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「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート。セットアップも走りも最後まで諦めない! 苦戦の予想を覆し、難コースのオートポリスで表彰台ゲット
Round7 AUTO POLIS GT300km RACE
- 提供:
- 株式会社ホンダアクセス
2018年11月14日 00:00
- 2018年10月20日~21日 開催
10月21日の速報記事でもお伝えしたように、SUPER GTに参戦する34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3が、大分県のオートポリスで行なわれたSUPER GT 第7戦でGT300クラスの3位に入賞。参戦1年目ながら表彰台の一角を獲得した!
34号車と言えば、富士スピードウェイで行なわれた第5戦でクラッシュに巻き込まれてマシンが全損。一時は以後の参戦が危ぶまれるまで追い込まれたが、関係者の努力により、クラッシュから約3週間後に行なわれた「SUZUKA 10 HOURS ENDURANCE RACE」に新車を投入して見事復活。
そして9月15日~16日に行なわれた第6戦スポーツランドSUGOでは道上龍選手がチャンスを作り、大津弘樹選手がそれに応える見事なオーバーテイク劇を見せ、最終ラップのゴール前では5位のポジションから一気に前の2台を抜きに掛かる。そして3位とほぼ同時ゴール。惜しくも約0.057秒差で4位となるが、この追い上げはサーキット全体を湧かせた。
「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート 記事一覧
そんな勢い持ったまま迎えた第7戦だが、土曜日(10月20日)の走り始めは苦戦から始まった。
34号車はターボ車なのでストレートは速いが、オートポリス後半のテクニカルセクションでは前半の高速区間で作ったマージンをすべてはき出してしまう状態。また、アスファルトの表面が粗いオートポリスでは、クルマのセットアップが決まっていないとタイヤの負担が増え、その結果タイヤ摩耗が早く進む傾向。しかもコース上にはタイヤカスが多く出るので、それをマシンのタイヤが拾うことによるグリップダウンとバイブレーション(いわゆるピックアップ)に悩まされることとなった。
午前中の公式練習では厳しい状態だったが、午後の予選のときは気温も上がってタイヤにはいい条件となった。また、チームもドライバーのコメントを元にセットアップを換えて予選に備える。それでも連続アタックができるほどではないということで、34号車の予選アタックは両選手とも一発勝負となった。
その結果、道上選手が担当したQ1は5位、大津選手が担当したQ2は7位。苦戦していながら決勝に向けて期待が持てるグリッドを獲得した。このあたりからも34号車が強くなってきていることを感じる。
迎えた決勝日(10月20日)。34号車は昨日のうちにドライバーの意見や走行データなどを元に導き出したセットアップに変更。決勝日のウォームアップ走行で確認したところ、これも今ひとつという結果。
ウォームアップ走行から決勝レースが始まるまでの時間、再びデータとにらめっこしたチョン監督。そこでこれまでに試したことのないセットアップを見つけ、グリッド上で調整し直した。
「強い34号車」を印象付けて3位表彰台獲得!
決勝のスタートドライバーは道上選手。キレイなスタートを切った34号車は序盤にスルスルと5位まで順位を上げ、その順位をキープする。20周目にGT300クラスの30号車 TOYOTA PRIUS apr GT(永井宏明/織戸学組)が第3セクターでスピンしてグラベルでストップ。
この処理のためにセーフティカーが導入された後にレース再開となるが、今回は決勝へ向けたセットアップが決まっていたので、34号車はタイヤが消耗している状況でも安定したラップが刻める状態。
前を走る61号車 SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝組)と10号車 GAINER TANAX triple a GT-R(星野一樹/吉田広樹組)を追いたてるが、セーフティカーが抜けた後の混戦では速さを生かせないと判断した道上選手は早めのピットインを選択。調子を上げている大津選手に後を託した。
ピットインでタイヤを4本交換と燃料補給が素早く行なわれ、34号車はピットアウトして17位でコースに復帰。そして他チームがピットに入るたびに順位は上がり、サーキット全体からの注目度が高まる。
お膳立てができたあとに見せ場が来た。49周目からSUGOに続いて「大津選手のオーバーテイクショー」が始まったのだ。まずは65号車 LEON CVSTOS AMG(黒澤治樹/蒲生尚弥組)を抜き去って4位となったあと、残り4周の第1コーナーでは34号車の利点であるストレートの速さを生かして11号車 GAINER TANAX GT-R(平中克幸/安田裕信組)に並びかけ、インを突く。
11号車と並走して1コーナーに入るが大津選手は一歩も引かない。2台は側面同士が軽く接触するが、攻めの気持ちが強かった大津選手がここで3位に上がる。このシーンは場内映像でも押さえられていたので、オーバーテイクの瞬間に34号車のピットは大きく湧いた。
SUPER GTの歴史に残るようなSUGOでの連続追い抜きもすごかったが、今回は気迫ある走りの末の追い抜きで「強い34号車」の印象を見せつけるものだった。そして大津選手は残り周回で11号車との差を広げ、3位のポジションを守りきってチェッカー! 参戦1年目にして早くも初表彰台をもぎ取ったのだ。
「最後は“優勝”で終わりたい」と大津選手
歓びの表彰台の後に行なわれた会見。まずは今の気持ちを語ってもらった。道上選手は「今年の最初の感覚では、このシーズン中に表彰台に上がるのは厳しいかなと思っていたのですが、前回のSUGOからクルマのバランスがよくなって方向性が見えてきたなかでの今回のレースでした。とはいうものの、昨日の走り始めではクルマのフィーリングがよくなくて“厳しいな”という感じはありましたが、3位という結果になったことは大変うれしいことです」と語った。
次にレース展開については「走り始めから路面状況のわるさとタイヤに関して問題があり、決勝日も気温が上がる予報でした。そんなところから、ボクのなかではタイヤは厳しいんじゃないかなという考えでした。ウォームアップ走行ではミディアムハードタイヤを選び、決勝を見据えて燃料を多く積んで走りましたが、やはりバランスはよくなかったです。柔らかめのタイヤを履いたらもっとわるくなると感じていたので、スタートギリギリまでチョン監督と話をして、セットアップを変更することにしたんです。そしてスタートしたらこれがバランスがよくて、これなら(タイヤが)持つという感触を得ました。今回は18周くらいでピットに入る予定でしたが、セーフティカーが入ったので25周くらいまで引っ張ることができ、その間に無線で大津(選手)も同じミディアムで行こうと連絡しました」とのこと。
続いて大津選手からは「昨日までのクルマはあまりいいフィーリングではなかったのですが、レースがスタートすると道上さんがいいペースで走れていて、タイヤもマッチングがいいようでした。交代してからはただ走っているだけだと前には追いつかないと思って、集中してミスなく攻めていくことを心がけて走りました。その結果、最後に抜けたのでよかったです」というコメントだった。
レース内容については「結果はよかったのですが、実際はタイヤのグリップダウンは感じていました。ただ、滑っていると感じるわりにはまわりとタイムがあまり変わらない状況でした。途中、5号車に攻められて抑えるのに必死になったときもありますが、間に25号車が入ってからは楽になり、自分の走りに集中することができました」とのこと。
また、大津選手はSUGOに続いて今回も見応えのある追い抜きを見せてくれたが、これについては「11号車は最終コーナーが苦手なようで、離れても最終コーナーで追いつくという感じでした。それにストレートでもスリップも入れたので、1コーナーで勝負を掛けました。最初はアウトから抜きにいきましたがこれはダメだったので、次はイン側に出てギリギリまで粘ったら抜けたという感じです」と状況を説明。
このコメントに対して道上選手は「相手が平中選手なので手強いじゃないですか。ボクとしては、失敗してもいいし飛び出してもいいので“仕掛けてほしい”と思ってました。抜くときに少し接触がありましたが、完全に並んでからの接触なのでペナルティもなかったですしね。とにかく、スゴくいいオーバーテイクだったと思いますよ」と大津選手の走りを高く評価した。
チョン監督は「自分の個人的な目標として、今年1回は表彰台を獲得したいと思っていたので本当に嬉しいです。クルマについては、初日から路面の状況やクルマのバランスなどがあまりよくなく、対策としてやったことから得るものがあまりなかったので、方向を決めるのにけっこう悩んでいました。決勝日のウォームアップ走行でもパッとしない印象でした。そこでこれまでのデータをもう1度見直し、そこから考えた対策をグリッド上で施しました。これまでにやったことがないような内容でしたが、これがよかったのかなという感じです」と語った。
「Modulo Drago CORSEトークショー」での新田選手の発言が現実に!?
さて、レースの話に続いて、34号車をサポートするホンダアクセスがレース会場で毎回行なっていることについて改めて紹介しよう。
各サーキットでは毎回、SUPER GTスクエアと呼ばれるイベント広場で、自動車メーカーをはじめとする協賛各社のブースや物販テントが並び、レース期間中は大勢の来場者で賑わう。その中に「ホンダ」のテントがあり、そこにはホンダアクセスが車両(オートポリスでは「S660 Modulo X」と「S660 Neo Classic」)を展示。物販コーナーでは34号車応援グッズをはじめとしたオリジナルグッズも販売している。
テント内にあるステージでは、Modulo Xシリーズの開発秘話などを紹介する「Modulo Xトークショー」(登壇者はホンダアクセス Modulo開発責任者 福田正剛氏とModulo開発アドバイザーの土屋圭市氏)や、34号車に華を添える存在のModuloスマイル、Moduloプリティ、KENWOODレディが登場する「Moduloスマイル on STAGE」が開催されている。
決勝日の朝一番には、道上選手と大津選手による「Modulo Drago CORSEトークショー」を開催。このステージでは、毎回GT300クラスのライバルチームに所属するドライバーをゲストに招いているが、オートポリスでは今回のレースでGT300クラスの優勝を飾った96号車 K-tunes RC F GT3に乗る新田守男選手と中山雄一選手が登場。
人柄のいい新田選手はメーカーやチームの垣根を越えてファンが多い選手で、道上選手は以前から先輩、後輩の関係だが、今年からSUPER GTに参戦している大津選手とは「今回初めて話すよね」という状況。さらに「ピットもレクサス系とホンダさん系はいつも離れてますから、会う機会もないんですよね」ということで、大津選手は大先輩を前に恐縮した感じ。
ただ、新田選手の相方である中山選手とは以前からの知り合いとのこと。中山選手の実家は東京でカート場を経営していて、大津選手は5歳の時に父親に連れられてそこを訪れたという。これが大津選手がレースを始めるきっかけになった。
また、中山選手の父親と道上選手も関係があることが語られた。中山選手の父親もレースをやっていて、デビューしたばかりの道上選手も同じレースに出場していたが、そのレースで道上選手は中山選手の父親がドライブするマシンに追突してクラッシュさせてしまったという。
道上選手は「そのときのことを今でもよく覚えていて、ピットへ謝りに行きました」と語ると、中山選手は「ウチでは話が違っていて、父は“自分がデビューしたばかりの道上選手をコースアウトさせた”という武勇伝になってます」と言うと、ステージ、会場から大きな笑いが起きた。
このようにレースの話題だけでなく、レースから離れた裏話も聞ける「Modulo Drago CORSEトークショー」だが、今回はトークショーの最後に、新田選手から「この2台で表彰台の一角を取れるように頑張れればなと思います」という発言があり、なんとそれが現実となった。こうした流れは現場で話を聞いていた人にとって印象深いものとなり、レースを見に行った思い出としてずっと心に残るだろう。そんな貴重な経験もできてしまうのが「Modulo Drago CORSEトークショー」だ。
高い一体感となった「GT300を盛り上げよう!! Let's Enjoy GT300!!」
もう1つ、Moduloのステージには他にはない切り口のステージがある。それが土曜日、日曜日ともに開催される「GT300を盛り上げよう!! Let's Enjoy GT300!!」である。
タイトルを見て分かるとおり、このステージは34号車の応援に特化したイベントではない。SUPER GTファンならご存じのとおり、GT300クラスにはNSX GT3を始めとするFIA-GT3車両やJAF-GT車両、マザーシャシーなどバラエティに富んだクルマが参戦。しかもエントリー台数も多いので、とても見応えのあるレースが毎戦繰り広げられている。
また、GT300クラスはより市販車に近いスタイルのマシンが走っているので、レースに詳しくない人でも応援しやすいといった面もある。そこでGT300クラスを通じてSUPER GTファンをもっと増やしていくために行なわれているのが「GT300を盛り上げよう!! Let's Enjoy GT300!!」だ。
登壇するのは自動車メディア関係者が多いが、今回は新しい試みとして、ライバルチームである61号車 SUBARU BRZ R&D SPORTの応援団長を務めるマリオ高野氏をゲストで招いた。熱心なファンが多い61号車の応援団長だけに、61号車を応援する心を熱く語ってくれた。素直に「なるほど!スゴイ!」と思えるお話は、たとえホンダのテントで聞いていてもとても楽しめるものばかりで、61号車がちょっと羨ましくなったり……。
また、応援団長がステージに上がるということで、青い帽子を被った大勢の61号車ファンが駆けつけ、このステージの一体感ととても合っていた。なによりこの「スポーツの応援」という雰囲気がとてもいい。サーキットに行ったら「GT300を盛り上げよう!! Let's Enjoy GT300!!」ステージも忘れずに見ていってほしい。
ということで今回のレポートは終わりだが、早いもので次戦の「MOTEGI GT250kmレース」が2018年のSUPER GT最終戦となる。調子が急上昇中の34号車には、もてぎでもこれまで以上の走りと結果が期待できるだけに、引き続き応援をお願いしたい。