試乗レポート

ランボルギーニ史上最強のSUV「ウルス ペルフォルマンテ」、パンチの効いた加速など刺激的なドライブフィールが魅力!

ランボルギーニ「ウルス」の上位グレード「ペルフォルマンテ」

ダウンフォースが最大8%向上

 2022年秋に6回目の開催を迎えた「ランボルギーニ・デイ・ジャパン2022」の会場で発表されたランボルギーニが誇る“スーパーSUV”「ウルス」の高性能版となる「ペルフォルマンテ」をいよいよドライブすることができた。

 マイナーチェンジ前のウルスに対して、最高出力が16PS増となる666PSに高められた4.0リッターV8ツインターボエンジンを搭載するのは、「ウルスS」と共通ながら、最大トルクを50rpm低い回転数から発生するほか、シャシーのトレッドを16mm拡大して20mmローダウンしたり、車体全体でダウンフォース量を最大で8%も向上した点が大きな違いとなる。また、ドライブモードにはSTRADA(ストラーダ)、SPORT(スポルト)、CORSA(コルサ)に加えて新たにRALLY(ラリー)が設定されたのも特徴だ。

ウルスの上位グレードとなるペルフォルマンテ
サイドミラーを含めたボディサイズは5137×2181×1618mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは3006mm。車両重量は2420kg

 ウルスSに対していくつか差別化されたレーシーな雰囲気のスタイリングにより、ただでさえ異彩を放つウルスがより特別に見える。フロントまわりでは、バンパー下部の形状が異なるほか、エアインテークやエアアウトレットの形状なども専用となる。リアはダウンフォースを38%も増加させるウイングやディフューザーの形状が異なる。試乗した車両には、オプションで選択できるカーボンルーフをはじめ、各部にカーボンファイバー製のパーツがふんだんに装着されていた。

フロントバンパーはカーボン製のアンダーリップが標準装備となる。ウルスSも装着可能
ドライカーボン製のボンネット
カーボン製ルーフはオプション設定
トレッドはウルスSよりも16mm広くなり、カーボンファイバー製ホイールアーチもよりワイド化されている
アヴェンタドール SVJにインスピレーションを得た新設計のリアスポイラーは、リアダウンフォースを38%増加させるという
リアバンパーもカーボン製となり、より後方へ空気を導く形状になっている
AKRAPOVIC(アクラポビッチ)の軽量なチタン製スポーツマフラーを標準装備
標準ホイールは22インチだが、試乗車はオプション設定の23インチを装着。タイヤはピレリの「P ZERO」でサイズはフロントが285/35ZR23、リアが325/30ZR23
フロントブレーキは10ピストンキャリパーにカーボンセラミック製の440Φブレーキディスクが組み合わされる。ナットも軽量なチタン製を採用

 インテリアも、ペルフォルマンテにはアルカンターラが多用されており、カーボンパネルの意匠もより分かりやすいものになっている。5人乗りの場合はリアシートが3分割タイプのベンチシートになり、センターだけ単独で倒せる。運転席からの後方視界も5人乗りのほうが死角が少ない。

コクピット
ステアリングはDシェイプ
内装はアルカンターラを採用
後席用のエアコン、シートヒーター操作パネル。USBポート2口と12V電源も完備
STRADAモードのメーター表示
SPORTモードのメーター表示
CORSAモードのメーター表示
運転席・助手席はセミバケットタイプだが、シートヒーター、ベンチレーション、マッサージ機能を完備
5人乗り用の後席はベンチシート。真ん中の背もたれには肘置きとドリンクホルダーを格納している
5人乗りのラゲッジスペース容量は616L(4人乗りは574L)
5人乗りは後席を折り畳めるのでラゲッジスペースを拡大できる
後席は4:2:4の可倒式。中央部を畳めば長い荷物も積みやすい
センターコンソールは左右対称のデザインを採用。中央にイグニッションスイッチを備え、左側に走行モードを切り替える「ANIMA(アニマ)」セレクター。右側は自分好みに設定できる「EGO」モード用セレクターを配置している

より刺激的なドライブフィール

 同時に乗り比べた2台の車検証によると、ウルスSは車両重量2510kg、前軸重1370kg、後軸重1140kgで、ウルス ペルフォルマンテは車両重量2420kg、前軸重1330kg、後軸重1090kgと記載されていた。フロントが40kg、リアが50kg、計90kgも軽いことも効いてか、ペルフォルマンテの走りにはけっして軽くはない中にも軽快さが感じられた。

エンジンはウルスSにも搭載されているV型8気筒4.0リッターツインターボで、最高出力は490kW(666CV)/6000rpmは同じだが、最大トルクは850Nm/2250-4500rpmとウルスSよりも50rpm下から立ち上がる。組み合わされるトランスミッションは8速ATで、アクティブ・リア・トルク・ベクタリングを備えたフルタイム4WD

 動力性能については、0-100km/h加速が3.3秒、0-200km/h加速が11.5秒、最高速が306km/hと伝えられている。ご参考まで、ウルスSはそれぞれ3.5秒、12.5秒、305km/hとなっている。100km/hからの制動距離も、この車両重量でウルスSも33.7mというのも相当なものだが、ペルフォルマンテは32.9mとさらに短い。

 どちらもとてつもなく速いことには違いないが、ペルフォルマンテはより強烈なパンチの効いた加速を味わわせてくれる。ウルスSではあくまで公道走行を念頭においてか扱いやすさにも配慮されているように感じられたのに対し、ペルフォルマンテはSTRADAモードでもSPORTモードかと思うほどアクセルレスポンスが鋭く、パワー感もある。より分かりやすくペルフォルマンテらしさが表現されているようだ。

 ハンドリングも同様に、敏捷性を高めるためフロントステアリングのキャリブレーションと後輪操舵の制御が差別化されている。また、乗り比べた2台は同じ銘柄とサイズの23インチタイヤを履いていたが、エアサスではなくスチールスプリングである点も乗り比べたウルスSとの大きな違いとなる。

 ドライブすると同じタイヤとは思えないほど足まわりの印象も違って、ペルフォルマンテは路面状況をダイレクトに伝えてくる。車速が高くなるほどその感覚も増していくのは、エアロダイナミクスも効いてのことに違いない。ウルスSの足まわりにはストローク感があったのに対し、ペルフォルマンテはむしろそれを制限して払拭して、足まわりをしめあげて挙動を抑えているようだ。

新設のRALLYモードは?

 SPORTモードにすると、ただでさえ相当なところさらに瞬発力が増して、シフトの制御も高回転まで引っぱるようになり、足まわりもしまって回頭性もよりシャープになる。バックファイアの音も心なしかウルスSよりも派手な気がする。CORSAモードを試すと、さらに過激になる。公道でドライブしてもこれほどの走りっぷりなのだから、サーキットでもさぞかし“ペルフォルマンテ”らしい走りを楽しませてくれるに違いない。

 一方で、オフロードでもペルフォルマンテらしい走りを楽しめるようにと新設されたRALLYモードを舗装路で試してみたところ、サスペンションがよく動くようになるほか、横滑り防止装置の機能が制限され、シフトスケジュールも固定気味に変わり、サウンドの演出もなくなるなど、オフロードでの走りに徹した設定となることが分かった。サーキットとともにオフロードも、ぜひ機会があれば走ってみたいところだ。

 ブレーキも乗り比べたウルスSと同じく、車両重量と速さに対して懐の深いキャパシティを感じさせる点では共通している。軽くなったことでいくぶん余裕も増していることには違いないが、扱いやすいことに変わりはない中で、攻めた走りにも備えて、より初期から減速度が立ち上がる特性に味付けされているように感じられた。

 高級SUVの中でもウルスの存在感はいろいろな意味で際立つものがあるように感じていたが、ペルフォルマンテはさらにその上をいく。スーパースポーツをルーツとする“スーパーSUV”が、再びSUVからスーパースポーツに回帰したかのようだった。

後に停まっているウルスの標準グレード「ウルスS」にも試乗しているのでそちらも合わせてお読みいただきたい
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:堤晋一