写真で見るマツダ「ロードスター」

 1989年にシカゴオートショーで発表されるやいなや、全世界にセンセーションを巻き起こした初代「ロードスター」(NA型)。その衝撃の大きさは後に数多くのメーカーが同様のコンセプトを持ったモデルをリリースしたことからも伺える。

 2代目(NB型)を経て2005年に発表されたのが、3代目となるNC型だ。「走る楽しさ」を提供するという基本的なコンセプトはそのままに、安全性や快適性を向上しているのが特長。エンジンは従来の1.6/1.8リッターから2.0リッターへと排気量をアップ。ボディーサイズは若干大型化したものの、徹底的な重量削減とボディー剛性アップ、ブレーキ強化、サスペンション周りの刷新などにより、運転する楽しさを存分に味わえるクルマに仕上げられている。

 2008年12月には初のマイナーチェンジを実施。エクステリアデザインが大幅に見直され、わずかではあるがcd値も約0.01向上している。また、エンジン性能の向上、トランスミッション&サスペンションの最適化、快適性の向上なども図られている。価格は手動開閉式のソフトトップモデルが233万円~260万円、電動開閉ハードトップのRHT(リトラクタブルハードトップ)モデルが268万円~295万円で、撮影車両は17インチホイール、6速MT、ソフトトップモデルのRS(260万円)でボディーカラーはサンフラワーイエローだ。

安全性の確保などにより初代、2代目より大きくなったとはいえ、全長4020×全幅1720×全高1245mm(ソフトトップモデル)と、それでもまだ十分にコンパクトといえるサイズ。全体的な造形は2代目がキャビン部を絞ったいわゆるコークボトル形状だったのに対し、この3代目は前後を絞ったオーバル(楕円)形状となった
ソフトトップを閉めた状態。ソフトトップモデルのほか、電動開閉可能なハードトップを採用したRHTモデルもラインアップされる
マイナーチェンジ前と大きく印象が変わったフロントまわり。従来はオーバルを基調としたファニーな顔つきだったが、ここ最近のマツダ車では標準的になりつつあるファイブポイントグリルの採用などにより、スポーティさを強調したものとなったバンパー両コーナー部を張り出したデザインにすることで空力特性を向上。フォグランプベゼル(ランプはオプション)も丸形から変更されている従来の丸みを強調したオーバル形状から一転、エッジを付けたシャープなデザインとなったヘッドランプ
デザインを一新したアルミホイール。RS系が装着する17インチは10本スポーク、そのほかは16インチでツインタイプの5本スポークとなる。タイヤは17インチモデルが205/45 R17、16インチモデルは205/50 R16となるリアバンパーはデザインを一新。ワイド感とスポーツカーらしさを強調したデザインとなった最近では省略されることも多くなったが、しっかりとトランクリッドに車名のエンブレムが輝く
リアコンビランプは外周部に赤いレンズを採用したほか、コーナー部を張り出した形状に変更。細かな違いだが空力特性の向上に一役買っているという初代から同じ形状を採用。丸形サイドマーカーにはロードスターのアイデンティティが息づいているソフトトップのアウタードアハンドルはボディー同色。RHT系モデルはグリップ部がクローム調仕上げとなる
アドバンストキーレスエントリー&スタートシステムを採用しているため、リモコンを携帯しているだけでドアのロック/アンロック、スタートノブによるエンジン始動が可能3代目から搭載されるMZR2.0リッター DOHCエンジン。新たに鍛造クランクシャフトの採用に加えピストンのフルフロート化、新設計のバルブスプリングなどにより、レブリミットが7000rpmから7500rpmへと引き上げられた(MT車)。最高出力はMT車が125kW(170PS)/7000rpm、AT車は119kW(162PS)/6700rpm。最大トルクはAT/MTともに189Nm(19.3kgm)/5000rpm他車種でも採用されるMZRエンジンだが、ロードスターは縦置きかつフロントミッドに搭載。エンジン前端が車軸(ストラットタワー位置)より後方にくるよう設計されている。2代目まではトランクに配置されていたバッテリーはエンジンルームに移動。それでも重量配分は50:50を実現している
6速MT車に標準装備となるインダクションサウンドエンハンサー。これはアクセルを踏み込んだ際に生じる吸気サウンドを増幅、車内へと伝えるもの。スポーツマインドを高めてくれる新アイテムだサスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアがマルチリンク。基本形式は従来と同様だが、フロントのロールセンター位置を26mm低くするなど各部のチューニングが行なわれているマフラーはデュアルテールパイプを採用。エキゾーストノートにもコダワリ、アクセルを踏み込んだ際に力強く伸びやかなサウンドとなるようなチューニングが施されている
デコレーションパネルを従来のピアノブラックからダークシルバーに変更。加えて随所にシルバーカラーの装飾が施されたことで、2006年発売の限定車「Blaze Edition」に近い雰囲気となり華やかさが増した印象だ。また、センターコンソールのアームパッドがソフトパッド仕上げになるなど、見た目だけでなく仕上がりも上質感を高めているステアリングは3本スポークの本革巻きで、デザインは従来と変わらないもののホーンパッドにシルバーのリングが追加された。上下32mmに調節可能なチルト機構を全車に標準装備。左スポークのオーディオコントロールスイッチはBoseサウンドシステム装着車のみメーターは5つの円を組み合わせたデザインで、指針は「0」を6時位置とするタイプ。基本的なデザインはマイナーチェンジ前と変わらないが、グラフィックの変更により見やすさの向上が図られたほか、平均燃費/外気温表示機能が追加された。AT車の場合はタコメーター内にセレクターインジケーターが用意される
VS RHT以外はオーディオレス+4スピーカー仕様が標準。このサンヨー製のHDDカーナビ、7スピーカーのBoseサウンドシステムはオプションだ。7つの空調モードを持つオートエアコンは全車標準で、操作ダイヤルには新たにシルバーカラーのリングが追加されているRS RHTとRSのみに用意される6速MT。短いストロークとなめらかなシフトフィール、クロスレシオにより操る楽しさを存分に味わえる。本革/アルミリングのシフトノブはオプションシートはホールド製に優れたスポーティな形状。ただし、後方にスペースがないため、リクライニングはほとんどできない。標準ではVS RHTを除いてこのシートになるが、オプションでアルカンターラ/本革のレカロ社製シートも用意されている
シートサイドにはリクライニングレバー(写真後方)とシートリフター。シートリフターはラチェット式で、軽い力で座面の高さを上下調節することが可能。スカッフプレートはオプション新たにアームレスト部にソフトパッドが装着され質感が高められたほか、グリップ前方にあるマルチポケットの張り出しが抑えられた。下部のメッシュポケットは左右どちらにも装備されている
ペダルの踏み替えやヒール&トーといった操作性を考慮し、ペダル面の高さや面積を追求。写真のアルミペダルはRS RHT、RS、NR-Aに標準、そのほかのグレードはオプションになるシート後方には万一の転倒時に乗員を保護するロールバー。その横にあるのはエアロボード(写真は収納状態)。小型&メッシュ状で展開状態でも目立たないサイズだが、後方から巻き込む風を減らしてオープン時の快適性を高めてくれる温度を5段階に調節可能なシートヒーターはメーカーオプション。その奥に見える12Vの電源ソケットは標準装備だ
ステアリングコラム左側にはDSC(ダイナミック・スタビリティ・コントロールシステム:横滑り防止機構)を解除するためのスイッチ。その横にあるのはエアコンの吹き出し口で夏には冷風を、冬には温風を腰まわりに導くことで快適性をアップさせているステアリングコラム右側にはパワーウインドウのロックスイッチ。その下にはインパネボックスが用意されるが、フタがなく容量も小さいため使い道は少ないかも。写真には写っていないが、さらにその下にはボンネットオープナーなども初代から受け継がれている丸をモチーフとしたインテリアデザイン。この3代目でもエアコン吹き出し口など、随所に採り入れられている
センターコンソールに用意されるスライド式のカバーが付いたカップホルダー。中央部の仕切りは取り外し可能となっているため、小物入れとして使うこともできるシート間後方中央にはキーロック付きのセンターコンソールボックスを用意。フューエルリッドオープナーもここに。その両側にはフタ付きのリアストレージボックスもグローブボックスはオープン時のことを考慮してキーロック付き。撮影車両はオプションのHDDカーナビが装着されていたため、B-CASカードユニットが収められている
幌をオープンするにはフロントウインドウ上部中央のロックレバーをリリースボタンを押しながら操作(写真左)。トップを後方に移動させ、中央部をロックされるまで押し込む(写真中)。逆にクローズするにはシート間にあるレバーを引き上げてロックを解除(写真左)、ソフトトップを展開してロックレバーで固定する。文字にすると面倒そうな印象を受けるが、実際には力をそれほど必要とせず、所要時間も慣れれば開けるので10秒、閉めるのでも30秒とかからない
未使用時にはルーフ上部のフレームにキレイに収まるサンバイザー。裏面にはバニティミラーが用意され、カバー部分はチケットホルダー兼用となっている150Lの容量を持つトランク。開口部が若干狭いのが気になるが、深さがあるため大きめのバッグも積み込める。2名定員であることを考えれば十分な積載能力といえそうだ
2代目ロードスターはナンバー灯と兼用だったが、この3代目は独立したラゲッジランプを装備。室内のトランクオープナーでトランクを開けられなくするためのスイッチも用意される全グレードでスペアタイヤを搭載しないため、電動式コンプレッサーなどからなるパンク修理キットを標準装備。牽引フックやジャッキアップ用工具も収納されている

(安田 剛)
2009年 4月 10日