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「34号車 Modulo KENWOOD NSX GT3」応援レポート。“復活の34号車”が暑く長い10時間のレースに挑む!

SUZUKA 10 HOURS ENDURANCE RACE

2018年8月23日~26日 開催

Suzuka10Hで復活を遂げたModulo Drago CORSEの34号車

 鈴鹿サーキットで8月23日~26日に初開催された「SUZUKA 10 HOURS ENDURANCE RACE(第47回 サマーエンデュランス 鈴鹿10時間耐久レース)」。このレースにはSUPER GT第5戦 富士スピードウェイでの事故により、以降のレースへの参加が危ぶまれていたModulo Drago CORSEの34号車が見事復活してエントリーした。

 そして8月23日のフリープラクティスでシェイクダウンし、「復活」した姿をファンに公開した。この日の模様は「鈴鹿10時間耐久レース(Suzuka10H)に向け31チーム、35台のGT3マシンが集結」や「【Suzuka10H】大クラッシュから復活の34号車 Modulo Drago CORSE、鈴鹿で練習走行。道上、大津、小暮選手らが記者会見」にて紹介している。

 Suzuka10Hはこの8月23日から始まり、24日の金曜日に練習走行、25日の土曜日は練習走行なしの予選のみ。そして26日の日曜日10時にレースがスタートして、10時間後の20時にゴールを迎えるスケジュールで行なわれた。

 10時間耐久レースということで、34号車はレギュラードライバーの道上龍選手、大津弘樹選手に加えて、SUPER GTのGT500クラス 17号車(KEIHIN REAL RACING)をドライブする小暮卓史選手を3人目のドライバーとして起用し、長丁場のレースに備えた。

大クラッシュから復活を果たした34号車。木曜日にシェイクダウンを行なったばかりの新車だ
Suzuka10Hには34号車の他にも、Car Guyの777号車、モチュールの10号車と3台のNSX GT3がエントリーしていた
GT300仕様とは異なり、ヘッドライトがクリアになっている。また、34号車のみマーカーランプもクリアになっていた
夜間走行用に補助灯が追加されている。上側は斜め前方を照らすコーナーライト。下側は正面を照らす
フロントウィンドウには「SUZUKA 10 HOURS」のステッカーが貼られる
ルーフには小暮選手の名前が追加されている
ゼッケンもSuzuka10H仕様。LEDライトが仕込まれているので夜間はゼッケン自体が光る
ステアリングやセンターコンソールのスイッチ類にも夜間走行対策が施され、ブラックライトを当てると光るようになっていた
SUPER GTとの違いで最も影響があるのがタイヤ。Suzuka10Hはピレリのワンメイク。NSX勢はどのチームもこのタイヤを使うのは初めてで、セットアップに苦戦していた
ピットにも長時間のレースらしい準備がされていた。レースが行なわれた週末は全国的に気温が上がっていたので、飲み物を冷やす冷蔵庫も用意
8月25日の土曜日は午後の予選まで走行がなく、ピットは比較的リラックスした雰囲気
10号車 モチュールの中野信治監督が34号車のピットへ。コックピットを見ながら大津選手と話をしていた
予選の前にはピットウォークが行なわれたが、34号車のピット前は大勢のファンが訪れた。サイン会、グッズ配布とも長い列ができていた
ピットウォークの華、ModuloスマイルとModuloプリティ。左からModuloスマイルの安藤麻貴さん、Moduloプリティのはるまさん、生田ちむさん
こちらはKENWOODレディのお2人。左が石橋あこさん、右が前田真実果さん
ドライバーとレースクーン勢揃い
華やかなピットウォークと平行して予選に向けたマシンの準備も進められていた。午前中はまったりムードだったピットに緊張感が出てくる

 25日の予選については速報記事を公開しているが、34号車応援レポートでも改めてお伝えしよう。

 Suzuka10Hの予選は各ドライバー1人ずつアタックするQ1(BBS EXCITING ATTACK)を行ない、上位20台までがQ2(Pole Shootout)に進むという方法だが、Q1終了後、出走全車を対象にアタック中の4輪脱輪に対する再チェックが行なわれた。そのためQ2開始時間が約1時間遅れたので、ジリジリとした日差しも幾分か和らいだ状態となった。

BBS EXCITING ATTACKの1番手は道上選手。無線でチョン監督と会話をしていたが、ヘルメットの中では笑顔が見られた。SUPER GTの予選も毎回見てきたが、このタイミングでの笑顔は記憶にない。参戦できないかもしれないという状況からの復活だけに、百戦錬磨の道上選手もいつもより気持ちがのっていたのかもしれない
道上選手の走りをモニターで見る大津選手と小暮選手。道上選手のタイムは2分04秒753
2番手は大津選手。2分04秒108というNSX勢ではトップタイムをマーク
BBS EXCITING ATTACKはドライバー3人とも走行する。最後に登場したのは小暮選手。タイムは2分04秒423

 BBS EXCITING ATTACKを18番手のタイムで通過した34号車は、Q2であるPole Shootoutへ進出。アタックを担当したのは小暮選手だ。日が傾いて路面温度が下がったことで34号車を含め各車タイムアップしたのだが、残り数分というところで34号車はデグナーカーブでスピンしてコースアウト。これで赤旗中断となってしまったため、赤旗の原因となった34号車はタイムが抹消。結果、決勝は23番手のグリッドからスタートすることになった。

予選終了後に実施された34号車 Modulo Drago CORSEの記者会見

予選終了後にチームのホスピタリティで記者会見が行なわれた。会見はQ1の走行順に各ドライバーが印象を語った

 最初にアタックした道上選手は「昨日の練習から、このレースで使っているピレリタイヤに合わせるセットアップがうまくいってません。ドライビングだけでなくクルマのセットアップもいつもと違うことをいろいろと試してみましたが、まだいいとは言えない状況ですね。それに今回のタイヤではNSX全車、リアのグリップが不足気味なので、ドライバー同士で『いつスピンしてもおかしくないね』と話していました。とにかくタイヤの限界が普段と違うので、セットアップを施してもクルマが反応しない状況です」と苦境を語った。

ピレリタイヤの特性が掴めていないため苦戦している表情をうかべる道上選手

 大津選手からは「アタックの前に道上さんからタイヤの情報を聞いていたので、それを参考にウォームアップを行ないました。ただ、タイヤのピークを使い切るのが難しく、自分が合わせ切れない部分がありましたし、もう少しまとめられたと思える部分もありました。NSX勢では一番いいタイムと聞きましたが12位です。トップとは大きな差があるなという印象です」というコメントだった。

大津選手もタイヤの使い方に苦労していた。10号車、777号車を含めてNSX勢ではトップタイムだが、納得していない様子

 小暮選手は「最初に乗ったときはウェットでしたが、そのときのフィーリングはそれほど変には感じませんでした。ドライになるとグリップ感が少なくなったという印象で、試行錯誤しながら乗っていました」と述べた。

 小暮選手はPole Shootoutの終了間際にデグナーカーブでスピン、コースアウト。「その周のセクター1のタイムはよかったので、そのままいけるかなと思っていたらオーバースピードになってしまいました」と述べた。幸い、マシンにダメージはなかった。

デグナーでスピンはしたが、その前の周では2分03秒台のタイムをマークしていた小暮選手

 チョン・ヨンフン監督からは「フリー走行から調子はよくなくて、いろいろとセットアップを変えてみてもその結果がクルマの動きに現われてこないという感じです。それに路面温度に対するグリップの変化も大きいので、よいところを見つけるのが難しい状況です。初日からオーバーステア傾向なので、明日に向けてはその対策を考えています」とのコメント。タイヤの生かし方が見つかっていないだけに、クルマを合わせるという段階になっていないようだった。

タイヤが柔らかいようで、キャンバーの角度を付けすぎるとタイヤを傷めることになり、かといって攻めないわけにもいかないなど、セットアップには苦労しているとのこと。セットアップの内容もSUPER GTとはかけ離れたものになっているという

 Suzuka10Hの週末は暑さがぶり返していた。予選日もかなり暑かったが、決勝の8月26日は早朝から気温が上がり、ドライバーにもマシンにも厳しい暑さになることが確実だった。そんななか、朝の8時からウォームアップ走行が開始された。

 いつものパターンでは道上選手が最初に乗ってマシンチェックを行なうが、今回は大津選手からマシンに乗りこんだ。数周してピットイン。道上選手にドライバーチェンジをして再スタートという時に、34号車のエンジンが掛からない事件が発生。これで1度ピットに戻されたが、無事に再始動できて道上選手がピットアウト。

 トラブルの原因はステアリングの接点不良だったようで、小暮選手への交代時にステアリングを交換。ちなみに道上選手、大津選手より身長が高い小暮選手には、ボスの長さを変えたステアリングが用意されていた。

決勝日の7時からはVIPスイートの利用者を対象としたピットウォークを開催。朝早いので各チームともグッズ配布などはなし。空いていたのでマシンをじっくり見たい人には最高の状況だった
決勝前のウォームアップ走行。決勝は大津選手、道上選手、小暮選手の順に乗るので、ウォームアップ走行もその順番。まずは大津選手が乗り込む
道上選手の順番になったが、ここでエンジンが再スタートしないというトラブルが発生。マシンはピット内に戻されたが無事再始動。原因はステアリングの接点不良とのこと
スタートは大津選手が担当。グリッドにクルマを運ぶため用意をする
監督とメカニックもスタート前に打ち合わせ
ピットから押し出されてピット正面へ。ピットロードが開くのを待つ
Suzuka10Hのグリッドはコースに対して斜めに駐めるスタイル。スタートはローリング形式だ
グリッドウォークも開催。ここでも34号車は人気。ウォール沿いに駐めているのでクルマに近づくのも大変な状態

気温上昇でパーコレーションが発生

 10時を少しまわったところでSuzuka10Hはスタートした。34号車は23番手という中段からのスタートだったが、トラブルもなく周回を重ねていた。ところが18周目あたりで34号車にドライブスルーペナルティが科された。シケインで他車の走行を妨害したと判定されたようだ。このペナルティで順位を落とし、30位まで順位が落ちてしまった。

大津選手の走りをモニターで見る。ペナルティの裁定が出たときはピットから声が上がった
痛恨のドライブスルーペナルティで大きく順位を落とす。ドライバー交代後、大津選手はチームスタッフに謝罪していたが、映像を見る限りペナルティは厳しすぎるという意見も多かった
とは言えクルマにはダメージがないので、メカニックは待機。長丁場ということでピット内にはベンチが用意されていた。SUPER GTのときにこれはない
今回の作戦では各ドライバーが1時間ごとに交代となっていたので、11時手前から2番手の道上選手が準備を始めた。そして大津選手がピットイン。燃料給油、タイヤ4本交換を行ない、ドライバーが道上選手に替わる
各ドライバーはドライアイスが仕込めるベストを着用したが、この日はかなり気温が高くなったことに加えてピットイン回数が増えたので、途中でドライアイスが足りなくなって追加することになった

 道上選手はトラブルなく1時間を走り切り、小暮選手へ交代。淡々と走ってピット作業も素早く行ない、徐々に順位を上げていくかと思われた34号車に異変が発生。燃料が高温になって沸騰し、気泡が混じることで息付きの症状が出るパーコレーションが起きていた。こうなるとECUがエンジン保護のために出力を落とす制御を行なうので、有利なはずのストレートで速さを失うことになった。

 この症状は以前の34号車では出たことがなく、10号車、777号車にも出ていない。それだけにチームも予測できなかった。また、燃費も厳しいため途中からピットインの間隔を1時間ごとから50分ごとへ変更。必然的にピット回数が増えるので、34号車はかなり不利な状況となってしまう。

空には雲がほとんどない。午後になると気温はグングン上がっていく
ピットレーンに設置された燃料タンク。日差しで燃料が温まらないよう、ピットインの前に使うぶんだけ補充するという気の遣いようだったが、それでもパーコレーションが起きてしまった
タイヤのグリップ不足とパーコレーションに悩まされつつも、淡々と周回する34号車。フロントまわりの汚れが長いレースということを物語る

 それでも、パーコレーション以外にはトラブルもドライビングミスもなく34号車は走り続ける。スタートから1時間経過の時点では32位だった順位も、2時間後は28位、3時間後は25位、4時間後に24位、そして折り返し地点である5時間後には25位に付ける。

 この間も予選の時と同様、タイヤとクルマのマッチングはよくない。ピットインごとにタイヤを新品にするが、最初からプッシュをすると摩耗が激しいとのことで、各ドライバーとも少し抑えたペースで走行していたという。5時間経過の時点でトップは07号車のベントレーで34号車より2ラップ先行していた。

繰り返されるピットインだが、メカニックは1度もミスすることなく素早く作業をこなしていく。34号車はドライバーの布陣もすごいがメカニックの質も負けていない
タイヤ交換をした後、ホイールに付いたタイヤカスを落とす。SUPER GTで使っている横浜ゴムのタイヤは溶けた大きなゴムの塊がへばり付く傾向だが、ピレリは大きな塊は少なく、粉状のタイヤカスが付いているという感じ

暑く長かった10時間を34号車は見事に走り切った

 その後もトラブルなく走り続けた34号車。スタート8時間後には21位まで順位をアップして、9時間後も同じ位置をキープしていた。そして9時間も全開走行を続けているマシンは快調とのことで、通常のピットイン以外はメカニックの出番がない。これはいいことである。

 そして最後のドライバー交代。道上選手から小暮選手へ。すっかり夜になった鈴鹿サーキットを34号車は安定して周回する。取材班はチームの無線を聞いていないので走行中の34号車の状況は不明だが、メカニックやスタッフが落ち着いているのを見れば、何も問題がないことは分かる。

大津選手、道上選手、小暮選手の順に交代しつつ、大きなトラブルもなく周回を重ねていく。順位もジワジワと上げてきた
こちらはピレリのタイヤサービス。今回は初めて使うタイヤだったので、普段からピレリを使っている欧州勢に大きな差を付けられたが、データがある来年にリベンジを期待したい
夕焼けの空。これからいよいよナイトセッションとなる
夕焼けの中を疾走する34号車。徐々に順位を上げていく
道上選手が最後に交代するころには、あたりはすっかり暗くなっていた
最後の交代を控える小暮選手。早めに装備を付け、道上選手が戻ってくるのを待つ
道上選手が走行していた時に履いていたタイヤ。日が落ちて気温と路面温度が下がった状態では、摩耗の具合も日中とは明らかに違う。きれいに減っている
走行を終えた直後の道上選手。富士でのアクシデントから見ているだけに、このSuzuka10Hで自分の役目を終えてひと息付いた道上選手の絵が撮れたことは、正直うれしい

 ゴールの時間が近付いてくると、グランドスタンドはサイリウムを持ったファンでいっぱいになる。道上選手、大津選手もプラットフォームに上がって小暮選手の走りに注目。

 そしてトップのマシンがファイナルラップに入るとピットレーンの規制が解除され、各ピットから一斉に人が出てくる。34号車のメンバーも全員プラットフォームに上がり、小暮選手のゴールを手を振って迎えた。34号車は見事に10時間を走り切ったのだ。

 順位は21位。周回数は270周、トータルの走行時間は10時間02分13秒094。ドライバーごとのベストタイムは道上選手が2分06秒792、大津選手が2分06秒001、小暮選手は2分05秒968だ。

耐久レースのゴール間際は見ているほうもハラハラするものだと思うが、今回の34号車の走行を見ていると変な不安は皆無。比較的平常心でゴールの瞬間を迎えられた
グランドスタンドはサイリウムを持ったファンでいっぱいになる。ナイトセッションがあるレースならではの光景
チーム全員で34号車のゴールを見届ける
ゴール後の笑顔。2日前にシェイクダウンしたばかりのマシンでデータもない状態ながら、10時間をトラブルなく走り切った
Suzuka10Hに出るという大きな目標を達成してホッとしたような道上選手、走り切れたこととミスなくこなしたメカニックの仕事ぶりのよさに喜ぶチョン監督、ストイックな大津選手は完走を喜びつつも、自身の走りに反省をしている……。とも見える3人の顔だ
グランドスタンド前に34号車が戻ってきた
フェンス越しにチョン監督と握手。助っ人として参加してくれた小暮選手。SUPER GTでもぜひ応援してほしい
ゴール後、鈴鹿サーキットの夜空に花火が上がった。暑く長かった10時間が終わった
チェッカー直後の順位。34号車は21位。パーコレーションからのピット回数増加、ドライブスルーペナルティなどありながら、スタートから順位を2つ上げてのフィニッシュ。NSX勢では10号車が18位、777号車が23位という結果

34号車 Modulo Drago CORSEは「メディア賞」1位を獲得

ゴール後のチーム会見。写真を見て分かるように表情が柔らかい。このレースは最初から監督、ドライバーに笑顔が多く見られた気がする。ファンも取材班も34号車の復活を喜んだが、それ以上にチームメンバーはSuzuka10Hに参戦できたことがうれしかったのだろう
チーム代表であり第1ドライバーの道上龍選手

 では、最後にチーム会見でのコメントを紹介しよう。最初はレースを終えた率直な心境から伺った。道上選手からは「SUPER GTの事故から本当に短期間でクルマを準備することができたので、念願だったSuzuka10Hに出ることが叶いました。そして無事に完走でき、今の気持ちとしてはホッとしています」とのこと。海外勢と走ったことについては「彼らはレースが始まると、トラックリミットは無視でコースをいっぱいに使ってました。リアがナーバスだったNSXも同じように外まで逃がすような走りにしたら楽だったのかもしれませんが、僕らとしてはあそこまで使うのはナシと思っていたのでやっていません。でも、アレはアレで勉強になりましたね」と語った。

スタートドライバーを務めた大津弘樹選手

 大津選手は「僕がスタートを担当しました。最初は少し緊張もありましたが、走り始めると十分ついていけるペースでした。ところがその後に抜きにいった結果、前走車に当たってしまいヒヤっとしましたが、ダメージがなくて安心しました。レース全体の印象としては予想していたとおり、タイヤを持たせることがポイントになって難しいレースでもありました。ただ、走り切ったことで自分の経験値も上がったので、とてもいいレースでした」とのこと。

 海外勢の印象は「スタートからグイグイ来るドライバーばかりでした。もちろん引く気はないですから、こちらも攻めていきました」と大津選手らしいコメントだった。

助っ人ドライバーの小暮卓史選手。SUPER GTではGT500 17号車 KEIHIN NSX-GTをドライブ

 小暮選手からは「長いレースでしたが、完走できたことがまずよかったと思っています。途中、トラブルが出たり作戦が変わったりといろいろあった中でも、チーム、ドライバーともプロとして持っているものをしっかり発揮できたのではないでしょうか。当初はNSXを乗りこなすこともレース運びもそこそこ簡単にいくだろうと思っていたところもありましたが、とてもあまい考えでした。走ってみるとすごく難しいタイヤです。チームも初めてのタイヤということで大変だったと思います。ただ、そんなことも自分の中では“こういうレースもあるんだ”という経験になりました」とのコメント。

 海外勢については「大津選手が言うようにアグレッシブさはありましたが、SUPER GTなどで日本に来ている海外ドライバーはいい選手が多いので、正直、今回の海外勢がとくにすごいとは感じませんでした」とのこと。

チーム監督のチョン・ヨンフン氏

 チョン監督は「今回は10時間という、NSXで経験したことのない長いレースがシェイクダウンになってしまいましたが、完走できたことで長く走っても問題ないことが分かりました。とはいえ、細かいトラブルがあってピット回数も多めになってしまいましたが、そのへんは次に向けて改善していきたいなと思っています」とコメントした。

 さらにチョン監督にはレース中に起きたトラブルについて伺った。34号車に起きたのはパーコレーションという燃料系のトラブルで、ひと言で言うとガソリンがエンジンなどの熱を吸収して沸騰し、ガソリン内に気泡が混じること。

 こうなると適切な燃料調量ができなくなるので、ECUはエンジン保護のための対策用マップを読み始めて出力はダウンする。これは34号車のみに起きていたようで、道上選手からは「途中、10号車と一緒に走ることがありましたが、こちらにパーコレーションが出ていたときも10号車はストレートが伸びていた」とのこと。

 このトラブルについては、チョン監督のガレージに持ち帰って原因のチェックと対策を施すというので、SUPER GTの次戦までに対策されているはずだ。

 なお、決勝終了後にチームにとってうれしい知らせが届いた。Suzuka10Hではいろいろなことに賞が設けられていたのだが、その1つが「メディア賞」。取材に来ていた各メディアが最も印象に残ったチームに投票するというもので、34号車 Modulo Drago CORSEが見事1位となり、賞金100万円を獲得した。

Suzuka10Hではいろいろなことに賞が設けられていた。その1つが「メディア賞」。取材に来ていた各メディアが最も印象に残ったチームに投票するというもので、34号車 Modulo Drago CORSEは見事1位を獲得。2位は00号車のMercedes-AMG Team GOOD SMILE

 34号車の次の戦場は9月15日~16日のSUPER GT 第6戦が行なわれるスポーツランドSUGO。NSX GT3にとって初めて走るコースだけに楽観はできないが、劇的な復活から準備時間がない中での10時間完走と勢いをつけている34号車なので、きっと結果を残してくれるはず。次戦の応援もよろしくお願いしたい。