一度は行ってみたい、日本の自動車博物館探訪記

第3回:スカイラインファンの聖地と言える「プリンス&スカイラインミュウジアム」(長野県)

故櫻井眞一郎氏が初代名誉館長に就任して1997年に誕生

プリンス&スカイラインミュウジアム(長野県岡谷市)

 長野県岡谷市にある「プリンス&スカイラインミュウジアム」はその名の通り、かつてプリンス自動車工業が発売したモデルとプリンスから日産自動車に引き継がれ現在も生産されているモデル「スカイライン」の博物館です。

 標高約1000mに位置する広大な鳥居平やまびこ公園の中心部にあり、設立においては初代スカイラインの開発に携わり2代目より主管を務めた故櫻井眞一郎氏がバックアップに名乗りを上げ、初代名誉館長に就任し1997年に誕生しました。

 現在は櫻井氏の後を継ぎスカイラインの主管に就いた伊藤修令氏が名誉館長を務め、R33型、R34型の開発主管渡邉衡三氏が顧問を務めるなど、スカイラインを生み出してきた技術者たちがその名を連ねています。展示内容もそれに恥じないもので、まさにスカイラインファンの聖地と呼ぶにふさわしい博物館と言えるでしょう。

メインの展示スペースに降りる入り口には初代名誉館長 故櫻井眞一郎氏のパネルが飾られています

プリンス自動車工業のコーナー

 故櫻井眞一郎氏のパネルが迎える半地下のエリアがメインの展示スペース。その一角にあるプリンスのコーナーに並ぶモデルは、オープンカーからトラックまでバラエティに富んでいます。また、館内のいたるところに展示されているパネルも貴重なもので、時の皇太子殿下の愛車や、R380の写真などを眺めているだけでも楽しいものです。

プリンス時代の名車が並ぶコーナー。右の赤いオープン車はさまざまなパレードに使われたという特装メーカー製作の'64グロリア オープン、左は映画「ALWAYS三丁目の夕日'64・3D」の撮影に使われたグロリア タクシー仕様
小型トラック プリンスホーマー
プリンスグロリア(BLSI型)※元 長野県庁公用車
プリンスグロリア6 エステート(V43-A1型)
館内に展示されているパネルひとつひとつも貴重なもので見ても読んでも楽しいものです

充実の歴代スカイライン

 プリンス時代に登場し、現在の日産にもその名前が受け継がれているスカイラインが並ぶさまは素晴らしいの一言。ファンでなくてもスカイラインの歴史を楽しめるような簡潔さも備えていますが、実はここでしか見ることができない貴重な車両や展示物が多いのも大きな魅力です。東京モーターショーに出展されたプロトタイプや次期モデルのための先行開発車両など、メーカーの倉庫ではなくなぜここに? と驚くモデルも多数展示しています。

奥の黒いボディはプリンスのフラッグシップとして登場した初代プリンス スカイライン(ALSID-1)。手前はその商用バンとして登場したプリンス スカイウェイ(ALVG-2)。名前は違えどスカイラインのバンは初代からすでに存在していたのです
2代目スカイライン(S54A-II)
2代目スカイライン(S50B-II)
2代目スカイライン(S54B-III)
3代目 通称“ハコスカ”と呼ばれるC10型はレーシングカー、GT-R、バンとキャラクターの違う3タイプを展示
4代目 C110型 通称“ケンメリ”(PC110)
5代目 C210型 通称“ジャパン”(HGC211)
5代目のリアデザイン
6代目 R30型(左:HR30 右:DR30)
7代目 R31型(HR31)左は'93JSS参戦車両、右はGTS-R
8代目 R32型(BNR32、右端の白のみHR32改トミーカイラM20)
9代目 R33型は手前から’96JGTC参戦車両、1993年の東京モーターショーで発表されたGT-Rのプロトタイプ、市販型GT-R V-Spec、R34型の先行開発車両
10代目 R34型 左はニュルブルクリンク走行実験車、右はGT-R V-SpecII 村山工場最終生産車

クルマ以外の見所も多数

 貴重なモデルが多数展示されているミュージアムですが、クルマ以外の展示もとても充実しています。さらっと床に置かれているエンジンやガラスケースの隅に置かれているグッズなど見逃してしまいそうなものもありますが、クルマ同様レアなモノも多数ありますので、隅々までチェックしたほうがよさそうです。また、ミニカーやポスターに描かれたサインはスカイラインの開発に携わった技術者のものも多く、スカイラインファンにとってお宝のようなものばかりです。

エンジン関連の展示が多いのも特徴です
プリンス時代の試作エンジンや日産工機所有の試作カムカバーなど、貴重な展示も多く見応え十分
CMのキャッチコピーなどからモデルごとにさまざまな愛称がつけられたのも、スカイラインが多くの人に愛され続けた1つの証かもしれません
西部警察PART-IIIに登場するRS-1や、シルエットフォーミュラマシンなど赤/黒のR30型は今でも人気の高いモデルです
ガラスケースに展示されている資料はどれも貴重なものばかり。いずれも全ページ読破したくなります(残念ながら読むことはできません)
館内のいたるところにスカイラインに縁のある開発者や、レーシングドライバーのサインがあります

家族で楽しめる広大な公園内のミュージアム

 公園内の高台にある博物館は眼下に諏訪湖が見渡せる抜群のロケーションです。ここから見える空と山並みの境界線(=スカイライン)は自身が生み、育てたスカイラインという車名とリンクすると語ったのは初代名誉館長 故櫻井眞一郎氏。自然にあふれた広大な敷地は花見やピクニック、サイクリングなどが楽しめ子供連れの家族にも最適です。

緑豊かな公園の高台にある「プリンス&スカイラインミュウジアム」は家族連れでも1日楽しるロケーションです
プリンス&スカイラインミュウジアム

住所: 〒394-0055 長野県岡谷市字内山4769-14 鳥居平やまびこ公園内
開館時間: 9時30分~17時(入場受付は16時30分)
休館日: 毎週火曜(7月22日~9月7日は毎日営業、9月22日、11月3日は営業、9月23日、11月4日は振替休館)
※2020年は11月9日より冬季休館
入館料: 大人1000円、子供(小・中学生)200円
団体(20名以上)・障がい者・各種割引:大人800円、子供(小・中学生)150円
※公式webサイトにて割引情報あり ※当日に限り再入場可能
駐車場: 212台
ミュージアムショップ: あり
アクセス: JR岡谷駅よりタクシーで約5分 長野自動車道岡谷ICよりクルマで約5分
電話: 0266-22-6578(ミュウジアム直通)
オフ会などでの利用: 駐車場利用、園内利用ともにやまびこ公園管理事務所(0266-22-6313)に事前に問い合わせてください
EVの充電: なし

 なお、2020年シーズンは当面の間、館内では新型コロナウイルス感染拡大防止対策が実施されており、営業日程も今後の状況次第で変更となる場合もあるというので、最新の情報は公式Webサイトを確認してください。

【お詫びと訂正】記事初出時、渡邉衡三氏の名前の表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。

高橋 学

1966年 北海道生まれ。下積み時代は毎日毎日スタジオにこもり商品撮影のカメラアシスタントとして過ごすも、独立後はなぜか太陽の下で軽自動車からレーシングカーまでさまざまな自動車の撮影三昧。下町の裏路地からサーキット、はたまたジャングルまでいろいろなシーンで活躍する自動車の魅力的な姿を沢山の皆様にお届けできればうれしいです。 日本レース写真家協会(JRPA)会員