試乗レポート
ポルシェ「911 カレラ GTS」(7速MT)、圧倒的なパフォーマンスと得も言われぬ心地よさ
2022年2月17日 06:00
パワーウェイトレシオは3.37kg/PS
ポルシェのコアモデル「911」のスパルタンなスポーツモデルがGTS。リアエンドに搭載する伝統の水平対向6気筒エンジンは91×76.4mm(ボア×ストローク)の3.0リッターターボ。353kW(480PS)/570Nmの出力を発生する。車両重量は1620kgにすぎない。パワーウェイトレシオは3.37kg/PSとなり、圧倒的なパフォーマンスが期待される。また最大トルクの570Nmは2300-5000rpmという幅広いトルクバンドを持ち、スパルタンなGTSだが日常的な使用にも使いやすいエンジン特性だ。
組み合わされるトランスミッションは8速PDKか7速MTになるが、試乗したのは7速MT。3ペダルのポルシェは久々でそのキレのよさを満喫する。クラッチペダルの踏力はビッグトルクに合わせて重いがミートポイントは分かりやすく、そしてスパンとつながるのもポルシェらしいところだ。マニュアルシフトは節度のあるタイプでシフトミスすることはない。乗り始めた時には7つのゲートが入りにくいのではないかと思ったが、何の抵抗もなくガシリと入った。遠い昔、バターを熱いナイフで切るようなと言われたポルシェシンクロが懐かしい。
ボディサイズは4520×1850×1303mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2450mmで、上から見るとスクエアなボディが素晴らしくまとまりがよく、美しい。GTSはライトウェイトデザインパッケージが組み込まれており、CFRPのフルバケットシートやサイド/リアの薄板ガラス、それにリアシートを外してラゲッジスペースとしたことなどで25kgの軽量化が図られている。
乗り心地は望外のよさ
そのバケットシートにまたぐように乗り込むと、スッポリと身体が落としこまれる。ドライビングポジションは無理なく収まり、バックスキンのやや細身のハンドルを握り、楕円形のメータークラスターを見るとポルシェのコクピットにいることを実感する。
柔軟性のあるエンジンは街中を低回転で走るときは従順に、ランプウェイの合流では俊敏にまわる。レスポンスが鋭いのがポルシェエンジン。しかもアクセルOFFでの回転落ちが早いのもポルシェならでは。走らせて爽快な気分にさせてくれるのもこの俊敏なエンジンがあればこそだ。ターボエンジンの分厚いトルクと相まってGTS用にチューニングされたパフォーマンスは高回転まで発揮され、パワーの急激な落ち込みは全くない。
シートにダイレクトに伝わるクルマの姿勢は一体感を感じ、GTSがドライバーのためにあることがよく分かる。サスペンションは標準モデルから10mm低くされており、ロールもピッチングも少なく、常に安定した姿勢が感じられる。
乗り心地は望外のよさだった。レーシングカー的なゴツゴツした突き上げを感じるかと思っていたが、目線の位置がずれることはなくハンドルに伝わるキックバックも小さい。このGTSならロングドライブもいとわずにできそうだ。後席を取り払ったスペースには荷物もタップリ詰め込むことができる。
またドライブモードはSPORTとSPORT+ではシフトダウンでブリッピングをしてくれる。排気音も湿った凄味のある音に変わった。1つ仕事を奪われたようでちょっと残念な気もするが、ハイパワーのMT車にはアリだと思う。
570Nmのハイトルクにはブレーキとハンドル操作に集中できる2ペダルのPDKは合理的だ。速いクルマになるほどミスもなくコンマ秒を削るため必然的に2ペダルになる。それでもMTはドライビングの楽しみには余分だが、大きな要素となると思う。実際に短い試乗だったが、7速MTで走らせるのは得も言われぬ心地よさだった。やはりポルシェのソリッド感は素晴らしい。改めて惚れ込んでしまった。