ニュース

フォルクスワーゲン、今後の取り組みについて説明する「信頼回復に向けた新プロジェクト」発表会

「安心してフォルクスワーゲンを楽しめるよう頑張ります」とティル・シェアCEO

2016年5月17日 開催

「信頼回復に向けた新プロジェクト」発表会に出席したフォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)のティル・シェア氏
会場に展示された5月17日発売の新型「ゴルフ」

 フォルクスワーゲン グループ ジャパンは5月17日、「信頼回復に向けた新プロジェクト」と銘打った発表会を都内で開催した。

 2015年9月に、独フォルクスワーゲンが北米で販売するディーゼルエンジン車でエンジン制御プログラムの不正があったことが発覚。以降、最高経営責任者(CEO)のマルティン・ヴィンターコルン氏が辞任し、ポルシェAGの会長を務めるマティアス・ミュラー氏が独フォルクスワーゲンのCEOに就任して車両開発部門の組織改革を行なうとともに、リコールなどの対策を実施している。

 4月に行なわれた2015年の年次決算会見では、ミュラーCEOがディーゼルエンジンに不正なソフトウェアを搭載したことに関して「最後の1台に至るまできちんと対応することが、もっとも重要な任務だと考えています」「本当に申し訳ないと思っています。これまでフォルクスワーゲンに信頼を寄せてきた多くの人々を落胆させてしまったことを、なにより残念に思います。我々は責任から逃れることはありません。また、信頼を回復するために、出来るだけのことを行なっていきたいと考えています」と謝罪の弁を述べている。

 この問題は日本へも波及し、問題発覚以降の販売台数は回復傾向にあるものの、依然として厳しい状況にあるという。そこで今回「信頼回復に向けた新プロジェクト」なる発表会が開催され、3月1日付けで同社代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)に就任したティル・シェア氏とマーケティング本部長である正本嘉宏氏から、フォルクスワーゲン グループ ジャパンとしての今後の取り組みについて説明が行なわれた。

お客様を真ん中に置くことは我々のブランドが回復するための大前提

ティル・シェアCEO

 ティル・シェアCEOが公の場に登場するのは今回が初めてであることから、まずは同氏の自己紹介が行なわれた。ティル・シェアCEOは、2003年にフォルクスワーゲン グループ イタリアへ入社以降、2008年にフォルクスワーゲン グループ香港でマネージングダイレクターを務め、2014年にはフォルクスワーゲン グループ チャイナの輸入部門およびブガッティ部門のマネージングダイレクターに就任するなど、アジアでの経験が豊富な人物。

 そのティル・シェアCEOからは、「私がアジアでの経験が豊富と聞いて心強いと思って下さる方もいるかもしれないが、一方で“こちらのアジア”と“あちらのアジア”の違いを理解していないと心配されている方がいるかもしれない。しかし安心してください。私は幼いころから何度も文化的な違いに直面してきているし、新しい国に対してとにかく心を開こうという思いがあり、常に“郷に入っては郷に従え”を心掛けている」と述べるとともに、「日本には以前より高い関心があった。今回就任するまで同じアジアにいたが、日本に実際に来てみるとヴィンテージカーを含め日本を走っている完璧なコンディションのクルマに驚いた。こういったことを観察するにつけ、クルマに対する深い愛情と世界でも最高の品質へのこだわりが日本で生まれることを理解した。日本にはよい国産ブランドが複数あるが、フォルクスワーゲンもこの国で60年以上の歴史がある。今日、日本ではフォルクスワーゲンの保有台数は65万台を超えており、この多数のドライバーおよび乗員の皆様が私たちの貴重な財産なのです。私どもからフォルクスワーゲンオーナーの皆様に可能な限りよいサービスを提供できるよう、お役に立つことが私のミッション」と、日本についての所感などについてコメント。

 また、「私たちは今、さまざまなチャレンジングな状況におり、また日本は世界でももっとも競争の厳しいマーケット。現時点の状況で、フォルクスワーゲングループは昨年9月以降直面しているエミッション案件によるイメージ上の影響だけでなく、競争が高まりつつある市場環境も含めて現時点を評価すべきかと思う。今日はマーケティングをよい方向に向ける弊社の試みを紹介したいと思う。フォルクスワーゲン グループ ジャパンは今、アクションを起こすことを決心している。私たちの最優先課題はお客様にとってより身近なブランドになることで、お客様を真ん中に置くことは我々のブランドが回復するための大前提と考えている。このことが新規のお客様の獲得を目指すために、そして数十年にわたってフォルクスワーゲンを選んでいただいているお客様への恩返しだと思っている」とし、今回新ブランドスローガン「Think People.」を掲げた背景について説明。

 フォルクスワーゲンでは、かつて1960年代に「Think small.」、2010年にエコな取り組みとして「Think Blue.」といったブランドスローガンを掲げており、今回のThink People.は「私たちが原点に戻ること、そしてピープルズブランドに戻るという全社的な取り組み」であるとして、同日発表された商品力を強化した「ポロ」「ゴルフ」「ゴルフ ヴァリアント」について触れ、「これらのモデルは安全が強化され、ポロではエントリーグレードを追加した。これにより多くの人がセグメントトップレベルの安全装備に手が届くようになり、これを当社では“民主化”と呼んでいる」「Think People.とは、商品をより皆様の手に届きやすくするための販売プログラムであり、製品を長期的に安心して使っていただけることを意味している。つまり、より多くの人にフォルクスワーゲンを知ってもらうという取り組み。より頻繁に、より早くお客様の声に耳を傾けるプログラムを導入することによって、お客様との接点を増やしながら強化していきたいと思っている。同時に、フォルクスワーゲン製品を所有されていないお客様にも当社の製品を体感いただける機会を増やしていきたい」と述べ、今週末となる5月21日~22日に東京 お台場の特設会場でカスタマーイベント「Volkswagen Day 2016」を開催することをアナウンスした。

 そして最後に「フォルクスワーゲンはさらにお客様に寄り添うことを肝に銘じている。安心してフォルクスワーゲンを楽しめるよう頑張ります」と、今後の抱負について語った。

ティル・シェアCEOの略歴
新ブランドスローガン「Think People.」

日本独自の取り組み「Think People.」

「Think People.」は5項目で構成
フォルクスワーゲン グループ ジャパン株式会社 マーケティング本部長 正本嘉宏氏

 次に登壇したマーケティング本部長である正本嘉宏氏からはThink People.における具体的な活動内容が紹介された。

 正本氏によれば、Think People.は日本独自の取り組みであることが紹介されるとともに、Think People.は「より魅力的な商品をお届けするために。」「VWをより気兼ねなく、お乗り頂くために。」「VWのある生活をさらに充実したものとするため、より安心してお乗り頂くために。」「VWをより身近に体験して頂き、確かな選択としてご納得頂くために。」「VWとオーナー様の絆を尊重し、さらに深めるために。」の5項目で構成されると説明した。

Think People.ではフォルクスワーゲンの原点に立ち返ってさまざまなアクションを実施

「より魅力的な商品をお届けするために。」では、同日発売された「ポロ」「ゴルフ」「ゴルフ ヴァリアント」というフォルクスワーゲンにとって柱となる3モデルの改良を実施したことを紹介。詳細は関連記事に詳しいが、ポロでは200万円を切るエントリーグレード「TSI トレンドライン」を設定するとともにシリーズ全体で快適装備を中心に仕様を変更したこと、ゴルフでは安全性と快適性をさらに強化するとともに、250万円を切るエントリーグレード「TSI トレンドライン」を設定したこと、ゴルフ ヴァリアントでは「TSI コンフォートライン」の装備を大幅に強化しつつ、294万9000円という300万円を切る価格設定としたことが説明された。

同日発売された「ポロ」「ゴルフ」「ゴルフ ヴァリアント」について

「VWをより気兼ねなく、お乗り頂くために。」では、1999年から展開している残価設定ローン「ソリューションズ」の拡充が図られ、ソリューションズ利用者にはバンパーとドアミラーの補償サービスが無償で付帯することがアナウンスされ、正本氏は「業界初の試みとなるこのサービスは、お客様の心理的な負担、経済的な負担を軽減し、より安心してお乗りいただくことができるプログラム」とアピールした。

「VWのある生活をさらに充実したものとするため、より安心してお乗り頂くために。」では、全車に標準付帯される「3年間・距離無制限の一般保証」「3年間・24時間体制のエマージェンシーアシスタンス(ロードアシスタンスサービス)」「24時間対応のカスタマーセンター」「12年間錆穴保証」「3年間塗装保証」「2年間部品保証」の6項目で構成されるアフターサービスプログラム「Volkswagen Care」におけるエマージェンシーアシスタンスについて、従来の「初年度登録から3年」を「5年」に延長することを発表。

残価設定ローン「ソリューションズ」利用者にはバンパーとドアミラーの補償サービスが無償で付帯されることに
アフターサービスプログラム「Volkswagen Care」では、4月以降の新車購入者を対象にエマージェンシーアシスタンスの「初年度登録から3年」を「5年」に延長する

 そのほか「VWをより身近に体験して頂き、確かな選択としてご納得頂くために。」では豊橋にある本社見学ツアーを実施(すでに4月22日~23日に第1回を開催。今後5月27日~28日、9月、10月に開催)することをはじめ、3週間という長期間試乗することが可能なロングモニター施策、技術体験イベント「Volkswagen Tech Day」などを実施し、これらを実際に体験した内容をユーザーがフォルクスワーゲンの公式サイト上でリポートするという取り組みについて説明されている。

 そして最後の「VWとオーナー様の絆を尊重し、さらに深めるために。」では、これまで一部販売店で実施していた販売店スタッフがエコドライブやメンテナンス、先進安全技術について分かりやすくレクチャーする「フォルクスワーゲン オーナーズ クリニック」を全国展開することなどが紹介されている。

本社見学ツアー
ロングモニター施策
さまざまなイベントを体験したユーザーがフォルクスワーゲンの公式サイト上でリポート
オーナーズボイス委員会を設置
フォルクスワーゲン オーナーズ クリニック
5月21日~22日に東京 お台場の特設会場でカスタマーイベント「Volkswagen Day 2016」を開催する

 正本氏は最後に、「昨年以降、ここ日本でも大変厳しい状況に置かれている。また、ドイツ本社によるディーゼル問題の徹底究明にも思いのほか時間がかかり、もう少しお時間をいただくことになってしまった。こういった状況のなか、フォルクスワーゲン グループ ジャパンとして一体何ができるのか、日本のお客様に対して何かできることはないのか。こういったことをグループ全体で改めて考えてきた。その結果、やはり日本独自で日本のお客様に向けて新たなことをやっていこう、1つひとつ着実に、そして1人ひとりのお客様の信頼を着実に回復していく。こういったことを地道にやっていくことしかないのではないかという結論に至り、このような新たなプログラムを紹介させていただいた。社長のシェアともども、フォルクスワーゲングループ全体として厳しい状況を新たな将来に向けてのステップとして、積極的・勢力的な活動とともにスタートしてまいりたい。日本のお客様にとって今まで以上に身近なフォルクスワーゲンになるために、Think People.活動を本格的に活動していく」と述べプレゼンテーションを締めくくった。

(編集部:小林 隆)