インプレッション

ハーレーダビッドソン「フォーティーエイト」「アイアン 883」

ハーレーダビッドソン「フォーティーエイト」

 かつてのレーシングDNAを受け継ぎ、スポーティな性能と外観をもつハーレーダビッドソンの「スポーツスター」は、国内で最も人気の高いシリーズの1つ。2016年はスポーツスターのラインアップのうち「FORTY-EIGHT(フォーティーエイト)」と「IRON(アイアン) 883」の2車種についてリファインを施し、さらに魅力を高めている。

 日本自動車輸入組合(JAIA)が主催した輸入オートバイのプレス向け試乗会で、この2車種に試乗することができた。ここでは主にフォーティーエイトの特徴と試乗インプレッションをお届けしたい。

モデルカラー変速機価格
フォーティーエイトビビッドブラック5速MT1,500,000円
モノトーンカラー1,522,000円
ハードキャンディーカスタム1,544,000円
アイアン 883 モノトーンカラー1,190,000円
ハードキャンディーカスタム1,212,000円

コンパクトで街乗りに適したフォーティエイト

1201ccならではの余裕のあるトルクとパワーをもつフォーティエイト

 フォーティーエイトの名は、1948年に初めて特徴的な“ピーナッツタンク”を採用したオートバイを製造したことに由来する。この新しいオートバイにも、その造形が活かされた容量7.9Lのピーナッツタンクを搭載し、スポーツスターの軽快感を一段と強調するモデルとなっている。

特徴的な形状のピーナッツタンク

 ハーレーダビッドソンの数あるモデルの中でも1番の売れ筋だというフォーティーエイト。最新の2016年モデルでは車体の各部がリファインされている。フロントフォーク径が49mmに大径化され、リアもイニシャル調整付きのプレミアムサスペンションとなった。ホイールが従来のスポークからアルミキャストとなり、それにともなってタイヤはチューブレス化を果たした。シート形状の変更などもあり、全体的に乗り心地面で大きな改善が図られたことになる。

フロントフォーク径は49mmに大径化
イニシャル調整が可能なプレミアムサスペンションに変更されたリア周り
幅130サイズのファットなフロントタイヤとアルミキャストホイール
アナログタコメーター付きのシングルメーター

 ホイールベースは1495mmと、スポーツスターのシリーズ中最も短い。ピーナッツタンクが7.9L容量と小さいこともあり、外観上も非常にコンパクトに見える。1201ccもの排気量を持つとは思えないサイズ感で、実際にまたがってみてもその印象に変わりはない。

エンジンの排気量は1201cc
右2本出しのエギゾーストシステム。排気音は耳障りではなく小気味よい

 ポジションは足を前に投げ出すフォワードコントロールで、小柄な人には扱いが難しそうにも思えるが、意外に懐の広い部分もかいま見える。というのも、一見着座位置が“自然と決まってしまいそう”な形状のシングルシートではあるものの、前後方向への着座位置の自由度が高く、ある程度ライダーの体格に合わせて乗り方を変えられるためだ。

見た目以上に着座位置の自由度が高いシングルシート
ミラーは車体のシンプルなシルエットを崩さないようハンドル下に取り付けられている

 スポーツスターの中では最軽量級の247kgという車両重量で、しかも徹底的に低重心化されていることから、走り出す前も後も重さは気にならない。中排気量モデルと勘違いしそうになるが、トルクの太さとともにギヤレシオがロング気味に設定され、1速での走り出しが極めて穏やかなところに、1201ccならではの余裕を感じる。ギヤチェンジせずとも、およそ60km/h程度に到達するまで滑らかにパワーを操れるのは驚きだった。

切り返しなどで操作が重いようなことはなく、バランスのよさを感じさせる

 かといって、決して走りがダルいわけではない。むしろアクセルレスポンスはダイレクト感があり、パワーを引き出したいときに必要な分だけタイムラグなく引き出せる。それでいて過敏さもなく、空冷Vツインならではの鼓動感とともに絶妙の味付けになっているのが、アメリカンでありながらもスポーティさを損なっていないフォーティーエイトの面白いところだ。

 130mm幅のややファットなフロントタイヤは、旋回時やレーンチェンジの際に重さを感じさせる要因になると考えられがちではある。けれど、もともとバンク角の少ないハーレーダビッドソンにおいては、タイヤの太さによる操作性の違いはさほど気にならない。それよりも、アメリカンらしいゆったりした切り返しの楽しさ、気持ちよさを味わえるバランスに仕上がっていることが印象としては強かった。

フォーティーエイト

ロングライド向けのアイアン 883

ハーレーダビッドソン「アイアン 883」

 一方、アイアン 883は排気量883ccとフォーティーエイトと比べるとやや少ない感じもするが、12.5Lのタンク容量を持ちロングツーリングを得意とするモデル。タンク容量の少ないフォーティーエイトは、どちらかというと街乗り用の“足”として利用するのに向いたモデルと言える。

アイアン 883のライディングポジション
フォーティエイトより容量の大きいタンク

 アイアン 883は車体こそフォーティーエイトより大きく感じるものの、ステップ位置が手前寄りのミッドコントロールで、シートからハンドルまでの距離も遠すぎず、日本人の体型に合いやすい作りになっている。違和感の少ないライディングポジションとゆったりした構えで、気分的に一段と「ハーレーに乗ってる感」を味わえる1台に仕上がっている。

883ccと排気量としてはミドルクラスながら、ロングツーリングにも適している
ほどよいホールド感のシングルシート
スピードメーターはアナログ
幅100mmサイズの細身のフロントタイヤ
リアサスペンションはフォーティエイトと同様のものとなっている
テール周りの作りはシンプル
アイアン 883

日沼諭史