トヨタ自動車の「ランドクルーザー70(ナナマル)」(以下、ランクル70)は、いわゆるクロスカントリー4WD(クロカン4駆)と呼ばれるジャンルのモデル。モノコックボディーを持つイマドキのSUVと異なり、ラダーフレームのシャシーとリジッドアクスルを持つヘビーデューティな4WD車だ。
そのルーツを辿ると、1951年に発売された「トヨタジープBJ型」までさかのぼる。その後、ほどなく「ランドクルーザー」の名称が与えられ、「20型」「40型」と進化を遂げていく。その過程においてホイールベースの異なるモデルも誕生。ショート、ミドル、そしてステーションワゴンタイプとなるロングと、異なるキャラクターが生まれていく。
21世紀を迎えた日本国内ではショートホイールベースのモデルは消滅してしまったが、ロングホイールベースモデルは「ランドクルーザー(200型)」として現役。そして一時は消滅してしまったミドルホイールベースモデルが、このランクル70となる。
同車は1984年、現「FJクルーザー」のルーツともいえるランクル40の後継モデルとして誕生。国内向けにはショートとミドルで2種類のホイールベースを持つモデルがリリースされた。どちらも3B型ディーゼルエンジンを搭載することから、型式では前者が「BJ70」、後者が「BJ73」となる。また、当時は幌車があったため、バンタイプ、つまり一般的な箱形ボディーの場合は「BJ73V」のように最後に「V」が付く。
1990年にはマイナーチェンジで直列5気筒のPZ型、直列6気筒のHZ型ディーゼルエンジンにエンジンを換装するとともに、ホイールベースを延長した「セミミドルモデル」も登場。1999年のマイナーチェンジではサスペンションが変更され、前後リーフリジッドから前コイルリジッド、後リーフリジッドになるなど大きな変更が加えられた。しかし、2004年には排ガス規制への対応が難しいことなどを踏まえ、惜しまれつつも日本国内での販売が終了する。
その後も海外向けでは中近東やアフリカを中心に販売が続き、その信頼性の高さから5000台/月を超える生産台数をキープ。2007年にはエクステリアを中心としたマイナーチェンジも実施されている。
そして誕生30周年となる今年、期間限定ながら復活を遂げることになった。右ハンドルのオーストラリア仕様をベースとしているが、日本国内の法規対応はもちろん、現地にはないエンジンの搭載、以前は日本仕様になかったABSの採用、それらに伴う細部変更など、単なる逆輸入車ではなく専用モデル並みに手間がかかっている。生産はトヨタ車体の吉原工場で2015年6月30日まで行われる。
ボディータイプは箱形のバンに加え、これまで日本では一般販売がなかったダブルキャブピックアップの2種類が用意される。ホイールベースは前者がセミミドルタイプで2730mm、後者が3180mmのスーパーロングとなっている。
エンジンは海外仕様に設定されるV型8気筒ディーゼルではなく、4.0リッターV型6気筒ガソリンの「1GR-FE」を搭載。このため、型式はバンが「GRJ76」、ピックアップが「GRJ79」になる。1GR-FEはFJクルーザーにも搭載されているユニットながら、圧縮比ダウン(10.4→10.0)やVVT-iが吸気側のみとなるなど若干デチューンされ、スペックは最高出力170kW(231PS)/5200rpm、最大トルク360Nm(36.7kgm)/3800rpmとなる。組み合わされるトランスミッションは5速MTで、駆動方式はパートタイム4WDのみとなる。JC08モード燃費は6.6km/L。
ピックアップ
4枚ドア+荷台を持つモデルがピックアップ。ホイールベースは70シリーズでもっとも長い3180mm。ボディーサイズは5270×1770×1950mm(全長×全幅×全高)、最低地上高は225mm。オフロード派なら気になるであろう対置障害角はアプローチアングル35°、デパーチャーアングル25°、ランプブレークオーバーアングル27°。価格は350万円。撮影車両のボディーカラーはブルー。
“ワークホース”という表現がピッタリなピックアップ。通常販売時は逆輸入でしか手に入れることができなかったが、限定車とはいえカタログモデルになるとは感無量 リアドアの切り欠き部分がセミロングのタイヤ位置。ホイールベースが450mm違うだけに、その差は目に見えて大きい フロントマスクは、野武士のような初代からグッと丸みを帯びて現代風にイメチェン 最近では装着車が少なくなったサイドアンダーミラーを装備 フロントドアの「LAND CRUISER」の車名ロゴに並び、30周年記念のバッヂも装着 アルミ製のサイドステップ。クロカン派には評判が悪いが、実用面では幅広で足がかけやすい優れもの 給油口はリッドレスでキャップ自体にエンジンキーを差し込んで開けるタイプ。ガソリンはついに無鉛プレミアム仕様になり、燃料タンクは130Lもあるので給油時には覚悟が必要!? まさにトラックという荷台は1520×1600mm(荷台長×荷台幅)と広々。ゲートは後部のみ開閉可能 リアゲートには600kgの最大積載量を示すステッカーなどと一緒にV6のバッヂが輝く ボンネット下には4.0リッターV型6気筒エンジンが収まる。海外モデルにはV型8気筒搭載車もあるだけに、スペースは余裕たっぷり クラシカルな外観だが、エンジンはダイレクトイグニッション採用の現代的な仕様。某アニメの“蒸気機関車のような銀河超特急”的な雰囲気 マスターバックには変更がないように見えるが、なんとABSを標準装備 バッテリーは80D26Rと大型。ダブルボルトを使った固定方法は変わらず タイヤはマッドテレーンのようなアグレッシブなパターンを採用するダンロップのOEM向けQUALIFIER TG21。サイズは7.50 R16 インパネデザインは70のワゴンタイプや往年のプラド(KZJ78)などよりも乗用車的になった シートはバンと共通のバケットタイプ。ファブリック仕様と豪華 エアコンの吹き出し口は丸形を踏襲。下はヘッドライトのレベル調整ダイヤル リアシートはタンブル(前倒し)が可能。シート下のスペースにダルマジャッキと工具を収納する ロングホイールベース&ステップ付きながら、バンより最低地上高が25mm高くオフロードでの走破性は高い。撮影車両のボディーカラーはベージュ 前後リジッドならではの足の動きに注目。電動ウインチはオプション バン
バンはセミミドルタイプ(2730mm)のホイールベースを持つモデル。ボディーサイズは4810×1870×1920mm(全長×全幅×全高)、最低地上高は200mm。対置障害角はアプローチアングル33°、デパーチャーアングル23°、ランプブレークオーバーアングル26°。価格は360万円。撮影車両のボディーカラーはベージュマイカメタリック。
オーバーフェンダーと乗用車ライクなフロントマスクを持ち、エクステリアのイメージは当時の70系プラドがマイナーチェンジしたかのような印象 最低地上高は200mmながらスッキリした腹下のレイアウト。十分なデパーチャーアングルとオフロード派も納得のプロポーション ヘッドライトはマルチリフレクタータイプを採用。さらにウインカーまで内蔵したコンビネーションタイプとなり、60系ハイラックスサーフのようなデザイン ルックス面のよいアクセントになっているものの、賛否両論ありそうなオーバーフェンダー バンの給油口はリッド付き。上にあるのは換気用スリット ピックアップと同じく無鉛プレミアム仕様で、タンク容量も130L 7:3分割の観音開き式リアゲート。左側だけを開けることもできるので、狭いところでも使いやすい バンのタイヤはダンロップのGRANDTREK AT20。サイズは265/70 R16でアルミホイールが標準装着される フロント:コイルリジッド(左)、リア:リーフリジッド(右)の足まわり インパネデザインはピックアップと同じ。運転席&助手席エアバッグが標準となったことで、グローブボックス上部にあったアシストグリップがピラーに移設されている トヨタ標準といえるデザインのエアバッグ内蔵ステアリング フロアトンネルにはトランスファーとシフトレバーが並ぶ 今や絶滅危惧種的な電動デフロックもオプションながら用意 バンはオーディオレスの4スピーカー仕様。スペースはワイドDINタイプで、写真のオーディオレスカバーはオプション 電動リモコンドアミラーとマニュアルライトレベルコントロールのスイッチ ボンネットとフューエルリッドオープナーはグローブを付けていても操作しやすい大型サイズ 容量の大きなグローブボックス。トレイ的なギミックはなくなった ドアキャッチ部の周囲に使われているネジはトルクスタイプ 虚飾を排した機能的なサンバイザー。エアバッグの注意はアイコンで紹介 バンなので3列目シートはない。リアシートを前方に畳めば荷室をフルに使うことができる リアウインドーウォッシャーのタンクにもアクセスできる サスペンションセッティングは重量の変化にあわせたチューニングの実施。リジッドならではの高い走破性は健在だ モデリスタ
ドレスアップ派向けのモデリスタバージョンも用意。フロントマスクを中心に、JAOS製アンダーガードなども装着されてマッシブなイメージになる。
「TOYOTA」ロゴのメッシュグリルが「らしい」感じ