試乗レポート

プジョーの最新コンパクトSUV「2008」、「柔」「剛」を併せ持つ足まわりの按配は絶妙

1.2リッターターボの実力は?

初代とはガラリと変わった

 本国で2013年に登場した初代「2008」は、まだこのクラスのコンパクトSUVが珍しかった時代に生まれて独自の存在感を発揮した。それから2代目が登場するまでの6年あまりで、世の中はずいぶん変わって、多くのメーカーがコンパクトSUVを手がけるようになった。大きくなりすぎたCセグからBセグにダウンサイズするユーザーが増えたことで、Bセグも広さや上質さが求められるようになった。

 そうした状況を受けて2008もガラリと変わった。プラットフォームには最新の「CMP」を採用し、ボディサイズは初代比で全長が145mmも延長され、全幅は30mm拡大。ホイールベースも70mm増の2610mmとセグメント最長クラスとなった。一方で、最低地上高を40mm高めて205mmとして十分なロードクリアランスを確保しながらも、全高は20mmダウンの1550mmにとどめたのも特徴だ。

 ショートワゴンのプラスアルファのようにも見えたスタイリングは、伸びやかなボンネットやしっかりとしたショルダーラインを備えたフォルムとなり、よりSUVらしい力強さを得たことで、初代とは雰囲気がぜんぜん違って見える。

今回試乗したのは2020年9月に発売されたコンパクトSUV「2008」。撮影車のグレードは「GT Line」(338万円)。新型2008はグループPSA最新のコンパクトプラットフォーム「CMP」を採用し、従来モデルと比べて全長で+145mm、全幅で+30mm、全高で-20mmの4305×1770×1550mm(全長×全幅×全高)。ボディカラーはフュージョン・オレンジ
従来モデルと比べてボンネットが低く長く、よりタイヤが四隅に配された安定したスタンスを持つ美しいプロポーションを実現。足下は17インチアロイホイールにミシュラン「プライマシー 4」(215/60R17)をセット

 内外装が印象深いデザインとされているのも「UNBORING THE FUTURE~退屈な未来は、いらない。~」を掲げる新世代プジョーらしい。新感覚の彫刻的な造形のボディパネルは、大胆な面取りで構成されたサイドビューの陰と陽の対比も目を引く。各部が専用に仕立てられたGT Lineは、よりその個性が際立って見える。

 インテリアもまた個性あふれる空間が構築されている。小径ステアリングの上にメーターが覗くおなじみの「i-Cockpit」の最新版である、重要度に応じて情報を立体視でレイヤー化表示する「3D i-Cockpit」も先進的で、見る楽しさがある。加えて、よく使う機能ついては物理スイッチが適宜配されているのであまり不便に感じることもない。

 ユニークな形状のインパネは、各部に配されたカーボン柄のパネルやソフトパッドも効いて、Bセグとは思えないほどの質感を見せていることも印象的。フロントセンターアームレスト下やシフトレバー前、センターコンソール下部など各部にさまざまな収納スペースが用意されているのも重宝しそうだ。頭上には大面積のパノラマガラスルーフがあるのもありがたい。

新型2008では最新世代の3D i-Cockpitを採用し、運転中の視線移動を最小限に抑えるインストルメントパネルをはじめ、小径ステアリングホイールなどが特徴。また最新のADAS(先進運転支援システム)を搭載し、アクティブクルーズコントロールやレーンポジショニングアシスト/レーンキープアシストなどを利用可能

 GT Line専用のアルカンタラとテップレザーを組み合わせたダイナミックシートの適度なホールド感も心地よい。同じくGT Lineの特権である7色から選べるアンビエンスランプを見るにつけ、プジョーはもともといち早くこのクラスにもこうした装備を与えていたわけだが、やはりあるとうれしくなるものだ。

音振に入念に手当てされたICE車

 2代目2008では、内燃機関(ICE)とフル電動(BEV)を対等にラインアップしてどちらも同じように好みで選択できるようにされたことも特筆できる。日本上陸したBEV版のe-2008は、むろん中身はまったく別物ながら、コストと走りの兼ね合いからかバッテリーはそれほど大きくなく航続距離もそれほど長くないわけだが、それゆえ実質的な価格もICE版とそれほどかけ離れておらず、見た目もあえてほぼ共通とされている。

 e-2008についてはあらためてお伝えするとして、直列3気筒1.2リッターターボのICE版をドライブした第一印象は、軽さが際立っていた。車両重量は1270kgながら、感覚としてはもっと軽い。小排気量のターボエンジンが苦手とする低回転域を、このクラスとしては望外の8速に刻まれたトルコンATがうまくカバーしていて、スムーズで伸びやかにまわるので中間加速はそこそこ力強い。

パワートレーンは最高出力96kW(130PS)/5500rpm、最大トルク230Nm/1750rpmを発生する直列3気筒DOHC 1.2リッターターボエンジンに8速ATを組み合わせる。WLTCモード燃費は17.1km/L

 上までまわすと頭打ちの感もあるものの、性能的には1.2リッターのわりにはなかなか元気よく走ってくれて、多くを求めなければ十分といえそうだ。3気筒なので音や振動に安普請な印象があるものの、それがあまり気にならないよう入念に手当されていることもうかがえる。ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」が選べ、GT Lineには前輪駆動ながら未舗装路等での走破性を高めるアドバンスドグリップコントロールが搭載されるのも特徴だ。

本当に「しなやか」な乗り味

 足まわりの仕上がりもなかなかのものだ。最新世代のCMPは軽く、骨格が非常にしっかりとしており、サスペンションがよく動いて凸凹のある路面でも衝撃をキャビンに伝えない。ストローク感があり、音もなく、入力をうまく受け流してくれる「猫足」でならしたプジョーらしい味わいがある。ただし、よく動いて当たりは柔らかいものの、実はけっこう引き締まっていて、無駄な動きを出さない。これこそ本当の「しなやか」ではないかと思う。

「しなやか」という言葉は、ともすると単に「柔らかい」という意味で使われがちだが、本来は柔らかな中にも強さのある状態を表現するように思っていて、2008の足はまさしくそれ。「柔」と「剛」の両面を併せ持っていて、その按配が絶妙だ。さらには操縦性も適度に俊敏ながら神経質なところがなく、終始いたってリラックスして乗れるのも2008ならではである。

 先進運転支援装備が車線維持機能を備えるほどに充実したことは大いに歓迎したい。パッケージング面では、ホイールベースの拡大やリアシートのアレンジ機構を廃したことが効いて後席の居住性が改善されたのが初代との違い。ボディサイズに制約がありながらも多様な用途への対応が求められるコンパクトSUVは、限られたスペースをどう配分するかが開発者にとっても悩みどころに違いない。従来比で大幅増となる434Lというラゲッジ容量を確保した2008も十分といえば十分で、ラゲッジだけ見ると奥行きがもう少しあるとなおよい気もするが、後席の居住性に優れるので後席の使用頻度が高い人にとってはありがたいはず。

 ご参考まで、奇しくも近いタイミングで日本上陸を果たしたルノー「キャプチャー」は前後スライド機構を採用することでその問題に対応している。また、日本勢がこのクラスでも電動テールゲートを採用しはじめたことには、プジョーら欧州勢も心中穏やかでないはず。そのあたりは今後に期待したい。

 中身が濃厚なわりには価格もよくぞここまで抑えられたものだと思う。ますます激戦区化するコンパクトSUVにおいても、とりわけ独特の世界観を持った、個性的で印象的な1台であった。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一