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【Honda F1復活祭】元F1ドライバー ジャン・アレジ氏、デイモン・ヒル氏のスペシャルトークショー

セナとの名勝負、1990年アメリカGPをアレジ氏がリードできた理由とは?

2015年3月7日~8日開催

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 鈴鹿サーキット(三重県鈴鹿市)は、3月7日~8日の2日間に渡り「モータースポーツファン感謝デー 2015」を開催した。別記事でも紹介しているとおり、第2期ホンダF1の象徴的存在であるマクラーレン・ホンダが実際に鈴鹿サーキットを走ったり、GPスクエアでは歴代のホンダF1のレーシングカーが展示されたりした。そうしたマクラーレン・ホンダのマシンを駆ったのは、日本で活躍している現代のホンダドライバーだけでなく、かつてF1で大活躍をしたジャン・アレジ氏(1995年のカナダGPの勝者)、デイモン・ヒル氏(F1 22勝を挙げ、1996年のドライバーズチャンピオン獲得)の2人もマクラーレン・ホンダをドライブし、往年の活躍を知るファンから大きな声援を受けた。

 そうしたアレジ氏、ヒル氏はモータージャーナリストの今宮純氏とのスペシャルゲスト プレミアムトークショーに登場し、両氏が活躍した時代の話しなどに大いに花を咲かせた。

1990年のアメリカGPのセナとのバトルで序盤リードできたのは、V8で燃料タンクが小さかったから

ジャン・アレジ氏(左)と今宮純氏(右)

──今クルマは何台お持ちなんですか?
アレジ氏:フェラーリを4台だよ!
今宮氏:日本車は持ってないの?
アレジ氏:持ってないよ、奥さんだけ(笑)
今宮氏:日本車、本当に持ってない?
アレジ氏:うん、実は1台持ってる、スズキのワゴンR(笑)

──アレジさんと言えばフェラーリ時代がすごく印象にありますが、フェラーリと他の違いはどんなところにありますか?
アレジ氏:当時のフェラーリはすごく細かいところにこってたんだ。例えばシートが革張りになってたりとか(笑)。他のチームと比較したらすごく豪華だったよ。
今宮氏:やっぱりフェラーリはそういうところが違いますよね。例えば、今回サーキットを走っているマクラーレン・ホンダとかを見ると普通のシートですからね。フェラーリをご購入された方の料金の何百分の一がアレジさんのシートの代金になってたんですね(笑)
アレジ氏:レーシング部門と生産者部門は常に情報を交換しているんだけど、レーシング部門はコストよりも、ドライバーをいかに快適にするかを優先して設計してくれていたんだ。
今宮氏:だからみんなフェラーリドライバーになりたいんですよね、ドライバーならそういう夢がある。実際ドリンクメーカーのチームに乗ってたドイツのドライバーさんがその夢を叶えましたよね、最近(笑)
アレジ氏:マラネロに初めて行ったときのことは今でも忘れない、そのファクトリー全体が博物館のようなモノだしね、その一員になるというはドライバーに全員にとっての夢だよ。

──アレジさんといえば、さまざまなレースがありますけど、特にデビューレースで4位というのはすごい。
アレジ氏:F3000でエディージョーダンレーシングで走ってて、1989年のフランスGPの前の週に、当時ティレルのドライバーだったミケーレ・アルボレートがチームオーナーと喧嘩をして、次のレースには別のドライバーにという話になった。そこで私にオファーが来て、このチャンスを逃しちゃいけないと思って、テストもないけど、ぶっつけ本番で走ることにしたんだ。その結果4位を獲得できて、その年の残りのレースと次の年の契約を獲得できたんだ。
今宮氏:アレジさんのレースと言えば、1990年のアメリカGPも印象的ですよね、アイルトン・セナ選手とのバトルは、隣で実況していた古館一郎さんがものすごく興奮しておられました。
アレジ氏:あのレースのことはよく覚えているよ。予選は5位だったんだけど、スタートが決まって1コーナーでトップに立ったんだ。僕はV8エンジンを搭載していてガソリンタンクの容量が、V10を搭載したアイルトンよりも小さくて序盤は有利だったんだ。30ラップぐらいをリードしていたけど、そのまま勝てるとは思っていなかった。結局抜かれてしまったんだけど、もう一度僕も追い越そうとしてアイルトンといいバトルが2周ぐらいできた。もちろん勝てるなんて思っていなかったけど、ここでいかなきゃダメだって思っていたよ。
今宮氏:アイルトンはなんか言ってましたか?
アレジ氏:アイルトンはすごくビックリしていたよ。スタート時点では僕の方が後ろだったし、レース後にはアイルトンからクルマのことを教えて欲しいとか、根掘り葉掘り聞かれたよ(笑)
今宮氏:今日その時のクルマに乗るんですよね?
アレジ氏:そう、今日乗る車があの時僕を追い越したクルマだよ。

──ほかに何か聞いておくことはありますか?
今宮氏:アレジさんは、ミハエル・シューマッハと仲がいいと聞いてますが、ミハエルの現状について何か情報をお持ちですか?
アレジ氏:僕もみんなと同じことしか知らないんだ。でも一番最悪の時期は過ぎたので、これから長いリカバリープロセスに向かうことになるんじゃないかな。
今宮氏:今年からFIA-F4にステップアップする、ミハエルの息子さん(ミック・シューマッハ)を面倒を見られているとか……。
アレジ氏:そうなんだ、去年ミックと僕の息子のジュリアーノは同じレースを走っていて、両者とも昨年末にF4のテストをしたんだ。その結果、ミックはドイツのF4を、ジュリアーノはフランスのF4を走る予定だよ。
今宮氏:最後にコストのワールドチャンピオンの予想をお願いします。
アレジ氏:選手権が始まる前の予想はいつでも難しいけど、やはりメルセデスの2人のどらかがチャンピオンになるだろうね。
今宮氏:マクラーレン・ホンダはどうでしょうか?
アレジ氏:時間はかかると思うよ。でもホンダはレーシングの世界ではトップパフォーマンスと同義だから、マクラーレンとホンダの組み合わせには高い可能性がある。今の状況はシンプルで、去年の最初のテストではルノーやフェラーリ、さらに言えばメルセデスさえ、まともにラップを走らせることさえ難しかった。ホンダも同様で、時間が必要ということだね。でもいつかはトップに戻ってくると予想しているよ。

タイムマシンがあって若返ることができて今のF1に参戦するなら、走りたいのは鈴鹿

デーモン・ヒル氏(左)と今宮純氏(右)

今宮氏:ヒルさんと言えば、昔バイク便のアルバイトされていたんですよね?ヒル氏:よくご存じですね、そうです。若い頃そうしたアルバイトをしていました。
今宮氏:その当時私の友人がイギリスのリコーで働いていたんですが、ヒルさんのバイク便で荷物を運んでもらったといってました(笑)。しかもその後、ヒルさんスポンサーになってくれと売り込みに来られたと。
ヒル氏:そうなんだよ、最初リコーという会社は知らなかったけど、世界的な大企業と知って、F3とかフォーミュラフォードの時代だったと思うけど、スポンサーになってもらったよ。それだけでなく、日本の会社といえば、オリンパスさんにもスポンサーしてもらったし、ウィリアムズ・ルノー時代には、ソニック・ザ・ヘッジホッグのキャラクターでセガさんにもスポンサーしてもらったよ。
今宮氏:ヒルさんというとウィリアムズの印象が強いですけど、最後の勝利ははジョーダン・無限ホンダ時代に記録したものですものね
ヒル氏:そうなんだ、エンジンメーカーのヤマハ、無限ホンダともお付き合いしたし、ブリヂストンとの付き合いも忘れられないね。

──明日からメルボルンへ行かれると聞いています、今シーズンの予想をお願いします。
ヒル氏:今シーズンも非常に楽しいシーズンになると考えているよ。去年はメルセデスが非常に強かったけど、ウィリアムズ、フェラーリが追い上げているし、レッドブルにもチャンスがあると考えている。そうした中でメルセデスには大きなプレッシャーがかかっている。

──今シーズン注目のドライバーは?
ヒル氏:マックス(マックス・フェルスタッペン)は非常に興味深いよね、そのチームメイトのカルロス(カルロス・サインツ・ジュニア)も。また、ダニール・クビアトが加入した、レッドブルも面白い存在だね。あとはベッテルが新加入したフェラーリでどんな仕事をするのか、それが楽しみだね。
今宮氏:マクラーレンホンダがどんな仕事をするのかそれが楽しみです。マクラーレンは例年メルボルンでいい結果を出す傾向があるので、僕等が思っている以上の結果を見せてくるのではないかなと期待しています。またフェラーリがどれだけの上昇カーブに乗ってくるのかにも注目していきたい。

──もしヒルさんがF1に復帰するというニュースが流れたら、どこのサーキットを走りたいですか?
ヒル氏:僕はもう歳だから、そんなニュースが流れても本当だと思わないでね(笑)。もしタムマシンがあって若返ることができたらやっぱり鈴鹿だね。鈴鹿は本当に特別なサーキットで複雑で、複数の性格を持っていて注意深く走らないといけないからね。
今宮氏:お客様が見てもすごいと思わすモノがありますし、ドライバーにとっても難しいサーキット、その両方をカバーしているのがこの鈴鹿サーキットで、独特の雰囲気がありますよね。

(笠原一輝)