写真で見るボルボ「XC60」


 BMW X3に始まり、レクサスRX、アウディQ5らの登場で拡大しつつあるプレミアム・コンパクト・クロスオーバークラス。ボルボが送り込んだのは、スタイリッシュかつハイパワーなうえに、同社らしい安全対策を満載した「XC60」だ。

 近年のボルボらしいエモーショナルなスタイリングに北欧デザイン風のインテリアという定石を踏みつつ、アルファベットの「X」をモチーフにしたデザインをシートに取り入れるなど、同社が「史上もっともクールなボルボ」と謳うように、若々しく都会的な雰囲気も備えている。

 装備では低速自動ブレーキシステム「シティ・セーフティ」の標準搭載がもっとも注目されるが、HDDカーナビがボルボで初めて標準で装備されたことも魅力的なポイントの1つだろう。また、シティ・セーフティのセンサーを応用して、衝突の危険があるときにエアバッグやシートベルトの作動を準備する「プリ・プリペアード・レストレインツ・システム」もボルボで初の装備だ。このほかにも本革シートとフロントシートヒーター、クルーズコントロール、パワーテールゲート、メタリックペイントなどが標準となる。

 なおシティ・セーフティをはじめとするXC60の安全装備については、記事の末尾で特にリポートしている。

 パワートレインは、210kW(285PS)を発生する3リッター・ツインスクロールターボエンジンと6速ATに4WDシステム。装備と出力を考えると、599万円はお買い得価格というのがボルボの主張で、実際、ライバルと目されるX3やQ5よりもパワーがあり、安全装備が充実しているため、これらを考慮すればお買い得と言える。横置き直列6気筒というボルボだけが採用する特殊なレイアウトも、マニアには嬉しいところだ。

 撮影した車両のボディーカラーは「サヴィルグレーパール」、内装色がアンサスライトブラックで、シートの色はオフブラック/レモングリーン。

 撮影車に装着されているオプションは次のとおり。

セーフティ・パッケージ(20万円)アダプティブクルーズコントロール/車間警告機能/追突警告機能/ドライバー・アラート・コントロール/レーン・ディパーチャー・ウォーニング
ファミリーパッケージ(4万円)インテグレーテッド・チャイルド・クッション/パワー・チャイルドロック/車内自動換気システム
セキュリティパッケージ(15万円)パーソナル・カー・コミュニケーター/キーレスドライブ・車載心拍センサー/ボルボ・カードシステム/インテリア・ムーブメント・センサー/全ウインドー・ラミネーテッド・ガラス/撥水ガラス/ロックホイールボルト
チルトアップ機構付電動パノラマ・ガラスルーフ(20万円)
ツインサブウーファー(7万5000円)
プレミアムサウンドシステム(9万7000円)
エクステリア・スタイリング・パッケージ(20万円)フロントバンパーバー/サイドスカッフプレート/リアスキッドプレートが含まれる

 

ウエストラインから上がクーペの美しさ、下がSUVの力強さを表現するというスタイリング。ゴツさ一辺倒のSUVが多い中で、XC60のスマートなフォルムは特徴的。撮影車にはオプションのフロントバンパーバー、サイドスカッフプレート、リアスキッドプレートが装着され、よりクロスカントリービークルらしい雰囲気になっている
前後オーバーハングが短いSUVらしいルックス。スマートなスタイルと同時に、22度のアプローチアングルと27度のディパーチャーアングル、22度のランプオーバーアングル、235mmのロードクリアランスを確保しており、オフロード性能も期待できそうなディメンションになっている。耐水限界は350mm
試乗会の会場は裏磐梯高原で、試乗コースに高速道路と長距離のワインディングロードが織り込まれているあたり、XC60のオンロード性能への自信がうかがえる。実際、XC60は高速でもワインディングでも、スポーツセダンと変わるところのない身のこなしを見せた
ヘッドライトはデュアル・キセノン。コーナーリング時に自動的に左右に最大15度照射角を変えたり、積載重量や加減速でも角度を変えるアクティブ・ベンディング機能が標準で付くテールのポジションランプは24個のLEDで作られており、ショルダー部からルーフへ、車体上部の断面を描いて灯るターンシグナルランプはドアミラーに内蔵。ミラーは電動リトラクタブル
ボルボのエンブレム「アイアンマーク」は2010年モデルの一部と同様に大型化。アイアンマークの左に見える黒いカバーはアダプティブクルーズコントロールなどに使われるレーダーを内蔵する直列6気筒ターボエンジンを表す「T6」サイドスカッフプレートにも「XC」のロゴが刻まれる
18インチアルミホイール。タイヤサイズは前後とも235/60 R18。撮影車の装着タイヤは、高速走行向きのピレリ・Pゼロ・ロッソフロントに横置きされた直列6気筒DOHCエンジン。ツインスクロールターボでターボラグを感じさせない脱落防止のコードが付いた給油口
フロントシートは電動。運転席のみポジションメモリーが付く
センターコンソールがドライバー側に向いた運転席パーキングブレーキは電動。ドライバー右側のスイッチで操作するAT(6速)なのでペダルは2つ
運転席ドアのスイッチ類エンジンの始動/停止はスイッチ。その下にリモコンキーを納めるスロットがあるボルボが「パーソナル・カー・コミュニケーター」と呼ぶ高機能リモコンキーはオプション(セキュリティパッケージ)。離れたところから車両のロック状態や、車内に人がいるかいないかを確かめることができる
ボルボが「フリーフローティング・センタースタック」と呼ぶセンターコンソールがXC60にも装備される。裏側には物が置けるフリーフローティング・センタースタックのパネルは写真のアルミが標準だが、オプションでノルディック・ライトオークとクラシックウッドのウッドパネルを選ぶこともできるMTモードを持つ6速ATのシフトレバー
ルーフコンソールルーフコンソール前部に電動パノラマ・ガラスサンルーフ(右)のスイッチがある
オプションの電動パノラマ・ガラスサンルーフは前部のみがチルト&オープンする。開くと風の巻き込みを防ぐデフレクターが出る
標準装備のHDDカーナビ。センターコンソール上部に埋め込まれたディスプレイは6.5インチ。やや“額縁”の大きさが気になるものの、視認性は良好。パークアシストカメラ(バックモニター)も標準で付くほか、助手席側ミラー下のサイドビューカメラの映像も映せる
HDDカーナビの操作はリモコンで行うカーナビ本体はグローブボックス内に設置されるセンターコンソール後部のボックスにオーディオ用のAUX端子とUSB端子がある
センターコンソール最上部のディスプレイはオーディオとエアコンの状態を表示する
ステアリングはリモートスイッチ付。左側はクルーズコントロールの操作用、右側はオーディオの操作用
速度計と回転計のみのメーターパネル。ガソリン残量やオドメーターなどはすべてメーター中央のインフォメーションディスプレイに表示される
リアドアは90度近く開くリアウインドーが下がるのはここまでリアシートもX字デザイン
後席用のエアコン吹き出し口センターコンソール後端に12V電源がある身長95~140cmの子供に対応するインテグレーテッド・チャイルド・クッション。高さは2段階で調節できる
リアアームレスト。カップホルダーを内蔵しているほか、トレイや小物入れとして使える
リアのヘッドレストは3人分。中央のヘッドレストは格納して後方視界を広げることができる
リアシートを倒してラゲッジスペースを広げるときは、シートの肩にあるレバーを使う。倒すときに自動的にヘッドレストが前に倒れ、前席に干渉しない
シートアレンジ。4:2:4の分割可倒式で、トノカバーが付く
このパネルを開けると買い物袋などを下げるためのフック「グローサリーホルダー」が出てくるラゲッジルームの下には浅い物入れがあるさらにその下にパンク修理キットなどが納められる
ラゲッジルームの12V電源ソケットパワーテールゲートを標準で装備する
右の車体色はアイスホワイト。内装はサンドストーンベージュ、シートはソフトベージュ/エスプレッソブラウン

XC60の安全装備
 XC60はボディー構造やエアバッグで乗員を事故から守るパッシブ・セーフティ機能のほか、事故を防止・軽減するためのアクティブ・セーフティ機能が多数装備できる。

 中でも標準装備される「シティ・セーフティ」は、30km/h以下の低速域での衝突事故防止・軽減に特化した機構だ。同社によれば衝突事故の75%が30km/h以下で起きていると言う。シティ・セーフティは、30km/h以下の時に先行車を常にモニターし、衝突の危険があると自動でブレーキをかけ、クルマを停止させる。

 その動作は次の動画をご覧いただきたい。先行車に見立てた青いバルーンに衝突しそうになるとブレーキがかかる。このときのブレーキは急なもので、フロントウインドー下端の赤い警告灯と警告音とともに、ドライバーに衝突の危険を知らせる役目もある。

ルームミラーの前にあるセンサー。左の部分がシティ・セーフティ用レーザー・センサー。真ん中は追突軽減オートブレーキなどに使うカメラシティ・セーフティが動作すると、メーター内のディスプレイにその旨が表示される

 

 
シティ・セーフティの動作。右は動作したときの車内

Volvo Cars プリベンティブ・セーフティ・エンジニアのダニエル・レビン氏

 シティ・セーフティの特長は、先行車のモニターにレーザーセンサーを使用していること。先行車を検知するにはほかにもレーダーがあるが、レーザーセンサーはレーダーよりも検知精度が天候に左右されやすい一方で、安価だ。そこでシティ・セーフティでは、天候に左右されにくい低速域(近距離のモニター)にレーザーを使うことで、価格を下げて標準装備できるようにしたのだ。

 さらにより広い領域での安全がほしければ、オプションのセーフティ・パッケージでレーダーやカメラを装着し、これらを使ったアダプティブ・クルーズ・コントロール、追突軽減オートブレーキ、車間警告、レーン・デパーチャー・ウォーニングなどの安全機能を付加できる。

 セーフティー・パッケージにはもう1つ、「ドライバー・アラート・コントロール」という安全機能が含まれている。これは車両の動作からドライバーが集中力を欠いていると判断すると、メーター内のインフォメーション表示にコーヒーカップのマークを点灯させ、休憩を促すというもの。

 メルセデス・ベンツが新型Eクラスに同様な仕組みを搭載したが、Volvo Carsのプリベンティブ・セーフティ・エンジニアであるダニエル・レビン氏によれば、Eクラスのシステムはドライバーの動作(ステアリングやオーディオの操作など)をモニターするのに対し、XC60は車両の挙動からドライバーの状態を検知するのだと言う。多くのセンサーを使わないため、これも安価に作れるのだそうだ。

(編集部:田中真一郎)
2009年 8月 11日