試乗インプレッション

2.5リッターターボを国内初搭載、マツダ「CX-5」商品改良モデル。「GVC プラス」も乗り比べ

CX-5

 CX-5は世界120か国で販売され、マツダのグローバルでの販売台数の1/4にも及ぶマツダの主力商品だ。現行モデルになってから2回目のマイナーチェンジを受けた。最も大きなポイントはガソリンエンジンに直列4気筒 2.5リッターターボ「SKYACTIV-G 2.5T」が加わったこと。そしてGVC(Gベクタリング・コントロール)が進化して「GVC プラス」になったことだ。予約受注は10月11日からになる。

 マイナーチェンジを受けたCX-5はそれ以前のモデルとの違いを外観上見分けることはホイールの塗色以外では難しい。内装ではエアコンパネルのデザインとダイヤルスイッチが変更になり。質感はさらに上がっている。

インテリアではエアコンパネルのデザインとダイヤルスイッチを変更
タイヤサイズは19インチ
撮影車両は「25T L Package」
撮影車両は「25T L Package」

 国内初登場となる2.5リッターターボは169kW/420Nmの出力とトルクを持つCX-5のトップグレードになる。

 マツダの自信作でもあるこのエンジンは大排気量車らしい大きなトルクとNAエンジンのようなレスポンスを狙って開発されている。実際に走らせてみると低速回転から自然に回転が上昇する感触に驚く。エンジンの回転フィールも滑らかでクルマの質感がさらに向上して、トップグレードに相応しい。最大トルクの420Nmは2000rpmで達成しており、大排気量エンジンのような分厚いトルクとレスポンスを感じ取ることができる。またアクセル開度に応じてレスポンスよく出力が出るが、突出した感じではなくドライバーの意思に忠実だ。ターボエンジンに感じられる、二乗的にトルクを吐き出す感触はなく、またアクセルに過敏でもないので非常に使いやすく気持ちのよいエンジンだ。

「SKYACTIV-G 2.5T」を搭載する「25T Exclusive Mode」

 最高出力の169kW(230PS)は4250rpmで出しているが、エンジン回転も伸びやかで、かつ高回転領域でも、滑らかさは変わらないところもドライバーに気持ちのよさを伝える。出力自体は2.5リッターターボとしては決して高い数字ではないが、低回転から高回転領域に至るまでのプロセスが気持ちよい。

直列4気筒 2.5リッターターボの「SKYACTIV-G 2.5T」

 これらの爽快感の達成にはダイナミック・プレッシャー・ターボと呼ばれるターボを中心とした排気、燃焼系にかかわる技術の開発が大きい。各排気系に弁で閉じられる通路を設け、低速回転では狭い通路を通すことでタービンへの流速を早め、合わせて吸気ポート側の掃気効果も得られることからも加速レスポンスは向上している。この弁の開閉切り替えポイントは1620rpmとされる。

 また大容量のクールドEGRももう1つのポイントだ。シリンダーヘッド内の水路の近くを通してEGRクーラーに導かれる排気ガスの一部は再び吸気マニフォールドに導かれて、吸入温度を下げて、燃焼温度を下げることでノッキング改善している。

 ザクっといってしまうとダイナミック・プレッシャー・ターボとクールドEGRがこのSKYACTIV-G 2.5Tのブレークスルー技術だ。このエンジンはボアサイズ89mmのエンジンとしては、10.5という高い圧縮比を持ち、高効率を達成している。しかも使えるガソリンはターボにかかわらず耐ノック性が高いエンジンのためにレギュラーなのも嬉しい。

 サスペンションもダンパー、スタビライザー、マウント類など細かくチューニングされており、路面への追従性がさらによくなっている。小さな上下動から高Gまで動きに磨きがかけられたサスペンションは姿勢安定性、ハンドリング、そして乗り心地にも好印象を与える。

 そして、その姿勢安定性にもう1つ貢献しているのがGVC プラスだ。マツダの各車に織り込まれているこれまでのGVCは、ターンインでエンジントルクを自然に制御してフロント荷重にして素直に曲がりやすくする技術だった。

 新しいGVC プラスはハンドルを戻し始める時に外側のフロントブレーキをごく僅かにコントロールすることでハンドルの操作量を減らすというもので、緊急回避のような急転舵でもオーバーステアになるのをある程度防ぐことができる。

 一通りの説明を受けてから実際に行なってみた。試験車にはON/OFFスイッチがついており、パセンジャーシートのエンジニアが切り替えることができる。緊急回避を意識しているとドライバーにとっては特に操作に変化はないように思えたが、後席からは体の揺れが全然違うという声が返ってきた。ではとドライバー側から舵の修正を最小限にしてみると、確かに操舵量が異なる。

GVC プラスのON/OFFスイッチを装着した試験車

 同様にワインディングロードでも意識を抜いて走るときなどGVC プラスのON/OFFでコーナーの脱出姿勢が異なるのがわかる。ハンドルの切り返しの部分でピッチング姿勢が一定しており、ハンドル操作がスムースになっていることから安定性が向上している。

 GVC プラスはGVCがそうであったようにドライバーの意思を妨げない。機械的に何かが動くという感触は皆無のシステムで、ベテランには技術は邪魔をしないし、特別なスキルを持たないドライバーにもスムースなドライブを可能にする。

 GVCはシャシー性能を補完する役割もあるが、基本性能が高ければさらに効果が高い。その意味でもCX-5のシャシーのベース能力アップは非常に意味深い。

 マツダ・コネクトも大きく進化し、スマートフォンに連携して、車両側で対応できるアプリがCX-5でも使えるようになった。例えばApple CarPlayではSiriを通じて音声での操作が可能でAndroid Autoにも対応するので利便性は一気に高まった。

マツダ・コネクトも進化
SKYACTIV-D 2.2に6速MTモデルを設定
SKYACTIV-D 2.2を搭載する「XD Exclusive Mode」
SKYACTIV-D 2.2を搭載する「XD Exclusive Mode」の6速MTモデル

 もう1つのマツダらしいのはSKYACTIV-D 2.2に6速MTモデルを設定したことだ。クラッチはやや重いが、ミート幅やミートタイミングは申し分なく、そしてシフトストロークなどガッシリしたものでCX-5に相応しい。出荷量は多くないと思うが、こんなところにもマツダのドライバーに寄り添うこだわりを感じる。

日下部保雄

1949年12月28日生 東京都出身
■モータージャーナリスト/AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員/16~17年日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員
 大学時代からモータースポーツの魅力にとりつかれ、参戦。その経験を活かし、大学卒業後、モータージャーナリズムの世界に入り、専門誌をはじめ雑誌等に新型車の試乗レポートやコラムを寄稿。自動車ジャーナリストとして30年以上のキャリアを積む。モータースポーツ歴は全日本ラリー選手権を中心に活動、1979年・マレーシアで日本人として初の海外ラリー優勝を飾るなど輝かしい成績を誇る。ジャーナリストとしては、新型車や自動車部品の評価、時事問題の提起など、活動は多義にわたり、TVのモーターランド2、自動車専門誌、一般紙、Webなどで活動。

Photo:堤晋一