試乗レポート

ランボルギーニのスーパーSUV「ウルスS」、前モデル「ウルス」からどう進化したのか?

ランボルギーニ「ウルス」の後継モデル「ウルスS」に試乗する機会を得た

見た目からしてスーパー

 久しぶりにランボルギーニの“スーパーSUV”の最新版2モデルに触れる機会を得た。まずは、これまでの「ウルス」と置き換わる位置づけとなるロードゴーイングモデルの進化版「ウルスS」だ。

 最大の違いはエンジンにあり。V型8気筒4.0リッターツインターボは、最高出力がこれまでの650PSから666PSへと引き上げられた。これにより0-100km/h加速はコンマ1秒短縮となる3.5秒、0-200km/hもコンマ3秒短縮して12.5秒を達成した。最高速はSUVで世界最速クラスの305km/hを誇る。

ランボルギーニ「ウルスS」。サイドミラーを含めたボディサイズは5112×2181×1638mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3003mm。車両重量はオプション設置の23インチホイールやサンルーフ分が増え2510kg(前軸重1370kg、後軸重1140kg)

 インパクト満点の内外装にもいくつか変更があった。5つのスタイルコンフィギュレーションオプションがあり、光沢またはマット仕上げのカーボンパーツも組み合わせられる。ホイールは標準の21インチのほか、22インチや今回試乗した車両が装着している23インチも選べる。

 久しぶりに間近で見て、SUVとしてランボルギーニらしさをこれほどうまく表現できていることに改めて感心する思いで、見た目からして人の心に訴える強力なパワーを持っている。ほかにはない独特のフォルムとエッジの鋭さを強調したシャープなラインは、ウルスSになってより新鮮味が増したように見える。

デザインが変更されスッキリしたシルエットになったフロントバンパー。ペルフォルマンテと同じカーボン製リップスポイラーの装着も可能
ボンネットは上位モデル「ペルフォルマンテ」と同じくカーボンファイバー製となった
ホイールアーチも刷新
低く構えたリアウイングをセット
リアバンパーもデザインを変更。スリットの向きが逆になった
マフラーはツインテールの4本出し
オプションの23インチホイールを装着。タイヤはピレリの「P ZERO」でサイズは前285/35ZR23、後315/30ZR23
フロントは10ピストンブレーキキャリパーに440Φのカーボンセラミックブレーキディスクが組み合わされる

 外観と統一感のあるデザインで、無数のスイッチ類が並ぶインパネは、ランボルギーニに乗ることをまず視覚的に味わわせてくれる。後席はベンチシートの5人乗りのほか、今回試乗したキャプテンシートの4人乗りが選べる。広大な開口面積を持つガラスサンルーフも、コクピットのキャノピーのよう。横から見るとルーフのピークがかなり前方にあるのだが、着座姿勢の工夫により後席のヘッドクリアランスも確保されている。

 ラゲッジスペースは奥行きも幅もかなり広い。エアサスを搭載するウルスSならスイッチ操作でリアの車高を下げられるようになっているので、よりラクに荷物を積み下ろしすることができる。

コクピット
ステアリングにはパドルシフトを装備
上段ディスプレイは主にナビ&エンタメ用
下段ディスプレイは主にエアコン用
肘置きの下には置き充電を完備
内装は赤いステッチの入ったレザーでまとめられている
サンルーフはオプション設定。カーボンルーフも選択できる
運転席・助手席ともヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能を搭載
4人乗り仕様の後席はキャプテンシートで、シートヒーターを内蔵するほかUSBポート2口、12V電源も完備
ラゲッジスペースは574Lの容量を確保(5人乗りは616L)。また、エアサス車なので荷物の積み下ろしをサポートするための車高調整ボタンを装備している
センターコンソール。中央の赤いカバーの中がイグニッションボタン。その左側にあるのが走行モードを切り替えるための「ANIMA(アニマ)」セレクター。右側はステアリング、サスペンション、トラクションダイナミクスを自分好みに設定できる「EGO」モード用のセレクター

より伸びやかになったエンジン

 最高出力が16PS増したV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは、850Nmという最大トルク値に変わりはないが、発生回転数が従来の2250-4500rpmから2300-4500rpmと若干狭まっている。レッドゾーンはこれまでどおり6800rpmとなる。

エンジンはV型8気筒4.0リッターツインターボ。最高出力は490kW(666CV)/6000rpm、最大トルクは850Nm/2300-4500rpmを誇る。最高回転数は6800rpmとなっている。トランスミッションは8速ATで、アクティブ・リア・トルク・ベクタリングを備えたフルタイム4WDとなっている

 走行モードを切り替えるための「ANIMA(アニマ)」セレクターは、上半分のオンロード向け3モードが標準装備で、下半分のオフロード向け3モードは購入時に選択できるオプション。試乗車はフル装備で6種類のドライブモードが選べるようになっていた。また、それとは別に自分好みに設定できる「EGO(エゴ)」モードもある。

 標準のSTRADAモードで走ってみたところ、変更のあったエンジンはより加速フィールが伸びやかになったように感じられた。アクセルを踏み増してブーストされる感覚が、従来よりもスムーズになった印象で、その伸びやかで力強い加速フィールを2000rpm台の途中からすでに味わうことができる。

STRADAモードは標準車高
SPORTモード、CORSA(レース用)モードにすると車高が自動的に下がる
SABBIAモード(砂地用)、TERRAモード(オフロード用)、NEVEモード(滑りやすい路面用)モードでは自動的に車高が上がる

 踏み込むとSTRADAモードのままでも、パンチの効いた加速とド迫力のエキゾーストサウンドを楽しめるあたりは、やはりランボルギーニなればこそ。SPORTモードやCORSAモードを選ぶと、最初から刺激的なドライビングを堪能できて、アクセルオフ時に聞こえるレーシングカーのバックファイアのような音の演出も、他メーカーの高性能SUVよりも派手で分かりやすい。

23インチタイヤを履きこなす

 クイックなステアリングレシオと後輪操舵も効いて中立からの動きは素早く、それでいて挙動は安定している。俊敏なハンドリングをリラックスした中で味わうことのできる、絶妙な味付けだ。従来のウルスもそのあたりはよくできていたところ、ウルスSになって心なしか全体的に精度感が増してよりカッチリとした印象を受けた。

 コイルサスのペルフォルマンテに対し、エアサスを搭載するウルスSではより公道での快適性を重視しているようで、STRADAモードにしておけばひきしまった中にもストローク感のある乗り心地となり、もっと路面の影響を受けてもおかしくなさそうな状況でもうまくいなして、23インチで30扁平というタイヤのわりには乗り心地の面でもきっちりと履きこなしているように感じられた。いろいろな要素を兼ね備えた足まわりの仕上がりである。

「地球」を意味するTERRAモードを選択すると、車高が自動的に高くなる。ウルスでオフロードを走ったことはまだないが、きっとオフロードでもスーパーな走りを楽しませてくれることに違いない。

 一方で、ブレーキの仕上がりにも感心した。大きな車両重量と圧倒的な速さに対して、100km/hからの停止距離が33.7mと制動力も強化されているが、たしかにそれも納得の懐の深いキャパシティを感じさせる。その上にカーボンセラミックブレーキとしては過去に経験したことがないほど扱いやすいことにも驚いた。温まっていなくても初期が効きにくい印象もなく、張りつく感覚もなく減速度をコントロールしやすい。

 多くのプレミアムブランドがSUVを手がけるようになり、デザインや走りでスポーティさを訴求するモデルが増えてきた中でも、ウルスSは彼らとは異質であり別格的であることを改めて実感した次第である。

後に停まっているウルスの上位グレード「ペルフォルマンテ」にも試乗したのでそちらも合わせてお読みいただきたい
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一