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ランボルギーニで雪のアルプスに挑戦! 「ランボルギーニ クリスマスドライブ」に行ってきた
イタリアでランボルギーニを堪能する3日間
2019年12月17日 00:00
「われわれのホームグラウンドであるサンターガタへお招きします。そこで、ランボルギーニすべてのモデルレンジに乗り、アルプスを走るメディアトリップ“クリスマスドライブ”に参加していただき、2019年の弊社の成功をお祝いしましょう」。
イタリアから届いたこんな魅力的な1通のメールに導かれ、12月初旬に参加したのがボローニャ郊外のサンターガタにあるランボルギーニ本社をベースにした国際試乗会だ。初日の午後からは本社に併設する博物館と工場の見学、工場内に特設されたディナー会場での歓迎会。そして、翌日から2日間で350km先のイタリア北部のアルプスに向かい、スノーロードを走破してみよう、という2泊3日の行程だ。用意されたクルマは、スーパーSUV「ウルス」(4台)のほか、スーパースポーツカーのトップモデルであるV12搭載の「アヴェンタドール SVJ」(1台)と、V10搭載の「ウラカン EVO(スパイダー含む)」(4台)。
参加したのは、本国イタリアからの取材陣はもちろん、ロシア「オートパノラマ」誌のワシーリ氏、ドイツの超イケメン記者、スペインからの熱い2名などヨーロ ッパ勢、カナダのTV局女性記者と米国記者の北米勢、アジアからは中国「Car&Driver」誌のDavid君(私はダイちゃんと呼ぶことにした)と日本からの筆者など、今年の販売台数が良好な上位8か国からやってきた12名のジャーナリストたちだ。“ファイティングブル(暴れ牛)”のスーパーカーで雪のアルプスに挑むという今回のイベントは、約200年前にアルプス・ベルナール峠を越えたナポレオン・ボナパルトのごとくスリル満点だ。
モデナからアルプスを目指す
宿舎であったモデナの5つ星ホテル「Rua Frati 48」が当日のスタート地点。まだ薄暗い朝の7時に、ホテル前にずらりと並ぶスーパーカーたちの姿はすでに注目の的だ。ダッシュボードには、サンタのキャップまで用意されていて思わず頬が緩む。われわれアジアチームが担当したのは、V8 4.0リッターターボ(650PS/850Nm)を搭載する白のウルスで、ステアリングを握ったのは北京から来たDavid君。「右側走行に慣れているのでボクがやりますよ」と申し出てくれたのだ。
液晶画面に指でナビの入力をあわただしく行ない、路上駐車で狭くなった路地を抜けたり、朝の通勤ラッシュで大渋滞する市内を抜けたりしながら、やっとアウトストラーダ「E22」に合流したころには、各車はてんでバラバラ。コンボイを組み、ハンディトーキーで連絡を取り合いながら移動すると事前説明があったのだが、このあたりはさすがイタリアンな試乗会である。
高速道路上でのウルスは「ストラーダ」モードがベスト。静かで快適なドライブが可能になるので、誠に安楽なドライブが実現する。ダイちゃんは慣れた手つきでオーディオをセットし、BGMを選曲する。
見通しのよい場所ではるか先にシルバーのウルスを認めると、ダイちゃんはいきなり走行モードを「スポーツ」に入れ替え、V8の豪快なサウンドを発しながら一気に差を詰める。イタリアの高速道路は、制限速度が130km/h。数多くの大型トラックを追い抜いていくが、日本のように追い越しレーンに絶対に入ってこないのでとても安心できる。
途中のサービスエリアで交代しながら約300km走った後は、一般道へ下りてこの日の宿舎であるアルプスの麓ボルツァーノ地方の「Hotel Petrus」に到着。すぐにリフトに乗り換え、標高2227mのスキーリゾート「Plan de Corones」に上る。360度の見晴らしを誇るヨーロッパアルプスの絶景に見惚れていると、なんと頂上にはオレンジに輝くウラカン EVOがお待ちかね(雪上車で引っ張り上げたとのこと)。まわりのスキーヤーたちも何事かと思いつつ、記念写真の嵐となる。
3つ星シェフのNorbert Niederkofler氏が経営するレストラン「AlpiNN」で食事とワインを楽しんだ後は、夕方から地元ブルニコ市内で開催中のクリスマスマーケットも体験。ドイツ語を話す(当然イタリア語と英語も)地元女子たちと、ホットワインで乾杯しながら素敵な夜を楽しんだ。
アイスロードをアヴェンタドールとウラカンで試す
翌朝は、夜明けとともにアルプスの雪のワインディングにアタックする時間である。筆者のクルマはいきなりアヴェンタドール SVJだと告げられた。全長4943mm、全幅2098mm(!)、全高1136mmのボディサイズや、背後に装着された巨大なリアウイングというエクステリアだけでも迫力十分だが、背中で咆哮する最高出力770PS/8500rpm、最大トルク720Nm/6750rpmの巨大な自然吸気6.5リッターのV型12気筒エンジンとシングルクラッチ式の7段AMTトランスミッションが、雪と氷のワインディング上でどう制御できるのか、心配になるし目も覚める。4輪に装着するタイヤはピレリのスタッドレスタイヤ「WINTER SOTTOZERO 3」で、リアタイヤは21インチの355/25サイズ(!)。一体いくらするのだろう……。0-100km/h加速2.8秒、最高速350km/h以上、ニュルブルクリンク北コースで6分44秒台というデビュー当時の量産車最速を誇ったこのクルマで、筆者は「ストラーダ」モードに入れ、ATモードで恐る恐るアクセルを踏み込む。
筆者は2015年、北米コロラドの雪のサーキットで開催されたランボルギーニ・ウィンターアカデミアに参加し、ノーマルのアヴェンタドールやウラカンで走ったことがあるのだが、あのときはサーキットだったために安心してアクセルが踏み込めた。しかし今回は、絶えず日陰となるアルプスのV字谷の狭い道路で、雪というよりもガチガチのアイスロードに近い。トレッドの幅が合わず、左右どちらかのタイヤが轍とズレるので、そのたびに車体が持っていかれる。目線が低い位置にあるため、眼前に迫る雪の壁やガードレールとキスしないか、心臓が喉まで上がってくる。しかもアヴェンタドールは自動変速時に、「どっこいしょ」というほどの大きなタイムラグとショックがあり、変速が終了した時の車体の動きに身構えてしまうほどだ。やはりこの車はサーキットでしか本領が発揮できないかもしれない。そんなことを思いながらのドライブとなった。
目の前がオーストリアとの国境という位置にある「Riva di Tures」に辿り着いたころにはもうヘトヘト。シザースドアを上げてクルマを降りた時は、無傷でここまでやって来れたことにホッとした。
午後からはクルマを乗り替え、イエローの「ウラカン EVO スパイダー」をドライブする。EVOが背後に搭載する自然吸気V10エンジンは、最高出力640PS、最大トルク600Nmまでスープアップされ、0-100km/h加速3.1秒、最高速325km/hを実現するオープンモデルだ。すでにさまざまなシチュエーションで何度も乗ったウラカンの高性能バージョンだが、ショックとタイムラグの少ないシフト制御やボディのサイズ感がなじみやすく、筆者が最も好きなスーパーカーだ。走行中でも17秒でオープンにできるイージーさや、体にピタリとフィットするバケットシートとシートヒーターにより、寒さを全く感じることなくアルプスの景色を眺めながらのドライブを楽しんだ。
ウラカン EVOには、車両がドライバーの次の動きとニーズを読み取ることができる「LDVI(ランボルギーニ・ディナミカ・ヴェイコロ・インテグラータ)」と呼ばれる4輪操舵システムが組み込まれている。「スポーツ」モードを選択し、広大な雪の広場でステアリングを切ったままアクセルを踏みつけると、4輪ドリフト状態をキープしながら思い通りの定常旋回ができるのだ。ファイティングブルで豪快に雪煙を巻き上げながら、至福の瞬間を味わうことができた。
ウルスを含めて数時間の雪のアルプスロードをドライブしたあとは、350km先のサンターガタのランボルギーニ 本社へ向け、全車が隊列を組みながら帰路に着く。対向車からは、笑顔やパッシング、クラクションでわれわれの姿を面白がってくれるのが気持ちいい。
しかし、こうしてわれわれを楽しませてくれた大排気量スーパーカーたちが、今後も同じ姿で生き続けられるほど世界の環境は甘くない。会社としてすでに対応しつつあることは、本社工場や博物館見学で開催されたランボルギーニ のサステナビリティについての記者会見で明確に示されている。そのあたりは別稿で紹介する。
【お詫びと訂正】記事初出時、掲載写真に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。