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ツインリンクもてぎ、進化を続ける「ハローウッズの森」の体験会

3月1日にリニューアルしたコレクションホールの展示内容も公開

森の生命の循環をイメージした「森の木人(こびと)」について解説するハローウッズ 森のプロデューサー・崎野隆一郎氏
2013年3月3日開催

 栃木県芳賀郡茂木町にあるサーキット・ツインリンクもてぎで、3月3日の「ハローウッズシンポジウム2013」の開催に合わせ、ハローウッズの森を解説する体験会が行われた。

高台から見下ろしたハローウッズのクラブハウス周辺
一部を改装中のクラブハウス
森のガイドをしながらハローウッズの歴史についても語る崎野隆一郎プロデューサー

 今年でオープンから13年目となるハローウッズは、42ha(東京ドーム約9個分)という広大な敷地面積を持ち、四季に合わせて変更される年間約50種類という多彩な体験プログラムを展開する、ツインリンクもてぎの自然体験施設。

 ハローウッズの方向性を決める「森のプロデューサー」という立場を任された崎野隆一郎プロデューサーだが、最初にこの場所を訪れた2008年秋は荒れた状態だったという。そこで崎野プロデューサーは来場者と一緒になって森を手入れし、荒廃した里山に活力を取り戻させる「遊びと学びの場」としての基本コンセプトを提案。オープン以降も里山作りのワークショップによって参加者と協力し、試行錯誤を繰り返しながら現在の状態を作り上げている。

森の木には小鳥たちを呼び込むために数多くの巣箱を設置。しかし、最近はムササビが増え、ムササビが自分の身体に合わせて巣箱の入り口を広げてしまう光景が目に付くようになったとのこと。穴が大きくなった巣箱はヘビやカラスが入って来やすくなるので小鳥たちが使わなくなるのだ
ハローウッズ内の遊歩道には間伐材を粉砕して作ったウッドチップが敷き詰められ、長く歩いても足が疲れないよう工夫されている。斜面に置かれた木は小動物や昆虫の隠れ家になるよう用意されたもの
崎野プロデューサー自慢の「森のトイレ」。水洗式だが、流れた排泄物は地下で森に住む土壌菌が水と土と炭酸ガスに分解し、この水が流し水として使われる循環型のトイレとなっている。東日本大震災の揺れで土壁にひび割れが入ってしまったので、折を見てリニューアルさせる予定とのこと
クラブハウス前に設置された休憩所は屋根が葉っぱ型のデザインになっている
2008年から続けられている「どんぐりプロット調査」の現場。地面に落ちたどんぐりが、どの年に芽を出して枯れずに残っているのかを記録するため、色違いの旗を立てて可視化している。森全体で8カ所のプロットが設置されてデータを収集。集めたデータをパネルにして紹介している
地面に落ちても芽が出る前に虫や鳥に食べられてしまうこともしばしば
×が書かれている旗は枯れてしまったことを表している
森のふとした場所で参加者を出迎える「森の木人(こびと)」。おとぎ話の世界に迷い込んでしまったような不思議な雰囲気を感じさせる
森の木人や自然石を使った案内表示
ぱっと見は落とした下枝を1カ所にまとめて保管しているだけのようだが、これも立派なワークショップの成果。木や石などを積み重ねて生物が安心できる隠れ家を作り出している
何年か前の春、キャスト(ガイドスタッフ)の1人が桜の花が咲いているのを見つけたと報告を受けた崎野プロデューサー。どの木が咲いたのか確認すると「桜なんてみんな同じだから答えようがない」と聞き憤慨。それから敷地内すべての桜に番号が与えられ、生育状況や日々の出来事が記録されるようになったそうだ
萌芽更新(ほうがこうしん)した元の切り株について解説する崎野プロデューサー。月日の経過で切り株が変化していく様子を語っている
3月30日に“日本最長のジップライン”としてオープンする予定の「メガジップライン つばさ」。里山から国際レーシングコースを経由してクラブハウスまで戻る全長343mの空中体験。また、これまで「森の空中回廊 クラーネ」の名称で親しまれてきたハローウッズ内を巡るジップラインは、新たに「森のジップライン ムササビ」としてリニューアルする
ハローウッズの森には昆虫などの生態を紹介するパネルも用意されている
間伐材を加工した「丸太ストーブ」を紹介する崎野プロデューサー。丸太にチェーンソーで十字に切り込みを入れただけのシンプルな作りだが、森で作業しているときの防寒ややかんを置いてお湯を沸かすときに重宝すると言う
現在は間伐した木材の運搬にモノラックを使っているが、あまり使い勝手がよくないという崎野プロデューサーの嘆きを聞き、本田技術研究所で里山からふもとまで荷物を運ぶ機械を製作中との情報を得た。狭く傾斜のある場所でも活躍できるよう、アシモで培ったロボティクス技術を活用し、クローラーで自動的に動きまわる機械になるとのこと

来場者からのリクエストを展示方法に反映

 このほか、開館15周年を記念して3月1日にリニューアルしたばかりのホンダ コレクションホールの新しい展示内容も披露された。今回のリニューアルでは建物や展示車両のラインアップなどに大きな変更はないが、展示車両を前後からしっかり見学できるように通路を設定。あまり詳しい事前情報を知らない人でも楽しく分かりやすいよう解説パネルを設置するなど、来場者からのアンケートで寄せられた意見を反映してブラッシュアップしている。

 以下、展示内容を写真で紹介しよう。

●1階ホール

エントランスホールに大きな変更はなく、本田宗一郎氏の「夢」という文字が刻まれたクリスタルガラスのオブジェも健在
本田技研工業設立前に本田宗一郎氏が手がけた1924年式のカーチス号
上部からのアングルで見たエントランスホール
ホンダがF1で初優勝した記念すべきマシンであるホンダ・RA272の同型車と、マン島TTレースに初挑戦してメーカーチーム賞を受賞したホンダ・RC142という栄光のツーショット
ホンダ初の市販乗用車であるホンダ・S500、初代ホンダ・スーパーカブ C100、発動機のE300という3製品

●2階 4輪市販車/汎用製品

フロアの入り口に展示するジャンルが書かれている
4輪市販車フロア
1963年にホンダ初の量産市販4輪車としてデビューしたホンダ・T360。4気筒DOHCで30馬力を発生させたエンジンも並べて展示されている
T360に続いて発売されたホンダ・L700、ホンダ・TN360などを並べて展示
ホンダ・S500、ホンダ・S600クーペ、ホンダ・S800とSシリーズ3台が一堂に展示
個性的なスタイルで異彩を放つ1970年式のバモスホンダ
兄弟車となるライフピックアップとライフステップバンの2台
白い車両は独創的な空冷エンジンを採用するホンダ・1300クーペ。グレーの車両はマスキー法に適合したCVCCエンジン搭載の初代シビック
ルーフの一部といっしょに開閉する「ガルウイング型テールゲート」を持つ1985年式のホンダ・アコードエアロデッキ
1981年式のホンダ・シティ(赤)と1984年式のホンダ・シティカブリオレ(緑)。2台の間に置かれているのは、折りたたむとシティのトランクに収納できるというコンセプトで開発されたホンダ・モトコンポ
ボディー外板に樹脂パネルを使うなど徹底した軽量化策でも話題となったホンダ・バラードスポーツCR-X(赤)。MRレイアウトの軽自動車として誕生したビート(黄)など、軽さを武器にライバルに挑んだスポーツモデルたち
チャンピオンシップホワイトのボディーに赤バッジを装着する3台のタイプRを集めたファン納得の光景
トラクターや耕耘機、汎用エンジンなどのエンジンを使った汎用製品もフロアの一角に展示

●3階 4輪レース車

日の丸カラーでボディーを彩るホンダ第1期F1参戦時代のマシンたち
1965年のシーズン最終戦で優勝し、ホンダにF1初優勝をもたらしたホンダ・RA272。この年で最後となった1500ccF1エンジンも間近で見学できる
1964年に日本メーカーとして初めてF1に挑んだホンダ・RA271。奥側のマシンはRA271の開発で参考にするためホンダが手に入れたクーパー・T53クライマックス
3台ともホンダがエンジン供給したF2マシン。右からブラバム・ホンダ BT18、マーチ・ホンダ812、ラルト・ホンダRH-6-84
ホンダ第2期F1参戦の最後のマシンとなったマクラーレン・ホンダMP4/7A。搭載された3500ccのV12エンジンも展示中
ホンダ第3期F1参戦で使用された4台のF1マシン。レース車両のボディーに地球を描く「アースカラー」は斬新なアイディア
1996年のインディカー・ワールドシリーズで3冠を達成したレイナード・96Iホンダ
現在はフォーミュラマシンの展示が中心となっているが、一角には全日本GT選手権時代のNSXやJTCCといった国内レースで活躍したレース車両も展示されている
左右のフロアを繋ぐ踊り場は企画展エリアとして設定。2階では4月30日まで全日本ロードレース選手権のマシン、3階では5月10日までトライアル世界選手権のマシンが展示され、パネル展示などでレース内容が紹介されている

●2階 2輪市販車

2輪市販車フロア
庶民の移動手段として活躍した小型スクーターたち
ホンダの原点となった自転車用補助エンジン

●3階 2輪レース車

2輪車のレースマシン展示フロア
ホンダの技術力を世界にアピールした、赤いタンクに銀のカウルをまとうマシンたち
さまざまなレースシーンでの活躍を、車両展示とパネル解説で紹介している

●1階 先進技術展示

1986年の「E0」からスタートした自律2足歩行ロボットを一同に並べて展示。このフロアも前後から見学できるので、基盤やケーブルなど生々しいパーツの構成をしっかりチェックできる
腕も備えるようになった人間型ロボットも、スマートで小型化した最新のアシモまでにさまざまなステップを経て進化してきたことを見比べて実感できる
次世代環境車に向けて開発されたHONDA EV Plus(緑)とFCX(青)
2005年の東京モーターショーに出品されたFCXコンセプト

(佐久間 秀)