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写真で見る スズキ「ワゴンR」(2014年一部改良モデル)

 スズキの低燃費技術としてすっかり定着した感のある「エネチャージ」。ハイブリッドカーのように減速時のエネルギーを使ってオルタネーターで発電して、リチウムイオンバッテリーに蓄えるシステムとなっており、発電した電気はエンジン電装部品やオーディオなどに使われてきた。

 これを進化させ、発進や加速時に駆動力をアシストするという「エネチャージII」は、2013年11月に開催された東京モーターショーに出展された「Crosshiker(クロスハイカー)」で提案されていたが、名前を「S-エネチャージ」に一新。8月25日に一部改良して発売された新しい「ワゴンR」シリーズに搭載して市販されることになった。

 このS-エネチャージ採用に伴う一部改良では、新グレードとしてS-エネチャージを搭載し、独自のフロントマスクを備える「FZ」が追加されたほか、スティングレー T、スティングレー Xにオプション設定されている「スマートフォン連携ナビゲーション」に、軽自動車初という「後退時左右確認サポート機能」が追加されたことも大きなトピックとなっている。

ワゴンR FZ

ワゴンR FZ。ボディーカラーは新色の「クリスタルホワイトパール」
メッキ加飾のフロントグリル両サイドに、青く発光する「LEDイルミネーションランプ」を装備
タイヤサイズはスティングレー T以外のグレードと同じ155/65 R14 75Sだが、FZは立体的な細いスポークデザインで軽快感を演出する専用アルミホイールを装着
ヘッドランプの内側、リアコンビネーションランプの両サイドにあるメッキ部分を薄くブルーにカラーリングし、先進性とクールなテイストをアピールする
インテリアでは基本的なデザインに変更はないが、FZはインパネをライトグレー色にしてニュートラルな印象を演出
メーターパネル右側は、従来のアナログ式の燃料計からデジタルメーターに切り替えられた
ステアリングの右奥に、FZに標準装備される「レーダーブレーキサポート」「ESP」などのスイッチ類を設置。運転席シートヒーターはこれまで4WD車のみのアイテムだったが、FAの2WD(FF)車以外に標準装備されることになった
FZのシート
S-エネチャージ採用車のR06A型エンジンは「アルト エコ」と同じものを搭載。圧縮比が11.0から11.2に高められるなど数多くの改良が施されている

 エネチャージで培ってきたエネルギーマネジメント技術をベースに進化させたS-エネチャージでは、従来の高出力オルタネーターに替えてモーター機能付発電機「ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)」を搭載。15km/h~85km/hの走行中にS-エネチャージ車専用のリチウムイオンバッテリーに蓄えた電気を使い、ISGが最大6秒まで駆動力をアシスト。エンジン出力を抑えたまま加速できることによって燃料消費を低減させるシステムとなっている。

 このほかにも、ISGはアイドリングストップからのエンジン再始動時に使う電力消費をセルモーターと比べて10%低減しており、さらにアイドリングストップ頻度の向上、ペダル操作量を検出して意図しないエンジン再始動を抑制するブレーキストロークセンサーの採用、エンジンの燃焼効率改善や低フリクション化、CVTの変速制御最適化などにより、S-エネチャージ搭載の2WD(FF)車はJC08モード燃費を30.0km/Lから32.4km/Lに高め、軽ワゴンクラスでNo.1の燃費を達成したとしている。

S-エネチャージを搭載するR06A型エンジンの単体展示。ISGはモーターとしてはWA04Aという型式になり、1.6kW(2.2PS)/1000rpm、40Nm(6.4kgm)/100rpmを発生
ISGによるモーターアシストに対応するため、補助ベルトを1本から2本に増やした。ISGベルトにはオートテンショナーを設定し、ウォーターポンプベルトには高弾性ベルトを用いてメンテナンスフリー化している
発電能力が30%向上したISGの採用を受け、リチウムイオンバッテリーも大電流に対応できるS-エネチャージ車専用品に変更。搭載位置は従来と同じく助手席のシートアンダーボックス下
S-エネチャージ車はリアハッチ右下部分に専用バッヂを装着

ワゴンR スティングレー T

 スティングレーシリーズもフェイスリフトを実施。特徴的な「スケルトングリル」の下側に、メッキ加飾を施したインテークを追加。フロントバンパーのロアグリルは末広がりの台形形状として安定感を演出し、バンパー両サイドに縦配置のLEDイルミネーションランプを配してワイド感を高めている。

ワゴンR スティングレー T。ボディーカラーは「ブルーイシュブラックパール3」
「マルチリフレクターフロントフォグランプ」の隣にLEDイルミネーションランプを新設定
スティングレー Tには従来型のエネチャージが採用される
スティングレー TのR06A型エンジンは47kW(64PS)/6000rpm、95Nm(9.7kgm)/3000rpmを発生。JC08モード燃費は2WD(FF)車が27.0km/L、4WD車が25.2km/L
15インチタイヤはスティングレー T専用。サイズは165/55 R15 75V
スティングレー Tのインパネ
スピードメーター外周部の「エコドライブアシスト照明」は名称を「ステータスインフォメーションランプ」に変更して継続使用。通常走行時のブルーから、燃費が良好な走行になるとグリーンに変化する
メーターパネル右側には、減速エネルギーの回生状態、リチウムイオンバッテリーの充電状況などを表示する「エネルギーフローインジケーター」を設置

 軽自動車初採用となった「後退時左右確認サポート機能」は、バックアイカメラで車両後方のクルマや歩行者といった移動物を検知。車両に接近してくると判断したときは「スマートフォン連携ナビゲーション」の画面上に警告表示するほか、ブザー音を鳴らして注意喚起する。さらに「自動俯瞰(ふかん)機能」も備え、駐車スペースの白線をバックアイカメラが確認した場合、白線の後端が近くなったときにモニター表示を上空から見下ろすような俯瞰画像に自動的に切り替えてくれる。このほかに装備面では、スティングレー Tに「クルーズコントロールシステム」が標準装備として追加された。設定可能な速度は約45km/h~100km/h。

「スマートフォン連携ナビゲーション」は、ワゴンRではスティングレーシリーズだけにオプション設定
軽自動車として初採用された「後退時左右確認サポート機能」は、歩行者などをカメラが認識して注意すべき方向などを知らせる
スティングレー Tのステアリング右奥には、「レーダーブレーキサポート」「ESP」などに加えて、フォグランプのON/OFF、バックアイカメラの切り替えなどのスイッチを用意
一部改良でスティングレーシリーズのシート表皮を変更。シャープさとスポーティ感を印象づけるデザインとした
エネチャージ用のリチウムイオンバッテリー

ワゴンR FX

ワゴンR FZ(左)とワゴンR FX(右)

 FXとFAの両グレードもフロントマスクを一新。グリルはメッキ仕上げの横桟タイプから樹脂製でブラックアウトさせた仕様になり、ヘッドライト、バンパーなども形状変更した。

自己主張を控えめにしたシンプルなデザインで“ひと目見てワゴンRと分かる”普遍性を追求
マルチリフレクターハロゲンヘッドランプを標準装備。FZにはディスチャージヘッドランプをオプション設定する
FXのJC08モード燃費は2WD(FF)のCVT車が30.0km/L、5速MT車が25.8km/L、4WDのCVT車が28.4km/L、5速MT車が24.2km/Lとなる

(Photo:高橋 学/編集部:佐久間 秀)