トピック

岡本幸一郎の三菱自動車「アウトランダーPHEV」(2019年モデル)、その魅力を“絶景”の四国で味わう【前編】

まずは東京~香川間で燃費性能をチェック

2018年8月に大幅改良したプラグインハイブリッドEV「アウトランダーPHEV」。その実力を、東京~四国間で体感した

2.4リッター化による恩恵を実感

 EVのよさとエンジン車のよさを併せ持ったPHEV(プラグインハイブリッド車)は、バッテリー残量を気にすることなく長距離を走れるし、適宜、充電して走ればもちろんエコでもある点が最大の魅力。そこで、三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」の最新モデルはどれぐらい走れるのか、実際のところをロングランで確認するとともに、サイクリストの聖地と言われる「しなまみ海道」を、アウトランダーPHEVで充電したe-bikeで走るというプチ・グランドツアーを敢行した。

 まずは筆者の住む世田谷の東名高速道路起点近くのディーラーでフル充電し、ガソリンスタンドでフルタンクにして準備万端。Android Autoによると、愛媛県の宿泊予定地に設定した目的地まで約750kmあり、約9時間近くかかるという。ところで、史上初の10連休の間にガソリン価格がだいぶ上がった様子。そうなるとますますアウトランダーPHEVのような電動車両のありがたみが増すというものだ。

試乗車のグレードは上級グレードの「G Premium Package」(479万3040円)。ボディサイズは4695×1800×1710mm(全長×全幅×全高)、ホイールベースは2670mm。2019年モデルからエンジンの排気量を従来の2.0リッターから2.4リッターに拡大し、低回転域で効率のよい発電を可能にした。直列4気筒DOHC 2.4リッター「4B12」型エンジンは最高出力94kW(128PS)/4500rpm、最大トルク199Nm(20.3kgfm)/4500rpmを発生。PHEVシステムでは、駆動用バッテリーの容量を12.0kWhから13.8kWhに引き上げたことなどで、EV走行の航続距離を従来の60.8km(S Edition、G Premium Packageは60.2km)から65.0kmに伸長した
2019年モデルでは、ヘッドライト内部のデザイン変更とともにハイビームにLEDを採用。ラジエターグリル、LEDフォグランプベゼル、フロントスキッドプレート、リアスキッドプレート、アルミホイールのデザインも変更して質感を向上させたほか、空力性能を高めるリアスポイラーも追加。撮影車は18インチアルミホイールにTOYO TIRE「PROXES R44」(225/55R18)の組み合わせ

 ダイヤキルティング本革シートを備えた上級仕様の「G Premium Package」は、現行型になり上質感の増したアウトランダーPHEVの中でも、ひときわその恩恵を感じさせるモデル。また、モータードライブの気持ちよさをより際立たせるべく、構造用接着剤を追加するなどしてボディ剛性を高めたことが効いてか、ドアを閉めたときの音も「バムッ!」といかにも高級そうな感じがする。短時間であればすでに何度かドライブしているが、PHEVシステムの進化はもとより、サスペンションや電動パワステの制御の最適化、車体剛性の向上などが功を奏して、非常に洗練されたドライブフィールを身に着けたことに好感を抱いていた。今回のロングランも楽しみだ。

インテリアでは、オーナメントパネルやハザードスイッチパネルのデザインを新しくするとともに、モーターとエンジンの出力状況が分かるようにパワーメーターの表示を変更。パワーウィンドウ開閉スイッチについては、運転席からすべての窓をワンタッチ操作でオート開閉できる機能を新採用した。車両運動統合制御システム「S-AWC」では、これまでの4WDドライブモード「NORMAL」「LOCK」モードに加え、「SNOW」「SPORT」を新たに追加している
上級グレード(S Edition、G Premium Package)にはフロント/リアシートとドアトリムにダイヤキルティング本革を採用。また、後席用エアコン吹き出し口をフロアコンソール後部へ追加したことで、後席の快適性を高めた

 走行モードは基本的に標準のハイブリッドモードとするとともに、ECOモードを選択し、走り方はACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は使わず、優しいアクセルワークを心がけながら車速は70~80km/hぐらいで巡航する。エアコンは23℃に設定した。

 いざ出発! ……したのはよいものの、走り出したとたんにあいにくの雨。しかも横浜町田IC(インターチェンジ)を過ぎ、大和トンネルのあたりでノロノロ渋滞が発生していた。出発時には22℃だった気温が、厚木のあたりで17℃に下がり、さらには雨足が激しくなったかと思えば地響きするほどの激しい音の雷が。いきなり試練に立ち向かうことになってしまった。

 とはいえ、雨でも安心して走れるのは優れた4WD機構を備えたアウトランダーPHEVならでは。しかもそれまでの間、エンジンはほとんどかからず。ほどなく開通して間もない、新東名高速道路の合流の40KP(キロポスト)あまりの地点でバッテリーがなくなり、EV走行可能距離は「---」の表示になり、エンジンがかかってパワーメーターが右に触れた。

 エネルギーフローの表示によると、エンジンで少し多めに発電して、あまった電力で極力EV走行させるという制御を短いスパンで繰り返している。クルマにまかせておけばもっとも効率よく走れるということだ。そして、エンジンが2.0リッターから2.4リッターになったことが効いてか、制御がよりスムーズになり、余裕を感じさせるようになったのも現行モデルの強み。たとえエンジンがかかっても回転が低く静かなおかげで、高速巡行しているときでも音や振動はまったく気にならない。

 また、雨滴感応オートワイパーのできがよいことにも感心した。雨の強さに合わせて、最適なタイミングと速さで払拭してくれるので、常に良好な視界が確保される。これも安全運転に寄与してくれることは言うまでもない。

 大井松田から御殿場にかけては、右ルートは速いクルマが多いので左ルートを選択。ふたたびやや強めの雨。御殿場を過ぎて新東名に進み、しばらく走ったところにある駿河湾沼津SA(サービスエリア)で最初の充電を実施した。

駿河湾沼津SAで1回目の休憩。バッテリーの走行可能距離は「---」の表示
駿河湾沼津SAまでのEV走行比率は50%。平均燃費は26.6km/L、平均電費は6.1km/kWh
急速充電後、バッテリーの走行可能距離は35kmになるとともに、全体の走行可能距離は578kmに

  新静岡IC~森掛川ICは規制速度が120km/hで、高速でもEV走行できることもこのクルマのウリなので、せっかくそれを試そうと思ってSAVEモードでバッテリーを温存していたのに、あいにくの雨で80km/h規制。まあ仕方がない。帰路に再チャレンジだ。

3回の充電で800km超を航続可能

 新東名に乗ってちょうど200kmほど。浜松いなさJCT(ジャンクション)のあたりで、目的地までの距離と航続可能距離がほぼイコールの表示になった。名古屋を過ぎて、300kmぐらい走って燃料計はようやく2セグメント減って4分の3に。374kmを走行した名神高速道路の多賀SAにて、昼食と2回目の充電を実施。目的地まで381kmとの表示で、ほぼ中間地点だ。その後、大阪の手前あたりの、486km走ったところで燃料計が半分になった。

名神高速道路の多賀SAで2回目の休憩。多賀SAまでのEV走行比率は47%。平均燃費は19.6km/L、平均電費は6.0km/kWh
急速充電前の全体の走行可能距離は336km
急速充電後、バッテリーの走行可能距離は38kmになるとともに、全体の走行可能距離は374kmに

 さらに名神高速から明石大橋方面を目指す。目的地まで245kmだ。山陽自動車道の支線に入ったところで、ガソリン残量は3分の1。さらに神戸淡路鳴門自動車道に入ると、イッキに交通量が減る。案内板によると徳島まで97kmとの表示が目に入った。

 そして、いよいよ淡路島に上陸! 橋から眺める景色も素晴らしい。淡路島PA(パーキングエリア)では併設のハイウェイオアシスに充電設備があるけど、ちょっとパーキングエリアから離れているので見送り、淡路島南PAで充電を実施。航続可能距離が202kmと表示されたので、問題なく目的地まで行けそうだ。

布施畑JCTを経て神戸淡路鳴門道に入る
淡路島南PAで3回目の休憩。淡路島南PAまでのEV走行比率は49%。平均燃費は20.0km/L、平均電費は6.5km/kWh
急速充電前の全体の走行可能距離は158km
急速充電後、バッテリーの走行可能距離は46kmになるとともに、全体の走行可能距離は202kmに

 淡路島から鳴門海峡を渡るころには、まるでわれわれの来訪を歓迎するかのように虹が出ていた。思えば虹を拝むことができたのなんて、いつ以来のことだろうか……。鳴門ICを過ぎて鳴門JCTを徳島自動車道方面へ。交通量はさらに少なくなり、安定したペースで走行。燃料残量計は、南淡路島PAのあたりからずっと4分の1を示している。

淡路島から鳴門海峡を渡るあたりで鮮やかな虹が歓迎してくれた

 松山自動車道の制限速度は70km/h。やはり、巡行していてもたまにエンジンで発電し、いくらか充電されるとエンジンを止めてEV走行するという走り方を繰り返している。また、もっとペースが速ければ回生を「B0」にして転がしたほうが燃費はよさそうだが、対面通行でペースがあまり速くなく、ゆるいアップダウンが連なる松山道のような道路では「B0」だと下りで車速が上がりすぎるので、B2~B3あたりがちょうどよい。

 このあたりは夕日で知られるスポットも数多く、筆者らも翌日はそのうちの1つに行く予定にしているので楽しみだ。

 航続距離が81kmとなったところで、残量計がラスト1目盛りになって、「給油してください」との表示が。目的地まで59kmなので、ちょっとなら寄り道できそうだということで、ぜひ行ってみたかった「寛永通宝銭形」の砂絵へ。聞いたところではお金にご利益があるそうで、私ごとだが、現在新しい家を探している最中で、子育て奮闘中の筆者にももってこいだ。

 夜間もこのようにライトアップされていて、クルマで展望台の近くまでアクセスできるのはよいものの、あたりはまっ暗で、駐車場の出入りの段差が大きいので、アウトランダーPHEVで来てよかったとつくづく思った。

「寛永通宝銭形」の砂絵を見学。日没から22時まで写真のようにグリーン(通常時)でライトアップされ、期間限定でゴールドやブルーにもなるとのこと。いい新居が見つかりますように……(笑)

 そしていざ給油。ディスプレイの表示によると、平均燃費20.6km/L、平均電費6.6km/kW、走行距離779.6kmで、航続距離はあと54km走れるとのこと。途中で3回急速充電すれば、800kmは軽く超える計算になるし、給油量からすると思ったよりガソリンも残っていたので、もっと長く走れたと考えてよさそうだ。やるじゃないか、アウトランダーPHEV!

779.6kmを走ってのEV走行比率は51%。平均燃費は20.6km/L、平均電費は6.6km/kWhという結果に
給油前の航続距離は54kmとのことなので、3回の急速充電をすれば800km以上を走行できる計算
燃料は38.20L入った。レギュラーガソリン仕様というのもありがたい限り
779.6km、頑張りましたの図

 後編では四国の素晴らしい景観を紹介しつつ、本稿で触れたアウトランダーPHEVとは別の魅力に迫りたいと思う。