試乗記

“砂漠の王者”が復活! 三菱自動車の新型「パジェロ」を見て乗った【後編】

2026年12月17日に正式発売となる新型「パジェロ」に試乗

袖ヶ浦フォレストレースウェイで試乗

 撮影会からわずか数日、場所を袖ヶ浦フォレストレースウェイに移していよいよ新型「パジェロ」に試乗することができた。与えられたトップモデルの「SUPER EXCEED」に乗り込めば、キャメル&ブラックのインテリアはかなりの上質感。セミアニリン本革の触感も滑らか。ドライバーズシートからの視界も開け、大きくなったとはいえ取り回しは良さそうだ。

 エンジンを始動すれば2.4リッターディーゼルの4N16型エンジンが目覚めるが、静粛性はなかなかだ。ディーゼルならではの音や振動はもちろん感じるが、派手に揺さぶられるようなことはなく、これならタウンユースでも満足できるだろう。

新型パジェロが搭載する直列4気筒DOHC 2.4リッターディーゼルターボ「4N16」型エンジンは、最高出力150kW(204PS)/3500rpm、最大トルク480Nm(48.9kgfm)/1750-2500rpmを発生

 走り出せばトルクの発生は穏やかであり、アクセルに対してリニアに応答してくれるところが特徴か? 悪路での走破性を考えれば、トルクフルにしすぎるよりもこちらのほうが扱いやすいかもしれない。少しずつペースを上げてみても静粛性はなかなかだ。フロントガラスから前後ドアガラスにも遮音ガラスを採用したことも効いているのだろう。これならロングドライブをしたとしても、疲労を感じるようなことは少ないだろう。

 ちなみにこの静粛性のおかげもあり、たとえ3列目に乗っていたとしてもドライバーと会話がしやすく仕上がっていた。ただ、1つだけ気になるところはエンジン回転が高まったとき、具体的に言えば3000rpmあたりから高負荷を与えるとエンジンがパタパタとしたノッキングとも違う独特の音が感じられてしまうことだった。エンジニアによれば燃焼音やターボのメカノイズがダッシュボード経路から車内に浸入しやすいとのことだったが、これは今後に改良を期待したいポイントだった。

新型パジェロは遮音ガラスの採用などで高い静粛性を実現している

 ラダーフレームに改め、リアサスペンションを新開発の5リンク式リジッドにしたことによる走りは、常用域におけるしなやかな乗り味が好感触。2列目や3列目に乗ったとしても乗り心地は良好だ。ラダーフレームはベースをトライトンとしているという話だったが、それとは明らかに違うマナーの良さがある。クロスメンバーを1本追加し、さらに各部を補強し直したことが功を奏したのだろう。ステアリングに対してリニアに応答し、ラダーフレームならではの遅れがあまり感じられないように仕立てられているところがうれしい。

 今回はウエット路面での試乗となったが、フロントタイヤは絶対にグリップを外さないとばかりに路面を捉えていく感覚がある。ウエットグリップがそれほど高くないM+S仕様ということもあってか、リアのグリップはそれほどペースを上げていない状況であっても抜けやすい傾向にあったが、コントロール下に置きやすく作っているところは悪路を知り尽くした三菱自動車ならではか。前後トルク配分は40:60。アクセルオンを乱暴にしたところで、ニュートラルに立ち上がるところはさすがだ。

ラダーフレームのベースはトライトンとのことだが、明らかに異なるマナーの良さを感じた

 ただ、高速道路のジャンクションなどでも使う領域でコーナーアプローチ時に前荷重になったところで、ノーマルモードではリアから発散しそうになる動きは、誰でも理解できる名称のウエットモードを備えるなどして対処したほうがいいかもしれない。現にグラベルモードなどを選択すれば、かなりの安定感は出るのだから。いろいろと制御できるスーパーオールホイールコントロールだからこその要求だ。

ウエットモードがあるとなお良しと感じた次第

45度斜面も難なく上る

擬似的なモーグルなどの悪路を試すこともできた

 場所を変えて今度は擬似的なモーグルなどの悪路を試す。ここでは制御によって空転を抑えながら前に出ていくところが見どころの1つだが、もっと感心したのはタイヤの接地がなかなか離れずにいたところだった。5リンク式リジッドにしたメリットがそこにある。リアスタビライザーを切り離すような高価なシステムを搭載せずして、しっかりと足を接地させているところはなかなかのバランスのように感じる。

 また、対角で車輪が浮きそうになっている状況、つまりはフレームやボディがねじれているような環境であっても、ドアの開閉を難なく行なえていたこともすばらしい。強靭な足腰が仕上がっている一例といえるだろう。

 最後は三菱自動車がよくデモで使っている最大45度くらいはある急斜面を上ることに。さすがにこれは初見では危ないらしく、インストラクターが運転するのを助手席で見ているだけだったが、低回転から力強くトルクで上ることにおどろくばかり。30度の急坂で一度止まり、ヒルスタートアシストを効かせたのちに、1300rpmあたりでジワリとスタート。スキージャンプのラージヒルよりも急な45度斜面の上まで難なく上ってみせた。そこからはバックでもヒルディセントコントロールが効くシーンを拝見。3km/hほどでジワリと下がりながらステアリングに集中する扱いやすさが光っていた。

 このように悪路からストリートまで幅広く快適に使えそうな今度の新型パジェロは、上質に静かに軟弱になったわけではなかった。かつての強靭さを忘れてはいなかったのだ。ならばこれをもっと磨き、ラリーレイドで頂点を取る姿も見てみたいものだ。

低回転から力強いトルクが発生し、急斜面を難なく上ってくれた
橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。2019年に「86/BRZ Race クラブマンEX」でシリーズチャンピオンを獲得するなどドライビング特化型なため、走りの評価はとにかく細かい。最近は先進運転支援システムの仕上がりにも興味を持っている。また、クルマ単体だけでなくタイヤにもうるさい一面を持ち、夏タイヤだけでなく、冬タイヤの乗り比べ経験も豊富。現在の愛車はユーノスロードスター(NA)、MINIクロスオーバー、フェアレディZ(RZ34)。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。

Photo:高橋 学