インプレッション

BMW「i3」+ニコ・ドライブ「ハンドコントロール」

 どうもアカザーっす! え? 俺のコト知らない? 週刊アスキーの「カオスだもんね!PLUS」っつー体験レポート漫画の編集を20年以上やってんだけどなぁ。まぁまぁ面白いので、1回ぐらい読んでみて! あと、最近では趣味の延長で、ドローンやラジコンやプラモの記事を書いたりしてます!

 で、今回はそのラジコン&ホビーつながりで、Car Watchのエライ人・谷川氏からご指名いただいちゃったワケです。芸は、いや趣味は身を助けるな~。なんてコトを実感しつつ、今この原稿を書いている次第です。

 実は俺には3つのデカイ夢がありまして。その1つがクルマのレビュアーだったんすよ! というのも、学生時代からクルマやバイクに乗ったりイジったりするのが大好きマンだった俺。そんな俺にとっては、いろんなクルマやバイクに乗りつつ、ライター稼業ができるカーレビュアーは最高な仕事に思えるワケっす!

アカザーっす(イラスト:水口幸広)

 けどアレですよ、16年前にスノーボードで脊髄をやっちまって、車いすユーザーになって、カーレビュアーへの夢はペンディング。とはいえ、最近では足が不自由な人でもクルマの運転ができる“手動運転装置”ってありがたいモノがあったりするんすよ! 俺もニッシン自動車工業(現在はミクニ ライフ&オート)の「APドライブ オーエックスバージョン」(現在は廃盤)を愛車に取り付けて、毎日足がわりとして運転しています。いや~、イイ時代になったもんすねぇ。本当にありがてぇ。

 この手動運転装置を使えば、クルマを機動力のある車いすとして使えるんで、行動範囲が格段に広がって最高に便利! けど、人間っつーのは欲が出る生き物のようで、いざクルマが運転できるとなると、足が動いていたころの夢だった「いろんなクルマを運転してぇ!」っつー欲求が出てきちゃったんすよねぇ。でも、手動運転装置は基本的に車種ごとに専用設計されたものをクルマに取り付けるので、ほかのクルマへの流用などは一切できない。それが唯一のネック!

 しかーし! 数年前に便利なモノが発売されましたよ、みなさん! なんと“たった5分で着脱が可能”という携帯型手動運転装置「SWORD(ソード)」(税別18万2000円)! コレの発売以降、車種を選ばす手動運転装置が取り付けられるという、俺得の時代が到来! もちろんソッコーで購入して、取材先でのレンタカーや帰省したときの実家のクルマに取り付けて使いまくりです。

愛車に装着された「APドライブ オーエックスバージョン」
こちらは携帯型の手動運転装置「SWORD」

 と、まぁ前置きが長くなっちゃいましたが、今回のBMW「i3」レビューのお話しをいただいたときも、このSWORDを使う気満々だったんすよ。けど、谷川さん曰く「今回は『ニコ・ドライブ』っていうメーカーの新型の携帯型手動運転装置があるんで、それを使ってBMW i3を運転してみてね~」とのこと。オイオイ。

 どうやら、半月ほど前の7月16日~17日に、東京 虎ノ門のBMW i ショールーム「BMW i Megacity Studio」で、この手動運転装置を使ったイベントが開催されたとのこと。むむむ、そんな楽しそうな俺得イベントをノーチェックだったとは! 迂闊だぞ>俺!

ニコ・ドライブの携帯型手動運転装置ってどんな感じ?

 そんなこんなで取材当日。やってきました虎ノ門のBMW i Megacity Studio。外観からしてめっちゃオシャレじゃないすか! もちろんバリアフリーなので、車いすでも大丈夫。ショールームに入って真正面には、未来型スーパーカーのBMW「i8」が! イカス!

オシャレな虎ノ門にあるオシャレな「BMW i Megacity Studio」。そしてショールーム内には未来型スーパーカーのBMW「i8」が!

 BMW i Megacity Studioは、2015年9月に世界で初めてオープンしたBMW iシリーズのブランド・ショールームで、i3とi8の2台が常時展示されている。天井に設置されたソーラーパネルで作った電力でi3の充電などを行なっている。

株式会社ニコ・ドライブ 代表取締役社長 神村浩平氏

 まずはi3を試乗する前に、ニコ・ドライブの携帯型手動運転装置「ハンドコントロール」をチェック! もちろん、ユーザー視点での厳しいチェックだぜ!

 ニコ・ドライブ 代表取締役社長の神村浩平氏は、高校生のときに事故にあって車いす生活になり、高校卒業後に自動車免許を取得しようとしたところ、足が不自由な障がい者が免許を取得するハードルの高さに驚いたという。

「教習所って、足の不自由な障がい者が運転できる教習車がないんですよ。なので、自分でクルマを購入して、それに手動運転装置を取り付けて教習所に置いてもらう必要があるんです」「さらに、助手席には同乗する教官用のブレーキも取り付けて下さいと言われました。免許を取得しようとすれば、いきなり200~300万円かかるわけです。そしてこの金銭的な負担は親御さんにかかります」。

 そんなに大変だったんすか! 俺は怪我で車いすになったときはすでにクルマの運転免許を持っていたんで、手動運転装置での運転方法と、車いすからクルマへの乗降方法をリハビリセンターで受講しただけで免許の書き換えが終了しちゃったので、それほどハードルが高いものだとは感じなかったすけどねぇ。そうか、免許を持ってなければ、かなりハードルが高いことなんすねぇ。

足が不自由な障がい者にとって免許取得のハードルの高さを知る神村氏

「なので、このニコ・ドライブの事業の目標は“障がい者がクルマを運転するハードルを下げること”なんです。固定式の運転装置についているウインカーやホーンボタンなどの装備は一切排除して安くすることに注力し、10万円という価格を実現しました! もちろん、助成金や補助金も適用できます」。

 確かに、10万円(税別)というのは手動装置の相場の約半分~3分の1ほどの値段ですもんね。助成金や補助金を利用すれば、ほぼ自己負担ナシで手に入れることができるかも!

「さらに、ハンドコントロールを全国の教習所に持ち込んで、教習車に取り付けて使用することを認可していただいています」。

それはこれから運転免許を取得する人には朗報っすね!

「また、敢えて着脱可能としたのも、着脱可能ならどんなクルマにも取り付けられるし、乗っているクルマを中古で下取りに出したときに、ちゃんと査定がつくというメリットがあるからです」

 そうです、そうです。俺も車いすになって最初に改造したクルマは新車で買ったんですが、手動運転装置を付けた瞬間に下取り査定がほぼ0円だということを知って愕然としましたよ。結局、そのクルマを10年以上使って乗り潰したあとは、中古車を乗り潰すというクルマの使い方にシフトしたんすけどね。

ハンドコントロールに込められた神村氏の熱い思いに迫るアカザー

「すでに固定式の手動運転装置でクルマを運転している人は、この下取り査定の問題で悩んでいることが多いですよね。これまで固定式を使っていた人に着脱式のハンドコントロールを使っていただいたところ『このシンプルな機能だけで十分だったのか』と驚かれました」。

 なんか、そんなふうに言われると凄く期待しちゃうんすけど。でも、俺はすでに着脱可能な携帯型手動運転装置のSWORDを持ってますからねぇ。しかも、10万円のハンドコントロールと比べて、SWORDは18万円もしましたからね。今日の試乗はかな~り厳しくいきますよ。グイグイいきますよ~!

ハンドコントロールをBMW i3に取り付けろ!

 というワケで、まずはハンドコントロールをi3に取り付ける作業。箱を開けるとこんな感じ。俺が持っているSWORDよりもひとまわりほど小さい感じ。重量もハンドコントロールは900gで、約2.5kgのSWORDより約1.5kgも軽いだと!? なんだよ、よさげじゃねぇかよ!

箱のなかに重量900gというハンドコントロールがコンパクトに折りたたまれて収められている

 まずは折りたたまれている状態から展開し、黒いブレーキロッドをメインパイプのなかに入れる。このあたりは組み立てる手間がないSWORDのほうがいいかも。けど、“携帯しての持ち運び”を考えるなら、バラしてコンパクトに収納できて、しかも軽いハンドコントロールに軍配が。

 クルマへの取り付けは、アクセルペダルとブレーキペダルをプレートで挟んで固定する方法。これはSWORDも同じ。だけど、SWORDが専用工具を使って4個の固定用ネジを回して取り付けるのに対し、ハンドコントロールは専用工具なしで8個の固定用ネジで取り付ける。

ハンドコントロールを組み立てるとこんな感じ
黒い2枚のプレートで挟み込むようにペダルに固定
初めてでも5分ほどで取り付け完了という手軽さもハンドコントロールの魅力。この状態から、あとは付属のストラップでステアリングコラムから吊り下げるだけ

 実際にやってみたところ、ハンドコントロールは初めてなのに5分ほどで取り付け完了。SWORDも慣れればという条件付きで5分ほどでの取り付けが可能だけど、ネジ頭が小さくて専用工具を使うっつー点で、ハンドコントロールよりも作業しにくい印象が……。

 最後に、ハンドコントロールは付属のストラップでステアリングコラムから吊り下げるように固定。一方のSWORDはそのままシートの上に置いて使うのでこの手間がない。ただし、吊り下げ式のハンドコントロールのほうが乗り降りしやすい感じ。ちなみに、どちらもオプションでハンドルノブ(旋回装置)を付けられるのですが、今回は装着せず。

 で、肝心の操作っすけど、ハンドコントロールとSWORDはともに、レバーを押してブレーキ、引いてアクセルというスタイル。このへんは、スタンダードな固定式手動運転装置も同じ方式。

オプションとして「ハンドルスピンナー」(1万800円)も用意されている。ステアリングコラムから右側に生えているのはシフトセレクター
ハンドコントロールの装着状態。押し込む力はそのままブレーキペダルに伝わり、引っぱってブレーキペダルが伸びきり動かなくなると、てこの原理で引く力をアクセルペダルを押す方向に変換する仕組み

 ただし、固定式手動装置やSWORDには、信号待ちで重宝する“ブレーキペダルを固定する機能”が付いています。しかし、ハンドコントロールにはこのへんの機能はないので、信号待ちなどの停車中はずーっと手動装置を押し込んでブレーキをかけておく必要が。地味だけど、このあたりは見逃せないポイントなんすよねぇ。

ハンドコントロールでBMW i3を運転。「回生ブレーキ」にカルチャーショック!

 5分ほどでハンドコントロールの取り付けも終わり、いざi3での体験ドライブに出発じゃあ! 後部座席にはBMW iシリーズの商品説明に特化したスタッフこと“BMW ジーニアス”にご同乗願い、i3についての補足説明を受けながらの試乗。俺のハンドリングに目をまわすなよ~、イツキみたいにさぁ(頭文字Dより)。

 しかし! i3で走り始めて早々に、いきなり高いハードルが俺を襲う! それはバックでS字を切っての路上エントリー! オイオイ、初めてのi3というか、初めてのEV、しかも初めて使う手動運転装置の初操作がコレかよ! マジかよ! もちろんマジでした。けっこうビビっていた俺の気持ちを察してか、ジーニアス氏が「ドライバー支援システム」の存在を教えてくれました。なにそれ!? そんなイイもんがあるんすか!

 さっそくドライバー支援システムをスイッチON。なんとコレにより、車両後方の障害物などを車内モニターで確認することが可能になった。オイオイ、バッチリじゃない! そもそも手動運転装置での運転って、右手はステアリング、左手はアクセル&ブレーキ操作用の手動運転装置のレバーを握っている必要があるんですよね~。なので、身体を大きくねじっての目視による後方確認はかなりやりにくいワケで、モニターで後方確認できるのはすごくありがたいんすよ。

 と、モニターで後方を確認つつステアリングを切って、ブレーキを戻してクリープ現象でじんわりと後退……。とか思っていたんすけど、あれ? 進まない?? EVのi3はクリープないんすか! クリープのないコーヒーはコーヒーじゃないって誰かが言ってましたよ! そうですかそうですか!

 ということで、左手でハンドコントロールのレバーをゆっくり引いてアクセルを効かせ、そろそろと路上までバック。フゥ~。なんとか最初の難関をクリア。路上に出た俺は、さっそくステアリングコラム右側に付いているシフトセレクターをDレンジに切り替え、ハンドコントロールのレバーをゆっくり引いて前進開始!

 げげっ!? 思ったよりも蹴り出しが強い! 駆動方式がRR(リアモーターリア駆動)なので“前に出る感じなんだろうなぁ”と予想していたとはいえ、モーターのトルク特性も手伝ってかこれは想像以上! あわててハンドコントロールのレバーを戻して減速。すると今度は想像以上のエンジンブレーキ(?)がかかり、クルマは前のめりにギクシャク。オイオイ、とんだジャジャ馬かよ!

「このi3は市街地ではほぼブレーキを踏む必要がないほど、強く回生ブレーキが効くような仕様になっています」。

 と、後部座席のジーニアスからのクールなコメント。もちろん、そのへんは俺も分かってたYo!! さらに、ドライブモードには「コンフォート」「エコプロ」「エコプロ・プラス」の3モードがあり、今選択しているコンフォートが一番パワーのあるモードとのこと。なので、不慣れな俺は一番パワーがないエコプロ・プラスにモードチェンジ! すると……、うおっ! アクセル操作に対するクルマの挙動がマイルドになった! これイイじゃないすか! エアコンが送風になることを除けばな! 車内が熱くなることを我慢すればな!

「エコプロ・プラスは一番バッテリー消費を抑えるモードなので、エアコンは送風になってしまいますが、満充電で160kmほどの走行が可能です」。

 なるほど、さすがジーニアスなアドバイスだぜ。だがしかし、今日は外気温が30℃を越える真夏日! なので、ここは謹んでエコプロにモードチェンジ! 一気に車内が涼しい風に包まれていく。そうそう、ドライビングで熱くなるのはハートだけで十分だぜ! っていうか身体は冷やしたいぜ!

 走ること数分。いくつか信号に引っかかりつつ学んだのは、「i3を走らせる操作のコツはアクセルの戻しかも?」ということ。つまり、それほどにi3の回生ブレーキは、ガソリン車のエンジンブレーキとは比較にならないほど効くってコトなんだよ! ていうか、数km走ってブレーキを使ったのが、信号での完全停車時のみっていうね。

「これがi3の特徴の1つである“ワンペダル・ドライビング”です。アクセルを戻すことでブレーキと同じ効果が得られるんですよ」。

 さすがジーニアス氏! 確かに、速度調整はハンドコントロールのレバーを引いて加速し、レバーを戻して減速できる。停車時以外はブレーキのためにハンドコントロールのレバーを押し込む動作はほとんど必要ないかも。とか思っていると、さらに後部座席から天才的アドバイスが。

赤信号などで減速して停車したら、すかさず電気式パーキングブレーキをスイッチON! 手だけで操作できるし超便利!

「停車時もi3の電気式パーキングブレーキのスイッチを引けば、手動運転装置のレバーを押し込む必要はないですよ。また、発進のときにはそのままアクセルを踏めば、自動でブレーキはリリースされます」。

 勘弁してよ~。凄すぎじゃないすかi3! こんなんじゃ“俺はオマエを愛スリー”って感じになっちゃうよ! と、さっそく電気式パーキングブレーキを使ってみる。するとこれが超便利! それ以降はアクセルとブレーキの操作時に、ハンドコントロールを動かすストロークは指1~2本ぶん、わずか数cmになった! 俺の持っているSWORDや固定式手動運転装置の場合、アクセルとブレーキの操作に15cmほどのストロークが必要なことを考えると、このストロークの少なさは画期的! かつ驚異的!

 これなら俺のような脊髄損傷者はもとより、腕の力が少ない頸椎損傷者でも楽に運転ができるかも! そういや、さっきニコ・ドライブの神村氏が「i3とハンドコントロールのような手動運転装置の相性は抜群なんです」と言っていたのはこういうことか~。

 今、それを実感したわーと、そんなことを考えて運転していると、i3は東京タワー横の長い下り坂に。さすがにここではブレーキの必要があるだろ? と思いきや、ここでも手動運転装置のレバーを戻すのみ。固定式手動運転装置を使ってガソリン車を運転する場合は、レバーを押し込んでブレーキを効かせ、そのレバーを手前に戻すことでブレーキをリリースしつつ、坂を下るのが一般的な操作方法。しかし、EVのi3ではその操作方法がまったくの逆! なんか変な感じ。

 具体的には、手前に引いたハンドコントロールのレバーを坂道の斜度に合わせて奥に戻すことで、i3の回生ブレーキの効きを調整するという感じ。うーん、普段、愛車レガシィで固定式手動運転装置の運転に慣れているせいか、まったく逆のこの操作にはちょっと違和感。このへんは、逆にガソリン車の運転経験がない人のほうが、すんなり受け入れられそうな気がするなぁ。いいかわるいかは別にして。

 と、回生ブレーキのことばかり取り上げたけど、i3の運転でもっとも気持ちイイのはズバリ加速! レバーを指1本ぶん引くだけで、リアタイヤが地面を蹴って加速していくさまは、まさにRRのソレ(まぁ、俺のRR経験は怪我をした16年以上前に、友達所有の中古のポルシェを運転した1回だけだけどな!)。モーターのリニアなパワー出力による、段つきのない加速は本当にキモチイイ! たぶんニヤニヤ運転していた俺の心情を察してか、後部座席のジーニアスは……。

「出足の加速だけなら、i3は400PS以上ある『M3』と同等か、もしくは速いくらいなんです」。

 え! 最高出力が170PSのi3が400PS以上あるBMWのスポーツモデルであるM3よりも速いって!? なんじゃ~それ! そんなパワフルなんすか! でも、1260kgのカーボンコンポジット軽量ボディに、トラクションがかかりやすいRR駆動、それにモーターの最大トルクが25.5kgm/100-4800rpmだとありえるかも!? うん、このスペックだけ見ると十分にスポーツカーだもんなぁ。

「さらにi3のカーボンコンポジットは、軽さと剛性の高さに加えてしなやかさも合わせ持っています。なので、専用設計のタイヤとあいまって乗り心地もいいんですよ」。

 確かに。言われるまで気がつかなかったけど、不快な突き上げなんかをぜんぜん感じなかったかも! 以後、それを気にしつつ運転してみると、ただでさえ無音に近いEVなので静粛性も抜群なことに気付く。ヤベー! 静かだよ!

「しかも、フロントにエンジンがないのでタイヤの切れ角も大きく、こういった都市部の狭い道などでは運転しやすいんです」。

 あー、なるほど。これも言われて納得。確かに「ノーズの見切りがすこぶるいいから路上駐車しているクルマをかわすのが楽だなぁ」とか思っていたんですが、タイヤ切れ角の大きさもその要因の1つだったんすねぇ。

 最後はそのタイヤ切れ角の大きさを生かし、BMW i Megacity Studio裏手の駐車場にピッタリと停止。これにて手動運転装置のハンドコントロールを使用したi3のワクテカドライブは終了。

ハンドコントロール&i3試乗レビューまとめ

 今回のドライブで特に強く感じたことは以下の2点。

1:ハンドコントロールは手動運転装置として必要十分な性能。
2:手動運転装置とBMW i3の親和性は高い。

 これまでは、足が不自由な人がクルマを運転しようとすると、自分のクルマを工場に持ち込んで改造をする必要があったが、取り外し可能な携帯型手動運転装置であるハンドコントロールを使えば、わずか5分ほどで、ほとんどのクルマを手だけで運転することが可能になる。しかも、かかる費用は10万円ほど。さらに、テコの原理を最大限に使用した仕組みなので、少ない力での操作も可能になっている。

 ただし、ハンドコントロールはシンプルな構造だけに、固定式手動運転装置に付いているブレーキロック機能などはなく、信号待ちなどではレバーをずっと押し込んでブレーキをかけ続ける必要がある。しかし、この点は電子制御デバイスが搭載されたi3のようなクルマと組み合わせることで、欠点を十分に補うことが可能。特にi3のアクセルを緩めるだけでブレーキがかかる“ワンペダル・ドライビング”システムや、シフトレバーなどの操作系がステアリングまわりに集中的に配置されたレイアウトのクルマは、手だけでクルマを運転する車いすユーザーにとって非常に使いやすいと実感した。

 足が不自由でこれから免許を取得しようと思っている人は、ニコ・ドライブのWebサイト内で気軽にハンドコントロールの試乗が体験できる自動車ディーラーやレンタカー店などを一覧形式で紹介しているので、チェックしてみることをオススメします。自分で運転して色々な場所に行くのは楽しいですよー!

アカザー

アカザー(赤澤賢一郎)
週刊アスキーの編集者を経て、フリーの編集・ライターとして独立。初めて買った愛車はカローラレビン(AE86)。以来、240SX(北米版180SX)やRX-7(FC3S)などMTスポーツカーを乗り継ぐ。2000年にスノーボードの事故で車椅子になった後も、手動運転装置を使ってAT車を運転。現在の愛車はレガシィ ツーリングワゴン2.0R スペックB。週刊アスキーの体験レポート漫画「カオスだもんね!PLUS」の担当編集をしつつ、ホビー好きが高じてモデルアート誌や電撃ホビーウェブなどで執筆。ほかにインターネット動画「プラモづくりは見てナンボ」に月イチで出演中。

Photo:安田 剛