試乗レポート
アルファ ロメオのSUV「ステルヴィオ」、スポーツカー然とした走りのみならず実用性も十分
2023年3月2日 09:45
スポーツカースタンスのコクピット
Stellantisグループの中でひときわ異彩を放っているのが情熱のアルファ ロメオ。プラットフォームはジープ「チェロキー」とも共用部分が多く、グローバル展開による相乗効果が高い。
「スポーツパッケージ」のネーミングを「ヴェローチェ」としているのもオールドファンには懐かしく、アルファらしく耳障りがいい。ステルヴィオのサイズは4690×1905×1680mm(全長×全幅×全高)と結構大きいが、北米市場がメインターゲットとすれば納得がいく。
エンジンは直列4気筒2.0リッターターボでフィアットが進める可変吸気のマルチエア。フラットなトルク特性が特徴で、出力は280PS/400Nmとどこから踏んでもレスポンスよく加速する。トランスミッションはトルコン8速ATのワイドレシオ。マルチエアのエンジン特性とも相性が良い。
ゆったり乗るのがSUVだと思っていたが、良い意味で期待を裏切られた。アルファはどこまで行ってもアルファ。スポーツカーのようにドライバーが鞭を入れるのを待っている。それはシートに座った時から始まっていた。すんなりと乗り込んだコクピットはスポーツカースタンスで、手足を伸ばしたポジションに収まる。
そもそも2つの円筒に収まったタコメーターと260km/hの速度計は伝統的なスポーツカーを彷彿させ、ハンドルスポークに移されたイグニッションスイッチが他のSUVとは趣きを異にしている。スイッチ類も整理され瞬時に判断可能。スポーツSUVらしいレイアウトだ。
時代と共にアップデートされた革新と伝統のアルファ ロメオ
アクセルスポンスは高く、加速力は数字以上に大きく感じる。低速トルクの強さもあるが、アクセルは少し早開き気味に設定されているようだ。
ハンドル応答も鋭い。こちらはギヤレシオの早さと言うより、操舵に対して車体が敏感に反応し「ジュリア」にも通じるものがあるのは嬉しい。SUVにしては珍しく前後重量配分が50:50に近く、ボディ剛性の高さが一段と光り、コーナーが楽しいSUVになっている。
ちなみにサスペンションも硬めでコーナーでのロールもよく抑えられている。ジュリアのアイポイントを高くした感触だ。では乗り心地が硬いかと言えばそうでもない。低速ではリアからの突き上げがあるもののSUVらしいストローク感があり、高速ではバネ上の動きが安定する。こんなところもアルファ ロメオらしい。
センターコンソールにはドライブモードをセレクトするダイヤルがあり、ナチュラルの「n」、アドバンスの「a」、ダイナミックの「d」を選択できる。通常はnを選んでおけばアクセルやハンドル操舵力もおとなしくなる。aはエコに相当して出力を絞るが、それでも元気の良さは変わらない。そしてdを選択するとシフトプログラムが低いギヤを選び、アクセルレスポンスもシャープになってハンドルの操舵力も重めになる。他モデルでもよく使われているドライブモードだが、アルファ ロメオは特にメリハリが効いており、エンジンも積極的に高回転まで使う。
Q4は4WDを示す表示だ。試乗はドライ路面の自動車専用道路と市街地で行なったので、4WDのメリットを活かす場面はなかったが、基本的には後輪駆動が主で場面に応じてフロントにもトルクを配分する。dモードでは積極的に前輪にもトルクを分配して駆動力を高めているように感じた。
ステルヴィオが走りだけのSUVかと言えばそんなことはない。ラゲッジルーム容量は後席を使った状態で525Lと、外観から想像するよりもスクエアな空間となっており実用性は高い。そして後席の居住性はヘッドクリアランスも含めて十分だった。
ダッシュボードにでんと構えた8.8インチモニターはApple CarPlayやAndorid Autoに対応し、またUSBポートも前後席に計4か所あるのも親切だ。
時代と共にアップデートされた革新と伝統のアルファ ロメオのSUVだ。