新のリーフは702km。16年でこれだけの進化が起きている

 ここで話をもう一度レースに戻す。片倉氏は、「レースにはかっこいいとか、速いとか、見どころはたくさんあるのですが、僕らのような技術屋から見ると、レースという舞台は技術をどんどん磨いていきたい場所です。そして、それを将来的に量産のクルマに反映していきたいと思っているのです。この2つがレース活動を支えるモチベーションになっているのですが、もっとシンプルに言えば、目的はただ1つ、『速く走ること=高効率の追求』ということです」と語った。

 では、その高効率とは何なのか。これまでの100年において燃料にガソリンを使っている理由は体積あたりのエネルギー密度が断トツに高いことにある。対してEVは、バッテリ自体が重いうえに、体積あたりのエネルギー密度がまだまだ低い段階。

 BEVはスタートダッシュなどでは優れた速さを見せるが、耐久レースのようなスタイルになると、ガソリンエンジン車にまったくかなわないのが現状である。だからレースではガソリンを使用しているのだが、それでも時代的に電動化を考えなければいけない状況でもある。

 そこで現在のレースではハイブリッドシステムを採用するケースが増えているのだが、これは単に環境問題への配慮だけのものではない。電動化による効率の向上が見込まれる部分が、導入の大きな理由でもある。

 例として出されたのがF1。2013年までのV8ガソリンエンジンと、現在のV6ハイブリッドエンジンの効率の比較だ。ガソリンを燃やすことによって得られるエネルギーを100とした場合、さまざまな抵抗を受けて、最終的にタイヤに伝達される有効出力は全体の3割となっている。それに対して、ハイブリッドエンジンは回生が入ることで、有効出力が5割まで増えている。

 これはガソリンエンジンでは到達できなかったところなので、レースにおいてハイブリッドは速くなるための技術でもあるのだ。

エネルギーソースの効率比較という図。縦軸が重量、横軸が体積あたりのエネルギー密度で、グラフの右上に行くほど効率がよいものになる。これを見ると、バッテリとガソリンの効率に大きな差があるのが分かる
ガソリンエンジンとハイブリッドの効率の差。物理現象によって生じる抵抗は、ガソリンを燃やすことによって作った100の力から7割の損失を生み、最終的にタイヤに伝わる力は3割になる。それに対してハイブリッドは、それまで捨てていた力(熱)を利用することで5割まで戻せている
主要カテゴリーにおける電動化の推移。多くのカテゴリーで電動化が進んでいる。また、電動化されていないものも、サステナブルフューエルなどを使うようになっている
レースによってハイブリッドの使い方が異なっている。これはどちらがよいという話ではない。こういう部分も、ハイブリッドシステムを取り入れたレースの面白さになっている

 以上が片倉氏のプレゼンの内容。片倉氏は、「今日はレースの世界にはこんな電動化の波がきていますよ、という話をしました。また、最初にお話したように、皆さんはこれからの100年の人なので、こういう複雑なシステムを使いながら、いいクルマ、面白いクルマを作っていただきたいと思います。私ももう少しの期間、仕事で関われるので、一緒にいいクルマを作りましょう」と締めくくった。

AURA NISMO RS Concept

 トークショーのあとに「AURA NISMO RS Concept」の紹介が行なわれた。この車両は、東京オートサロン2026に展示されたモデル。

 片倉氏によると、現在も開発が進められていることから、東京オートサロン2026に展示していたときと、アルミホイールやブレーキが変更されているとのこと。展示されたときはGT-R用のブレーキを使っていたが、現在は「ブレーキサイズをどこまで小さくできるか」という実験をしているそうだ。そのほかの作りには変更はないとのこと。

ベールをかぶっていた「AURA NISMO RS Concept」。トークショーの最後にアンベールされた
「AURA NISMO RS Concept」。東京オートサロン2026に展示されたときとは、アルミホイールとブレーキが違っている
コンセプトについて
このクルマで挑戦していくこと
デザインコンセプトについて
ボディサイズについて。オーラNISMOと比較
エンジンや駆動系はエクストレイルNISMOのものが使用されている。駆動方式はe-4ORCEだ

 東京オートサロン2026では、スーパー耐久への参戦を予定しているという話が出た。それは現在も継続しているが、いきなり大きなレースに出るのではなく、まずはジムカーナやラリーといったカテゴリーに参加して、徐々にステップアップしていく計画を立てているそうだ。

 トークショーが終わったあとに、森田氏と片倉氏に今後のことをいろいろ聞いてみたのだが、やはり、まだまだ言えない部分ばかりのようだった。その中でも、開発が進んでいること、この車両に大きな期待を持っていることは十分に伝わってきたので、ここは日産からの続報を楽しみに待ちたい。

片側70mmワイドになっている。デザインを担当した森田氏によると、「こんな変更をさせてもらえるクルマはほかにはない」とのこと
オーバーフェンダーは空力を考えると、あまりよいものではない。そこで、少しでも風の流れをよくするために、ブリスターフェンダーとしたそうだ
フロントまわりもスポイラー部分が延長される。スポイラーはニスモロードカーの象徴である赤で塗装される
GT-R NISMOに採用されたリアのスプリッター。これにより、横に流れる空気を車体後方の遠くへ飛ばす効果がある。同時に、ルーフと車体下面からの風も、なるべく遠くに流れるようにしている
フロントバンパーにあたった風を効率よくサイドへ流すための造形。ここは森田氏が「ぜひ撮影してほしい」といった部分
タイヤハウス内の風を抜く造形。こうした部分は、実際に量産されるようになった場合、使用する素材との兼ね合いでどこまで再現できるか、そこも大きな課題になっているそうだ
ホイールとブレーキが変更されていた。このあたりは車両重量や走りの性能に大きく関わるところなので、大きすぎても重量がありすぎてもよくないし、車両価格にも影響があるところだ。そのため、とりあえず大きければよいというわけではなく、「ここまでコンパクトにできる」という視点で考えてもらうのは、ユーザー目線ではありがたいこと
以上が、日産京都自動車大学校で開催されたオープンキャンパスのイベントの模様だ。現役のデザイン部門と技術部門のトップによる内容の濃いトークショーに、開発中のスポーツモデルの展示など、さすが日産直系の学校イベントという感想だった。オープンキャンパスに興味がある人は、参加を希望する学校のWebサイトから日程を調べていただきたい