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「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート。“復活の34号車”が暑く長い10時間のレースに挑む!
SUZUKA 10 HOURS ENDURANCE RACE
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- 株式会社ホンダアクセス
2018年9月13日 00:00
- 2018年8月23日~26日 開催
鈴鹿サーキットで8月23日~26日に初開催された「SUZUKA 10 HOURS ENDURANCE RACE(第47回 サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース)」。このレースにはSUPER GT第5戦 富士スピードウェイでの事故により、以降のレースへの参加が危ぶまれていたModulo Drago CORSEの34号車が見事復活してエントリーした。
そして8月23日のフリープラクティスでシェイクダウンし、「復活」した姿をファンに公開した。この日の模様は「鈴鹿10時間耐久レース(Suzuka10H)に向け31チーム、35台のGT3マシンが集結」や「【Suzuka10H】大クラッシュから復活の34号車 Modulo Drago CORSE、鈴鹿で練習走行。道上、大津、小暮選手らが記者会見」にて紹介している。
「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート 記事一覧
Suzuka10Hはこの8月23日から始まり、24日の金曜日に練習走行、25日の土曜日は練習走行なしの予選のみ。そして26日の日曜日10時にレースがスタートして、10時間後の20時にゴールを迎えるスケジュールで行なわれた。
10時間耐久レースということで、34号車はレギュラードライバーの道上龍選手、大津弘樹選手に加えて、SUPER GTのGT500クラス 17号車(KEIHIN REAL RACING)をドライブする小暮卓史選手を3人目のドライバーとして起用し、長丁場のレースに備えた。
25日の予選については速報記事を公開しているが、34号車応援レポートでも改めてお伝えしよう。
Suzuka10Hの予選は各ドライバー1人ずつアタックするQ1(BBS EXCITING ATTACK)を行ない、上位20台までがQ2(Pole Shootout)に進むという方法だが、Q1終了後、出走全車を対象にアタック中の4輪脱輪に対する再チェックが行なわれた。そのためQ2開始時間が約1時間遅れたので、ジリジリとした日差しも幾分か和らいだ状態となった。
BBS EXCITING ATTACKを18番手のタイムで通過した34号車は、Q2であるPole Shootoutへ進出。アタックを担当したのは小暮選手だ。日が傾いて路面温度が下がったことで34号車を含め各車タイムアップしたのだが、残り数分というところで34号車はデグナーカーブでスピンしてコースアウト。これで赤旗中断となってしまったため、赤旗の原因となった34号車はタイムが抹消。結果、決勝は23番手のグリッドからスタートすることになった。
予選終了後に実施された34号車 Modulo Drago CORSEの記者会見
最初にアタックした道上選手は「昨日の練習から、このレースで使っているピレリタイヤに合わせるセットアップがうまくいってません。ドライビングだけでなくクルマのセットアップもいつもと違うことをいろいろと試してみましたが、まだいいとは言えない状況ですね。それに今回のタイヤではNSX全車、リアのグリップが不足気味なので、ドライバー同士で『いつスピンしてもおかしくないね』と話していました。とにかくタイヤの限界が普段と違うので、セットアップを施してもクルマが反応しない状況です」と苦境を語った。
大津選手からは「アタックの前に道上さんからタイヤの情報を聞いていたので、それを参考にウォームアップを行ないました。ただ、タイヤのピークを使い切るのが難しく、自分が合わせ切れない部分がありましたし、もう少しまとめられたと思える部分もありました。NSX勢では一番いいタイムと聞きましたが12位です。トップとは大きな差があるなという印象です」というコメントだった。
小暮選手は「最初に乗ったときはウェットでしたが、そのときのフィーリングはそれほど変には感じませんでした。ドライになるとグリップ感が少なくなったという印象で、試行錯誤しながら乗っていました」と述べた。
小暮選手はPole Shootoutの終了間際にデグナーカーブでスピン、コースアウト。「その周のセクター1のタイムはよかったので、そのままいけるかなと思っていたらオーバースピードになってしまいました」と述べた。幸い、マシンにダメージはなかった。
チョン・ヨンフン監督からは「フリー走行から調子はよくなくて、いろいろとセットアップを変えてみてもその結果がクルマの動きに現われてこないという感じです。それに路面温度に対するグリップの変化も大きいので、よいところを見つけるのが難しい状況です。初日からオーバーステア傾向なので、明日に向けてはその対策を考えています」とのコメント。タイヤの生かし方が見つかっていないだけに、クルマを合わせるという段階になっていないようだった。
Suzuka10Hの週末は暑さがぶり返していた。予選日もかなり暑かったが、決勝の8月26日は早朝から気温が上がり、ドライバーにもマシンにも厳しい暑さになることが確実だった。そんななか、朝の8時からウォームアップ走行が開始された。
いつものパターンでは道上選手が最初に乗ってマシンチェックを行なうが、今回は大津選手からマシンに乗りこんだ。数周してピットイン。道上選手にドライバーチェンジをして再スタートという時に、34号車のエンジンが掛からない事件が発生。これで1度ピットに戻されたが、無事に再始動できて道上選手がピットアウト。
トラブルの原因はステアリングの接点不良だったようで、小暮選手への交代時にステアリングを交換。ちなみに道上選手、大津選手より身長が高い小暮選手には、ボスの長さを変えたステアリングが用意されていた。
気温上昇でパーコレーションが発生
10時を少しまわったところでSuzuka10Hはスタートした。34号車は23番手という中段からのスタートだったが、トラブルもなく周回を重ねていた。ところが18周目あたりで34号車にドライブスルーペナルティが科された。シケインで他車の走行を妨害したと判定されたようだ。このペナルティで順位を落とし、30位まで順位が落ちてしまった。
道上選手はトラブルなく1時間を走り切り、小暮選手へ交代。淡々と走ってピット作業も素早く行ない、徐々に順位を上げていくかと思われた34号車に異変が発生。燃料が高温になって沸騰し、気泡が混じることで息付きの症状が出るパーコレーションが起きていた。こうなるとECUがエンジン保護のために出力を落とす制御を行なうので、有利なはずのストレートで速さを失うことになった。
この症状は以前の34号車では出たことがなく、10号車、777号車にも出ていない。それだけにチームも予測できなかった。また、燃費も厳しいため途中からピットインの間隔を1時間ごとから50分ごとへ変更。必然的にピット回数が増えるので、34号車はかなり不利な状況となってしまう。
それでも、パーコレーション以外にはトラブルもドライビングミスもなく34号車は走り続ける。スタートから1時間経過の時点では32位だった順位も、2時間後は28位、3時間後は25位、4時間後に24位、そして折り返し地点である5時間後には25位に付ける。
この間も予選の時と同様、タイヤとクルマのマッチングはよくない。ピットインごとにタイヤを新品にするが、最初からプッシュをすると摩耗が激しいとのことで、各ドライバーとも少し抑えたペースで走行していたという。5時間経過の時点でトップは07号車のベントレーで34号車より2ラップ先行していた。
暑く長かった10時間を34号車は見事に走り切った
その後もトラブルなく走り続けた34号車。スタート8時間後には21位まで順位をアップして、9時間後も同じ位置をキープしていた。そして9時間も全開走行を続けているマシンは快調とのことで、通常のピットイン以外はメカニックの出番がない。これはいいことである。
そして最後のドライバー交代。道上選手から小暮選手へ。すっかり夜になった鈴鹿サーキットを34号車は安定して周回する。取材班はチームの無線を聞いていないので走行中の34号車の状況は不明だが、メカニックやスタッフが落ち着いているのを見れば、何も問題がないことは分かる。
ゴールの時間が近付いてくると、グランドスタンドはサイリウムを持ったファンでいっぱいになる。道上選手、大津選手もプラットフォームに上がって小暮選手の走りに注目。
そしてトップのマシンがファイナルラップに入るとピットレーンの規制が解除され、各ピットから一斉に人が出てくる。34号車のメンバーも全員プラットフォームに上がり、小暮選手のゴールを手を振って迎えた。34号車は見事に10時間を走り切ったのだ。
順位は21位。周回数は270周、トータルの走行時間は10時間02分13秒094。ドライバーごとのベストタイムは道上選手が2分06秒792、大津選手が2分06秒001、小暮選手は2分05秒968だ。
34号車 Modulo Drago CORSEは「メディア賞」1位を獲得
では、最後にチーム会見でのコメントを紹介しよう。最初はレースを終えた率直な心境から伺った。道上選手からは「SUPER GTの事故から本当に短期間でクルマを準備することができたので、念願だったSuzuka10Hに出ることが叶いました。そして無事に完走でき、今の気持ちとしてはホッとしています」とのこと。海外勢と走ったことについては「彼らはレースが始まると、トラックリミットは無視でコースをいっぱいに使ってました。リアがナーバスだったNSXも同じように外まで逃がすような走りにしたら楽だったのかもしれませんが、僕らとしてはあそこまで使うのはナシと思っていたのでやっていません。でも、アレはアレで勉強になりましたね」と語った。
大津選手は「僕がスタートを担当しました。最初は少し緊張もありましたが、走り始めると十分ついていけるペースでした。ところがその後に抜きにいった結果、前走車に当たってしまいヒヤっとしましたが、ダメージがなくて安心しました。レース全体の印象としては予想していたとおり、タイヤを持たせることがポイントになって難しいレースでもありました。ただ、走り切ったことで自分の経験値も上がったので、とてもいいレースでした」とのこと。
海外勢の印象は「スタートからグイグイ来るドライバーばかりでした。もちろん引く気はないですから、こちらも攻めていきました」と大津選手らしいコメントだった。
小暮選手からは「長いレースでしたが、完走できたことがまずよかったと思っています。途中、トラブルが出たり作戦が変わったりといろいろあった中でも、チーム、ドライバーともプロとして持っているものをしっかり発揮できたのではないでしょうか。当初はNSXを乗りこなすこともレース運びもそこそこ簡単にいくだろうと思っていたところもありましたが、とてもあまい考えでした。走ってみるとすごく難しいタイヤです。チームも初めてのタイヤということで大変だったと思います。ただ、そんなことも自分の中では“こういうレースもあるんだ”という経験になりました」とのコメント。
海外勢については「大津選手が言うようにアグレッシブさはありましたが、SUPER GTなどで日本に来ている海外ドライバーはいい選手が多いので、正直、今回の海外勢がとくにすごいとは感じませんでした」とのこと。
チョン監督は「今回は10時間という、NSXで経験したことのない長いレースがシェイクダウンになってしまいましたが、完走できたことで長く走っても問題ないことが分かりました。とはいえ、細かいトラブルがあってピット回数も多めになってしまいましたが、そのへんは次に向けて改善していきたいなと思っています」とコメントした。
さらにチョン監督にはレース中に起きたトラブルについて伺った。34号車に起きたのはパーコレーションという燃料系のトラブルで、ひと言で言うとガソリンがエンジンなどの熱を吸収して沸騰し、ガソリン内に気泡が混じること。
こうなると適切な燃料調量ができなくなるので、ECUはエンジン保護のための対策用マップを読み始めて出力はダウンする。これは34号車のみに起きていたようで、道上選手からは「途中、10号車と一緒に走ることがありましたが、こちらにパーコレーションが出ていたときも10号車はストレートが伸びていた」とのこと。
このトラブルについては、チョン監督のガレージに持ち帰って原因のチェックと対策を施すというので、SUPER GTの次戦までに対策されているはずだ。
なお、決勝終了後にチームにとってうれしい知らせが届いた。Suzuka10Hではいろいろなことに賞が設けられていたのだが、その1つが「メディア賞」。取材に来ていた各メディアが最も印象に残ったチームに投票するというもので、34号車 Modulo Drago CORSEが見事1位となり、賞金100万円を獲得した。
34号車の次の戦場は9月15日~16日のSUPER GT 第6戦が行なわれるスポーツランドSUGO。NSX GT3にとって初めて走るコースだけに楽観はできないが、劇的な復活から準備時間がない中での10時間完走と勢いをつけている34号車なので、きっと結果を残してくれるはず。次戦の応援もよろしくお願いしたい。