レビュー

【タイヤレビュー】「RS10」からどう進化した? ブリヂストンの2輪車用スポーツタイヤ「BATTLAX RACING STREET RS11」

S22との立ち位置をより明確にしたRS11

2020年3月16日 発売

ブリヂストン「BATTLAX RACING STREET RS11」と旧モデルの「BATTLAX RACING STREET RS10」を比較試乗した

 ブリヂストンのスポーツタイヤと言えば、最近では「BATTLAX HYPERSPORT S22」がメインストリームと言ってよいだろう。そこからツーリング用途を強めたものが「BATTLAX SPORT TOURING T31」、反対にスポーツ用途に振ったのが「BATTLAX RACING STREET RS10」という位置付けで、公道よりもサーキットをメインにするユーザーに向けては、RS10の上に「BATTLAX RACING R11」を用意するというラインアップになっている。

 今回試乗した、2020年3月16日より発売する新モデル「BATTLAX RACING STREET RS11」は、RS10の後継。ワインディングを楽しんだり、時にはサーキットでスポーツ走行をエンジョイしたりするユーザーに向けた製品となる。RS10からRS11へ、数字がプラス1されたことで正統進化を果たした製品とも言えるのだが、実際に試乗してみると、単なる性能アップだけでなく、これによって「製品ラインアップの正常化」も果たすことになったのではないかと感じた。

BATTLAX RACING STREET RS11のフロント(左)とリア(右)

 振り返ると、S22の登場によって現行のRS10はその存在感を少し奪われつつあったように個人的には思っていた。ツーリング用途に十分なライフを持ちながら、ドライとウェットの両方のグリップを大幅に高め、サーキットのスポーツ走行にも通用する性能を与えられたS22は、あまりにもターゲットが広かった。絶対的なグリップ力はRS10が上でも、RS10がカバーすべきユーザーの一部をS22が食っていたのではないか、と思えるくらいに。

 もしS22以上に高いグリップが必要になった場合、本来ならRS10を選択すべきだ。プロファイルもS22とRS10は似通ったところがあり、交換してもハンドリングの違和感は少なく、性能アップも体感できる。ただ、S22のグリップ性能を考えると、さらなる性能の要求はサーキットでのタイムアップを目標とするものになりやすい。その意味でRS10はやや力不足で、R11にジャンプアップした方が目的にかなう。

試乗コースはドライ路面。ワインディングを模したようなコースだ

 ひとえにRS10の性能にS22が迫ってきてしまったのが原因ではないかと思うのだが、だからこそ、ここで今一度2つの製品の差別化を図ることが重要だったのではないだろうか。それも単なるグリップ性能の向上ではない、RS10がRS11へと進化するに足るアップデートが必要だったはずだ。

路面温度を計測中
路面はおおよそ14~15℃。レーシングタイヤだと厳しい条件だが、ストリート向けのRS11であれば問題ない

 そのため、結果的にRS11は賛否の分かれるタイヤになってしまったかもしれない。RS10のままがよかったという人もいれば、RS11の性格が大好物な人もいるだろう。その一番の要因は、フロントタイヤの違い。クラウン半径をRS11で小径化したことによるハンドリングの差だ。

フロントはRS10に比べてクラウン半径が小径化した
リアは新コンパウンドと「V-MS・BELT」という新構造を採用

 RS10と比較できるよう、同じヤマハ「YZF-R1」に装着されたRS11は、間違いなくサーキット寄りのタイヤだった。コーナー進入での倒し込みも、切り返しでも、RS10とは比較にならないほどパタパタ寝てくれる。要するに「曲がるタイヤ」になっているわけで、これは「攻める」姿勢のライダーにとっては都合がいい。

RS10よりも格段にパタパタ寝てくれるRS11のフロント
切り返しが続くコーナーでの倒し込みの早さはRS11の利点

 しかし「すぐに寝る」だけでは不安定さが増してしまう。これについては、リアタイヤで大幅なスペック変更を行ない、安心感につなげている。R11ですでに採用されている「V-MS・BELT」というベルト構造にすることで接地面積を縦に広げつつ、内部のスチールワイヤーの分布密度をサイド方向へいくに従って低くしていることもあって、接地感が段違いにアップしている。

 フロントがいわば切れ込むような形になっても、リアの“面”で支えてくれるこうした構造のおかげで、バンク角を安定させやすい。もちろんここには、リアのショルダー部に新開発のコンパウンドを投入し、グリップ性能を底上げしたことも影響しているだろう。

面で支えてくれるリアのおかげで、バンクさせていった時の安定感は大きい

 バンク時もそうだが、新しい構造とコンパウンドによる安定感・安心感は、コーナー立ち上がりのリアに荷重がかかる場面でもはっきりと気付くことができる。あるいは直線加速でも、ショルダー部が荷重によりほどよくたわむことでグリップ感や安定感を味わえるようになっている。

コーナーの立ち上がりでもリアが荷重を受け止めている感じがはっきり分かる
リアのセンターはベルト構造の密度が高いが、ショルダー部がたわむため、直線加速時も路面をしっかり捕らえる。対してRS10では点でグリップさせているような雰囲気

 しかしいずれにしろ、RS11のハンドリングは、S22並みに穏やかだったRS10のテイストとは大きく異なっている。R11の性格に限りなく近付き、従来のRS10のユーザーにとってはハードルが高いと感じられるほどかもしれない。ライディングポジションがややハードなYZF-R1のせいで強調されているところもありそうだが、少なくとも「S22のハイグリップ版」という認識でRS11を選んでしまうと、その期待は裏切られるのではないだろうか。

ワインディングやサーキットを中心に走る人にはRS11はマッチしているが……

 そういうこともあって、RS11の立ち位置はラインアップの中でより明確になったと言える。ツーリングもするがスポーツ走行も楽しみたいという場合はこれまで通りS22が最適で、S22のグリップ性能やコーナリング性能に満足できなくなったユーザーはRS11を選ぶことになる。そこでも満足できなくなったらR11へ、という風に、順当にレベルアップを図れるわけだ。

RS10でのコーナリング。穏やかなRS10が好きな人にとっては、RS11のハンドリングはややハードルが高く感じるかもしれない

 ちなみにRS11は、すでに発売している2019年モデルのスズキ「GSX-R1000」「GSX-R1000R」や、カワサキ「Ninja H2」「Ninja H2 Carbon」にOEM採用されている。が、実のところ、これらの車両に採用されているRS11と、リプレース品である今回試乗したRS11は、厳密には異なる仕様で開発されているという。

 OEM版のRS11は、それぞれの車両のコンセプトに合う形でカスタマイズされている。市販のRS11に交換した時には、純正状態の時とはまた違った印象を受ける可能性が高い。自分のバイクの用途をこれまで以上にしっかり考えてタイヤ選びをする必要があるだろう。

走行後のタイヤの温度。フロントは38℃。温まりは早いと感じる
リアは40℃前後。ストリート向けのタイヤとしてはこれくらいの温度がパフォーマンスを発揮しやすい

日沼諭史

日沼諭史 1977年北海道生まれ。Web媒体記者、IT系広告代理店などを経て、フリーランスのライターとして執筆・編集業を営む。IT、モバイル、オーディオ・ビジュアル分野のほか、四輪・二輪や旅行などさまざまなジャンルで活動中。Footprint Technologies株式会社代表取締役。著書に「できるGoPro スタート→活用完全ガイド」(インプレス)、「はじめての今さら聞けないGoPro入門」(秀和システム)、「今すぐ使えるかんたんPLUS Androidアプリ大事典」(技術評論社)など。2009年から参戦したオートバイジムカーナでは2年目にA級昇格し、2012年にSB級(ビッグバイククラス)チャンピオンを獲得。所有車両はマツダCX-3とスズキ隼。

Photo:高橋 学