試乗レポート
ランボルギーニのスーパーSUV「ウルスS」、前モデル「ウルス」からどう進化したのか?
2023年5月6日 09:00
見た目からしてスーパー
久しぶりにランボルギーニの“スーパーSUV”の最新版2モデルに触れる機会を得た。まずは、これまでの「ウルス」と置き換わる位置づけとなるロードゴーイングモデルの進化版「ウルスS」だ。
最大の違いはエンジンにあり。V型8気筒4.0リッターツインターボは、最高出力がこれまでの650PSから666PSへと引き上げられた。これにより0-100km/h加速はコンマ1秒短縮となる3.5秒、0-200km/hもコンマ3秒短縮して12.5秒を達成した。最高速はSUVで世界最速クラスの305km/hを誇る。
インパクト満点の内外装にもいくつか変更があった。5つのスタイルコンフィギュレーションオプションがあり、光沢またはマット仕上げのカーボンパーツも組み合わせられる。ホイールは標準の21インチのほか、22インチや今回試乗した車両が装着している23インチも選べる。
久しぶりに間近で見て、SUVとしてランボルギーニらしさをこれほどうまく表現できていることに改めて感心する思いで、見た目からして人の心に訴える強力なパワーを持っている。ほかにはない独特のフォルムとエッジの鋭さを強調したシャープなラインは、ウルスSになってより新鮮味が増したように見える。
外観と統一感のあるデザインで、無数のスイッチ類が並ぶインパネは、ランボルギーニに乗ることをまず視覚的に味わわせてくれる。後席はベンチシートの5人乗りのほか、今回試乗したキャプテンシートの4人乗りが選べる。広大な開口面積を持つガラスサンルーフも、コクピットのキャノピーのよう。横から見るとルーフのピークがかなり前方にあるのだが、着座姿勢の工夫により後席のヘッドクリアランスも確保されている。
ラゲッジスペースは奥行きも幅もかなり広い。エアサスを搭載するウルスSならスイッチ操作でリアの車高を下げられるようになっているので、よりラクに荷物を積み下ろしすることができる。
より伸びやかになったエンジン
最高出力が16PS増したV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは、850Nmという最大トルク値に変わりはないが、発生回転数が従来の2250-4500rpmから2300-4500rpmと若干狭まっている。レッドゾーンはこれまでどおり6800rpmとなる。
走行モードを切り替えるための「ANIMA(アニマ)」セレクターは、上半分のオンロード向け3モードが標準装備で、下半分のオフロード向け3モードは購入時に選択できるオプション。試乗車はフル装備で6種類のドライブモードが選べるようになっていた。また、それとは別に自分好みに設定できる「EGO(エゴ)」モードもある。
標準のSTRADAモードで走ってみたところ、変更のあったエンジンはより加速フィールが伸びやかになったように感じられた。アクセルを踏み増してブーストされる感覚が、従来よりもスムーズになった印象で、その伸びやかで力強い加速フィールを2000rpm台の途中からすでに味わうことができる。
踏み込むとSTRADAモードのままでも、パンチの効いた加速とド迫力のエキゾーストサウンドを楽しめるあたりは、やはりランボルギーニなればこそ。SPORTモードやCORSAモードを選ぶと、最初から刺激的なドライビングを堪能できて、アクセルオフ時に聞こえるレーシングカーのバックファイアのような音の演出も、他メーカーの高性能SUVよりも派手で分かりやすい。
23インチタイヤを履きこなす
クイックなステアリングレシオと後輪操舵も効いて中立からの動きは素早く、それでいて挙動は安定している。俊敏なハンドリングをリラックスした中で味わうことのできる、絶妙な味付けだ。従来のウルスもそのあたりはよくできていたところ、ウルスSになって心なしか全体的に精度感が増してよりカッチリとした印象を受けた。
コイルサスのペルフォルマンテに対し、エアサスを搭載するウルスSではより公道での快適性を重視しているようで、STRADAモードにしておけばひきしまった中にもストローク感のある乗り心地となり、もっと路面の影響を受けてもおかしくなさそうな状況でもうまくいなして、23インチで30扁平というタイヤのわりには乗り心地の面でもきっちりと履きこなしているように感じられた。いろいろな要素を兼ね備えた足まわりの仕上がりである。
「地球」を意味するTERRAモードを選択すると、車高が自動的に高くなる。ウルスでオフロードを走ったことはまだないが、きっとオフロードでもスーパーな走りを楽しませてくれることに違いない。
一方で、ブレーキの仕上がりにも感心した。大きな車両重量と圧倒的な速さに対して、100km/hからの停止距離が33.7mと制動力も強化されているが、たしかにそれも納得の懐の深いキャパシティを感じさせる。その上にカーボンセラミックブレーキとしては過去に経験したことがないほど扱いやすいことにも驚いた。温まっていなくても初期が効きにくい印象もなく、張りつく感覚もなく減速度をコントロールしやすい。
多くのプレミアムブランドがSUVを手がけるようになり、デザインや走りでスポーティさを訴求するモデルが増えてきた中でも、ウルスSは彼らとは異質であり別格的であることを改めて実感した次第である。