試乗レポート
フォルクスワーゲンの新型「ゴルフ TDI」、Cセグメントのベンチマークに置かれる理由とは
2022年2月18日 06:00
2.0ディーゼルエンジン搭載の「TDI」
コンパクトハッチバックの定番と言えば「ゴルフ」の名前が浮かぶほど。歴代ゴルフが作り上げてきた実績は大きい。そのゴルフが8代目になったのは2021年。マイルドハイブリット搭載の1.0リッター/1.5リッターのガソリンでスタートしたが、実はディーゼルを待っていたユーザーファンは多い。
遅れてやってきたディーゼルは2.0リッターの4気筒ターボ。出力は110kW(150PS)/360Nmと1460kgの車両重量には十分。低速からの強いトルクでグイグイと粘り強く加速し、高速道路のランプウェイでも巡航速度にすぐに到達する。スポーツモデルに通じるパワーの脈動を感じるほど。
しかしゴルフ TDIの本筋は移動手段としての使いやすさにある。先代では傍にいるとすぐにディーゼルとすぐに分かったノイズが抑え込まれ、ディーゼルには不可避の振動収束にも気が配られている。それを感じるのはエンジン始動直後ぐらいだが、煩わしさはない。
ハンドリングは定番ゴルフの持ち味を存分に発揮し、素直で安定性の高さはドライバーに何とも言えない安心感を与えてくれる。225/45R17のブリヂストン「TURANZA T005」はゴルフとのマッチングがよく、ハンドル操作時の追従性、そして過敏でないのが好ましい。
さらにガソリン車では制動時に条件によってはエンジンが揺動する癖があったが、ディーゼルではスッキリと収まっており、ピッチングが少なくて安心感がある。
またリアのサスペンションは1.5リッターのガソリンモデルと同じく4リンクの独立懸架で、斜めに凹凸を横切る場面でもアシがバタつくような動きがない。スッキリと姿勢はフラットだ。一方、路面からの情報を完全にカットすることはなく、ドライバーが正確なフィードバックを得られるのもゴルフのよいところだ。
Cセグメントのベンチマークに置かれる理由
静粛性もかなりレベルアップした。巡航時に発生するロードノイズや風切り音なども適度にカットされ、ディーゼルのカラカラ音も伝わってこない。ファミリーカーとして満足できるレベルにある。
ハンドルの操舵力は巧みな重さで、高速の直進時ではハンドルのスワリがよく、ビシと走ってくれる。一方で市街地では操舵力は軽くまわせ、ベーシックカーとしての心得を弁えている。それに4295×1790mm(全長×全幅)のボディサイズは日本の道でも使いやすくありがたい。実際、狭い道ですれ違う時も幅がつかみやすかった。
トランスミッションは7速のDSG。フォルクスワーゲン得意のデュアルクラッチである。滑らかな変速には磨きがかけられて、選択するギヤに迷うこともほとんどない。苦手なのはスタート時の段差乗り越しなどの場面だが、低回転でトルクの大きなディーゼルとの相性もよい。
キャビンはデジタルディスプレイの採用もあり、デザイン的にも横への広がりがゆったりした雰囲気を出している。その操作性には少し習熟が必要だが新しいトライだ。後席は実用車らしい自然と腰の落ち着けるクッション構造と適度なレッグルームがあって、大人2人がちょうどよく座れる。そしてラゲッジルームはかなり大きく、かさ張る荷物も大抵は詰めてしまう収納力の大きさを誇る。
ゴルフのハンドルを握ると安心する。飛び道具のような新技術を振りまわさないところがゴルフらしく、ベースをキチンと作って誰もが安心できるのが真骨頂だ。いつもCセグメントのベンチマークに置かれるのはこの姿勢に対する安心感があるからだ。多彩なシリーズの中でもTDIは実直なゴルフを感じさせてくれる。きっと満足感が高いに違いない。