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日本車王国タイで明日の日本車ファンを作り出す。ホンダアクセスのファンミーティング活動とは?
「Option Caravan in Thailand 2018」レポート
- 提供:
- 株式会社ホンダアクセス
2018年8月10日 00:00
- 2018年7月2日(現地時間) 開催
三栄書房の自動車チューニング誌「Option」が主催するファンイベント「Option Caravan in Thailand 2018」が、タイの首都バンコク郊外にある「パトゥムタニ・スピードウェイ」と呼ばれるミニサーキットで7月2日(現地時間)に行なわれた。
このイベントは、ホンダの純正アクセサリーメーカーであるホンダアクセスの後援で行なわれており、SUPER GTのタイ戦となる「2018 AUTOBACS SUPER GT Round4 Chang SUPER GT RACE」の決勝レースの翌日に開催され、SUPER GTに参加したホンダアクセスのModulo開発アドバイザー土屋圭市氏、34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3のドライバーである道上龍選手と大津弘樹選手の3名が参加して、現地タイのファンとの交流が図られた。
ホンダアクセスがこうしたイベントを後援するのは、「タイでもModuloブランドを展開している」「試乗会などのイベントが少ない」「ホンダやModuloファンの期待に応えたい」といった理由からだ。そうした意味を持つイベントを現地で取材してきたので、その模様などについてお伝えしていきたい。
ASEANへの輸出、そして国内の消費で200万台近い生産があるタイ市場は日本メーカーにとって重要な市場
タイにとって自動車産業は一大産業となっている。タイの自動車産業の業界団体「Thailand Automotive Industry Association」によれば、2016年の総生産台数は194万台と発表されており、そのうち輸出が約60%を占めているという。同時期の日本の生産台数が920万台とされているので、それに比べれば規模は小さいが、タイが属するASEAN(東南アジア諸国連合)への輸出拠点としての機能を考えると重要な市場となっている。
このタイの自動車生産で市場をリードする立場にあるのが日本メーカーだ。日本のメーカーはいち早くASEAN市場の可能性に目をつけて、タイに進出して現地生産を開始している。このため、タイ国内の市場では実に90%超が日本車とされており、実際にタイの道を走ってみると、ここは日本かと見間違えるほど日本車がバンバン走っている。つまり、タイの人々にとっての国民車は日系メーカーのタイ生産車なのだ。
そうしたタイだからこそ、現時点ではSUPER GT唯一の海外ラウンドであるタイ戦がブリーラムにある「チャン・インターナショナル・サーキット」で行なわれており、人気を博している。タイの人たちにとっても、SUPER GTに参戦している本田技研工業、トヨタ自動車、日産自動車といった日系メーカーは彼らにとっても身近な自動車メーカーなのだ。
そして現地に根を下ろしているのは、なにも自動車メーカーだけではない。その自動車メーカーにパーツを供給するサプライヤー、そして自動車メーカーに純正部品を供給するメーカーも現地に進出し、現地生産の自動車向けのパーツを販売している。ホンダの純正アクセサリーを販売するホンダアクセスもその1社で、タイに現地法人となる「ホンダアクセス アジア&オセアニア(HAC-AO)」を開設しており、タイやASEANだけでなく、オセアニア地域(オーストラリア、ニュージーランド)をカバーしている。
実際、タイでもホンダは人気で、ホンダの世界戦略車である「シビック」や「ジャズ(日本名フィット)」などはそこかしこでよく見かける。特にシビックは大人気で、現行型だけでなく、旧型(それこそEF型やEG型など)も含めてたくさんのシビックを見ることができる。そうしたタイ市場だからこそホンダアクセスもマーケティングには力を入れており、さまざまな施策を行なっている。前述のSUPER GTのレースである「2018 AUTOBACS SUPER GT Round4 Chang SUPER GT RACE」への、同社チームである「Modulo Drago CORSE」の34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3のGT300への参戦もその一環で、それに併せてさまざまなマーケティング活動を行なっている。
そのSUPER GTの決勝レース(7月1日)の翌日に、タイの首都バンコク郊外にあるパトゥムタニ・スピードウェイと呼ばれるミニサーキットで行なわれたOption Caravan in Thailand 2018と呼ばれるユーザーイベントへの協賛もその一環だ。このイベントはここ数年毎年SUPER GTのレース翌日に行なわれているファンミーティングで、ホンダ車ユーザーを対象にして行なわれ、走行会を兼ねたイベントになっている。
土屋圭市氏や道上選手、大津選手の両34号車ドライバー、Moduloスマイル/プリティが参加したトークショー
今回のイベントのメインとなっているが、日本を代表する「ドリキン」こと土屋圭市氏と、34号車の両ドライバーである道上龍選手、大津弘樹選手という3名が参加して行なわれる体験走行会、そして同乗走行体験会となる。
そのメインのお楽しみの前には、3名によるドライバートークショーが行なわれた。まずはドライバー紹介。土屋氏は1984年に富士フレッシュマンレースでデビューし、JTCC、ル・マン24時間レース、SUPER GTの前身となるJGTCなどに参戦して2003年にドライバーを引退。その後はARTAのエグゼクティブ・アドバイザーを務めていることなどが紹介された。現在土屋氏は、ホンダアクセスのModulo開発アドバイザーを務めており、その関係もあって毎年このイベントに参加している。
道上選手は、Modulo Drago CORSEのチーム代表 兼 ドライバーで、2017年はWTCCをシビックで戦い、その前はホンダアクセスがスポンサードしてGT500に参戦していたDrago Modulo Honda Racingの監督も務めていた。道上選手は、1994年にステップアップした全日本F3選手権のデビューレースで初優勝を飾って一躍注目される存在になり、その後ホンダのエースドライバーとして2000年にはJGTCで見事タイトルを獲得するなどの実績を残している。2018年はWTCCからSUPER GTへ復帰することになり、Modulo Drago CORSEのリーダーであり、そしてドライバーとして注目を集めている。
大津選手はホンダの育成プログラムであるHFDP出身のホンダ期待の若手ドライバーで、2013年にSRS-Fを卒業し、その後2015年にFIA-F4にステップアップしてシリーズ3位。2016年と2017年は全日本F3選手権を戦い、2017年の最終戦で初優勝を飾っている。現在、全日本F3選手権はトヨタ系のトムスチーム1強という状態で、その中で1勝でも挙げるというのは高く評価されてよい結果だ。2018年からSUPER GTにステップアップし、34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3のドライバーを務めている。まだ4戦しか走っていないのに、ミスをせず、かつ速いということでチームからの信頼も厚いという若手ドライバーだ。
そうした3名が参加したトークショーは、言葉の壁があるため通訳を介してのコミュニケーションながら和気あいあいと進められた。タイの印象について土屋氏は「毎日トムヤンクン」というと、道上選手も「毎日タイ料理を食べて、昼夜ずっとタイ料理だった」と便乗。さらに若手の大津選手も「4日間、トムヤンクンを食べてはまってました」と息の合ったところを見せた。
途中からはクイズ大会のような形になり、大津選手の日本での愛車がクイズとして出されると、大津選手の答えは「日本での愛車はフィット。マニュアルで、レースのための練習用に買った」と、レーシングドライバーのかがみのような回答をしていた。そのほかにも、土屋氏にARTAのエグゼクティブ・アドバイザーは何をしているのかという質問や、道上選手が初めて乗った箱のレーシングカーとは何か(ちなみに答えはEG型のシビック)などの質問がされ、参加者がそれに答えて正解すると土屋氏のDVDやホンダアクセスのキャラクターであるくるタムの人形がプレゼントされるなどして進められた。
クイズは参加していた34号車のレースクイーン関連でも出題された。今回34号車のレースクイーンは、Moduloスマイルの安藤麻貴さん、Moduloプリティの生田ちむさん、はるまさんの3名が参加していた。レースクイーンに関するクイズでは「レースクイーンになる特典」で、3択だった。
(1)レースクイーン専用のレストランで食事できる
(2)許可証なしでコースに入ることができる
(3)チームが優勝したら自分も賞金がもらえる
さて、どれか?。男性諸氏としては(1)があったら自分もそこで食事したいとかよこしまなことを考える人もいるかもしれないが、もちろんそれは正解ではなく、安藤さんが示した答えは(2)で、そんなレストランは地球上どこにもないのであしからず。
イベントの終盤には、ModuloスマイルとModuloプリティによる握手会も行なわれた。男子が美人に弱いのは万国共通のようで、バンコクの男子たちもメロメロになりながら握手会に参加していた。
ドライバー3名の先導で行なわれた体験走行、そして貴重なレーシングドライバーによる体験同乗走行
お楽しみのメインイベントは、ミニサーキットを利用した走行会、そして体験同乗走行だ。まずは道上選手と大津選手から参加者への運転上の注意が行なわれた後、各々自分が持ち込んだ車両に乗り、土屋氏、道上選手、大津選手が乗るクルマの後ろに並ぶ形になった。
土屋氏が赤いシビック セダンに乗り込み上級コースを、道上選手と大津選手が白いシビック セダンとシティに乗り込み初めてサーキットを走る初心者コースを引っ張る形で体験走行が行なわれた。いずれもFK型シビック セダンのタイバージョンになっており、ホンダアクセスが販売しているModuloブランドの純正エアロパーツを装着していた。その先導車に続くクルマも実にユニーク。日本ではフィットに相当するジャズは3世代(初代、2代目、現行)がいたり、シビックもそれこそEF型やEG型といったエンスーに人気の旧型がいたり、タイでは発売されていないはずのシビック TYPE-Rや「S660」がいたりとバラエティに富んでいた。
S660のような発売されていない車種をどうやって手に入れているのかと言えば、実は日本からの輸入。このため、リアウィンドウにはエコカー減税のシールが貼ったままだったりというクルマも少なくない。逆にそうしたシールは日本からの輸入車の証明でステータスなんだとか(日本のユーザーがEUのナンバープレートをつけるような感覚か……)。ちなみにタイで自動車を輸入する場合は価格に200%の税金がかかるため、シンプルに言えば値段は3倍になる。それでも日本車が欲しい!というタイの自動車ユーザーの熱い気持ちが伝わってくるような話だ。
さて、カルガモ走行と呼ばれるレーサーの先導でサーキットを周回する体験走行が何度か繰り返されていたので、筆者も1度同乗させてもらった。同乗させてもらったのは世界のドリキンこと土屋氏がドライブするシビック。外から見ているとそんなスピードではないと割と油断していたのだが、乗ってみると結構なスピードが出ている。それを土屋氏は筆者に解説しながらドライブしてくれていた。正直自分で運転したらこんなスピードでは曲がれないというスピードで土屋氏がぐいぐい曲がっていくのを見て、さすが世界のドリキンということを実感した。
その後は、ドライバー3名がお客さんを乗せてサーキットを走る同乗走行が行なわれた。参加者も筆者が体験したような「あーうーおー」としか言い様がないすごい体験をしていたのだが、ただ1つだけ疑問だったのは、筆者は日本語でドライバーに説明を受けながら乗ることができたが、タイの参加者の多くは日本語がしゃべれないのでどうしているのだろう?と思っていたのだが、見ていれば英語だったり、あるいは日本語で話している参加者もいて、スゴイと感じた。そして最後はボディランゲージでなんとなく通じている。それが”クルマ”という同じ言語を持つ者同士なのだなぁとしみじみ感心した。
ホンダアクセスのNSX広報車もタイのサーキットを爆走。参加者にとっても大満足なイベントに
イベントの終盤には、バンコク・オートサロンに向けてわざわざ日本から持ち込んだホンダアクセスの「NSX」(NC型)が紹介され、抽選会で当選した参加者を乗せた道上選手、大津選手のドライブによる体験走行会も行なわれた。このNSXは34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3の発表会で新カラーリングが公開されたホンダアクセスの広報車。34号車に装着されているホイールと共通デザインのModuloホイールが装着されており、イベントなどで活躍している車両だ。それをわざわざバンコク・オートサロンのために船便で運んできたものを、このイベントにも活用するため、当日サーキットに持ち込まれた。
もちろん、タイでのナンバープレートは取得していないため公道を走らせることはできず、船から降ろされた後はローダーに積み替えて運ばれてきた。2016年に日本でも発表されたNC型のNSXは、まだタイでは販売されていないため輸入車しかない状態。このため当日参加した参加者もみんなしげしげと眺めていたのが印象的だった。
そしてイベントの最後の方にはドライバーのサイン会、抽選会などが行なわれた。参加者はそれぞれユニークなグッズを持ってきてサインしてもらっていたのだが、びっくりしたのはグローブボックス(助手席側の物入れ)など自動車のパーツを外して持ってくる参加者だ。どうもタイでこれは普通らしく、この翌々日に行なわれたバンコク・オートサロンのサイン会でもそうしたファンが多かった。正直「その発想はなかった」というところだが、彼らにとってドリキンや日本のドライバーは、日本人がF1ドライバーに感じているようなスター性を感じていると思えば、そういうものかと納得することができた。
最後の締めで土屋氏は「このイベントはすでに数年参加しているが、年々運転が上手になっている人が増えていて嬉しい。ぜひ来年も参加したい」と述べると、参加者から大きな拍手が上がり、イベントは終演した。
筆者にとっても、このイベントに参加するのは2016年に次いで2回目となるが、毎回印象的なのは、タイの参加者が非常に熱心であることだ。みんな自分のクルマをドレスアップしていたり、TYPE-Rの部品を輸入して普通のシビックを「なんちゃってTYPE-R」にしているユーザーなど、実にユニークな改造をしているユーザーが多かった。ホンダアクセスのような純正アクセサリーを販売するメーカーにとっては、そうした参加者こそ将来の潜在的な顧客であることを考えると、こうした地道なマーケティング活動が、多くのファンを作ることにつながるという意味で、大きな意味があると言えるのではないだろうか。