インタビュー

ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマンCEOに聞く 「2023年は60周年に加えてハイブリッド化したV12エンジンがデビューする重要な年」

来日したアウトモビリ・ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマンCEOに、今後の展開などについて聞いた

 アウトモビリ・ランボルギーニは2月21日、同社の創立60周年を記念して東京 表参道の「BA-TSU ART GALLERY」でイベントを開催。現代美術家であるIKEUCHI氏とウラカンの最上位モデル「STO」が前衛的なコラボレーションを果たした世界に1台しかないモデル「ウラカンSTO Time Chaser_111100」を公開した。

 この会場で、60周年を記念して来日したアウトモビリ・ランボルギーニのステファン・ヴィンケルマンCEOにインタビューする機会を得たので、その模様をお伝えする。

「ウラカンSTO Time Chaser_111100」の公開イベントで登壇したヴィンケルマンCEO

電動化と「音」についてどう考えているか

――ランボルギーニ創立60周年おめでとうございます。記念すべき年を迎えたご感想からお聞かせください。

ヴィンケルマンCEO:今年は60周年の記念の年というだけでなく、ランボルギーニにとっては移行期の年で、新しいハイブリッド化したV12エンジンがデビューする本当に重要な年になります。まあ、60周年とはいえ自動車業界の中ではまだまだ若造ではありますけども、ただこういう記念の年を迎えてお祝いをすることによって、いろいろなお客さまとお会いする機会にも恵まれますし、今回のようにプレスの皆さまともお会いできるので、本当にいい機会だなと思っています。もちろんランボルギーニの生い立ちとか立ち位置とか、あとはこれからどういう方向に進んでいくのかというのをお伝えし、理解していただくチャンスだと思っています。あとは確固たるイメージ作りという観点からも大事だと思っています。

――60周年の記念イベントは、日本以外ではどのようなものが計画されていますか。

ヴィンケルマンCEO:アジア、欧州、米州も含めて世界中でいろいろな種類の企画があるのですが、最も重要なのが5月末にイタリア サンタアガタ・ボロネーゼにお客さまが一堂に会するという「GIRO Lamborghini」の一環となるイベントです。ローマから3日間かけてわれわれの本社があるサンタアガタ・ボロネーゼまで来ていただいて、そこで最後に盛大にお祝いをします。そして同時にル・マン24時間レースにも参戦できる自社開発のLMDh(スポーツプロトタイプカー)のワールドプレミアを実施する予定です。

2023年はランボルギーニにとって重要な1年になるという

――現在ランボルギーニの販売状況は非常に好調と聞いています。

ヴィンケルマンCEO:おかげさまで2022年は9233台を販売しており、これは連続の記録を打ち立てたことになります。ここでポイントとなるのは、倍、倍で販売を増やすということではなくて、ある程度コントロールした形で成長していくことが大事なのです。いろいろな予測に反して市場は非常に堅調で、世界ではウクライナの戦争や物価高、インフレなどの危機に見舞われていますが、今のところわれわれのマーケットの販売には影響が出ていません。

 これから新型商品を販売するフェーズに入っていきますが、さらにそれが追い風になるのでは、と思っています。一方で、今年の見通しはまだ始まったばかりなのでなんともいえないと言うところです。

――2023年に発表する新型モデルについて何か情報がありますか。

ヴィンケルマンCEO:新型商品については、ランボルギーニ史上初めてとなるハイブリッドカーの発表の年になります。3月末に発表しますが、実際に市場に投入されるのは今年後半、最終四半期となる予定です。最初に北米からで、欧州、アジアという順番になります。これはハイブリッド化の第1弾ということになりますが、続いて2024年にはウルス、その後半にウラカンといった予定でハイブリッド化が進みます。

 3月末に発表するのはアヴェンタドールの後継モデルで、V12エンジンを搭載したハイブリッドという形になります。デザインはスーパーカーらしいもので、以前からお約束していた通り、よりサステナブルでありながら今までのアヴェンタドールよりさらにパフォーマンスが上がっています。詳細は3月末のお楽しみということで、もう少しだけお待ちください。

アヴェンタドールの後継モデルはこれまで以上にサステナブルでハイパフォーマンスだという

――電動化と「音」についての考え方はどうでしょう。

ヴィンケルマンCEO:新型ではV12エンジンの音がさらに良くなっています。0-30km/hまでは音をつけないといけない、というのもあります。BEV(バッテリ電気自動車)モデルの音についてはまだ社内で協議中です。デビューする2028年までには決着しないといけませんが、まだ少し時間がありますし、そもそも音をつけるかつけないかがまだ決まっていないのです。そしてつけるとしたら、それはもうランボルギーニらしい音じゃないといけない、とは思っています。

 今まで自然吸気のV10、V12という長い伝統がありますが、その中でも音は大事な要素になっています。スーパースポーツカーは全部そうだと思いますが、デザインももちろん大事ですが、同じように大事なのがパフォーマンスです。そこは単なるパワーだけでなく、エモーショナルな部分です。そこで今度の電動化モデルでも、音の部分は正しい選択をしないといけないと思っています。

――さらに先の2+2のGTクーペについての情報はありますか。

ヴィンケルマンCEO:フル電動化モデルに採用する形で、ランボルギーニにとっては4つ目のモデルということになります。今は2つのスーパースポーツカーとSUVで、それにプラスして、ということです。われわれの60年の歴史の中では350GTとかがあったので、その意味ではランボルギーニにふさわしいスタイルであると言えます。つまりグランツーリズモで2+2の2ドアモデル、という意味ですね。デザインランゲージとしては、やはりランボルギーニらしいスタイルでありつつ、初の電動化モデルということもありますので、未来的な要素も取り込んでいきたいと思っています。

――フル電動化に対して、他と異なるランボルギーニらしいアイデアはありますか。

ヴィンケルマンCEO:コンペティターも含めていろいろ乗ってみましたが、よかったなと思うのは、乗ってみるとセットアップとかエモーショナルなところがやはりメーカーごとに異なる部分がある、という点です。電動モデルでも違いが出せるのだという確信が持てました。

 確かに電気自動車は加速性能が抜群なのですが、それは縦方向の性能であって、バッテリを使うものであれば当たり前のことなのです。何が足りないかというと、ラテラルな加速性能、つまり横方向の加速が足りないと思うので、私たちがやりたいのはバッテリカーの技術をどうスーパースポーツカーに移植するのか、というところだと思っています。それは2028年までには整えることになりますが、その前にいろいろとテストして、今の電気自動車に足りない「俊敏性」を出せるようなテクノロジーに投資をしていく。それをやる必要があるのです。

 バッテリの重量というのは、ここ数年ではすぐに解決できそうにありませんが、パワーはたくさん出せるのでパワーウエイトレシオは改善できるし、ソフトウェアがどんどん開発・改良されていくので、ブレーキングや加速、コーナリング性能などの俊敏性は、今のスーパースポーツカーより優れたものができるのではないかと期待しているところです。

「今の電気自動車に足りない“俊敏性”を出せるようなテクノロジーに投資をしていく」とヴィンケルマンCEO

――日本、そして世界のランボルギーニファンにひと言お願いします。

ヴィンケルマンCEO:私たちにとって日本は本当に重要な市場です。日本のお客さまが寄せてくださっている情熱や長きにわたる友情に対して、本当に感謝しているんだ、ということはぜひ知っておいていただきたいと思っています。今回は60周年のお祝いということではありますが、これを機会に長くご愛顧いただきたいと思っております。そしてお客さまの夢を超えるようなものを、これから出す新しいクルマで表現していきたいと思っています。