トピック

タイのクルマ好きが大集合したバンコク・インターナショナル・オートサロン2018

ホンダアクセスModulo開発アドバイザーの土屋圭市氏がトークショーやサイン会を行なう

2018年7月4日~8日(現地時間) 開催

ホンダブースに登壇したホンダアクセスのModulo開発アドバイザーである土屋圭市氏(中央)

 7月4日~8日(現地時間)の5日間に渡り、タイ王国の首都バンコク市にあるインパクト・チャレンジャーホールにおいて「バンコク・インターナショナル・オートサロン 2018」が開催された。

 バンコク・オートサロンは、2014年のタイでの政変における中止1回を挟んで今回で6回目となるイベントで、日本のオートサロンの主催者である東京オートサロン実行委員会が協力しているバンコク・オートサロン組織委員会が主催して行なわれている。

 バンコク・オートサロンには、本田技研工業やトヨタ自動車といった日本の自動車メーカーが多数参加しているほか、日本のオートサロンと同じようにアフターマーケット向けパーツを販売するメーカーなどが出展。タイのクルマ好きにとって注目のイベントとなっているだけでなく、ASEAN(東南アジア諸国連合)におけるチューニングカー関連としては最大規模のイベントだと主催者では説明している。

 本レポートではそうしたバンコク・オートサロンの様子をレポートする。バンコク・オートサロンの会場では、ホンダアクセスのModulo開発アドバイザーを務める土屋圭市氏がトークショーに登壇したほか、サイン会も行ない熱心な現地のファンが詰めかけて「ドリキン」との交流を図っていた。

日系メーカーの巨大ブースが目立ったバンコク・オートサロン

 バンコク・オートサロンは、2012年に初開催された自動車関連の展示会となる。東京オートサロンのASEAN版をコンセプトに開催されており、2018年で6回目の開催になる。2012年が初開催なので、毎年開催されていると2018年で7回目になるはずなのだが、6回目なのは2014年の開催が同年に発生した政変劇の影響で中止になったためだ。

会場となったインパクト・チャレンジャーホール。幕張メッセ国際展示会場のホール3つ分ぐらいの広さに感じる
入り口とパネル

 主催はCournot and Nashという地元メディア企業が中心になったバンコク・オートサロン組織委員会だが、東京オートサロン実行委員会が運営に協力しており、日本的な運営が特徴の1つだ。会場となるインパクト・チャレンジャーホールはタイの首都バンコクの郊外にあるコンベンションセンターで、その一部を利用して開催されている。会場は幕張メッセ国際展示場の3ホール分程度の広さと言えば分かりやすいだろうか。

ホンダブースの様子
メインステージに飾られていたModulo仕様のHR-V(日本名:ヴェゼル)。ホイールはModuloになり、純正オプションのエアロも装着済み
シティ(日本名:グレース)(左)、シビック(中央)、CR-V(右)なども展示されていた
JAZZ(日本名:フィット)もModulo仕様になっていた

 会場で大きなスペースを占めているのは自動車メーカーのブースだ。大きなブースを出しているのはホンダ、トヨタ、マツダ、いすゞ自動車といった日本の自動車メーカー。例えば、ホンダは会場一番奥の目立つスペースにブースを出しており、同社の最新の4輪ラインアップを展示していた。最もフィーチャーされていたのは「HR-V」で、日本では「ヴェゼル」として販売されているSUVだ。ホンダのメインステージに展示されていたのはHR-VのModuloバージョンで、ホンダアクセスが純正オプションとして用意している各種のエアロパーツと、Moduloブランドのホイールなどが装着された状態で展示されていた。ほかにも、シビックやジャズ(日本ではフィット)、シティなど多数の車両が展示されていた。

トヨタブース
いすゞブース
ニッサンブース
マツダブース
スプーンのブース、こうした日系パーツメーカーのブースも人気だった

 もう1つの主役はスプーンやクスコといったアフターマーケット向けのチューニングパーツを販売するメーカー(ないしはその代理店)のブースだ。すでに述べたとおり、バンコク・オートサロンは東京オートサロンのASEAN版というコンセプトで始まった経緯もあり、東京オートサロンでも人気のそうしたアフターマーケット向けチューニングパーツのメーカーのブースも会場のうちそれなりのスペースを占めている。1つひとつのブースは自動車メーカーに比べるとやや小ぶりになっているのだが、数は多いので全体としてはそれなりのスペースとなっている。タイの自動車市場は90%近いシェアを日系メーカーが占めているという事情もあり、こうした日本車向けのアフターマーケット向けチューニングパーツも大人気。このため、それらのブースにも多くのファンが集っていた。

ホンダアクセスはタイ未発売のNC型「NSX」を持ち込んで注目を集める

 会場では、東京オートサロンで展示されたチューニングカーやデモカーも多数展示されていた。その中でひときわ注目を集めていたのは、SUPER GTカラーリングが施された「NSX」(NC型)で、三栄書房の依頼によりホンダアクセスが日本から持ち込んだもの。新NSXは日米などで販売が開始されているがタイではまだ販売されておらず、タイでNSXを入手するには日米などの市場から輸入するほかない、。タイでは日本などに比べると個人輸入が手続き上は難しくないが、輸入時の関税が200%になっており、輸送費などを別にして実に3倍の価格を出さないと入手できないということになっている。NSXの価格は2370万円となっているので、単純計算で7110万円という価格となってしまう。

ホンダアクセスのNC型NSX。このイベントなどのために日本からはるばる送られてきた
このように東京オートサロンに出展されていそうな車両が展示されていた
タイの輸入車業者のブースに展示されていた。シビック TYPE-R。関税があるため、価格は日本の3倍となってしまう

 このため、なかなか手が出ないと考えられるが、それだけあってタイでの扱いは日本人がフェラーリやランボルギーニに感じるようなイメージで捉えられており、買えないけど見てみたいクルマというあつかいだ。しかも、ホンダアクセス所有のこのNSXはホンダアクセスの広報車ということもあり、オプションもフル装着に近い仕様で、その意味でもスペシャルな1台ということもあり、来場者が遠巻きにしげしげと見ている姿が印象的だった。

会場内のフードコート

 ほかにも外食天国のタイというお土地柄を反映して、会場内に設置されていたフードコートはなかなか充実していた。地元タイのタイフード(トムヤンクンなど)のほか、中華、そして和食などがラインアップされており、来場者が舌鼓を打っていたのが印象的だった。

フードコートのお店。タイ料理や中華料理などバラエティに富んだ選択肢が用意されていた
ステッカー販売ショップ

 また、こちらではステッカーチューンが流行しており、TYPE-Rではないホンダ車に赤いHマークに貼り替えたり、トヨタ車なのにエンブレムをレクサスに変更したりという車両がやたらと多い。このため、ステッカーショップがこのバンコク・オートサロンにも出店しており、さまざまなステッカーを売っていた。そうやってドレスアップするのもタイ流なのだ。それ以外に珍しいショップというと、タミヤのプラモデルを販売するショップ、さらには日本の漫画を取り扱っているショップなどが出店していたのが印象的だった。

販売されているステッカー、どう見ても公式ではないシールもあるような……
タミヤのプラモデルを販売するブース

 なお、会場を1歩外に出た駐車スペースには、一般のユーザーが持ち込んだ自慢のチューニングカーが展示されていた。中にはDC2型のインテグラやS2000のチューニングカー、初代フィット(GD型)をベースにしたジャズのHマークを赤バッヂにしたり、フロントに日本のJAFのバッヂをつけたりというチューニングをしているオーナーさんも。会場を見て回っていると、そうしたJAFのバッヂや、日本のエコカー減税のシールをわざわざ貼ってるユーザーなど、日本への憧れを感じることができる会場となっていた。

会場外の駐車場にはドレスアップされたチューニングカーが並べられていた
S2000とDC2のインテグラ
GD型の初代フィット(タイではJAZZ)
GD型の初代フィット(タイではJAZZ)、JAFマークでのステッカーチューンが日本人的には不思議な感じ

ホンダアクセスModulo開発アドバイザーの土屋圭市氏のトークショーやサイン会も

 会場の中央に設置されたメインステージでは、ホンダアクセスのModulo開発アドバイザーを務めている土屋圭市氏によるトークショーが行なわれた。

「ドリキン」(ドリフトキング)の愛称で知られる土屋氏は、アジアで大人気を博した漫画/アニメーションの「頭文字D」で監修や声優を務めたことがよく知られていて、同じく世界的に大ヒットした走り屋をテーマにした映画「ワイルド・スピードX3」に出演していたこともよく知られており、並のF1ドライバーよりもよっぽど高い知名度を誇っている。その土屋氏が登壇するとあって、現地のファンやメディアなどがステージに詰めかけて待ち構える状態になっていた。

土屋圭市氏のトークショーの前座として、日光江戸村のショーやレースクィーンステージが行なわれた

 その土屋氏は、タイ語で「こんにちは」になる「サワディクラップ」と手を合わせながら登場。司会者が「ワイルドスピード見ましたよ」というと「それはありがとう。このイベントに来るとタイのクルマ好きが増えていることを確認できて嬉しい。今回はSUPER GT、Moduloのイベントなどのために来た。先週行なわれたSUPER GTのレースではドライバーが熱中症になりそうになるほど激しい戦いが繰り広げられた」と述べ、タイに来た目的を説明し、タイに来るたびにタイのクルマ好きが増えていることを喜んでいると述べた。

 また、ドライバーになったきっかけについても「中学生のころに高橋国光さんの走りを見てドライバーになろうと思った。その後その国光さんと一緒に走れるようになって夢が叶った。タイでもそうしたレースやドリフトに興味を持つ人が増えてくれると嬉しいし、毎年こちらにもお邪魔したい」と述べて会場を盛り上げた。そうしたトークショーを終えた土屋氏は、その後はホンダブースへ移動。ホンダブースでのHR-Vの紹介ステージにも登壇した。

サワディクラップと土屋氏登壇
司会の2人に紹介される土屋氏(もちろんタイ語で)
左の通訳の女性に訳してもらって話をする土屋氏
司会とのやりとり
土屋氏
トークショー終了後にコープクンクラップ(タイ語でありがとう)と述べて降壇
世界のドリキンはカートに乗せられて控え室に戻っていく。多くのファンが撮影していた
ホンダのステージにはホンダアクセスのキャラクター「くるタム」も登場
ホンダのステージで自己紹介

 その後、ホンダブースでは土屋氏のサイン会が行なわれ、多くのファンが行列を作った。タイでびっくりさせられるのは、自動車のハンドルやグローブボックス、メーターまで外して持ってくるユーザーがいることだ。グローブボックスを取り外すのはそれほど大変ではないと思うが、メーターはかなり時間のかかる作業のはずで、それを取り外してブースまで持ってきてしまうのだ。それぐらい”神様"である土屋氏にサインして欲しいということなのだと思うが、「そこまでやるか……」とシンプルに感心させられた。

ファンにサインする土屋氏
ホンダアクセスが配布した職人ロゴ入りクリアファイルにサイン
ファンが思い思いのグッズを持ち込んでサインしてもらっていた。中にはメーターにサインしてもらう人も……

 なお、そうしたモノを持っていない来場者には、ホンダアクセスから職人ロゴ入りクリアファイルがプレゼントされ、サイン後にはModuloのシールがプレゼントされるという豪華仕様だった。当初土屋氏のサイン会は15分程度の予定だったのだが、ファンが途切れることはなく、結局予定を倍近く延長して30分近くサイン会が行なわれて、みな思い思いのグッズなどにサインしてもらい満足そうにしていた。

来場者にはModuloのステッカーをプレゼント
サインをもらった後にはくるタムと撮影も
土屋氏も大サービスでファンとの記念撮影を行なっていた

明日の「贔屓」を増やすマーケティング活動に最適なバンコク・オートサロン

ホンダブースでのくるタムとキャンペーンガール

 今回バンコク・オートサロンを見学して感じたことは、タイの自動車ショーは熱いなという点だ。土屋氏もトークショーで言っていたが、タイの自動車ユーザーは本当に自動車が好きなのだなというのをイベント全体から垣間見ることができたし、オートサロン会場の駐車場に止められていた車両も、みなオーナーが思い思いのカスタマイズをしており、そこからは「クルマが好きだ」という気持ちがこちらに伝わってきた。

サイン会後にファンとセルフィを行なう土屋氏

 別のレポートでも述べているとおり、タイでは日系メーカーの市場シェアが9割を超えていると言われており、タイのユーザーにとってはホンダのような日本メーカーは、日本人にとっての日本メーカーのような存在になっている。このため、日本市場と同じようにホンダファンだというオーナーも多く、ほかのメーカーも同じような状況だ。それだけにこうしたバンコク・オートサロンのようなイベントが開催される意義があり、メーカーにとってそこに出展し、ホンダアクセスが行なった土屋氏のサイン会のようなイベントを開催することは、明日のファンを増やすという観点から重要な取り組みだと感じた。

親日国でもあるタイの国旗