一度は行ってみたい、日本の自動車博物館探訪記

第2回:クルマと一緒に時代も見える「伊香保 おもちゃと人形自動車博物館」(群馬県)

2000体以上のテディベアをはじめ、世界各国の人形や江戸時代の日本の人形、ブリキのおもちゃなども充実

伊香保 おもちゃと人形自動車博物館(群馬県北群馬郡吉岡町)

 今回紹介するのは、群馬県で人気の行楽スポット伊香保温泉にほど近い立地の「伊香保 おもちゃと人形自動車博物館」です。その名の通り、自動車だけではなく懐かしのおもちゃや世界中から集めた貴重な人形などを一堂に展示する1大レトロテーマパークとなっており、クルマ好きはもちろん、そうではない幅広い層にも支持されているのが大きな特徴です。自動車博物館に目を向けてみると、1階には軽自動車コーナー、2階には昭和のファミリーカー、3階にはスポーツカーと分類され、合わせて約95台が展示されています。また、展示車にまつわるグッズや資料も多く、ここだけでもクルマのレトロテーマーパークとしてとても楽しめる博物館です。

自動車博物館1階「ユニークな軽自動車」/「ミニミュージアム」

360cc時代の軽自動車がずらりと並ぶ軽自動車コーナー

 1階は戦後、庶民の足として活躍した軽自動車コーナー。商用トラックやホンダZなどのスペシャリティカー、ホンダバモスのようなオリジナリティに溢れたモデルなど360cc時代の軽自動車が所狭しと並んでいます。その展示方法もユニークで、当時の生活を感じられるような小物の展示も多く、何気なく飾ってある1つひとつに注目して見ると実は貴重なものばかりです。マツダが三輪トラックの後継として初めて発売した4輪トラックB360に積まれているダンボール箱をよく見ると、昭和30年代のナショナルテレビの箱だったりと、隅々まで楽しめる仕掛けがいっぱいです。また、展示車両はすべて実走可能な状態にまでレストアされていますが、中には朽ち果てた個体からのレストアもあるようで、展示された修復前の写真と見比べるのもまた興味深いものです。

展示車の周りに置かれた小物にも注目。大半が当時使われていた本物というのがスゴイ
年配の人には懐かしく、若い人には新鮮な昭和の軽自動車
2代目スズキフロンテは1967年に登場。寄り添うペコちゃんがかわいい
展示車の中にはここまで朽ち果てた状態からレストアしたものもあるそうです
1階には軽自動車コーナーのほかに「ミニミュージアム」があり、さまざまなタイプのクラシックミニが約20台展示してあります

自動車博物館2階「昭和を支えたファミリーカー」

昭和を支えたファミリーカーのフロア。壁に飾られている精密なイラストはカーイラストレーター林部研一氏の作品

 1960年代に庶民にまで普及した3C(カラーテレビ、クーラー、カー)の一角を担う自動車が中心のコーナーです。フランスのルノー4CVのノックダウン生産からはじまり、後に完全国産となった日野ルノーや昭和のファミリーカーの代表選手のようなトヨタのパブリカやコロナ、日産ブルーバード、サニーなど昭和30年~40年代を代表するような庶民のクルマが目白押し。なお、壁面に多数展示されている繊細な描写のイラストはカーイラストレーター林部研一氏の作で、こちらも見応え十分です(※クルマ同様、展示位置は時々変わるようです)。

日産ローレル(1968年)をはじめ昭和の名作がずらり
クーペとセダンが揃った日産サニー。手前に並べられた雑誌も壁のポスターも貴重
ダイハツ コンパーノベルリーナ
オレンジのグラデーションも懐かしい1980年代のレカロシートや、片山義美が使用したレーシングタイヤ
貴重なディーラー向けの資料
展示車の間で流されていたのは、具志堅用高氏が1970年代に戦ったプロボクシング世界タイトルマッチのテレビ放送。この博物館らしい演出だ

 また、漫画「頭文字(イニシャル)D」に登場する藤原豆腐店のモデルとなった地元群馬の「藤野屋豆腐店」の店舗正面玄関を再現しているコーナーもあり、使用している看板や展示している調理器具も平成18年に閉店した同店から譲り受けた本物です。博物館の外壁には藤原豆腐店のレプリカもあり、自分の愛車を置いて一緒に記念撮影もできます(見学者には「藤原とうふ店(自家用)」と書いたマグネットシールの貸し出しあり)。

※実写版「頭文字D」撮影の際、ロケ地となった藤野屋豆腐店の看板は藤原豆腐店へ架け替えられましたが、映画の撮影終了後もそのままの看板で営業を続けたそうです。

「頭文字(イニシャル)D」の世界が再現されたコーナー。モデルとなった豆腐店の本物の看板を使用している
調理器具も本物
黄色いFD3Sの元オーナーは高橋啓介氏……ではなく作者のしげの秀一氏
博物館の外壁には藤原豆腐店のレプリカ。愛車を置いて記念撮影も可能

自動車博物館3階「憧れのスポーツカー」

3階はスポーツカーのコーナー

 庶民のクルマを展示した2階に対し、3階は憧れのスポーツカーのフロア。トヨタ2000GTや日産フェアレディZ432、スカイラインGT-R(KPGC10)など、旧車の世界でもひときわ人気の高い稀少なモデルがずらり。そしてホンダS800、ダイハツコンパーノスパイダーなどのオープンモデルなど昭和40年前後に発売されたモデルが充実したフロアです。当時のレースのパンフレットや展示車にまつわる資料やグッズも他のフロア同様に充実していて、このフロア目当てに来館する人も多いそうです。

日産フェアレディZ432
オープンカーの展示も豊富に展示。周りに置かれた資料やミニカー、プラモデルなどにも注目です
ポスターやパンフレット、グッズも充実しています

自動車だけじゃない、昭和の全てを感じられるレトロアミューズメントパーク

自動車も充実しているけど自動車だけじゃない。昭和のレトロアミューズメントパークなのです

 自動車博物館の連載として今回取り上げさせていただいた「伊香保 おもちゃと人形自動車博物館」ですが、設立時はおもちゃと人形の博物館としてスタートしていますので、当然そちらの充実度も素晴らしいものです。なかでもテディベアは、100年以上前のアンティークベアを含む2000体ものコレクションを展示しています。そのほか世界各国の人形や江戸時代の日本の人形、そしてブリキのおもちゃのコレクションなども充実しています。

 また、昭和レトロパーク 駄菓子屋横丁、昭和スターロマン館など館内には懐かしくも貴重な展示のコーナーも多くて飽きることがありません。近年プロレスミュージアムが追加され、2019年には屋上庭園にほぼ実物大の戦車などのジオラマを展示したミリタリーゾーンも開設するなど、拡大の勢いは止まりません。

 その屋上庭園には映画「ALWAYS三丁目の夕日」の世界を再現したコーナー、アメリカの田舎をイメージしたルート66ガーデンなども用意されています。ちなみに三丁目の夕日のコーナーに展示れているミゼットは実際に撮影で使用されたものです。

テディベアは100年以上前のアンティークベアを含む2000体ものコレクション。クルマにまつわる比較的新しめのテディベアも充実しています
テディベア、世界中で集めた民族人形、江戸時代の日本人形など幅広いコレクション
デザインに時代を感じる昭和の生活用品
1970年~1980年代のレコードジャケットなどアイドル関連グッズも充実
昭和の駄菓子屋も再現。もちろん全部本物!
力道山もタイガーマスクもビューティーペアも、何でも揃うプロレスミュージアム
昭和のバイク店を再現。懐かしいバイクももちろん本物
映画「ALWAYS三丁目の夕日」のイメージしたゾーン(野外展示)
アメリカの田舎をイメージしたルート66ガーデン(野外展示)
2019年に完成した野外展示「ミリタリーゾーン」※博物館提供画像

まだまだあります、自動車ファンにおすすめのレトログッズ

レトロなブリキのおもちゃやプラモデル
スーパーカー世代にささるスーパーカーカード、なんと未開封!
モーターマガジンでバス?
運送業に進出する女性の記事はアサヒグラフ

 自動車、人形、おもちゃ、昭和のアイドルからプロレスラーまで館内いっぱいに昭和を詰め込んだ大アミューズメントパークは、世代によってはとても懐かしく、また若い世代にはとても新鮮な楽しみに満ちています。ミュージアムショップでは博物館オリジナルのテディベアやなつかしい昭和のおもちゃ、駄菓子などが用意され、館内にはイタリアンカフェ「キャバリーノ」があり、ヨーロッパの街並みのような雰囲気の中でコーヒーや軽食のほかワインやビールも楽しめます。

マルベル堂のプロマイド、懐かしい昭和グッズなどミュージアムショップも充実しています。館内にはワインやビールを楽しめるイタリアンカフェ「キャバリーノ」がある

 昭和のクルマが充実したミュージアム。そしてそのクルマが活躍した時代の全てを丸ごと誰もが楽しめます。昭和の日本の生活や時代の空気が館内いっぱいに感じられる総合アミューズメントパーク。それが「伊香保 おもちゃと人形自動車博物館」です。

伊香保 おもちゃと人形自動車博物館

住所: 〒370-3606 群馬県北群馬郡吉岡町上野田2145水沢観音下
開館時間: 冬季(11月1日~4月24日) 8時30分~17時 夏季(4月25日~10月31日) 8時30分~18時00分 ※最終入館は閉館45分前まで
休館日: 年中無休
入館料: 大人 1100円 中学生・高校生 880円 幼児(4歳から)・小学生 440円
障害者手帳の提示により大人880円 中学生・高校生 330円(本人のみ)
※ホームページにて割引情報あり ※当日に限り再入場可能
駐車場: 200台
ミュージアムショップ: あり
アクセス: JR高崎駅/渋川駅から群馬バス (水沢)伊香保行き 上野原バス停下車すぐ
ウェブサイト: http://www.ikaho-omocha.jp
電話: 0279-55-5020
オフ会等での利用: 事前のメール申し込みにより第二駐車場(未舗装)を無料で利用可能(メールアドレス omocha@ikaho-omocha.jp)
EVの充電: なし

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員