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自律型無人航空機の新会社「エアロセンス」、事業戦略説明会を開催

クラウドサービスを組み合わせた産業用ソリューションを2016年前半から提供開始

2015年8月24日発表

ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹氏(写真左)と、ZMP 代表取締役社長 兼 CEO エアロセンス 代表取締役社長 兼 CEO 谷口恒氏(写真右)

 エアロセンスは8月24日、自立型無人航空機とクラウドサービスを組み合わせた産業用ソリューションを2016年前半から提供していくことを発表した。同社はソニーモバイルコミュニケーションズ(出資比率50.005%)と、自動運転技術などの開発、応用、展開を行うZMP(出資比率49.995%)の合弁会社で、8月3日に設立された新会社だ。

ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹氏

 発表会では、ソニーモバイルコミュニケーションズ 代表取締役社長 兼 CEO 十時裕樹氏が登壇。合弁会社設立の経緯とソニーモバイルにとっての新事業の重要性について語った。

 まず、経緯についてはもともとソニーのR&Dでドローンを研究しているチームがあり、共同開発の打診を受けたことから2014年11月からソニーのチームがZMPに常駐。そこから共同研究、共同開発が本格的にスタートしたという。ZMPでは2015年3月からソニー製超高感度CMOSイメージセンサーを2つ搭載したステレオビジョンシステム「RoboVision2」の受注をスタートしているが、これも共同の成果だとした。また、ソニーにとってのジョイントベンチャーの意味は、スマートフォン中心のビジネスからの脱却を挙げた。つまり、今後大きな成長が望めない可能性があることから、新規事業への積極的な取り組みを経営方針として掲げており、今回のジョイントもその一環であるという。

 そうした中でエアロセンスへの期待として「ソリューションを求める企業に新たな付加価値を提供するのがエアロセンスの役割」とし、「ZMPの自動運転、ロボットにおける技術ノウハウ、産業ビジネスの経験が強み」であり、ソニーモバイルの持つカメラ、センシング技術、ネットワーク通信サービス、クラウドサービスの経験を融合することで、新たな価値を創り出すことができると強く期待していると述べた。最後に「エアロセンスはスタートしたばかりだが、事業の開始から今後の成長に向けて積極的にバックアップして支援していきたい」と締めくくった。

ZMP 代表取締役社長 兼 CEO エアロセンス 代表取締役社長 兼 CEO 谷口恒氏

 次いでZMP 代表取締役社長 兼 CEO エアロセンス 代表取締役社長 兼 CEO 谷口恒氏が登壇。ZMPはこれまで家庭用自立移動ロボット、自動車の自動運転を中心に開発、蓄積したロボット技術をコア技術としている。これらの技術はすべて陸上のものだが、エアロセンスにより「空へフィールドを広げ、陸上ではできなかった新たな価値を提供したい」と述べた。

 また、「エアロセンスはZMPとソニーモバイルコミュニケーションズ、両社のDNAが混ざった会社。それぞれ単独ではできない新たなチャレンジができる、素晴らしい会社にしていきたい」と今後の展開にも言及した。事業戦略については産業用UAVに共通なワークフローをプラットフォーム化して多方面に提供するとし、クラウドを使ったデータ解析により価値あるデータを提供できるほか、UAVの運用についてもフライトパスの生成から離着陸、撮影など一貫して自動化できる技術が同社の強みだと語った。

陸から空へと事業を広げていく
エアロセンス社概要
事業領域
事業戦略
エアロセンスの強み
ビジョン
会社ロゴ
エアロセンス 取締役 兼 CTO 佐部浩太郎氏。ソニーでは「AIBO」や「QRIO」といったロボット開発・商品化などを担当

 開発中の自立型UAVについては、エアロセンス 取締役 兼 CTO 佐部浩太郎氏が紹介を行った。まずマルチコプター型の「AS-MC01-P」については「全長50cmぐらい、重さ2.5~3kgぐらいの非常にコンパクトなUAVになっておりますが、非常にパワフルで、屋外で風速10mの強風の中でも安定して飛ぶことができる。基本機能としては上部に付いているGPSレシーバーを使って自律飛行を行うことが可能で、地図上の経路に合わせて自動で飛びます。また下に付いておりますカメラがソニーのレンズスタイルカメラ“DSC-QX30”を搭載しておりまして、非常に高画質な静止画像を撮ることができます。自動飛行にあわせて自動的に撮影することができます」と解説。

 さらに「フライトコントローラー以外にも高性能なCPUを搭載しておりまして、前方に付いているカメラ、下向きの小型カメラの情報をリアルタイムに処理することができます。これにより画像を使って自分の位置を把握して飛ぶといった用途に使うことができます」と、特長をアピールした。

エアロセンスが提供するソリューション
開発中のマルチコプター型UAVを披露
マルチコプター型UAVの特長
AS-MC01-P
クラウドによりデータ収集、解析、管理を行う
採石管理場での活用例
3Dモデルから土砂の量まで計算することが可能
資材置き場での活用例。定期的に飛ばすことで資材の増減までチェックできる
農業での活用例。生育状況の確認や収穫タイミングの判定などに利用可能
出資両社の技術アセットを活用
VTOL型UAVも開発中

 次に実際の運用方法について説明。自立型だと飛行経路の設定が面倒になるが、手元の操作端末で飛行する領域を選び、測定したい場所や高度を指定すると、機体の性能やイメージセンサーの性能に合ったフライトプランが生成されるという。それを機体に転送すれば、あとはUAVが自律飛行し、自動的に撮影を行ってくれる。飛行中は手元の操作端末で機体の現在位置、バッテリー残量などを確認できるものの「オペレーターは見守るだけで操作をする必要はない」という。撮影後のデータ処理もほぼ自動化されている。

 まず、操作端末に機体を近づけることで高速無線伝送技術「TransferJet」を使ってデータが転送され、操作端末からクラウドサーバーに自動的にアップロード。サーバー上ではユーザーアカウントごとにデータが管理され自由に閲覧可能となる。さらにデータがある程度収集されるとクラウド上でデータ解析が行われ、俯瞰地図や3Dモデルまで自動生成されるという。同時にフライトログもリアルタイムでクラウド上にアップロードされるため、現場で運用等のサポートに活用できると至れり尽くせり。UAVのオペレータはもちろん、データ処理を行うエンジニアも不要と、魅力はあるもののコスト面から手を出しづらかったという企業にはかなり魅力的なソリューションに映るはずだ。「このようなハードウェア、ソフトウェアを活用して実際の業務に活用していただきたいと思っている」とした。

マルチコプター型UAVを手にする谷口氏と佐部氏
ローターを4つ持つAS-MC01-P
上部にGPSアンテナを装備
ローター部。プロペラはカーボン製
モーターにはエアロセンスのロゴが入っている
下部に装着されるDSC-QX30
レンズ脇に付いている4角い物体がTransferJetのアンテナ。カメラ左右にあるのは無線LANと飛行データ転送用のアンテナ
VTOL型UAVの実験機となるAS-DT01-E
機体前部と主翼左右に計3個の姿勢制御用ファンが付く
2重反転プロペラを採用してメインローター。離陸時には下向き、飛行時は横向きになる
こちらはムービーで実際に飛行しているモデル。機体は発泡スチロール製
VTOL型UAVの共同開発を行っている神戸大学大学院 システム情報学研究科 システム科学専攻 助教 浦久保孝光氏
ティルトローター機の特長
ZMPとの共同研究を開始
神戸大学でのティルトローター型ドローン開発
機体と会社ロゴを担当した東京芸術大学 美術学部デザイン科 機能・設計研究室 教授 長濱雅彦氏
軍事用飛行機に見えない優しい形を目指してデザインしたという
植物の種やイルカの尾びれがモチーフ
デザインスケッチ
青い空や地球を空から俯瞰したイメージ。会社の頭文字の「A」、お尻のようなふくよかなイメージも持たせたという
富士重工業で無人機開発に携わった帝京大学 理工学部 航空宇宙工学科 教授 米田洋氏。今回も安定飛行を実現する制御に協力。「格好よくない飛行機はどうあがいても性能よく飛ぶことはない」との信念からデザイン面にも言及したという
三井化学 理事 新自動車材開発室長 平原彰男氏
「ポリメタック」で軽量化などに貢献
カーボンと金属材料を接着することでビス留めなどの工程、部品点数を減らし軽量化も実現。リアスポイラーとステー、カーボンルーフなどクルマにも使えそうな技術だ

(安田 剛)