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日産、人型ロボット「ペッパー」を「レディー・ファーストショップ」100店舗に導入

販売体制とブランドアピールを充実させた“攻めの体制作り”で国内販売を強化

2015年10月20日発表

記者発表会の席に登場した人型ロボット「ペッパー」(中央)を囲み、フォトセッションに応じる日産自動車の代表取締役副社長 チーフ コンペティティブ オフィサー 西川廣人氏(左)と専務執行役員 星野朝子氏(右)。不意にしゃべり始めたペッパーに笑顔を見せる

 日産自動車は10月20日、神奈川県横浜市にあるグローバル本社で国内事業の取り組みに関する記者発表会を実施。このなかで、ソフトバンクの人型ロボット「ペッパー(Pepper)」100台を、11月から全国の「レディー・ファーストショップ」100店舗に順次導入。その後も導入店舗を拡大し、来店者とのコミュニケーションに活用すると発表した。

 ソフトバンクが提供する「Pepper for Biz」のサービス開始に伴って導入がスタートするペッパーは、日産の販売店用に開発された専用アプリケーションを搭載。来店者の出迎えをはじめ、胸部に備えるタブレットを使った商品説明、子供向けのクイズといったエンターテインメントなどにより、居心地のよい店舗演出に貢献することになるという。

 発表会の最後のパートで会場に姿を現したペッパーは「こんにちは、ペッパーです。クルマに乗るときは関節を痛めないよう箱に入れてもらっているので、大きなクルマが好きですね~。どうぞよろしくお願いします。日産のお店でもっとお話ししましょう。待ってま~す」とコメント。それまで壇上で解説を行っていた日産自動車 専務執行役員の星野朝子氏は、ペッパーが「日産の新しいセールスマン」であると紹介し、ディーラーに足を運んだユーザーがサービスを受けているあいだや、商談中に連れられてきた子供たちとコミュニケーションすることで、より販売店に足を運んでもらえるようになることを狙っていることなどを解説した。

「お客さまにもっと気軽にお店に足を運んでいただきたい」との思いから、「レディー・ファーストショップ」100店舗を皮切りに日産販売店に導入されることになったペッパー
ペッパーは自己紹介のコメントに合わせ、コミカルなアクションを披露。胸部に備えるタブレットを使い、子供たちとクイズなどで遊んだりする予定とのこと
日産自動車 代表取締役副社長 チーフ コンペティティブ オフィサー 西川廣人氏

 このほかに発表会では、冒頭で日産自動車 代表取締役副社長 チーフ コンペティティブ オフィサーの西川廣人氏が挨拶。このなかで西川氏は「ご承知のように我々は『国内市場で明確な2番手になる』と言ってきましたが、現在は4番手、5番手といったあたりをうろうろとしています。2番手から5番手あたりまでは団子状態で、この団子から抜け出せないでいます」「みなさまからは、よく『日産自動車は日本市場を重視していないのではないか?』と言われますが、私はこの質問が出るということが、本来はポテンシャルがあるのにそれが発揮されていないという問いかけだと思っています。それに対しては、もちろんポテンシャルはあります。日本市場を重視していないのではなく、むしろ重視しているのですが、なかなか取り組みの成果が出てこないというのが正直な実態でございます」「今年度からは星野(朝子氏)が日本市場をリードするという役割になって、今は着実に、足早に進めているところです。今年度はとくに販売台数の強化と、『技術の日産』ということを売りにしたブランド強化に取り組んでいます」「一歩ずつ商品力強化していくことがポイントで、キーワードは『電動化』と『知能化』です」と語り、中期経営計画「日産パワー88」の実現に向けた販売戦略がそれほどはかばかしくない現状を認めつつ、新たな取り組みを進めている現状について解説。

 また、三菱自動車工業と協業を続けている軽自動車では、日産の「DAYZ」シリーズ、三菱自動車の「eK」シリーズで累計50万台を達成しており、10月16日に発表した新たな基本合意に基づいて、従来にも増して日産が持っている技術力、開発力を製品に生かし、競争力を高めていく狙いであることを紹介。さらに前出の「電動化」とも関連して、次期モデルの開発では軽自動車のEV(電気自動車)についても推進していくことを改めて解説している。

日産自動車 専務執行役員 星野朝子氏

 具体的な取り組み内容については、日産自動車 専務執行役員 星野朝子氏が紹介。スライドを使いながら解説した星野氏は、日産自動車における2つの大義として「ZERO Emission(地球の未来を守りたい)」「ZERO Fatality(人の未来を守りたい)」という“2つのZERO”を挙げ、この実現に向けて取り組んでいるのが西川氏が先に紹介した「電動化」と「知能化」であるとコメント。これにより日産のブランドを作り上げていきたいとした。

 実際の製品における取り組みでは、「電動化」でルノー・日産アライアンスとしてグローバルシェアの半数以上を売り上げ、東京モーターショーの開催後に市場投入する「リーフ」では280km(車内測定値)まで一充電走行距離を高める予定のEVを筆頭に、EVがまだ現実的ではない人にもEVで培った高い技術を反映したハイブリッドカーによって、日産ならではの価値を提供していきたいと解説。「知能化」では最終的な自動運転の市場投入を目標にしつつ、その要素技術である「自動ブレーキ」や「自動パーキング」などを先行して製品に採用。自動化による「人間よりも正しく速い判断」で事故を減らしていきたいと語った。

日産自動車の大義となる「2つのZERO」
EVと自動運転を技術の中核に「電動化」と「知能化」を推進
国内事業の戦略で柱となる「マーケティング」「商品」「セールス」
2010年から2015年6月までの期間に、ルノー・日産アライアンスとしてEVを25万台販売して世界シェアの半数以上を手にしている
これまでに重大な不具合を起こしたことのない信頼性の高いバッテリーは自慢の製品。発売4年目で電池の改善を行い、車両効率の改善と合わせて航続距離を280kmまで伸ばす
全国の都道府県別の急速充電器の設置数とリーフの販売台数のグラフ
2016年3月までに日産社内に2000基の急速充電器を設置する計画
2020年に向けた自動運転の実用化に向け、「自動ブレーキ」などの技術をラインアップモデルに先行投入。採用車種もさらに拡大していきたいと語る

 セールスでの取り組みでは、全国にあるディーラーの店頭で日産が持つ高い技術を体感できる「技術の日産体感キャンペーン」のスタートを予定。今年は大きく刷新した新型モデルはなかったが、来年は“ユニークなモデルの登場がある”とのことで、これに向けて今年に関しては販売ネットワークの再構築に注力。約2100店舗のうち80%にあたる約1700店舗で改装を行い、店内を明るくするなどの変更を実施している。

 プレゼンテーション後に行われた質疑応答では、西川氏の発言した「ポテンシャルはあるが発揮されていない」という問題をどのように改善していくのかという質問に対し、「日産自動車はこれまで、すでに日産車にお乗りいただいているお客さまに次も乗っていただく、業界用語では『基盤を守る』と言いますが、この守る守備率については非常に高いものでした。しかし、国内マーケットは成熟市場ですから、販売台数を伸ばすためには他メーカーに乗っている人に日産車に乗ってもらう。業界用語では『コンクエスト』と表現する、その攻めの姿勢が必要で、攻めるためには知ってもらうことが重要です。そのマーケティング部分の積み重ねが不足していた。守りはいいけど攻められなくて、守りも100%ではないので、徐々に取られていたと認識しています」と西川氏は回答。新しい商品が多数登場予定となっている2016年以降はこれまでとこの先に整えていく新しい体制で攻めの姿勢に転じていくとしている。

 また、自動運転の技術における他社との差別化については星野氏が答え、「将来的な内容については私はエンジニアではないので明確な技術についての回答はできませんが、会社としての方向性は『誰よりも早く』ということを宣言しています。少なくとも日本では誰よりも早く自動運転のクルマを出すことで、その感動でお客さまに日産自動車の技術の高さアピールし、おもしろさも伝えていきたいと思っています」とコメントしている。

11月、12月に計5車種で自動ブレーキの標準装備化を実施
「技術の日産」として日産ブランドの「顔づくり」を進めていく。一般ユーザーに対しては、日産の変革と姿勢をTV-CMなどをつうじてアピール
すべての従業員が信念を持って日産ブランドを伝えていくことが大切であると強調
セールスではユーザーが来店しやすい環境作りを行うハード面、「おもてなし」をテーマにしたスタッフのトレーニングによるソフト面で取り組んでいく
全国の80%の販売店で改装を実施
J.D.パワーによる調査で、セールス、サービスの両面で顧客満足度1位を獲得
「技術の日産体感キャンペーン」では、4種類の先進技術を気軽に体感できる
新しいブランド戦略を交えて中期経営計画「日産パワー88」達成を目指す

(編集部:佐久間 秀)