試乗レポート

ランボルギーニ「ウルス」、活況のSUVの中でも異彩を放つ“スーパーSUV”だった

6800rpmのレッドゾーンまで痛快な吹け上がり!

ランボとしてSUVを出すからには

 SUVの世界もどんどんエスカレートして、驚くべきクルマがいくつも見られるようになった。そんな中でも、スーパーカー的なSUVというのは存在しなかったところに、ついに現れた“スーパーSUV”を名乗る「ウルス」は、すべてにおいてインパクト満点の1台だ。

 ランボルギーニが過去に「LM002」というSUVを手がけたことがあるのは、おそらく多くの人がご存知のことだろう。今回のウルスに、そのLM002との関連性はあまりなさそうだが、とにかくランボとしてSUVを出すからには、これでもか! と見せつけるかのようなクルマを作らねばという熱意がヒシヒシと伝わってくる。そして実際、よくぞここまでやったものだと思わずにいられない仕上がりであることを、あらかじめお伝えしておこう。

 ウルスはまずなによりも見た目がインパクト満点だ。全長5mを優に超える堂々たるサイズのボディは、文字どおりスーパーカーとSUVを掛け合わせたようなシルエットが印象的。無数に配されたキャラクターラインが、よりランボらしさを際立たせている。足下は大径ホイールの細いスポークの奥に見るからに性能の高そうなブレーキがのぞく。

2018年に日本導入が始まったランボルギーニ「ウルス」。ランボルギーニにおける2018年度(1月1日~12月31日)の販売台数は対前年比で51%増の5750台を記録しており、その好調な要因としてウルスの販売が好調であることが発表されている。ボディサイズは5112×2016×1638mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3003mm。価格は2816万1795円。車両重量は2360kg(前軸重1340kg、後軸重1020kg)
エクステリアでは「カウンタック」で初採用された斜めのフードラインがボンネットに描かれるほか、Y字形のフロントエアインテーク、Y字形のLEDヘッドライト&テールランプ、ランボルギーニ・レースカーにインスパイアされたリアディフューザーなどを採用。足下は22インチホイールとピレリ「P ZERO」の組み合わせで、ブレーキシステムにはカーボン・セラミック・ブレーキ(CCB)を標準装備。キャリパーはフロントがアルミニウム製の10ピストン、リアが鋳鉄製の6ピストンを採用

 さすがにドアがシザーズではなく横開き式なのは納得として、インテリアに目をやると、これまた非常に印象的で、シートに収まった瞬間から得も言われぬ高揚感を覚えずにいられない。エクステリアと同調したシャープでかつ幾何学的なデザインは、他のモデルにはない雰囲気を放っていて、航空機からインスピレーションを得たのだろうか、ズラリとスイッチや計器類がレイアウトされたコクピット感も独特。

 このフォルムゆえ、後席のヘッドクリアランスこそあまりないものの、前後席とも居住空間は十分に確保されており、ラゲッジスペースはかなり広く、SUVとしての利便性にも不満はないだけでなく、クオリティ感もハンパない。標準が5人乗りのところ、オプションで今回のような4シーターも選択できる。リアにもフロントのような独立したシートが与えられ、ヘッドレストに遮られるため後方の視界がよろしくないのだが、それをとやかく言うのは野暮というものだろう。

レザー、アルカンターラ、アルミニウム、カーボンファイバー、ウッドなどの高品質素材を用いたインテリア。ウルスの走行モードはオンロード向けの「STRADA」「SPORT」「CORSA」が基本で、撮影車はオプション設定の「SABBIA(砂漠)」「TERRA(オフロード)」「NEVE(雪上)」も付いていた
センターコンソールの上部はエンターテインメントを中心とした情報表示を、下部はエアコンのコントロールが行なえる2つのタッチパネルディスプレイを搭載。撮影車の後席は2名乗車仕様(標準は3人乗車仕様)
ラゲッジスペースはかなり広い

クイックなのに落ち着いた独特の操縦感覚

 ドライブフィールもインパクト満点だ。「DHU」という型式の4.0リッターV8ツインターボは、650PSというSUV界で最強クラスのスペックを誇り、いかにもランボらしい勇ましいサウンドとともに、どこからでも猛然と加速するさまは、まさしくスーパーSUVとしてふさわしい。6800rpmのレッドゾーンまで痛快な吹け上がりを見せる、非常にエキサイティングなエンジンフィールを身に着けている。

V型8気筒4.0リッターツインターボエンジンは、最高出力478kW(650HP)/6000rpm、最大トルク850Nm/2250-4500rpmを発生。0-100km/h加速は3.6秒

 エンジンやグレードについて、近縁にあるポルシェ「カイエン」やアウディ「Q7」、ベントレー「ベンテイガ」では複数が選べるのに対し、ウルスは今のところオンリーワン。あえて段階を設けず、最もウルスとしてベストな1台を、と割り切ったわけだ。

 ハンドリングも印象的。ギヤレシオが13.3:1で、ロック・トゥ・ロックがわずか2.29回転というステアリングは相当にクイックでありながら、約3mというロングホイールベースも効いてか動きは落ち着いて安定しているという独特の操縦感覚で、大柄なSUVとしてのハンデを感じさせない軽やかな身のこなしと、大柄なSUVらしい貫録を併せ持っている。さらには限界がかなり高いところにありそうな雰囲気も伝わってくる。

 足まわりはそれなりに締め上げられているはずだが、6段階ものドライブモードを備えた「ANIMA(アニマ)」をSTRADAにしておけば乗り心地も十分に快適だ。

 アニマは上半分がオンロード向け、下半分がオフロード向けのモードとなっており、自分好みに設定できるモードが、「ECO(エコ)」をもじった「EGO(エゴ)」という名称なのもランボならでは。走行モードに合わせてメーター類の表示も変わり、オフロード系にするとSUVらしく前傾や左右のアングルなども表示される。

走行モードをオフロード系にすると前傾や左右のアングルなども表示

 ドライブしてつくづく感じたのは、このプラットフォームのポテンシャルは本当に高いなということだ。ご存知のとおり、ベースはフォルクスワーゲンのアライアンス下の主にプレミアム系の一連のブランドで共有しているもので、これまでもどのモデルをドライブしても感心させられてきたのだが、これを採用するのはむろんランボとしては初めて。一連のプレミアムカーに使うのだから、それ相応のものをと開発したことは想像に難くないが、実際にも本当によくできている。しっかりとした基本骨格をもとに足まわりが理想的に動いてくれて、4輪がしっかり路面を捉える感覚も伝わってくる。トラクションも高い。すべてがハイレベルな仕上がりだ。

 ウルスはランボルギーニ唯一のSUVとして、考えうるあらゆる要素のすべてをつぎ込んだ入魂の作に違いない。そして、このクルマに興味を持つセレブが何を求めているかもよく分かっている感じがする。SUV界では今や驚くようなクルマがいくつも見受けられるようになってきたが、その中でもウルスは異彩を放つ、まさしくスーパーSUVである。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛