トピック
「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート。第2戦 富士スピードウェイは8位でポイントゲット
Round2 FUJI GT500km RACE
- 提供:
- 株式会社ホンダアクセス
2018年5月16日 00:00
- 2018年5月3日~4日 開催
Car Watchでは2018年のSUPER GTに参戦している「Modulo Drago CORSE」の34号車に密着して、リザルトだけでは見えてこないチームやNSX GT3の魅力をお伝えするスペシャルレポートを開幕戦からお届けしている。今回はその2回目、静岡県にある富士スピードウェイ(以下FSW)で開催された「FUJI GT500km RACE」である。
「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート 記事一覧
Modulo Drago CORSEはレーシングドライバーの道上龍選手が率いるチームで、2018年のSUPER GTにはGT300クラスに参戦。使用するマシンは日本のレースでは初登場になるNSX GT3でゼッケンは34番。エントリー車名は「Modulo KENWOOD NSX GT3」。
道上選手と言えばSUPER GT(前身の全日本GT選手権を含む)で長年NSXをドライブしてきた生粋のNSX使い。その道上選手が今期、注目度ナンバーワンのNSX GT3のステアリングを握ることは開幕前から大きな話題になった。
その道上選手とペアを組むのが全日本F3選手権からステップアップしてきた大津弘樹選手。優勝1回を含む表彰台の常連であり、シリーズランキングも5位という成績を残している。なお、道上選手とは鈴鹿サーキットレーシングスクールの受講生時代、講師と生徒の間柄だったので34号車では師弟コンビとなる。
Modulo Drago CORSEの34号車とパートナーシップを組んで強力にサポートするのはホンダ車の純正アクセサリーを開発、販売するホンダアクセス。34号車にはホンダアクセスのブランド「Modulo」のロゴとホンダアクセス製NSX専用ホイール「MR-R03」とイメージを共通化した「Moduloレーシングホイール」が装着されている。
心機一転で臨む第2戦だが、なんと今回も波乱のスタート
NSX GT3は今期から日本国内デビューしたクルマなのでサーキットごとのセッティングデータは皆無。開催地ごとにセットアップを探っていくことになるため予選日の練習走行はとても大事だ。とくに今回の練習走行では事前に行なわれた合同テストで得たデータを元にしたセッティングを試すことがスケジュールに組まれていた。
ところが、予選日のFSWは前日からの雨が残り、さらに霧が濃く出るという状況。悪天候で走行時間になっても霧はいっこうに晴れない。そしてそのまま走行時間終了になってしまった。
正午近くになると天候は回復。そこで急きょ12時50分から13時20分までの30分間がSUPER GTの公式練習に充てられた。
ただ、SUPER GT以外のレースも霧の影響を受けて進行が遅れているのでその余波もあり、本来クラスごとQ1、Q2と2回に分けて行なう予選が各クラス20分の1回に短縮されることになった。
予選は道上選手が担当。コースオープンと同時に次々とGT300マシンがコースイン。34号車もその列に並んでスタートしていった。
予選では2セットのタイヤが使えるので1回のピットインを行なう。34号車は開始から12分を過ぎたあたりでピットインし、2セット目のタイヤに交換。ドライバーは交代せず道上選手が乗ったままだ。そして2セット目のタイヤでアタックを掛けたが、予想よりタイムは伸びず予選11位にとどまった。
ピットに戻ってきた道上選手に状況を聞いてみたところ、タイム計測を始めてから最後のアタックとしていた4周目、1コーナー進入時にブレーキング、そしてシフトダウンを行なったとき、システムが行なうブリッピングとドライビングの感覚にズレがあったという。具体的にはアクセルを離してもスロットルの戻りがほんの僅かに遅れる感じでブレーキを掛けているのに加速が残る感じだという。
予選終了後にチームはECUデータなどの確認を行なったが、とくに異常は見つからず。そのため34号車は有効な対策を施すこともなく決勝に挑むことになった。
34号車予選結果
アタックドライバー:道上龍
ベストタイム:1分37秒396
予選順位:11位
予選終了後に行なわれたチーム会見
予選終了後、チームの会見が行なわれたのでここからは会見の内容を紹介していこう。最初はチョン監督から「岡山ではあまり走行できなかったので、前回確認できなかった部分を見たかったのですが天候不良で走行時間が減ったのでその確認がやりきれませんでした。ただ、ある程度は事前テストで修正できていると思います。予選は前後ともミディアムコンパウンドのタイヤをチョイスしました。2セット目のタイヤに変えたあとアタックする予定でしたが、スロットル系のトラブルが出てしまったため道上選手は満足なアタックができない状況になってしまいました。原因についてはいまも探っていますが、まだ解決できていません」とのことだ。
つぎは予選を走った道上選手が発言。「富士の前に鈴鹿でテストがありました。実はそこであまり調子がよくなかったのですが、原因を探ってもらったところ今までとは違うセットアップを見つけることができました。そのセットを生かした公式練習ではトップ10に入るタイムは出ましたが、印象としてはこれまでより少しはよくなったという感じです。もちろんそれでいいワケはないので、練習走行前にさらにセットアップを変えてもらったところ、クルマのバランスがまた1段階よくなりました。予選では1セット目のタイヤで様子を見て、2セット目のタイヤからプッシュしていきましたが、タイムアタックに入って4周目の1コーナー進入時にスロットル制御に違和感がありました。そのため、1コーナーが大回りになってしまいタイムの更新ができませんでした」ということだった。
また、大津選手は「富士スピードウェイは好きなコースです。今日は霧のため、走行する時間がほとんど取れませんでしたが、いきなり乗ってタイムを出すことが自分の課題でもあったのでそれが試された日でした。短いながらも、乗れたときにはウォームアップの段階から多くのことを感じ取ろうと思いながら走っていました。また、レース前に行なわれた合同テストの時のことも思い返しながら走りました。クルマも前回と比べるとかなり走りやすくなっています。道上さんの予選はアタック3周目に1分37秒5が出ていたので、そのままいけば4周目にさらに上がるのは確実だったと思います。トップは無理だとしても5位くらいには入れたんじゃないでしょうか。それだけにトラブルが出たのが悔しいですね」と語った。
予選は11位と中段グループになってしまったが、今回のレースは500kmの長丁場なので巻き返しのチャンスは十分にある。道上選手と大津選手それぞれから「クルマはよくなっている」という言葉が出ているだけに、決勝の走りに期待が持てる会見の内容だった。
ホンダブースで行なわれるイベントを紹介
さて、SUPER GTではレース以外でも来場者に楽しんでもらえるようメーカーブースやイベントステージなどがたくさん用意されている。そして34号車のパートナーであるホンダアクセスも、グランドスタンド裏のイベント広場にあるHondaブース内にModuloコーナーを構えていた。さらにテント内に設けられたステージを使ってトークショーも開催していたので、ここからはその模様を写真を中心にお伝えしよう。
Hondaブース内の人気イベントは、ドライバーや関係者によるトークショーだ。ホンダアクセスでは予選日にModulo開発アドバイザーの土屋圭市氏とホンダアクセスModulo開発責任者の福田正剛氏による「Modulo Xトークショー」と、モータージャーナリストの山田弘樹氏、三栄書房の長野正和氏によるGT300応援トークの「GT300を盛り上げよう!! Let's Enjoy GT300!!」。そしてModuloスマイル、Moduloプリティ、KENWOODレディが登場する「Moduloスマイルonステージ」を開催。各トークとも多くのギャラリーを集めて大いに盛り上がった。
チームの指揮を執るチョン監督はどんな人?
34号車を走らせるのは道上選手が率いるModulo Drago CORSEだが、チーム監督として指揮を執るのは34号車のメンテナンスやピット作業を担当するレースガレージ「4MINUTES」の代表、チョン・ヨンフン氏。レーシングチームの監督と言えば非常に重要なポジションなだけに、34号車を応援していくうえで「監督」のことはぜひ知っておきたい部分。そこで今回はチョン監督のことも紹介していこう。
チョン監督は韓国出身で、学生時代は経済学を学んでいた。同時に趣味でドライバーとしてモータースポーツに関わっていたが、この分野は韓国より日本の方が進んでいるので「日本でモータースポーツの勉強がしたくて」来日したという。
日本に来てからはエンジニアとしてF3に参加。そしてスーパーフォーミュラを経て無限へ入社する。ここでさらに知識と技術を高めたのち、独立して8年前に「4MINUTES」を立ち上げる。現在はこのSUPER GTのほかにF3も走らせている。
ちなみにフォーミニッツは日本語にすると4分。監督の名前が……というなかなかお茶目なネーミングである。
道上選手との付き合いは今年で13年になるという。2005年に道上選手がTAKATA童夢NSXに乗っているときに一緒に仕事をしたのが始まりで、2014年のMUGEN CR-Z GTにも関わっていた。
また、NSX GT3の印象を伺ってみたところ、チョン監督いわく「富士スピードウェイだとBOPなどの関係があってもストレートスピードがかなり速いクルマです。リタイアになってしまった前回の開幕戦もクルマとしてはかなりバランスがいい印象でした。まだ走らせてそれほど時間は経っていませんが、自分としては高速コーナーよりも低中速のコーナーの方がクルマの相性はいいのではないかと思っています。3月に行なわれた富士スピードウェイでの公式テストでもコカ・コーラコーナーから100R、それにダンロップシケインが速かったです。とはいえ、3月とは気温も違うし路面の状況も変わっているので今回も同じとは言い切れませんが、傾向としてはその辺が速いのではないかと思います」とのことだ。
チョン監督はご覧のように韓流スターのようなイケメンであり、日本語もバッチリ。そして道上選手が以前から信頼を寄せるプロである。パドックでチョン監督を見かけたら応援の声がけをしてみよう。
いよいよ決勝……その前にチェックしたいドライバートークショー
5月4日の決勝日は朝から快晴で、早朝から予選日を遙かに上まわる観客がサーキットへ詰めかけていた。
SUPER GTのスタートは午後からとなるが、イベント広場は朝から全開! 各ブースとも様々な催しを行なっているが、なかでも朝イチから見逃せないのがModuloのステージ。決勝前のドライバーが登場するドライバートークショーがあるのだ。
登壇したのは34号車の道上選手と大津選手。そして今回は18号車 UP GARAGE 86 MCに乗る中山友貴選手と小林崇志選手が登場した。このステージでは、前日の予選のことなどが話題になるが、内容としてはメディアが聞く会見の話に近いものなので、トークショーを聞いておくと決勝での走りやチーム戦略の理解度が高まるかもしれない。Moduloステージでのドライバートークショーは9時ごろと早い時間から始まるので、サーキットに着いたらまずHondaブースに立ち寄っていただきたい。
ついに大津選手の本気が見られる! 決勝スタート!!
朝からのプログラムが順に消化されていくと、サーキット内の人の流れが止まりコースサイドへ集中してくる。そう、いよいよSUPER GTの決勝の時間なのだ。
前回の岡山ではスタートドライバーを道上選手が務めたが、ここFSWでは大津選手がスタートドライバーとなった。岡山では大津選手が乗る前にリタイヤしていたので、大津選手は初めてのSUPER GT決勝でのドライブとなる。
ピットでは物静かでやさしい表情の大津選手だが、スタート時間が近づき準備を始めるころには表情がグッと引き締まり、集中力が高まっているのが外から見ていても分かる。
大津選手の快進撃で涌いたレース序盤の展開
14時40分、SUPER GT FUJI 500km RACEがスタート。GT500クラスに続いてGT300クラスが1コーナーへ。34号車は中段ということで見ているほうも緊張の瞬間だったが、大津選手はきれいにクリア。集団の中でも冷静にドライブしていた。
見せ場は16周あたりからの65号車、2号車とのバトル。17周目は前を行く2台のスリップに上手く入り、ストレートで3台が横並びになる。34号車はイン側のポジションから1コーナーへ入るが、減速しきれずオーバーラン。2台抜きはできなかったがファイト溢れる走りにピットは涌いた。
34号車は40周目に1回目のピットイン。道上選手へドライバー交代する。ピット作業は燃料補給と4輪のタイヤ交換を行なったが(TV放送ではリア2本といっていたが4輪交換)ここで右リアホイールがはまらないというトラブルが発生。チームとしても初めてのピット作業なので、いきなりのトラブルであせりも出るかと思いきや、メカニックは落ち着いて対応し、ロスを最低限に抑える。ちなみに機械的な問題とのことだ。ただ、このピットでかなりの時間をロスしてしまったため、コースへ戻ったときは12位までポジションダウンしてしまう。
ここでマシンを降りたばかりの大津選手からのコメントを紹介しよう。
大津選手:スタート自体はわるくなく、スタート直後のSUPER GTならではの混戦も、目の前でスピンされたりもしたんですけど意外とすんなり抜けられました。ペースも前半はよかったと思います。でも、65号車と2号車とのバトルの中で3ワイドになったとき、自分のミスでオーバーランしてしまいました。あれは悔しいミスです。クルマの調子はよかったのですが、ストレートスピードは自分的にはさほど速くないと感じていました。NSX GT3はまわりと比べるとブレーキングで詰まるのでブレーキはいいかなと思います。でも、ずっと一緒に走っていた65号車と比べると、トラクションの掛かり具合で全然負けているのでまだまだだなという印象です。
セカンドスティントを担当した道上選手は、12位まで落ちたポジションから徐々に挽回、再び大津選手へ交代する最後のピットイン直前には7位までポジションを上げた。では、セカンドスティントを担当した道上選手のコメントを紹介しよう。
道上選手:このピットではリアタイヤのみ交換をしました。これは最初から作戦として用意していたことですが、その作戦を取るかどうかの判断は直前に乗っていたボクが行ないました。そのためにボクが2スティント目に乗ることになったんです。ボクの時はスタートで大津が乗ったときよりワンランク硬いタイヤで出たのですが、前半の暖まりが遅く、最初は苦労しました。暖まってからもグリップのピークがなく、ダラダラ走るだけで一発のタイムを狙えないという感じです。最後のスティントではミディアムの新品にしているので問題はないと思います。
クルマのパフォーマンスに関してはストレートがすごくよかったです。富士だとストレートが速いと有利で、ストレートが速ければコーナーで無理をしないパターンも取れますからね。ただ、コーナーはけっしてよくはなかったんですが、何事も100%いいと言うことはないのでそこは合わせながら走りました。あと、予選で気になったシフトダウン時のブリッピングの違和感はまだちょっと残っているなという感じでした。
最後のピットインを終えた34号車は、再び大津選手がステアリングを握り、チェッカー目指して最後の力走を見せ、そして見事8位入賞を果たした。では、最後のドライブを終えた大津選手のコメントを紹介する。
大津選手:最後はリアタイヤのみ交換をしましたが、この選択がすごくよかったです。普通、フロントタイヤが消耗した状態でリアのみ交換をするとマシンバランスがアンダーステアになったりしますけど、そういうのはなかったです。だから最初からプッシュした走りができたし、タイムもよかったと思います。ピットアウト時は8秒くらい先に88号車のランボルギーニがいたのですが「絶対抜いてやる」という気持ちで毎周プッシュした結果、抜くことができました。なんでしょう……、「戦ったな」という気持ちです(笑)。NSX GT3は燃費が厳しいクルマでしたが、最後のスティントは1回目、2回目に比べるとショートになるので燃費を気にせず走れました。
SUPER GTではレースでの成績に応じてドライバーとチーム、それぞれにポイントが与えられる(700km以上走るラウンド5の富士のみ与えられるポイントが増える)。今回の8位入賞によってModulo Drago CORSEはチームポイントを6ポイント獲得。GT300クラスでのチームランクは全26チーム中12位。ドライバーポイントは3ポイント獲得し、ランキングは14組中11位となった。なお、このポイント獲得により次戦は6kgのウエイトハンデを背負うことになる。
レース終了後のチーム会見
レース後はチームのホスピタリティで会見が行なわれた。チョン監督は「路面状況も分からず500kmも走ったことがないクルマなので、ピット作業の内容やタイヤ選択など、どうするか色々悩んだところはありましたが、ロングランのためのセットが決まって順調にいきました。全体的なことを言うと足りないところはたくさんあるんですが、よかった部分もありましたね。次に向けて改善しなければいけないところも見えました」と語った。
道上選手は「NSX GT3は今の状態ではピット作業の時間が少し長くなるので、昨日の段階で決勝はリアのみ交換をしようということになっていました。そのために、ボクの番のときにスタートタイヤより硬めのタイヤを使ってできるだけ長めに引っ張り、最後に柔らかいタイヤで勝負を掛ける作戦でした。また、NSX GT3は燃費がよくないので早めにシフトアップするなどの走り方もしていました。それと、リアだけ交換の前提だったのでフロントタイヤを温存するようなドライビングもしていました」ということだった。
大津選手からは「一緒に走ったことのない人だらけなので、相手がどういう動きをするのかなどまったく分からないので、それも含めてスタート前はだいぶ緊張していました。走り始めてからはとくに問題はなかったです。ただ、どのカテゴリーもそうですが、中段争いはとにかく勢いよくきます。今回もボク的には“無理だろう”と思うところで突っ込んでくるクルマもあったので、ぶつからないように気を使っていました。このことから“この辺で走ると危険はあるな”ということが学べました。ペースが落ち着いてから冷静にまわりと比べると、自分のペースはわるくなかったのでタイヤのことを考えながらできる範囲でプッシュし続けていました」とのことだ。
ということで第2戦の「FUJI GT 500km RACE」は予選11位、決勝8位で終わった。十分にいい結果と言えるが、1回目のピットストップで右リアホイールがはまらないというトラブルがなければ順位はもっと上になっていたかもしれないと思うとつくづく惜しい。
でも、そんなことがあってもしっかり結果を残せるチームとクルマだけにこれからの戦いも期待していいはずだ。
今後も密着レポートをしていくので、次回の5月19日~20日に開催されるSUPER GT第3戦「SUZUKA GT 300km RACE」の報告を楽しみにしていてほしい。