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ランボルギーニが挑むサステナビリティとは。本社工場の見学で次世代に向けた取り組みを体感

2030年代にフルEVのスーパースポーツ「テルツォ・ミッレニオ」登場予定

伊 サンターガタのランボルギーニ本社工場を見学し、ランボルギーニが行なっている環境への取り組みを体感してきた

 12月初旬、「アヴェンタドール SVJ」「ウラカン EVO スパイダー」「ウルス」というランボルギーニの最新ファミリー3モデルでイタリア北部のアルプスを走りまわるファンタスティックなイベント(ランボルギーニで雪のアルプスに挑戦! 「ランボルギーニ クリスマスドライブ」に行ってきた)に参加した。

 V12、V10、V8という大排気量高性能エンジンを搭載したスーパースポーツカーでのドライブは、それはそれで完璧に楽しいものだったが、それを単純に喜んでばかりいられないのが今の世界の情勢であることはご存じの通り。温室効果ガス削減などで重要な役割を持つのは自動車産業であり、製品だけでなく製造工程においても何らかの対策を講じていくのは必修科目だからである。

“ファイティングブル(暴れ牛)”による雪のアルプス越えのレポートは関連記事で
アヴェンタドール SVJ
ウラカン EVO スパイダー
ウルス

 ランボルギーニ本社ビルに隣接する工場の生産ラインを見学した際に開催された記者会見では、そういった面の解説に多くの時間が割かれた。

ランボルギーニ本社工場の生産ラインを見学
工場見学に先だち記者会見も実施された
ラニエリ・ニッコーリ氏

 最初に登壇したのはランボルギーニの製造部門で責任者を務めるラニエリ・ニッコーリ氏で、「ランボルギーニは、地球(の環境)、人、そして製品に対して責任を持っています。まず環境面では、2010年に本社近くに『ランボルギーニパーク』と呼ばれる1万5000m 2 の広大なバイオパークを設け、そこに1万本以上の樫の木を植えることでCO2を吸収したり、ボローニャ、ボルツァーノ、ミュンヘンの各大学と共同で地元の生物多様性を研究したりしています。具体的には、例えば大気汚染とミツバチの喪失に関する研究では、実際にそこでミツバチを飼い、従業員のためにハチミツの製造も行なっています」とコメント。

 また、2015年にはバイオガスを利用した第3世代の冷暖房システムを備えることで1800t/年のCO2を削減し、イタリアで初めて工場全体がカーボンニュートラルとなる認証を取得した。2018年にはSUV ウルスの販売好調に対応するため工場を2倍の16万m 2 に拡大し、2019年には95%を水性とした塗料を使用するペイントショップが完成したことも紹介。さらに従業員が利用するカフェテリアでは、今年から100%プラスチックフリーになったそうである。

ランボルギーニが過去10年にわたって行なってきた環境に対する取り組み
2010年に本社近くに開設された「ランボルギーニパーク」
ウンベルト・トッシーニ氏

 次に登壇した人事部門責任者のウンベルト・トッシーニ氏は、「われわれは常にエコロジーに目を向けながら、今日の、そして未来の経済と社会に貢献します。それには教育に目を向けることが大切です。具体的には、ランボルギーニパークで地元小学校や従業員の子供たちに向けたイベントの開催、高校や大学での授業開催などです。そこでは水の大切さやプラスチックフリーについて学ぶことができます。また、従業員とその子供たちすべてに携帯ボトルを配布したのもその一環です」という。

トッシーニ氏は子供たちの教育に注目することが大切だとアピール
水の大切さやプラスチックフリーについての授業を実施
従業員とその子供たちに携帯ボトルを配布した

 さらに、工場の拡大で新たに採用した従業員についても言及。各部門に配属された新人は必ず先輩とペアで作業を行ない、技能の習得をしながら作業を進めていくのだという。この後見学した工場の中では、こうした様子をあちこちで見ることができた。

新人と先輩がペアを組み、技能の習得をしながら作業を進めていく

「シアン」「テルツォ・ミッレニオ」という2つのコンセプト

リカルド・ベッチーニ氏

 今後の製品については、研究開発プロジェクト管理責任者のリカルド・ベッチーニ氏が解説。「1963年のスポーツクーペ『350GT』から2018年のSUV『ウルス』まで、われわれが開発するクルマは革新の連続です。そして、今や前例のない交通革命の時代になっています。スーパースポーツカーを開発し続けるランボルギーニはそれにどう対処するか。それには軽量で効率的なエネルギー、単一ではなく複数の機能を持つボディ、機械的でなく信号で伝わるパワートレーン、そして第3のミレニアムを進むべく本当の理由、つまりエモーションが必要となってきました」とした。さらに学術関係との連携や、自動車以外の産業部門とのコラボレーションが肝要だとも述べている。

ランボルギーニモデルの歴史

 今回われわれが乗ったスーパースポーツカーたちについては、2020年を境にしてハイブリッドシステムに移行するという。その具体例は、9月のフランクフルトモーターショー 2019で披露したマイルドハイブリッドコンセプトカー「シアン FKP37」。パワートレーンにはアヴェンタドール用をさらにパワーアップしたV型12気筒 6.5リッターエンジンと、34PSを発生する48Vの「eモーター」の組み合わせだ。エネルギーを蓄電するのは48V 600Aのスーパーキャパシタで、その重量はわずか34kg。従来のリチウムイオン電池と比べて3倍力強く、3倍軽く、充電と放電が同じ効率で行なわれるのでオーバーヒートしないという性質を持つ。ちなみに車名の「シアン」はランボルギーニ本社のある伊 ボローニャ地方で「稲妻の閃光」をあらわす方言で、「FKP」はランボルギーニを傘下に収めるフォルクスワーゲンの元会長、8月にこの世を去った故フェルディナント・カール・ピエヒ氏を称える頭文字である。

フランクフルトモーターショー 2019で初公開されたマイルドハイブリッドコンセプトカー「シアン FKP37」
シアン FKP37のアウトライン

 また、2030年代にはフルEV(電気自動車)のスーパースポーツが登場予定で、そのコンセプトカーが2017年に公開された「テルツォ・ミッレニオ」だ。「第3の千年紀」を意味する車名が与えられたこのクルマは、ランボルギーニが大部分の資金提供を行なっているマサチューセッツ工科大学のディンカ研究所と、メカノ合成グループという2つの研究所と提携して開発がスタート。その特徴は蓄電システムにスーパーキャパシタを使用するとともに、ボディシェルを構成するカーボン素材自体を蓄電できる素材とすることで、ボディ全体に蓄電機能を持たせようとするもの。さらに損傷を検出して“自己修復機能”を持つというボディや、インホイールモーターによる4輪駆動システムなどを搭載するという。

2030年代までのロードマップ
多彩な革新的技術を搭載するフルEV(電気自動車)「テルツォ ミッレニオ」

 ランボルギーニという会社は、10年ほど前から始まった生産工程の改革とこれから登場する革新的な製品により、環境に配慮した先進的な企業へと大きく変わろうとしている。そんな会社が作り出すクルマで今回と同じコースを走ったらどうなるだろう。楽しみがまた1つ増えた。