試乗記

フィアット「ドブロ」がマイナーチェンジ スタイリッシュな印象になっても変わらない“ドブロらしさ”を改めて体感

マイナーチェンジしたフィアット「ドブロ」

 素朴であったかくて、乗る人を包み込んでくれる本当の豊かさをもつミニバン。ドブロが2023年5月に日本上陸して初めての試乗で、そう感じたことを思い出す。日本の道でも扱いやすい全長4405mmのボディサイズに、2785mmと長いホイールベースを確保し、広い室内スペースと乗り心地のよさを実現しているドブロは、両側スライドドアを備える2列シート5人乗りのドブロと、全長が365mmのびて4770mmとなる3列シート7人乗りのドブロ マキシを用意している。

 そんなドブロがマイナーチェンジモデルを発売したというので、短時間ではあるが改めて試乗してみた。エクステリアをパッと見て、まず感じたのはフレンドリーさに加えて上質感がアップした印象だ。大きな変更としては、フロントマスクに新世代「FIAT」ブランドロゴが配置されたところが目を惹く。これはステアリングも同様で、赤い色味がなくなってしまったのは少し寂しい気もするが、スタイリッシュなロゴとなっている。

 また、新たに装備されたLEDヘッドライトやグロスブラックのサイドバンパーで先進的な雰囲気をプラスしつつ、1980年代から1990年代の「FIAT」ロゴからインスパイアされたという、4本線のマークが左のヘッドライト横にアクセントとして入っているのがオシャレだ。

2列シート5人乗りのドブロ。ボディサイズは4405×1850×1825mm。ホイールベースは2785mm。最高出力96kW(130PS)/3750rpm、最大トルク300Nm/1750rpmを発生する直列4気筒DOHC 1.5リッターディーゼルエンジンを搭載し、トランスミッションには8速AT「EAT8」を組み合わせる。駆動方式は前輪駆動
16インチアルミホイールに装着するタイヤはグッドイヤー「EfficientGrip Performance 2」(205/60R16)
マイナーチェンジを行ない、LEDヘッドライトを新しく装備することでスタイリッシュなフロントデザインに刷新。中央に配置されたブランドロゴバッジは新しいレタリングのFIATロゴに変更された。また、左ヘッドライトの横には、1980~1990年代のFIATロゴにインスピレーションを受けた4本線のマークが施される

 インテリアはブラックを基調にシルバーのアクセントカラーをダッシュボードやドアパネルなどに配置して、こちらもチープさを感じさせないセンスのよい空間。10インチのタッチスクリーン式ディスプレイや、7インチのフルカラーTFTマルチファンクションメーターも備わるほか、ステアリングヒーターやUSBソケット(Type-C)が2口装備されているのもトピックとなっている。

 たっぷりとしたサイズの背もたれに身体を預けられるシートは、張りのある新しいファブリック。刺繍のパターンが変更され、前席には「FIAT」ロゴ入りのシルバーラインが入っている。クッションは柔らかすぎず硬すぎず、座面がやや短めではあるもののサイドのサポート形状が控えめで、自由度が高くてリラックスできる座り心地だ。

フィアット ドブロのインパネ。ブラックを基調にシルバーのアクセントカラーを用いることでシックな印象となった
ステアリングのロゴが変更となった。ステアリングヒーターも標準装備
クルーズコントロール&スピードリミッターのスイッチ位置をステアリングスポークに変更し、利便性を向上
シフトはこれまでのダイヤル式からトグル式に変更
USB Type-Cのポートを2口備える
10インチタッチスクリーンはApple CarPlay/Android Autoに対応
新しくフルカラーの10インチTFTを採用したマルチファンクションディスプレイを標準装備
前席頭上にはハイセンターコンソールを標準装備
フロントシート。シート表皮はファブリック。シルバーのラインには「FIAT」ロゴが刻まれる
リアシートは3座独立で、フォールディング機能を備える
シートアレンジもバリエーションが豊富。最大2126Lまで拡大可能
フレキシブルラゲッジトレイは2段階に高さを調節可能
マイナーチェンジで大人な印象になったドブロにまるも亜希子が試乗!

 試乗車は2列シート5人乗りモデルで、さっそくエンジンをスタートしようとしてセンターコンソールに目をやり、とてもシンプルな配置に変わっていることに気がついた。ダイヤルだったシフトはコンパクトなスイッチ式になっており、凸凹がなくすっきりとしている。トグル式のシフトはブラインド操作がしにくいため、目視で「D」の位置を確認。これはオーナーとなって慣れてくれば、指の感覚だけでもスマートに操作できるようになるのかもしれない。

 搭載されるパワートレーンは、最高出力130PS、最大トルク300Nmとなる1.5リッター直列4気筒ディーゼルターボエンジンと8速ATのコンビで、従来と変わらない。FFということもあり、発進加速は穏やかさがあるがすぐに太いトルクが引き出され、グイッと力強い加速に包まれる。市街地のストップ&ゴーではアイドリングストップからの再始動が少し遅く感じるシーンもあるが、むしろ急がず慌てずゆったりとした運転が自然とできるようになる気がした。

ドブロは自然とゆったりとした運転ができる

 そういえばマイナーチェンジ前のドブロで遠出をした際にも、悠々と走る楽しさがいいなと実感したことを思い出した。今回は首都高のみなので高速域の速度までは出していないが、過剰な剛性感がない代わりにボディのカタマリ感と軽やかさのバランスがよく、接地感がしっかりあるところが魅力的。カーブでは多少のロールはあるものの、動きが穏やかでジワリとした荷重移動がリニアに伝わってくるので、まったく不安はなくむしろ操っている満足感が湧いてくる。

挙動がリニアに伝わるので“クルマを操っている”という満足感がある

 今回、足まわりなどのセッティングを変更したといったアナウンスはなく、16インチタイヤの銘柄も変わっていないということだったが、首都高の継ぎ目などでドスンとくるような振動が控えめで、どことなくしっとり感がアップしているようにも感じた。もしかすると、安全運転支援システムにミリ波レーダーが追加されているので、その際に見直した可能性はある。ちなみにACCでは停止後3秒以内の再発進ができるようになり、ノロノロ渋滞などでも使いやすくなっている。またそのスイッチがステアリング上に設置され、分かりやすくなったこともうれしいポイントだ。

 帰り道は後席にも座って試乗してみると、3座独立した座面は相変わらずおさまりがよく、乗り心地もフラット感が高くて快適。前方が開けている視界も開放感があって、やはり多人数でのドライブを心地よくしてくれる空間だと実感した。

安全運転支援システムの機能も向上し、後部座席の乗り心地もよいドブロ。お出かけにはもってこいの1台

 乗る人のアイディアや自由な発想をどんどん受け止めてくれる、懐の深さをもつドブロは、使いやすさと快適装備がさらに充実して魅力的になっていた。

街中を走るドブロ
まるも亜希子

まるも亜希子/カーライフ・ジャーナリスト。 映画声優、自動車雑誌編集者を経て、2003年に独立。雑誌、ラジオ、TV、トークショーなどメディア出演のほか、エコ&安全運転インストラクターなども務める。海外モーターショー、ドライブ取材も多数。2004年、2005年にはサハラ砂漠ラリーに参戦、完走。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。2006年より日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。ジャーナリストで結成したレーシングチーム「TOKYO NEXT SPEED」代表として、耐久レースにも参戦。また、女性視点でクルマを楽しみ、クルマ社会を元気にする「クルマ業界女子部」を吉田由美さんと共同主宰。現在YouTube「クルマ業界女子部チャンネル」でさまざまなカーライフ情報を発信中。過去に乗り継いだ愛車はVWビートル、フィアット・124スパイダー、三菱自動車ギャランVR4、フォード・マスタング、ポルシェ・968、ホンダ・CR-Z、メルセデス・ベンツVクラス、スズキ・ジムニーなど。現在はMINIクロスオーバー・クーパーSD。

Photo:中野英幸