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【連載】西川善司の「NISSAN GT-R」ライフ
第17回:広角ミラーを組み込んで、ワイドな後方視界に
(2013/4/8 00:00)
後方視界を改善するための選択肢
2012年モデルのGT-Rに乗り換えて1年が経過した。
1年間乗ってみて、「こうなればいいなぁ」というような要望がいくつか思い浮かんできている。すべては本連載で紹介しきれないので、なんとか改善できそうなドアミラー(サイドミラー)について今回は取り上げてみたいと思う。
見切りがあまりよろしくないGT-Rのドアミラー
GT-Rのドアミラーはそれなりにサイズが大きいのだが、その割にはあまり後方視野が広くない。また、GT-Rはスポーツカーの割には車高が高いせいもあり(全高1370mm)、ドアミラーの位置が高い。なのでミラー視界の後方下部方面はあまりよく見えないのだ。
後方下部が見えないと何が困るかというと、駐車時などの後退時。平地の白線枠に駐車する程度ならはみ出るか斜めになる程度のミスですむが、縁石に寄せて駐車する際や、トレー式の機械型駐車場に停める際には、ボディーをこすってしまう危険性が出てくる。
GT-Rのミラーは電動式角度調整機構が備わっているので、後方下部を見たいときにその都度角度調整をすることもできるのだが、その調整自体に時間が掛かるし、さらに元の状態に再調整するのにも時間が掛かる。
後退ギアに入れるのと連動してミラーを下げる装置「バック連動ミラーコントロールキット」(http://cepinc.jp/chumon/mart/dis.cgi?mode=pro&dis=mrr10)というものもあるようだが、筆者は「視界の広いドアミラーに交換する」という考えに行き着いた次第である。
今回の話題は、GT-Rに限らずどのクルマの広角ミラー交換にも応用できるはずなので、参考にしてもらえれば幸いだ。
広角ミラー、どれにする?
GT-Rに適合する車検対応の広角ドアミラーは幾つかのメーカーから出ている。
Googleで検索すると上位に出てくるのはnextstage JAPAN製「次世代ブルーワイドミラー」(http://www.geocities.co.jp/MotorCity-Pit/9010/)、アウトバーン製「広角ドレスアップサイドミラー」(http://www.autbahn.com/product.html)あたりだ。
アフターパーツのこうした広角ドアミラーは、多くのものが純正品に両面テープで貼り付けるタイプのモノで、手軽は手軽なのだが、GT-Rの場合はこの手軽さに甘んじることが難しい。
というのも、GT-Rのドアミラーには曇り防止用のヒーターが内蔵されており、純正ミラーに両面テープを貼り付ける方式だと、このヒーター機構が役に立たなくなってしまう。ということで、ミラーヒーターを移植しつつ広角ミラーに交換できないものかと思っていたところ、前出の「次世代ブルーワイドミラー」がヒーター移植に対応しているという情報をキャッチ。そちらを選択することにしたのであった。
ただし、「次世代ブルーワイドミラー」で購入できるのはミラー(鏡)の部分だけなので、ヒーターの移植から組み入れまで自分で行わなければならない。
しかし、「次世代ブルーワイドミラー」には細かな装着の手引きが写真入りで解説されている(http://www.geocities.jp/blue_wide_mirror/fit/step1.html)ので、やる気さえあればなんとかなりそうだ。なお、この「次世代ブルーワイドミラー」の購入は直販かYahoo!オークションへの製造元自身による出品を落札するかの2パターンがある。
GT-R用は両面テープで貼り付ける貼り付け方式が直販価格で1万2000円、ヒーター移植にまで対応した枠入れ方式が直販価格で2万1000円だ。なぜか枠入れ方式については、Yahoo!オークションを利用した方が1万6800円と安価になっているので、こちらを利用した方がお得だ。
次世代ブルーワイドミラーの視界を純正と比較してみる
購入すると小さな段ボールに新聞紙で包まれた製品が送られてくる。内容物はミラー2枚(左右分)とスポンジクッション付きの両面テープ片が4枚だけだ。とくに説明書の類はないので、作業時には公式サイトの取り付け手順解説ページ(http://www.geocities.jp/blue_wide_mirror/Install.html)を参考にして作業を進めていくことになる。
取り付け前に、どのくらい広角になるのかをまず確認してみた。純正ミラーと購入した広角ミラーを並べて置いたときの状態をデジカメで撮影してみた。次世代ブルーワイドミラーの湾曲率は600Rとのことで、広角の秘密はここにあるようだ。
ドアミラーからミラー部を取り外す
実際の取り付けにあたって、まず作業しなければならないのはドアミラーのベースユニットをドアミラー本体から取り外すことだ。
ドアミラー本体を外す必要はなく、あくまで取り外すのはミラー(鏡)が組み付けられているユニット部だけだ。やり方としては、ドアミラーを調整ツマミで最高仰角(もっとも上向き)にして、下側に隙間を作り出し、ここからドライバーや指を突っ込んでガコンと取り外すことになる。しかし、これがとんでもなく硬い。壊したらいやだし、自分で外すのは無理……と思ったら、ディーラーやサービス工場に相談すればよいだろう。サクっと外してくれるはずだ。
ミラーユニットの固定フックを全て外せば、ミラーユニットはドアミラーから分離できるが、無理に引き離さないこと。というのも、ドアミラー本体からミラーユニットに向けて、ミラーを暖めるためのヒーターへの電源ケーブルが伸びているためだ。これは被せるようにしてはめるコネクタで接続されているだけなので簡単に抜けるはずだ。
取り外した運転席側のミラーユニット部の裏面を見ると、上部に引っ掛けフックがあり、左右と下にはめ込み式の爪があることが分かる。下の爪を外して、左右の爪を外して、下から上にめくるようにすると外せる。
西川善司の10分間ドアミラー・クッキング!?
ミラーユニットは、ミラーを支えているプラスチック(合成樹脂)製の台座パーツと、ミラーの本体からなっている。さらにミラー本体にはヒーターの役割を果たす熱線シートが貼り付けられている。
ここから台座パーツ、ミラー本体、熱線シートと3つに分離する作業を行うことになる。ここでまず、台座パーツとミラー本体がどのようにして一体化されているかを理解しておきたい。
ミラー本体は台座パーツのフレーム(枠)に囲まれるようにして組み入れられている。プラスチック自身の形状を維持しようとするテンションでミラーの外周を覆ってずれないようにしているわけだ。そして、台座パーツとミラーは粘着ゴムのブルタック(http://www.blutack.jp/)で貼り付けられている。これは車体からの振動で台座パーツ内のミラーを振動させないためと、脱落防止のための接着を兼ねている。
これら台座パーツとミラー本体の分離には、原始的な手段をとる。それは熱湯に浸すという行為だ。
電装パーツのミラーヒーターは防水加工がされているので熱湯に浸しても基本的には問題ない。ミラーユニット部はそこそこの大きさなので、筆者はフライパンを使い、そこにお湯を浸してミラーユニットを沈めた。キッチンで作業している姿はまさに料理でもしているかのような光景だ。水の温度は100度以上にならないが、フライパン自体がそれ以上に熱くなるのでミラーユニット部が溶けてしまう可能性がある。作業するには注意が必要だ。
熱湯に浸されて暖まった台座パーツ部分は軟質化する。触ってみると硬かったミラーを支えている枠部分が柔らかくなってきていることが分かるはずだ。そこに指や割り箸などを突っ込んでグイグイと外していく。
粘着ゴムが意外にしぶといので、少し外しては熱湯に入れて再び浸すという行為を繰り返すことになる。1個所から力を掛けずに同一辺の2個所からじんわりと力を掛けていくのがコツだった。
今度は、ミラー(鏡)に貼り付けられているヒーター、すなわち熱線シートを剥がしていく。この熱線シートは自身に粘着力がある両面テープ構造になっている。言ってみれば熱線シートのシール(ステッカー)みたいなものだ。
これを剥がすプロセスにおいてもやはり熱湯を使う。熱湯に浸し、少し剥がしては再び熱湯へ。
熱線シートはかなりしっかり貼り付けられているので、最初の「剥がし始め」が難しい。爪でひっかいてもなかなかつまめないので、筆者は模型制作用のデザインナイフを慎重に刺し入れる感じで、最初の「剥がし始め」の取っ掛りを作った。
この「剥がし始め」さえ作り出せてしまえば、あとはシールを剥がすのと変わらない。ただ、しつこいようだが「少し剥がしては熱湯に浸す」を繰り返しながら行いたい。
シートヒーターの移植作業
ここからが折り返し地点だ。
剥がし切った熱線シートを、今度は次世代ワイドミラーに貼り付けていく。ただし、熱線シートは熱湯に浸して剥がしたことで粘着力が弱まっている。
そこで、次世代ブルーワイドミラーの販売元では、熱線シートの移植の際には両面テープを用いることと、両面テープを使うことでミラーと熱線シートの接着面が離れることで落ちた熱伝導性を補うために、アルミテープを組み合わせることを奨励している(http://www.geocities.co.jp/MotorCity-Pit/9010/fit/almi/almi.html)。
本稿でも、この奨励事項を実践してみることにした。まず両面テープだが、透明素材のモノが奨励されているので、筆者は3Mスコッチ製超強力両面テープ・透明素材用・19mm「KTD19」を選択した。19mm幅だと熱線シートの2枚の貼り付けに約2mほど使ったので、長さは2m以上の容量のものを選択したい。
アルミテープはホームセンターで販売されているものを選択。幅は適当で構わず、筆者の場合は5cm幅のものを使用した。
このほか、アルミテープを貼り付けた際に、熱線シートの電極がアルミテープの電導性でショートしないようカバーするための絶縁用のビニールテープが必要になる。これは電極を覆うだけで数cmしか使わない。ビニールテープの張り方は、電極を覆えれば適当で構わないだろう。
熱線シートの電極をビニールテープで覆ったら、その面(熱線シートの粘着面)に対してアルミテープを貼り付けていく。次世代ブルーワイドミラーの販売元によれば、アルミテープは熱伝導を確実なものにするためと、密閉性を上げるために、ヘリを若干重ねるようにして貼り付けるのがコツとしている。
アルミテープは、熱線シートを完全に覆うくらいの大きめにカットして貼り付けていく。全面に対して貼り付けが終わったら、熱線シートの外形からはみ出た余剰分をハサミでカットする。
続いて、アルミテープを貼り付けた面に対して、同じ要領で透明両面テープを貼り付けていく。繰り返しになるが、筆者が購入した両面テープは接着面の保護フィルムが緑色なので緑色に見えるが、保護フィルムを剥がすと透明になる。
なお、筆者のケースでは両面テープはある程度厚みがあったので重ね貼りはせずに、敷き詰める感じで貼り付けている。余剰分をカットするのはアルミテープの時と同じだ。
両面テープの接着面の保護フィルムを剥がし、実際に購入した次世代ブルーワイドミラーの裏面側に「両面テープ付き+アルミテープ付き+熱線シート」を貼り付ける。これで熱線シートの移植は完成だ。
広角ミラーを台座パーツら組み入れる
ここからは、ドアミラーを元の状態に戻していくプロセスに移る。
ミラーヒータの移植を完了した次世代ワイドミラーを、台座パーツへと組み付けていくのだが、この頃にはすっかり冷え切ってしまい硬化しているはず。なので、再び台座パーツを熱湯につけて軟質化させて台座パーツに組み入れる。
その際には、台座側に次世代ブルーワイドミラーの商品セットに付属するスポンジクッション付きの両面テープ片を台座に貼り付けてもよいし、純正状態で付いてきた粘着ゴムを再利用してもよいだろう。
台座パーツに次世代ブルーワイドミラーを組み入れるときはかなり慎重に行う必要がある。
というのも、純正ミラーは結構厚みがあってしっかりしていたが、次世代ブルーワイドミラーはやや薄く、湾曲していることもあって応力が掛かって割れる危険性がある。コツとしては中央はなるべく押さないようにして、ヘリを2点支持のような感じで押し込んでいくとよいだろう。硬いと思ったら、すぐ熱湯に入れることを意識したい。
車体に組み上げた広角ミラーを戻す
最後に残されているのが、すべての作業が完了したミラーユニットをドアミラー本体に戻す作業だ。
これは外す時と比べたら簡単。ミラーユニットを上部を下から差し込むようにして引っ掛けて、その後はひたすら押すだけ。写真を見ても分かるように、引っ掛けるフック部は上部に2個所、はめ込む爪部分は左右と下に2個所ずつ、合計6個所あるので、ここをあらかじめドライヤーや熱湯で暖めて軟質化させたり、あるいはシリコンスプレーなどの潤滑材を吹き付けて滑りやすくさせておくとよいだろう。
なお、ドアミラー本体に戻す際には、ミラーヒーター(熱線シート)の電極の接続をし忘れないようにしたい。
また、ドアミラー本体にミラーユニットを押し込む際にも、ミラー自体は押さずに台座パーツのフレームの方に力を入れること。ミラーに力を掛けると割れてしまう可能性が高いためだ。
ちなみに一連の工程の作業中、万が一割ってしまった場合はどうすればよいのか。
次世代ブルーワイドミラーの公式サイトには記載されていないので問い合わせたところ、補修部品扱いで2枚セット時の標準価格の62.5%+送料で1枚単位の購入が行えるとの返答があった。万が一の時には相談してみてほしい。
縦方向に視野が広い鏡像特性はGT-Rとの相性がいいかも?
実際に映っている鏡像について調べてみたところ、中央部と外周部では多少の差はあるが次世代ブルーワイドミラーの方が純正ミラーに対して縦横に40%ほど広角になっていることが分かった。意外なことに縦方向にもちゃんとワイドな鏡像特性が与えられているのだ。これは下方向の見切りがよろしくなかったGT-Rにとってはありがたい特性だ。
ちなみに単純計算すると、面積比にして次世代ブルーワイドミラーの方が純正ミラーに対して2倍近く見える範囲が広がるということになる。逆に言うと、ミラーの大きさ自体は変わらないので、純正状態で見えていたモノの大きさが、(面積比で)すべて約50%程度の大きさまで萎んで小さく見えるということになる。
ミラー位置とカメラの位置と角度を固定して、純正ミラーと次世代ブルーワイドミラーの見え方を比較してみたのが下の写真だ。
確かに視界はかなり広く、純正ミラーと違って映り込んでいるものの大きさがかなり小さく見える。純正ミラーに慣れていた筆者は、しばらく距離感をつかむのに戸惑ってしまった。
実際に運転席に座ってミラーの角度合わせも行ってみた。まずは左右角度から。
ミラーの角度調整角度がニュートラル中央位置付近では、意外にも自車のボディーがけっこう広く映り込む印象なので、必然的に調整角は外向き強めへと調整したくなる。
GT-Rのドアミラーはドアミラー本体側の額縁がけっこうせり出していることもあって、あまり外向きに角度を設定すると、次世代ブルーワイドミラーの広角特性がたたって今度はこの額縁が映り込んでくるようになる。ただ、その額縁の映り込み分を差し引いても、当然ニュートラル状態よりは背後の情景をより広角に映してくれる。
続いて上下角度だが、筆者はニュートラル状態ではかなり空が広く映っているという印象を持った。前述したように次世代ブルーワイドミラーは、かなり縦方向にも視界が広がるので、このような見え方にも納得がいく。
しかし、自動車は地面を走っている乗り物なので、ミラー視界の上部に空を映しておくのは無駄だ。よほど急坂を走っているときにしか後方車がミラー視界上部にくることはないので、常識的な範囲で下向きに調整すればよいだろう。
実際に、上部視界をそれなりに確保しつつ下向きに強めに調整したところ、ちょっと首を伸ばせば後輪フェンダーの最後部くらいまでが見えるまでになった。純正ミラーでは下方向の視界がわるかったGT-Rにとっては劇的な改善と言える。
実際に駐車場に停めたときの、運転席からの筆者の視界を再現したものが下の写真になる。
なお、これはミラー角度をとくに下向きにしたわけではなく、常用角度状態の視界なのだが、地面上の駐車枠がしっかりと見えているのが分かる。純正ミラーでは、常識的な後方視界が得られる常用角度状態ではここまでは見えなかったので、これはちょっとした感動体験であった。
今回の次世代ブルーワイドミラー交換は、ほぼ満足した結果が得られたのだが、実はよいことばかりではなかった。
改善の余地ありと感じたのは、「ブルー」ミラーゆえの得られる鏡像が暗くなるという点だ。
視界が青く映ると言うことは、鏡像の緑成分と赤成分をカットしてしまった鏡像を見ていることになる。ブルーミラーと言っても実際には多少の赤味や緑っぽい色あいは見えるので、きっちりと鏡像の光量が1/3に落ちているわけではないのだが、実際問題として暗いのは暗い。
この次世代ブルーワイドミラー装着後、街乗り時にちょっと怖かったのは、夜、街灯のない場所で後退からの駐車だ。
GT-Rのリアコンビランプとバックランプ(後退灯)の光は側面方向にほとんど飛ばない設計なので、夜の暗所での後退はもともと苦手な行動ではある。しかし、純正ミラーではそれでもなんとか見えなくはなかったのだ。次世代ブルーワイドミラーだとこれがほとんど見えなくなってしまう。
昼間は問題なかったし、青いドアミラーはファッションアイテムとしてもオシャレだと思う。また、「暗く見える」ということは渋滞や停車時に感じる後続車からの眩しいヘッドライトの光が低減されるという副次メリットもある。しかし、夜に運転する機会が多い人は「鏡像が暗くなる」というこの製品の特性には留意しておくべきだろう。
ちなみに、次世代ブルーワイドミラーの販売元に問い合わせたところ、ブルーのモデルしか販売していないとのことだった。また、後加工でこのブルーに見えるマテリアルを除去することもできないと言う。製品名に「ブルー」を訴求しているので仕方ないのかもしれないが……。なお、アウトバーン製「広角ドレスアップサイドミラー」には、通常のミラー、すなわちシルバー色の設定があるようだ。
というわけで、少々長くなってしまった今回はここまで。次回は事故状況記録以外の目的にも幅広くドライブレコーダーを活用する事例を紹介したいと思う。
西川善司
テクニカルジャーナリスト。元電機メーカー系ソフトウェアエンジニア。最近ではグラフィックスプロセッサやゲームグラフィックス、映像機器などに関連した記事を執筆。スポーツクーペ好きで運転免許取得後、ドアが3枚以上の車を所有したことがない。以前の愛車は10年間乗った最終6型RX-7(GF-FD3S)。AV Watchでは「西川善司の大画面☆マニア」、GAME Watchでは「西川善司の3Dゲームファンのためのグラフィック講座」を連載中。ブログはこちら(http://www.z-z-z.jp/BLOG/)。