飯田裕子のCar Life Diary

「ジャパン・ロータスデー2017」で「ロータス好きっていいな」と実感

今回は4月2日に行なわれた「ジャパン・ロータスデー2017」のお話です
ピットで写真を撮っていたら、ロータス 69FFのオーナー(業界の先輩)がやってきてコクピットに座らせてくれました

「やっぱりロータスっていいな」っていうのと同じくらい「ロータス好きっていいな」と思えた4月2日。今年で7回目となる「ジャパン・ロータスデー2017」が富士スピードウェイで開催されました。今回は北海道から九州まで、全国から500台以上のロータス車が集まったのだとか。私はこの数年、このイベントのステージでツタナイMCをさせていただいており、毎年1日のほとんどをステージの上で過ごすという、1年で最も“お喋りデー”なのがこのロータスデー(苦笑)。

全国500台以上のロータス車が富士スピードウェイに集合
ピットで行なわれていた「ヒストリックミュージアム」。1957年式のロータス イレブンをはじめ26台が展示されていたなかから一部をご紹介

 ちなみにこのイベント、英国メーカーであるロータスカーズの日本正規輸入総代理店であるエルシーアイさんとそのグループ会社のお手伝いによって開催されている、手作り感たっぷりなイベントなのですが、アットホームかつ英国スタイル(なのだとか)の雰囲気がほかのイベントにはないよさと言えるのかもしれません。おかげで“気取らないロータス好きなカーガイたちの集まり”と私の目には映ります。

 ロータスは魅力的かつマニアックなクルマなだけに、ロータスデー開催日の富士スピードウェイの雰囲気は独特です。音と匂いと人が、富士スピードウェイというお鍋のなかで熱々になった状態。それがなんともまろやかで(穏やかかつ和やかで)美味しい!

ロータス イレブン(1957)
ロータス 31(1964)
ロータス59(1969)とロータス69FF(1961)
ロータス51A(1967)
ロータス31(1964)
2台のロータス エスプリ(1987)
ピット内の展示車はコースでのデモ走行も行なわれた
サーキットタクシー(同乗走行)や終盤のパレードランで「3-イレブン」をドライブした加藤寛規選手

 ところでロータスデーは、1日中メインコースやパドックを貸しきり、コースとパドック(ステージ)などでさまざまなイベントが行なわれます。コース上ではオーナー走行のほかに3つのロータスレースのシーズン開幕戦や、ピットに展示されたヒストリックモデルのデモラン、サーキットタクシー(同乗走行)などが続き、朝から夕方までロータスのエンジン音が止むことがほとんどないくらい。

 また、開会式からスタートするステージでは、サーキットタクシーの同乗試乗権をめぐって行なわれる抽選会やディーラー&ショップのPR、カルトクイズやプレゼント抽選会、レースの表彰式や2回のトークショー、ドライバー&レースクイーンの撮影会、コンクール・ド・エレガンスなど、こちらも多彩なプログラムが用意されていました。

 サーキットタクシーに登場したモデルは、1月に国内販売が始まった「3-イレブン」や、ロータスカップ参戦マシンの「エキシージS カップカー」2台、「エリーゼ 20thアニバーサリー」「エリーゼ スポーツ220」「エヴォーラ 400」という6台のロータス車と「ケータハム 620」の計7台で、49人の参加者が同乗試乗を体験。毎年このチケットをゲットすべく、大抽選会には長蛇の列ができます。そんな列に並んでいるみなさんの退屈しのぎに私もステージ上からトークで盛り上げ、今年は記念撮影にもご協力いただきました。

コースではオーナー走行やロータスレースのシーズン開幕戦などを実施
トークショーやカルトクイズ、プレゼント抽選会には多くの人が集まってくれました。ステージ脇に展示された3-イレブン&レースクイーンとの撮影会もしかり

 そんなわけで、MCの私が会場をフラフラする時間は極めて限られてはいるものの、何人かのオーナーさんと何台かのロータスとの出会いはあるもの。というか、こちらからつい声をかけてしまうのですが……。そこで今回の主役はイベント自体というよりも、そんなオーナーさんのお話です。

 私がステージでご紹介するショップさんを取材していると、古田(こた)さんという読者の方が声をかけてくださいました。聞けば、お仲間たちと広島からやって来ているというのです。声をかけてくれたことはもちろん、広島からみんなで走って来たというお話になんだか嬉しくなってしまって、みなさんの集まるところまで思わずついていってしまいました。

ロータス大好きなオーナーさんのお話を聞かねば始まらないし、終われない

広島から2005年式の「エリーゼ」で足を運んだ古田(こた)さん親子

 広島からやって来ていたのは、「朝に広島の羅漢山に集まるから『あさらかん』」というグループの4台のエリーゼ。あさらかん全体では約20台のエリーゼオーナーさんがいるそうです。古田さんのロータスデー参加は今年で2回目。今回は小学校3年生の息子さんと一緒に「エリーゼ」(2005年式)でやって来ていました。

 オーナー歴3年というエリーゼの魅力について「ぜんぶ気に入っています。なにもないところ、過保護じゃないところですよね。日常に乗るクルマはいろんなバイアスがかかっているのに対し、この子(エリーゼ)はバイアスがないんで……(笑)」という古田さん。コツコツと“ロータス貯金”を始めたころに製造されたモデルと数年前に巡り合い、ご縁を感じていよいよ購入されたのだとか。

 ちなみに、普段の移動はトヨタ自動車の「シエンタ」。そこで息子さんに「シエンタの方が快適じゃない?」と質問すると、ボソッとひと言「酔っちゃう」との答えで、周囲の大人達は苦笑。「自転車で酔う人はいないと聞いたことがあります。エリーゼはそんな感覚なのかな」と、お父さんの古田さん。親子ともども大好きなエリーゼで富士スピードウェイと広島を往復ドライブするなんて、ステキだと思いませんか。

 また、ロータス歴10年という岡本さんは2007年式の「エリーゼS」のオーナー。「シンプルでハンドリングが素直なところが気に入っています。ボク、カートもやっているので、エリーゼSは公道を走れる“大人のカート”みたいな感覚で楽しんでます」と岡本さんは語ってくれた。10年も所有していて、なにかほかに気になるモデルはないかと質問してみると、実は新型エリーゼを狙っているらしい。が、「出る、出るって聞いているのに、ロータスが出してくれないんです。それを待ちながらこの子(エリーゼS)と付き合っているんですよ(苦笑)」と口にする岡本さんは、完璧にロータス、いやエリーゼに侵されてますな、ふふふっ(笑)。

限られた時間でのパドック散策でしたが、古田さん親子をはじめとする広島“あさらかん”のみなさんとお話できただけでも「来てよかった」と思える時間になりました。ロータスデーはやっぱりロータス大好きなオーナーさんのお話を聞かねば始まらないし、終われない(苦笑)。ブルゾンの下に赤いシャツが見える方は岡本さん(左)。お約束通り(?)の広島カープのユニフォーム。ただ、ちょっと寒かったですから、ユニフォーム1枚では辛かったですね

 さらに、停まっていた「エリーゼR」の車内から出てきてくれたのはこのクルマのオーナーの奥様。「こういうお仲間たちはどうですか?」と聞いてみると、口を濁らせながら苦笑。あまり快く思っていないのかと思いきや、実は緊張していただけで嫌いじゃないらしい。ご主人のエリーゼRも、1人で長距離ドライブは大変だし、万が一のときにも備えてご主人とドライバー交替ができるようにと、昨年に運転の特訓を受けたという。

 なんてお話をうかがっているうちにご主人が登場。エリーゼの魅力は「すべてです。軽くてクルマの動きが素直に伝わってくるクルマなので、ハンドルを握っているだけで楽しいです。同乗者は分かりませんが、ハンドルを握っている人間にとってはこんなに楽しいクルマはないです」とのこと。奥様によると、ご主人はただいま単身赴任中だそうで、エリーゼRに乗りたいばかりに毎週末自宅に帰って来るんですって。呆れた様子で話しているようでいて、軽くノロケられたような気がしたのは私だけだったのかしら(笑)。さらにこの奥様からは「路面を感じて走る楽しさとか、クルマと一緒に走ってる感じが分かるんです」とステキなコメントもいただいちゃいました。なんてステキなご夫婦なんでしょう。

会場内ではケーターハム(左)やKTM(右)もブースを出展
エンジンが温まる前にエンジンを切るようなショートトリップが多い人はとくに注目してほしいとなるオベロンのブース。ショートトリップではエンジン内部に汚れが溜まりやすく、オイル交換のときにエンジン内部を丸洗い&燃焼させることで、新車のころのようなエンジンの性能が蘇るのだとか。写真右側の「スラッジナイザー・カーボナイザー」(洗浄機)は全国の約500店舗で使われているそうです
英国の「Norton Motorcycles」を日本に輸入しているPCIは、“新しいのにクラシカル”なNortonのバイク2台とオリジナルグッズを展示&販売。「歴史と伝統ある英国の4輪がロータスなら、2輪はNorton。ロータスオーナーにもNortonライダーが意外と多いのは、ともに通ずる魅力があるのでしょう」と、ステージ上でのPRタイムで解説してくれました

 そうこうしているところに、2代目「ヨーロッパ」のオーナーで長野県にお住まいという竹内さんが合流。竹内さんは広島に単身赴任をしていたときに「あさらかん」の仲間になり、みなさんと会うのは昨年のロータスデー以来とのこと。竹内さんはエリーゼと2代目ヨーロッパのどちらかを購入するべく探しているうちに、結果的に広島と実家のある長野との往復を考えてヨーロッパを購入したのだとか。

 古田さんにロータスデーについて聞いてみると、ロータスオーナーはSNSで繋がっている人が多いとのことで、「ここに来れば、全国のオーナーさんと直接会えるんです」と楽しそうに語る。そんな風に会話している最中にも、東京のオーナーさんがお土産を持ってやって来ていました。

香川の「出石手袋」さんは、手作りのドライビンググローブ「CACAZAN」の展示&販売を実施。出石出袋さんはあるのある香川県さぬき市は、日本の手袋生産量でシェア90%なのですって。オーダーメイドも可能とのこと
ロータスのディーラーさんもブースをかまえ、オーナーさんのサポートやグッズ販売をしていました。例えば愛知県のACマインズさんは、ロータスやケータハムの販売や修理をはじめてからまもなく30年。今ではエリーゼやエキシージのみならず、クラシックロータスも多く扱っている。今回のヒストリックミュージアムにはこちらでメンテナンスを行なっているクラシックフォーミュラも多数展示されていました

 たまたま声をかけてもらったおかげで知り合った4台のエリーゼとその仲間たち。実は今回のイベントで私がお話できたのはこちらの方々だけ。たくさんのお話のなかから厳選された内容というわけではなく、これは本当に偶然のたまたま。

 しかし、この数年を通してお話を聞かせてもらった方々は、パドックでもステージ上であっても、みなさんフレンドリーで純粋なロータスファンで、だからこそ、お話を聞くこちらが嬉しくなってしまう人ばかり。あの和やかなムードは、今思い出してもニンマリしてしまう。やっぱりロータス好き、クルマ好きっていいですね。例えば美味しい食事をいただいているときに、美味しいものや美味しいお店の話しをするように会話がはずみます。

 コース上で1日中ロータス車が走りまわるあいだ、私もステージ上でしゃべり続けたイベントの最後には、毎年恒例のパレードランが行なわれて、今年のロータスデーも無事にお開きとなりました。「あさらかん」のみなさんは前泊をしてイベントに参加し、そのまま広島に直帰。私のFacebookにも、みなさんが無事に帰宅されたとの連絡が届いてひと安心でした。

 このイベントに参加したことのない人も、ぜひ来年は足を運んでみてはいかがでしょうか。エリーゼだけでなく「エキシージ」や「エヴォーラ」といった現行モデル、それに新旧のヨーロッパにエラン、エスプリ、3-イレブン、ケータハムetc、こんなにたくさんの、しかもカラフルなロータス車を1度に見る機会はめったにないと思うのです。

ロータスデー恒例のパレードラン。台数は不明ですが、最後まで多くの人がパレードランを楽しみにしていた様子。ステージでのお仕事も終わって私もパレード走行するクルマに同乗させていただきました

飯田裕子

■日本自動車ジャーナリスト協会会員/日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員/日本自動車連盟 交通安全・環境委員会 委員
東京生まれ、神奈川育ち。自動車メーカーでOLをした後、フリーの自動車ジャーナリストに転身。きっかけはOL時代に弟(レーサー・飯田章)と一緒に始めたカーレース。その後、女性にも分かりやすいCar&Lifeの紹介ができるジャーナリストを目指す。独自の視点は「人とクルマと生活」。幅広いカーライフを柔軟に分析、紹介のできる視野を持つ。自身の2年半の北米生活経験や欧米での豊富な運転経験もあり、海外のCar&Life Styleにも目を向ける。安全運転やエコドライブの啓蒙活動にも積極的に取り組んでおり、近年はIT技術を採用するクルマの進化とドライビングスタイルの変化にも注目。ドライビングインストラクターとしての経験も15年以上。現在は雑誌、ラジオ、TVなど様々なメディアで様々なクルマ、またはクルマとの付き合い方を紹介するほか、ドライビングスクールのインストラクター、講演、シンポジウムのパネリストやトークショーなど幅広く活動中。