インプレッション

D-SPORT「コペン デモカー」

大きく変わったベース車に合わせたパーツを開発中

新型コペンのデモカーを手掛けたD-SPORTの松尾光洋氏

 2代目となったダイハツ工業「コペン」が登場して間もないタイミングで、早くもカスタムモデルをドライブする機会を得た。ダイハツカスタマイズブランドとして設立され、ワークス的な位置づけでさまざまなアイテムをリリース、初代にも深く携わりコペンを熟知しているD-SPORTのデモカーである。

 初代と同じくイエローのボディーカラーが目を引くデモカーには、開発中のいくつかのアイテムが装着されている。今回、プロジェクト全体を企画・監修したD-SPORTの松尾光洋氏より話をうかがうことができた。

 内容的に2代目コペンは初代から大きく変わっており、それに合わせたパーツが必要となるが、既存の商品ラインアップのうち可能なものはすべて装着済み。具体的には、フロントブレーキキャリパーは初代と同じなので、ディスクローターとブレーキパッドを既存品に交換。ステンメッシュのブレーキラインも既存のものがそのまま付くので流用している。リアはドラムブレーキで、初代よりも容量が増していることを確認しており、ノーマルをそのまま生かしている。

 サスペンションは今冬からの発売を予定しているスプリングとショックアブソーバーの試作品を装着。足まわりの開発にあたっては、各種走行試験を重ねながらじっくりと仕様を煮詰めているところだという。

イエローのボディーカラーが目を引くD-SPORTのデモカー。新型コペンではボディー構造を骨格と外板で切り分ける「DRESSFORMATION(ドレスフォーメーション)」と呼ばれる着脱構造を採用しており、D-SPORTでは前後バンパーやフェンダー、ボンネットなどを今後ラインアップする予定
足まわりにレイズ製6本スポークアルミホイールを装着。タイヤサイズは純正と同じ165/50 R16
「D-SPORT」バッヂは純正品といわれても違和感のない仕上がり

 エンジン関連はこれから着手するらしく、取材日の時点ではまだノーマルのまま。吸気系はエレメントのみ交換するタイプのクリーナーを設定する予定で、専用形状なので汎用品は使えないため、新たに設定する。排気系ではマフラーを開発中で、近日中に車外騒音試験をパスして今秋には市販する予定。性能向上やサウンドの洗練はいうまでもないが、バンパーの切り欠きからまっすぐ出るような形状とし、ルックスにも大いにこだわるというから楽しみだ。

 また、初代でも好評だったECUも、ノーマルに対する違いを分かりやすく体感できるような味付けを追求しているという。こちらも楽しみにしたい。

 これら商品の開発にあたっては、ダイハツにアドバイスを請うこともたびだびだとか。性能や品質に対するこだわりが強く、それがユーザーにとって大きな安心感に繋がっているのもD-SPORTのよき伝統だ。

 2代目コペンの大きな特徴である「ドレスフォーメーション」への対応については、D-SPORTらしくスポーティなイメージを訴求した前後バンパーやフェンダー、ボンネットなどをラインアップする予定で、2015年初頭の東京オートサロンでの初披露を念頭に開発中というから、これまた楽しみである。

取材当日のデモカーのエンジンはノーマル状態だったが、発売済みの「オイルフィラーキャップTypeII」(6800円)や「スーパーラジエターキャップ」(1900円)、開発中の「アースイング」などを装着していた

ノーマルの完成度にスポーティさをプラス

 そんなD-SPORTのデモカーを、まだ開発途中であることを承知で味見することができた。

 抜群のホールド感を提供してくれるバケットシートは初代L880Kコペン用を踏襲しており、シートレールは2代目コペンに合わせて専用に新設された。ノーマルよりも若干ポジションが低くなるところが心地よく、これのおかげでよりクルマとの距離が縮まった感じがして、一体感のある走りを楽しむことができる。

D-SPORTデモカーのインテリア。シートレールは専用設計。このほか今秋に「リクライニングバケットシート」の発売を予定している
インテリアでも開発中のさまざまな製品が装着されていた。開口部が大きいトランク部分の左右を連結してボディー剛性を向上させる「トランクバー」(9500円、税別)は発売済み

 走り出すと、ノーマルのままでも完成度はそれなりに高く、十分にスポーティなフィーリングを味わえる2代目コペンに、さらにスポーティさが加味されていることが分かる。締め上げたダンパーが効いてか、より初期の姿勢変化が抑えられ、路面との接地感が増している。まだベストマッチングを追求している途中とのことだったが、このままでもけっこう楽しめそうな乗り味だ。ブレーキのタッチもよく、強めに踏み込んだときに微妙なコントロールをしやすい味付けとなっている。

 ここから足まわりをさらに煮詰め、加えてエンジンまわりに手を入れるなど順調に開発が進めば、なかなかに楽しいクルマに仕上がるであろう雰囲気が感じられた。さらに、ドレスフォーメーションによる内外装のカスタマイズも加わると、その楽しさがいっそう増すことはいうまでもない。

 また、初代コペンを駆るジムカーナなど競技系ユーザーもちらほら見受けられたが、2代目コペンについても、取材の前日に晴れてJAF(日本自動車連盟)の公認車両になったところ。これまでもニーズのあった、クラッチやLSDなどの駆動系パーツも、従来品の互換性や新規開発品も含め順次、展開していくという。

 コペンを手がけるアフターメーカーはそれほど多くはない中で、ダイハツとの関係が深く、信頼性も高く、これまでも長らく専門的に関わってきた実績を誇るのがD-SPORTである。そのD-SPORTによる、2代目コペンをより深く楽しむためのカスタマイズパーツが、これから順次ラインアップされていくことに、大いに期待したいと思う。

岡本幸一郎

1968年 富山県生まれ。学習院大学を卒業後、自動車情報ビデオマガジンの制作、自動車専門誌の記者を経てフリーランスのモータージャーナリストとして独立。国籍も大小もカテゴリーを問わず幅広く市販車の最新事情を網羅するとともに、これまでプライベートでもさまざまなタイプの25台の愛車を乗り継いできた。それらの経験とノウハウを活かし、またユーザー目線に立った視点を大切に、できるだけ読者の方々にとって参考になる有益な情報を提供することを身上としている。日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:安田 剛