一度は行ってみたい、日本の自動車博物館探訪記

第7回:「日本の名車歴史館」(福岡県福岡市)

昭和20年代から40年代の国産車がずらり

日本の名車歴史館(福岡県福岡市)

 日本の名車歴史館(福岡県福岡市)は博多湾と玄界灘に囲まれた広大な国営公園 海の中道海浜公園の園内にある自動車博物館です。その名の通り展示車両は国産車のみ。昭和20年代から40年代のクルマで構成され、戦後の復興期を経てわが国が大きく成長を遂げた時代のクルマを通じてあの頃を伝える博物館とも言えるでしょう。1台1台に、映画「ALWAYS三丁目の夕日」で描かれ、アジア初のオリンピックが東京で開催された時代の日本人の熱意と勢いが詰まっているようです。

庶民の足となった昭和の乗用車

 戦後の貧しかった時代から大きくステップアップしようとしていた時代の庶民のクルマを展示しています。当時普通に走っていたモデル、グレードが多いのが特徴。クルマが庶民の憧れから現実のものとなった時代の記録です。

手前が昭和36年式の初期型 日野 コンテッサ。奥が昭和42年式。日野が自社ブランドの乗用車を作っていたこと自体も昭和の記録です
欧米メーカーのモデルをノックダウン生産することによりクルマ作りを学んだ日本。左/中央の赤いクルマはルノー 4CVをノックダウン生産していた日野が純国産化を成し生産した昭和38年式の日野ルノー、右はヒルマンミンクスをノックダウン生産したいすゞが純国産で作った昭和38年式
ダットサン1000(昭和34年式)
ダットサン サニー(昭和44年式)
三菱 コルト1500SS(昭和43年式)
マツダ ファミリアは昭和39年式のセダンと昭和42年式のクーペの2台を展示
トヨペット コロナ(昭和34年式 初代 ST10型)
トヨペット コロナ(昭和38年式 2代目 RT20型)
トヨペット コロナ(昭和43年式 3代目 RT40型)
三菱コルト11F(昭和44年式)テールフィンを備えた流麗なファストバックセダンというボディに当時の流行を感じます
スズキ フロンテ800(昭和41年式)2輪車や軽自動車で名をあげたスズキが作った小型乗用車は2ストローク水冷3気筒エンジンという珍しいメカニズム

高級乗用車のコーナー

 日産 セドリックやプリンス グロリアなど、メーカーを代表する高級車のコーナー。館内を眺めているとノックダウン生産によるクルマが多かった時代に独自開発で生まれたクラウンという車名が今なお引き継がれ、後継車が生産されているのは特筆すべきことだと感じます。

博物館の入り口で来場者を迎えるのは初代トヨペット クラウン(昭和36年式)
館内には昭和34年式の初代トヨペット クラウン。入り口の同型モデルとの細部がずいぶん違います。こちらにはエンジン始動のためのクランク棒の差し込み口が見えます
左から昭和36年式 日産 セドリック、昭和38年式プリンス グロリア スーパー6、そして日産との合併後に発売された昭和45年式プリンス グロリア スーパーDX。博物館では「(合併により)車名はニッサン グロリアとなりましたが、このクルマは紛れもなくプリンスの作品です」との説明書きと共に車名を「プリンス グロリア スーパーDX」と表記しています

軽自動車のコーナー

 日本のモータリゼーションを考えた時、軽自動車の存在は欠かせません。あまりに有名なスバル360から、今は完成車を生産していない愛知機械工業のコニー360など見どころいっぱいです。ちなみに現在発売中の日産 ノート e-POWERの発電用エンジンは現在この愛知機械工業が生産しています。

昭和42年式のスバル360 カスタムDXは、柔らかなボディラインを持ちながらほぼ垂直に近い角度のテールゲートを備えた商用モデルです
スバル360 カスタムDX(昭和42年式)のリア
スズキ スズライト フロンテ(昭和38年式)
愛知機械工業 コニー360ライトバン(昭和42年式)
ダイハツ フェロー(昭和42年式)
三菱 ミニカ DX(昭和39年式)
ホンダ N360(昭和45年式)
ずらりと並んだ商業バンのテール

スポーツカー

 比較的小型のモデルが展示されているスポーツカーコーナーもあります。

手前が昭和41年式ダイハツ コンパーノ スパイダー
2台のダットサン フェアレディ。手前が昭和40年式のSP310型、奥が昭和42年式のSP311型
2台のスカイライン。手前が昭和47年式の1500ccモデル、奥がプリンス時代の昭和40年式
ホンダ 1300 77S(昭和45年式)

はたらく三輪車も充実

マツダ オート3輪 T2000(昭和47年式)。柱で少々見にくいものの、荷台長約4.08mのロングボディを室内展示しているのが素晴らしい。展示車両は現役時代鉄骨の運送に使われていたとのことで、まさに日本の高度成長期を支えた1台
もはやおなじみ、どことなくかわいらしいマツダオート3輪の顔
日本内燃機製造 くろがねオート3輪(昭和29年式)
くろがねオート3輪。見た目はほぼバイクですが最大積載量は750kgもあるそうです
昭和ノスタルジーの代表選手のような ダイハツ ミゼット MP5 前期型(昭和39年式)

比較も興味深い2台のジープ

 ノックダウン生産から完全国産化への道のりがよく分かる2台。

三菱 ウイリス ジープ(昭和36年式)
三菱 ジープ J58(昭和50年式)
三菱 ジープ J58のインパネ
三菱 ウイリス ジープのインパネ

二輪車も充実しています

 二輪車は自動車と混在する形で展示されています。メグロ、陸王、ホンダ、トーハツをはじめ、富士産業(現在のスバル)のラビット、三菱 シルバーピジョンなどのスクーターなど、自動車の展示同様に昭和30年代のモデルが充実しています。

自動車の展示と混在する形で二輪車も多数展示しています
陸王 RT-1(昭和30年式)
メグロ スタミナK1(昭和35年式)
三菱 シルバーピジョン(昭和24年式)
メグロ ジュニアS3 サイドカー付き(昭和34年式)。サイドカーはBMW製、アポロウインカーが時代を感じます
二輪車・自動車を通じて、説明パネルの内容にそのクルマの車名・年式のほか、生産当時の社会背景、技術解説などの記述が多いのもこの博物館の特徴です

懐かしグッズや写真の充実ぶりも見どころの1つ

 館内にはレトロ風コーナーという懐かしいグッズを集めたスペースがあり、そのほかにも館内の壁面を見ると貴重な写真やポスターが数多く見られ、こちらも貴重なものばかりです。展示車が生き生きと生活に根付いていた時代の福岡市内の写真などはまさに歴史の証人。実車と合わせて楽しめます。

レトロ風コーナー
8トラックカセットにドーナツ盤。若い世代には何が何だか分からないであろう昭和グッズが並び、展示車両が活躍していた時代の生活が垣間見えます。0系新幹線は東京オリンピックが開催された昭和39年のデビュー。よく見ると戦前の貴重な資料も見つかります
昭和30年代の街の記録、館内の写真パネルにも注目!
貴重な写真やポスター

日本の名車歴史館

住所 :〒811-0321 福岡県福岡市東区大字西戸崎18-25(海の中道海浜公園ワンダーワールド内)
開館時間 :3月1日~10月31日:9時30分~17時30分
11月1日~2月末日:9時30分~17時
※入場は公園閉園時間の1時間前

休館日 :年末年始(12月31日~1月1日)、2月の第1月曜日と翌日
※海沿いの施設のため自然災害等で臨時閉園する場合あり

入館料 :300円(5歳児まで無料)、65歳以上は200円
身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保護福祉手帳いずれかの提示で、本人と付添者1名(15歳以上)は1人250円
※別途、海の中道海浜公園への入園料がかかります

<海の中道海浜公園入園料>
大人(15歳以上):450円(団体:290円)
シルバー(65歳以上):210円
中学生以下:無料
※2日通し券あり
※団体は小学生以上の入園者20名以上
※身体障害者手帳および療育手帳、精神障害者保健福祉手帳を提示された方と介助者1名は無料

駐車場 :有料(国営海の中道海浜公園駐車場)普通車530円/収容台数約3400台
※ワンダーワールド駐車場が便利

ミュージアムショップ :あり
アクセス :自動車の場合 九州自動車道 古賀ICより約35分
電車の場合 JR香椎線「海ノ中道駅」より徒歩すぐ
ウェブサイト 日本の名車歴史館
電話 :092-603-1111
オフ会等での利用 :要相談
EVの充電 :なし

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員