レビュー

【タイヤレビュー】「REGNO」ブランド初の軽自動車専用タイヤ「GR-Leggera」を試す

軽自動車向け「POTENZA Adrenalin RE003」にもプチ試乗

REGNO初の軽自動車専用タイヤ

 ブリヂストンは遂に軽自動車に対してまで最高級ブランド「REGNO(レグノ)」の投入に踏み切った。いまや新車販売比率の4割を超すまでに成長した軽自動車市場。地方都市では半数にまでシェアを増やしつつあるその領域には、自動車メーカーも高級化を進めていることも周知の事実。結果として軽自動車より上のセダンやミニバンから乗り換えるダウンサイジングユーザーも多く、使われ方も普段の足だけでなく、旅行をはじめとするロングドライブに使われる機会も多くなってきたという。だからこそREGNOの必要性が出てきたというのがブリヂストンの見解である。

 2月に登場した「REGNO GR-Leggera(ジーアール・レジェーラ)」は、軽自動車に求められる低燃費性能やロングライフといったものはそのままに、静粛性や快適性、そして運動性能をプラスしようということがコンセプト。すべての領域をグレートバランスするというREGNOのコンセプトを、そのまま軽自動車に落とし込んだタイヤなのだ。

「REGNO」ブランド初の軽自動車専用タイヤ「REGNO GR-Leggera」。REGNOで培ったサイレントテクノロジーを初めて軽自動車向けに専用チューニングし、さまざまな速度域でノイズを抑制することに成功。165/55 R15 75V、165/55 R14 72V、165/55 R14 72Vの3サイズが設定され、いずれもラベリング制度で転がり抵抗性能:A、ウェットグリップ性能:bを達成

 いくら高級化が進んでいる軽自動車とはいえ、ボディサイズが限定されている軽自動車は、乗員からエンジン、そして乗員からタイヤまでの距離が短く、遮音もしにくいことは仕方のないところ。セダンやミニバンと比べてしまえば、車室内に進入してくる音は多い。

 ブリヂストンの解析によれば、100~400Hzあたりの中・低周波ノイズが目立っているそうだ。路面凹凸によるタイヤ内のベルト振動で発生するゴー音やガー音、そしてパターン構成要素によるピッチノイズがその正体とのこと。ちなみにピッチノイズとは、パターンの中における太い横溝(ブリヂストンではラグ溝と呼ぶ)が路面に打ち付けられることで発生する音のことである。

 そこでREGNO GR-Leggeraは、軽自動車で目立ちやすいピッチノイズを低減するために、センターから1つ内側のリブに千鳥掛けのサイプを搭載。太くない溝を交互に配置することでピッチノイズを抑制し、ブロック剛性を確保。イン側ショルダーには、剛性調整用のサイプを配置することで、ロードノイズを抑制している。

 また、ノイズ吸収シートIIをベルト上部に配置することで、ベルトの振動を抑えていることも特徴の1つ。セダンサイズのタイヤはショルダー部の振動が大きい傾向だが、軽自動車サイズになるとベルト部全体が振動してしまうという特徴をうまくいなしている。

REGNO GR-Leggeraでは「REGNOブランドに相応しい静粛性と快適性、運動性能を軽自動車で実現すること」「軽自動車におけるライフ性能を大幅に向上し、低燃費性とウェット性能を両立した長く使えるロングライフタイヤ」という2点を開発コンセプトに掲げる
REGNOはラテン語で「王者」という意味で、GRは「GREAT BALANCE REGNO」を略称化したもの。Leggeraは「(軽自動車タイヤの)徹底的な研究と技術応用の結晶」を意味する「For leg of the K-car Genuinely enhanced engineering research applied」から名付けている
REGNO GR-Leggeraをイン側(左)とアウト側(右)から見たところ。非対称形状、非対称パタン、高剛性トレッドを採用してふらつきを抑制するとともに、「REGNO」ブランドで培ったサイレントテクノロジーを初めて軽自動車向けに専用チューニングして静粛性を高めた。また、両ショルダーにはブロックの倒れ込みを抑制して剛性を最適化する「3D M字サイプ」を採用して偏摩耗の発生を抑制。これにより、摩耗ライフは「ECOPIA EX20C」と比べ10%向上している
イン側ショルダー部にロードノイズを抑制する「3Dノイズカットデザイン」が刻まれる
サイドウォールにも独自のデザインが与えられた
トレッド面に「REGNO」「Leggera」の刻印を与えることで高級感を高めている

 結果として、静粛性は軽自動車用のスタンダードタイヤ「ECOPIA EX20C」よりも3割弱の低減に成功。これは軽自動車が苦手とする前述した中・低周波ノイズ領域での話だから、その恩恵はより大きく感じることだろう。

 このほか、非対称タイヤ形状やリブ・サイプ基調パターンによってふらつきを防止し、レーンチェンジ時のふらつきをもECOPIA EX20Cに対して軽減することに成功したというREGNO GR-Leggera。果たしてどう走ってくれるのか?

快適に走りたいという人に打ってつけ

試乗車として用意された日産自動車「デイズ」には155/65 R14サイズを装着(空気圧:240kPa)

 試乗したコースは一般道で、トラックの往来が多くあるような、お世辞にも綺麗とはいえない路面。わだちも多く存在し、さらには速度抑制用の波状路が点在しているようなシーンだった。試乗当日は雨ということもあり、パターンに関してのフィーリングを確かめることは残念ながらできなかったが、それでもREGNO GR-Leggeraのフィーリングには確かなものがあった。

 なかでも一番に感じたことは、振動の抑制がかなり進んでいたことだ。前述した波状路ではうまく入力を吸収しており、瞬時に収束してくれる感覚がある。平たくいえばアタリが柔らかく、瞬間的な突き上げがないのだ。これなら高速道路のロングドライブでも継ぎ目を気にすることなく走れるだろう。快適性の向上は明らかだった。

こちらはもう1台の試乗車である本田技研工業「N-BOX」。タイヤサイズはデイズと同様の155/65 R14で、空気圧は240kPaに設定されていた

 その上質さはハンドリングにも表れている。ステアリングのニュートラル付近の応答が変に過敏ではなく、切り始めたところから切り込み応答まで連続したフィーリングが得られるのだ。程よいダルさと粘りのあるステアフィールは、快適に走りたいという人にとっては打ってつけだ。

 これなら軽自動車にダウンサイジングしたユーザーでも満足できるに違いない。音から乗り心地、さらには走りの質感まで向上させたこのタイヤは、軽自動車に新たなる価値を提供することになるだろう。

「POTENZA Adrenalin RE003」にもプチ試乗

「POTENZA Adrenalin RE003」を装着するホンダ「N-ONE」

 今回の試乗会では、1月に軽自動車向け4サイズが新たに追加された「POTENZA Adrenalin RE003」装着車にも乗ることができた。軽自動車特有のアライメントを考慮し、剛性を確保しながらタイヤ全体の重量を最適化したという軽自動車専用のPOTENZA Adrenalin RE003は、トレッドパターンを見るだけで理解できるほどの剛性を確保。非対称形状をやめ、スポーツ性能を引き上げていることも特徴的だ。

 走れば動きが実にスッキリとしており、キビキビとしたステアリング応答が常に得られるところが特徴的。グリップばかりを引き上げたような印象はないが、適度にスポーティに走れるところが好感触だ。また、スポーティだとはいえ、ダンピング性能が極端に削られた印象もなく、入力を一発で納める動きはなかなか。軽自動車へのマッチングも良好だ。

高いブロック剛性と排水性の両立を図った左右非対称のトレッドパターンを採用する「POTENZA Adrenalin RE003」では、軽自動車向けとして165/50 R16 75V、165/50 R15 73V、165/55 R15 75V、165/55 R14 72Vの全4サイズを設定。15インチのみラベリング制度で転がり抵抗性能:C、ウェットグリップ性能:bに適合している

Photo:高橋 学

橋本洋平

学生時代は機械工学を専攻する一方、サーキットにおいてフォーミュラカーでドライビングテクニックの修業に励む。その後は自動車雑誌の編集部に就職し、2003年にフリーランスとして独立。走りのクルマからエコカー、そしてチューニングカーやタイヤまでを幅広くインプレッションしている。レースは速さを争うものからエコラン大会まで好成績を収める。また、ドライビングレッスンのインストラクターなども行っている。現在の愛車は18年落ちの日産R32スカイラインGT-R Vスペックとトヨタ86 Racing。AJAJ・日本自動車ジャーナリスト協会会員。