試乗記

MINI ジョン・クーパー・ワークス、唯一無二のスタイリングと期待以上の走り

ハイパフォーマンスモデルの「MINI ジョン・クーパー・ワークス」に試乗

ラインアップが豊富な新型MINI

「こんなに楽しくていいの?」。乗り出した瞬間からこんなにワクワクさせられるクルマは久しぶりだった。その見た目だけでもドライブ欲を掻き立てられるし、実際に運転してみると期待以上の走りを見せてくれる。「MINI JOHN COOPER WORKS(ジョン・クーパー・ワークス/JCW)」はとびっきりの魔法のようなクルマだ。

 まずは、MINI JCWがどんなモデルなのかを改めておさらいしたいと思う。ジョン・クーパーとは、1960年代にモータースポーツ界を席巻した人物で、クラシックMINIをチューニングし、モンテカルロラリーを3度も制覇するなど、MINIのチューニングにおいて偉業を成し遂げている。MINI JCWもそうだが、MINI クーパーの名称も同じジョン・クーパー氏から取られている。「クーパー」は、MINIの高性能モデルに冠される名称であり、その中でもJCWは最上級の運動性能を備えたモデルというわけだ。

 2024年にフルモデルチェンジしたTHE NEW MINIには、3ドアと5ドアハッチバックのクーパー(ガソリン/EV)、ミドルサイズSUVのカントリーマン、カントリーマンよりひとまわり小さい電気自動車専用のエースマン、3ドアオープンモデルのクーパーコンバーチブルが設定されている。ここにさらにJCWが追加され、なんとJCWにも5ドアハッチバックモデル以外全てラインアップされているというからおどろきだ。自分の好きなスタイリングでJCWを味わえるというのは、ファンにはうれしいポイントだろう。

 今回試乗したのは、もっともベーシックな3ドアハッチバックのMINI JCW。直列4気筒2.0リッターターボエンジンを搭載し、クーパーCよりも75PS/150Nm、クーパーSよりも27PS/80Nmアップした231PS/380Nmを発揮する。また、JCW専用にチューニングされたサスペンションを採用しており、さらに運動性能が高められている。

 MINI JCWは、まずは誰が見てもその唯一無二のスタイリングに目を惹かれるはずだ。MINIらしい丸目やミニカーのようなデザインに加えて、ブラックのボディに赤いアクセントカラーが入っており、ゴツくて主張の強いスポイラーやディフューザーが装着されている。全体的なスタイリングはおもちゃ感がありながら、大人がかっこよく乗れる雰囲気もあり、このデザインだけでもMINIがほしくなる人の気持ちがよく分かる。

今回試乗したのは3ドアハッチバックの「MINI JOHN COOPER WORKS」(540万円)。ボディサイズは3875×1745×1455mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2495mm
18インチホイールに組み合わせられるのはピレリ「CINTURATO P7」(215/40R18)。JOHN COOPER WORKSのロゴ入りレッドキャリパーもスポーツマインドをくすぐるアイテム
直列4気筒DOHC 2.0リッターターボエンジンは最高出力170kW(231PS)/5000rpm、最大トルク380Nm/1500-4000rpmを発生。7速ダブルクラッチトランスミッションを組み合わせるとともに、JCW専用チューニングが施されたスポーツサスペンションなどの採用によりドライビングパフォーマンスが最高レベルまで引き上げられたという

 クルマに乗り込んでみると、期待を倍増させてくれるギミックがたくさん装備されていた。最初に目に飛び込んで来たのは、センターに鎮座した存在感ある大型の円形ディスプレイ。運転席にはメーター類の液晶パネルはなく、速度表示や情報を見ることができるのはヘッドアップディスプレイのみ。その代わり、大きなセンターディスプレイでナビゲーションやオーディオ、エアコン、車両設定などのさまざまな操作を行なうことができる。

インテリアではパドルシフト付きのJCWスポーツステアリング、JCWスポーツシートなどが与えられる

 その中でもおもしろいのがExperiencesモードだ。ディスプレイの下にはMINIの伝統的なトグルスイッチがあり、Experiencesモードをワンタッチで切り替えることができる。ノーマルの「CORE」、エコの「GREEN」、スポーツの「GO-KART」などが用意されており、アクセル開度に対しての反応やステアリングの重さなどのドライブ特性が変わる。さらにそれだけではなく、モードに合わせてセンターディスプレイのデザインが変更されたり、アンビエントライトや助手席側のダッシュボードのプロジェクションカラーまでモードにマッチしたカラーリングになったりするところが特徴的だ。

「TIMELESS」「VIVID」「BALANCE」「PERSONAL」は走行モードがノーマルに固定されるが、前述したように車内の雰囲気がガラリと変わる(カントリーマンとエースマンには「TRAIL」も用意される)。さらにおもしろいポイントは、ヘッドライトとテールランプもデザインを切り替えられるということ。ミニらしい丸目だけではなく、JCW仕様のスポーティな2本線にすることもできる。

走行モードはノーマルの「CORE」、エコの「GREEN」、スポーツの「GO-KART」などが用意される

おどろくほどクイックで楽しいハンドリング

その走りはいかに?

 MINIはエンジンをかける時にもワクワクさせてくれる。センターディスプレイの下にはキーのようなスイッチがあり、これをひねることでエンジンがかかる仕組み。最近のクルマはほとんどボタンスイッチになったが、エンジンをかける時にキーをひねるこの儀式が気持ちをさらに高めてくれるのだなと改めて気づかされる。

 ハンドルは女性の筆者にとってはかなり太めだと感じたが、スポーティな雰囲気はひしひしと伝わってくる。走り出してみると、サスペンションが専用チューニングになっていることもあって足まわりはかなり引き締められており、路面の凹凸をゴツゴツ拾う感覚がある。ただ、硬い印象はあるものの、振動は一度でピタリと収まるので不快感は少ない。そして、その乗り心地と引き換えにおどろくほどクイックで楽しいハンドリングを味わうことができる。

足まわりはかなり引き締められているものの、振動は一度でピタリと収まるので不快感は少ない

 ノーマルモードの「CORE」も十分パワフルで楽しいが、「GO-KART」モードに切り替えると途端に車内が赤く光り、背中を蹴っ飛ばされるように爆発的に加速する。アクセルペダルの踏み込みに対するレスポンスが明らかに向上し、まるでアニメのカーチェイスのワンシーンかのようにクルマが弾けるように走り出す感覚が楽しくて仕方ない。なるべく回転を引っ張るようにギヤを選ぶので、エンジンの気持ちよさをしっかり味わえるし、減速していくと自動でブリッピングを入れてくれるところもうれしい演出だ。さらにスピーカーから擬似的なエンジン音を増幅して流してくれるので気分も高まる。

 ハンドリングはキビキビと軽快で、大パワーを自由自在に操って駆け回れる楽しさについ笑顔になってしまった。「GO-KART」モードは、爽快で痛快な走りを見せてくれるが、その他のモードも十分パワーがあり操縦性も抜群なので、普段の通勤や買い物、誰かを乗せる時などでもジョンクーパーらしさが感じられるところがいいなと思った。

思わず笑みがこぼれるほど運転が楽しい!

 足まわりは硬めで、後席はお世辞にも広いとは言えないので3ドアモデルをファミリーカーにするのは難しいかもしれないが、前席2名以下での利用がメインになるドライブが好きな人なら最高のモデルになるはずだ。そして「MINIやJCWのデザインが好き!」という思いで買った人でも、新たな楽しみの扉を開けてくれるモデルに違いないと感じた。

ドライブ好きなら最高のモデルになるに違いない1台だと感じた
伊藤梓

クルマ好きが高じて、2014年にグラフィックデザイナーから自動車雑誌カーグラフィックの編集者へと転身。より幅広くクルマの魅力を伝えるため、2018年に独立してフリーランスに。現在は、自動車ライターのほか、イラストレーターとしても活動中。ラジオパーソナリティを務めた経験を活かし、自動車関連の動画やイベントなどにも出演している。若い世代やクルマに興味がない方にも魅力を伝えられるような発信を心がけている。

Photo:高橋 学