試乗記

スバルの新型「フォレスター スポーツ EX」で房総へドライブ 1.8ガソリンターボのフィーリングと乗り心地を味わう

スバル新型「フォレスター」のガソリンターボ仕様グレード「スポーツ」に試乗

気になっていたことを公道で確認

 この3月にサーキットでプロトタイプに試乗した際、新旧を乗り比べて体感した従来型からの進化の度合いや、1.8リッター直噴ターボ“DIT”の「スポーツ」とS:HEVの「プレミアム」のキャラクターの違いがよく分かり、全体として新型フォレスターの印象は上々だった。

 クロストレックでも好印象だったS:HEVがフォレスターでもよくできていたのは予想どおりとして、サーキットでは予想以上に軽快な走りとパワフルな走りが楽しめる「スポーツ」のよさが際立って感じられた。

 その「スポーツ」を公道でドライブできる機会がやってきた。今回は一般ユーザーがごく普通に乗るのと同じような走り方で、都内から房総までドライブに出かけてみた。

 出発時の天候はくもり。顔立ちはだいぶ変わったが、見た目の印象はあくまでフォレスターらしい。しっかりとした造形インパネに新感覚の模様を配するとともに、随所にカッパーのアクセントをあしらった上質なインテリアの居心地もいい。

新型フォレスター SPORT EX(419万1000円)。ボディサイズは4655×1830×1730mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm。車両重量は1640~1660kg
ブロンズ塗装の18インチアルミホイールに、オールシーズンタイヤのファルケン ZIEX ZE001A A/Sを装着。タイヤサイズは225/55R18
フロントグリルから連続するデザインのヘッドライト
フロントグリルはツヤのあるブラック塗装
左右のリアコンビネーションランプをつなぐようなデザイン。リアゲートから「FORESTER」のエンブレムが消え、文字を彫り込んだオーナメントを新採用
Cピラーに「SYMMETRICAL AWD」を装着
サイドシルやテールパイプのオーナメントをブロンズで統一
新型フォレスター スポーツ EXのインパネ。外装と同じく随所にブロンズのアクセントカラーが用いられる
11.6インチセンターインフォメーションディスプレイは標準装備
スポーツ EXは12.3インチフル液晶メーターを標準装備。アイサイトX非搭載のスポーツグレードでは4.2インチマルチインフォメーションディスプレイ付ルミネセントメーターとなる
アイサイトのスイッチはステアリングの右スポークに集約。アイサイトXがフォレスターに新搭載された
ステアリングヒーターも標準装備されるのがうれしい
シフトノブ
電動パーキングブレーキのスイッチ下部にデジタルマルチビューモニターの切り替えスイッチを配置
シート表皮はウルトラスエード/合成皮革。ブラウンのステッチがアクセント
車内の至る所にイースターエッグが隠されている
電動スライド式サンルーフはメーカーオプション装備
6:4分割可倒リアシートでラゲッジのアレンジも可能。標準装備のトノカバーはラゲッジボード下のスペースに収納できる。スペアタイヤも搭載される
ラゲッジにはユーティリティナットを組み込めるユーティリティホールを配置

 プロトタイプにサーキットで乗ったときにはおおむね好感触をつかんでいたが、公道で乗るとどうなのか気になっていたことが大きく2つある。1つは乗り心地が硬いかもしれないということ。もう1つは「スポーツ」としての期待にどう応えてくれているかだ。

 サーキットでは大丈夫でも公道で乗ると乗り心地の硬さが気になったケースは過去にいくらでもある。フォレスターでもそれほど硬くなさそうな気配は感じたものの、実際どうなのかをぜひできるだけ早く確かめておきたかった。

新型フォレスター スポーツ EXをリアルワールドで体感

乗り心地が絶妙な落としどころ

 そこで今回、一般道、首都高速、高速道路をまんべんなくドライブしてみたのだが、ひとまず「大丈夫」というのが率直な第一印象だ。19インチではなく18インチタイヤを履き、リアダンパーロッドを延長した快適性重視の「プレミアム」のほうが乗り心地としてはいいことには違いなさそうだが、「スポーツ」らしいひきしまった感覚はありながらも不快には感じさせない、絶妙な落としどころに着地しているように思えた。

高速道路を走る新型フォレスター

 後席がどうなのかも確かめたいので運転を交代してもらい後席に乗ってみたところ、市街地ではやや硬さを感じたものの大きな不満もなかった。後席に人を乗せる機会が多いユーザーでも問題なく使えそうだ。

 後席の居住空間は広く、適度にアイポイントが高められていて見晴らしもいい。高速巡行時のほうが硬さは気にならず、前席と同様にフラット感があり、目線のブレが少ないことが後席でも体感できた。静粛性も十分で、煩わしい思いをすることなく前後席間で会話できる。

新型フォレスター

 サーキットでも好印象だった軽快なドライブフィールを公道でも同様に味わえたのもうれしかった。乗り心地が硬くないながらも適度にひきしまっているおかげで、軽快さが表現できているに違いない。ステアリングフィールも自然でスッキリとしていて、従来型で見受けられたような微妙なユルさもなく、意のままに操ることができる。

 ロールもほどよく抑えられていて上屋のグラつきが気にならず、横Gを強く感じさせることもない。おかげでカーブが迫っても身構える必要もなく、快適な中でキビキビとした軽快なハンドリングを楽しめる。そのあたりはまさしく「スポーツ」としての期待に応えている部分といえそうだ。

新型フォレスター

DIT×リニアトロニックが妙味

 エンジン性能だって、「スポーツ」としての期待に応えてくれていてほしいのはいうまでもない。フォレスターというと、かつてはEJ20ターボのパワフルな走りが持ち味だったが、従来型の登場時にターボが廃止されてさびしい思いをしていたところ、途中で復活したのがCB18型のDITを搭載する「スポーツ」だった。

新型フォレスター スポーツ EXは、最高出力130kW(177PS)/5200-5600rpm、最大トルク300Nm(30.6kgfm)/1600-3600rpmを発生する水平対向4気筒DOHC 1.8リッター直噴ターボ“DTI”エンジンを搭載。トランスミッションにはCVT(リニアトロニック)を組み合わせる。WLTCモード燃費は13.6km/L

 モデルチェンジした新しい「スポーツ」も、EJ20ほど刺激的ではないにせよ、中間加速に盛り上がり感のある、いかにもターボらしい力強さは十分に味わえるのがうれしい。Sモードを選択したときの俊敏なアクセルレスポンスも「スポーツ」らしい。

 そのよさを、リニアトロニックがよりうまく引き出している。これまでにも増してダイレクト感があり、「おぬしは本当にCVTなのか?」と思わずにいられないほど名前のとおりリニアなフィーリングで、ありがちだったベルトがたわむ感覚もない。サーキットではもう少し素早くシフトチェンジしてくれるとなおいいのにと感じたパドルシフトを操作したときの応答も、公道ではそれほど気にならない。

“スポーツ”らしい走りを味わえる

 バーチャルながら本物っぽく見えるようにしたメーターはとても見やすく、欲しい情報がうまく網羅されているのもいい。サンバイザーに大きなチケットホルダーが付けられていたり、ドリンクホルダーや外部カメラ映像を映し出すためのスイッチなどがちょうどいい使いやすい位置に配されていたりと、いろいろ気が利いているのもスバルらしい。

 帰路はあいにく雨に見舞われたのだが、そこであらためて感心したのが、スバルがこだわる視界のよさだ。運転席に座ったときに周囲に遮るものが少なく、特にドアミラーまわりが見やすいのに加えて、新型はサイドビューが水平基調になったことで斜め後方のウィンドウがより広くなり、死角が小さくなったように感じられた。視界がいいと雨でも不安に感じる要素が小さくなるのはいうまでもない。

デザインだけでなく、運転しやすい視界を確保することにもこだわりが込められている

 走りのほうも、けっこう雨脚が強い中でもOEMタイヤがいい仕事をしていてしっかりとしたグリップ感があり、ハンドルが取られることもなく、安心して走れることも確認できた。

 S:HEVがどうなのも大いに気になるところだが、「スポーツ」を名乗るDITのフォレスターが、いかに期待されるものにしっかりと応えようとしているかがひしひしと伝わってきた。

新型フォレスターは4月3日~24日の3週間で、月販2400台という計画に対して4倍以上となる約1万台の受注があったという。そのため、2025年4月末時点での納期はS:HEVが2026年春ごろ、DITが2025年夏ごろになるとされている
岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:中野英幸