三洋電機、環境技術説明会「Green Technology Forum」
「大型蓄電用電池とEV用電池の共通化を目指す」

三洋電機のエネルギー事業について語る、代表取締役副社長の本間充氏

2010年11月18日開催



 三洋電機は11月18日、報道陣向けに環境技術説明会「Green Technology Forum」を開催した。これは、同社が現在取り組んでいる蓄電事業の展望を示すもので、太陽電池事業、民生用2次電池事業、電気自動車・ハイブリッド車用の環境対応車用2次電池事業と同様に、大型蓄電事業を4本目の柱に育て行くと言う。

 技術説明を行ったのは、代表取締役副社長の本間充氏。本間氏は10月22日にオープンした、ハイブリッド車(HEV)用のリチウムイオン電池を製造する加西工場(加西グリーンエナジーパーク)を取り上げ、この工場において大規模なスマートエナジーシステムの実証実験を行っていると言う。

 加西工場では、一般家庭330世帯分に相当する1MWの太陽発電設備を備え、その発電電力を蓄える1.5MWhのリチウムイオンバッテリー設備を持つ。同社ではこれを創エネ(1MWメガソーラー)、蓄エネ(1.5MWhリチウムメガバッテリーシステム)、省エネ(管理EMS[エナジーマネジメントシステム]など)とし、トータルでのエネルギー管理をスマートエナジーシステムと呼んでいる。

 これらを活用したCO2の削減目標は年間約2480t。2020年にはエネルギー関連市場が10兆円以上になると見込んでおり、発電したエネルギーを蓄える大型蓄電市場は2兆円になると予測している。

 同社ではこの市場に向けて、ノートパソコンでも使われている18650セルを利用した1.6kWhの蓄電モジュールを開発。このモジュールを加西工場では約1000台設置し、実証実験を行っている。

兵庫県加西市にあるハイブリッド車用のリチウムイオンバッテリーを生産する加西工場加西工場ではスマートエナジーシステムという、総合エネルギー管理方法が採られている同社独自技術であるHIT太陽電池を使い、1MWの発電を行う
1.5MWhリチウムメガバッテリーシステムで、発電したエネルギーを蓄え、電力のピーク時などに供給。18650セルが31万本使われているリチウムイオンバッテリーを使うことで、NAS(ナトリウム硫黄)電池、鉛蓄電池に比べコンパクトな蓄電システムを構築工場内には、発電した電力をそのまま利用できるDC配電システムを持つ。AC/DC変換時のロスを削減できる
発電や消費エネルギーをリアルタイムに把握している。エネルギーフローの“見える化”も行われており、工場内のデジタルサイネージに各種情報を表示する加西工場全体で、CO2の削減目標は25%2020年の市場規模予測。大型蓄電市場は環境対応車用の市場を超える2兆円
米国や欧州、日本で行われている政府支援が大型蓄電システムの普及の後押しとなる大型蓄電事業を4本目の柱と位置づけ、大型蓄電事業部を10月1日に設置米国カリフォルニア州のサンディエゴ大学と共同開発契約を締結しており、米国での大型蓄電事業に取り組んでいく

 本間副社長は「パナソニックグループの中で何が貢献できるのかを考えた場合、やはりエネルギー事業だろうということで、大型蓄電事業のシステム化を進めていく。さらに開発を進め、サイズを小さく、コストも低くすることで、社会に貢献していく」と述べ、すでにパナソニックの完全子会社となることが決まっている三洋電機のエネルギー事業戦略の方向性を示した。

 ただ、18650セルはパナソニック エナジー社も生産を行っており、この点について質問されると「パナソニックグループとして複数の提案手段を持ったことになる。18650セルは2社での生産となるが、プラグインハイブリッド車(PHV)や、電気自動車(BEV)用の20Ah級の生産は三洋電機のみで行っている。自動車メーカーは複数の選択肢を望んでおり、それに答えることができる」と答えた。

 パナソニックグループは、2018年の創業100周年に向けて、エレクトロニクスNo.1の「環境革新企業」を目指しており、三洋電機のエネルギー事業もそれに沿う形で進めるとした。

 また、現在蓄電モジュールには18650セルの特性を改良したものを使用しているが、これについても「環境対応自動車用のリチウムイオン電池の特性は大型蓄電用電池の要求特性とよく似ている。将来はこれを共通化したい」と言い、新たな技術開発を進めていくことで、両市場でのシェア獲得と、リチウムイオンバッテリーの普及促進を図っていく。

大型蓄電事業と環境対応車用電池事業の進捗状況。大型蓄電用モジュールはすでに発売済みで、環境対応車用の電池も5Ah級はすでに量産中。20Ah級についても2011年に量産開始予定加西工場の蓄電システムに使われている電池と、環境対応車用電池の比較。環境対応車用電池のほうが、厳しい状態での動作要求を満たしている両市場の要求が似ていることから、将来的には共通に使える電池を開発していくと言う

(編集部:谷川 潔)
2010年 11月 18日