トピック
有機ELディスプレイを搭載したパナソニックの高性能カーナビ「CN-F1X10BLD」、その魅力にAVライター・鳥居一豊が迫る
- 提供:
- パナソニックオートモーティブ社
2020年11月13日 00:00
パナソニックのカーナビステーション“「ストラーダ」のFシリーズ”に新たに追加されたシリーズ最上位の「CN-F1X10BLD」「CN-F1X10LD」。このモデルはカーナビゲーションシステムに地デジ/ワンセグ対応のテレビチューナー、Blu-rayディスク/DVDプレーヤー、ハイレゾ対応のオーディオ再生機能などの多彩なAV機能を備えたものだが、最大の特徴は有機ELディスプレイを採用しているところである。
有機ELディスプレイといえば映像が美しいことで知られているが、その特徴はカーナビゲーションシステムでどれだけのメリットになるのだろうか? そうした興味を持つつつ、パナソニックが用意してくれた試乗車でCN-F1X10BLDをじっくりと体験させていただいたので、本稿ではその魅力をレポートさせていただこう。
有機ELディスプレイとは?
有機ELディスプレイは薄型TVなどでも採用されている表示デバイスのことで、車載用ディスプレイで一般的に使用される液晶パネルとの違いは自発光であること。液晶パネルのように発光させるためのバックライトが不要なので、ディスプレイ部が最薄部4.7mmと、とても薄くなっている。
また、バックライトとは違って発光させたい部分だけを光らせることができるので、黒が「完全な真っ黒」になるのがポイント。暗部と明部の表現の幅がとても高く、ハイコントラストで鮮やかな映像となる。ゆえに映画などの映像コンテンツを鑑賞するととても美しい映像を楽しむことができる。
現在、有機ELディスプレイは薄型TVやスマートフォン、ノートPCなどにも採用されているが、AV一体型市販カーナビとしての採用はCN-F1X10BLD/CN-F1X10LDが初めてとなる。
ほかの機器で使われる実績がありつつ、車載用が登場しなかったのには理由がある。車載の場合、振動や車内の熱への対策をほかの機器より厳重に行なうことが必要になるが、こういった難問も薄型TVなど含め有機ELをよく知るパナソニックの技術力で解決できたそうだ。
実機を見てみると、有機ELを使ったディスプレイ部は最薄部で4.7mmとかなり薄い。従来の液晶ディスプレイモデルと比べると薄すぎて心配になるほどだが、ボディに高剛性なマグネシウムダイカストを使用し、さらに強度を高めるハニカム構造としているなど高い強度を実現しているのでこの極薄さが可能になっている。
実際にフローティング構造でマウントされたディスプレイを上下や左右に角度を変えてみても、ディスプレイ部がしなるようなことはなく、実にがっちりとした感触になっていた。
もう1つ、有機ELディスプレイが車載機器に使いにくかった理由がある。ディスプレイに詳しい読者の方であれば、自発光ゆえの「焼き付き」と呼ばれる現象があることをご存じだろう。
これは自ら発光する画素がそのとき発生する熱で破損してしまうことで、静止画などを表示したままにしているとディスプレイに映像の跡が残ってしまうものだが、今回は本体側の発熱対策に加えてパネル側でも焼き付き対策を採り入れている。
例えばカーナビ使用時、画面の周辺に固定表示されている機能アイコンなどを半透明で表示している部分がそれだ。アイコンなどの固定表示部分を半透明にすることで、特定の画素がずっと同じ表示を続けないようにすることで焼き付き対策としているのだ。また、地図を3D表示にすると空の部分に雲が表現されるが、ここも静止画ではなくアニメーション表示で雲を変化させ、焼き付きを防いでいるのだった。
日差しが差し込んでも視認性が落ちない有機ELディスプレイのすごさ
ここからは試乗車に装着された実機を見て、操作した感想を紹介させていただこう。
まずは出発前にチェックした地デジ放送だが、CN-F1X10BLDの映像は思っていた以上に明るく鮮やかだった。カーナビなどの画面を見慣れていてもなかなか気がつかないかもしれないが、日中の車内は窓の外から日が差し込んでくる環境である。こうした状態の中でディスプレイはより明るく発光させないと「画面が暗い」印象になってしまうのだ。
筆者はふだんカーナビ画面を見る機会はそれほど多くないのだが、それでもたまに見たときに画面の明るさがやや足りず見えづらさを感じることもあったが、最新のCN-F1X10BLDでは車外の明るさに負けない明るく鮮やかな映像を映し出していた。
また、ただ画面が明るいだけではなく、コントラストが強いので明暗がくっきり出て視認性が高くなっていることも見やすさに貢献している部分だ。こうした特性はTV放送や映像コンテンツの視聴だけでなく、カーナビの地図表示を見るときも重要なポイントになる。
もう1つ、有機ELディスプレイが優れているのは外光の映り込みに強いことだ。
現在使用してるカーナビで、窓の外から差し込んだ日差しがディスプレイに映ることで画面全体が光ってしまい、見えづらくなった経験があるのではないだろうか。これは非常に不快でもあるし、ディスプレイの表示を確認するための時間も余計にかかるので安全運転の面からも好ましくないことだ。
こうした条件に対してCN-F1X10BLDではAGLR低反射フィルムの採用や、有機ELパネル面とカバーガラス面の間の空気層をボンディング材で充填し、空気層による乱反射を防ぐ構造を採用。これらの効果により外光の映り込みを大幅に低減している。
さらにCN-F1X10BLD/CN-F1X10LDでは、ディスプレイをフローティング構造にすることできめ細やかに角度調整できるようにしている。画面の向きを調整すれば強い日差しの反射も避けることができるのだ。こうした工夫により、光の条件が目まぐるしく変わる走行中の車内でも、明るく鮮明な画質を存分に楽しむことができるようになっていた。
論より証拠の実走チェックで予想以上の見やすさを実感
続いては街を走行しつつの観察だ。筆者は画面に集中するため助手席へ乗車している。
画面をカーナビゲーションシステムに切り替えてもCN-F1X10BLDの見やすさはそのまま。前記したように暗部と明部の表現の幅がとても高く、塗り分けされた地図の色がはっきりしているので走行している場所や道路の形状が分かりやすい。ディスプレイの性能が向上すると地図がこんなに見やすくなるのかと改めて驚いたほどだ。
この点を補足すると、例えば運転中のドライバーは画面をじっくりと見る余裕がないため、交差点などが近づいたときにチラッと確認するだけのことが多いだろう。ここで地図が見やすいものとそうでないものを比べてみると、一瞬の視線移動だとしても得られる情報量に格段の差があると感じた。このようなことから、視認性が高く地図情報を把握しやすいことは安全運転の面でも大きなメリットになるだろう。
美しい映像と聞きやすい音質で楽しめるBlu-rayソフト再生
今度は停車した状態でのBlu-rayソフト再生を試してみた。CN-F1X10BLDはBlu-rayドライブを搭載しているのだ。この取材の前にスペックをチェックした段階では、有機ELディスプレイとはいえ1280×720ピクセルではせっかくのフルHD解像度の映像がもったいないと感じた部分だった。
ところがBlu-rayソフトを再生してみるとかなりの高精細さに驚いた。ハイコントラストと色再現の豊かさのため、精細感も相当高く感じる。10V型のサイズではあるが、精細感としては十分だ。
それになにより赤や青の原色が鮮かというだけでなく、夕暮れの風景や暗い夜空に美しい明かりが灯るような場面での暗い部分の再現が見事である。黒が締まるので微妙な光が際立つし、色も鮮やかなので人物の表情も美しく見える。これならば夜のドライブの休憩中に映画を見るような使い方をしてもかなり満足できるはず。表現力の高さは“さすが有機ELディスプレイ!”と感じさせてくれるものだった。
こうした高画質はBlu-rayソフトの視聴時だけのものではない。CN-F1X10BLD/CN-F1X10LDにはHDMI入力やUSB入力も備えているので、AV機器やスマホなどとの連携にも対応しているし(取付時に専用の配線などを行なう必要がある)、動画配信用の端末を使えば動画配信サービスをきれいな映像で楽しむこともできるのだ。
さらにスマホを接続して音楽を再生することも可能だが、この音楽視聴もなかなかいいものだった。
標準スピーカーでもいい音が聴ける「音の匠」とは
ストラーダはクルマの購入と同時に装着されるケースが多いと聞くが、装着済みのカーナビシステムから買い替える需要も多いとのこと。そんなことから、音響性能については社外品の高音質スピーカーなどを使わずとも、それぞれの車種に標準装備されているスピーカーで優れた音を楽しめることを目指しているということなのだ。
そのために盛りこまれたのが「音の匠」というサウンド機能。レコーディングやマスタリングを手掛けるミキサーズ・ラボが監修した、カーオーディオとしての音質を意識したチューニングが行なわれているのだ。
オーディオチューンメニューでは、スタジオマスターの音を目指した「TAKUMIマスターサウンド」、高域を補正してよりメリハリの効いた音に仕上げた「KIWAMI高域強調」、さらには会話しながらでも心地よく音楽を楽しめる「NAGOMI会話重視」の3つのモードを選べるようになっている。
それに加え、前席用スピーカーおよび後方用スピーカーのそれぞれで音量バランスやイコライザーによる音質調整を独立して行なうなど多彩な調整機能があるので、より自分好みの音にチューニングできるようになっている。
筆者はこの機能から「TAKUMIマスターサウンド」を選び、主に音楽を中心に聴いてみたが、気持ちよく音が広がって聞き心地のいい音になっている印象を受けた。また、ボーカルは明瞭でニュアンスが豊かだし、ドラムやベースといったリズム楽器の音もパワフルだ。
このように情報量の豊かな音であり、それでいて耳障りにならない心地よさがあるので、少し音量を控えて運転の邪魔にならない程度の音量で聞いていてもパワー不足のひ弱な音にならず、十分に力強い音が楽しめる。運転中は車外の音(緊急車両のサイレンなど)を聞き取れることも大事なので、音量を控えても十分な聞き応えがあることは安全という意味でも重要なこと。よく仕上げられた音だと感じた。
なお、このほかも高精度なデジタル処理を行なうDSPやDACには専用のアース構造を追加し、低DCRチョークコイルを使用して歪み率を改善するなど、ノイズ対策や高音質化にもこだわっているし、従来からの高音質32bitD/Aコンバータやストラーダ専用カスタムアンプを採用するなど優れた音を求めた機種であった。
最後に触れておきたいのが、ドライブレコーダー(別売)やリヤビューカメラ(別売)との連携について。CN-F1X10BLD/CN-F1X10LDは、ドライブレコーダーの映像やリヤビューカメラの映像を切り替えて表示することも可能で、とくにリヤビューカメラは優秀。CN-F1X10BLDは暗部の再現性が高いので、夜間や照明が少ない地下駐車場でもしっかりと後方の状態が確認できるのだ。実際に明かりが少ない地下駐車場でリヤビューカメラの映像を見たが、再現性はたしかに十分なものだった。
さて、本稿ではBlu-rayドライブ搭載のCN-F1X10BLDを中心に紹介してきた。シリーズにはDVDドライブ搭載のCN-F1X10LDも用意されているが、F1X PREMIUM 10シリーズは高級モデルだけあって、Blu-rayドライブ搭載のCN-F1X10BLDを購入する人が多いという。
筆者は自宅で有機EL TVやホームシアター機器で映画や音楽を楽しんでいるが、その目で見てもCN-F1X10BLDの画面は「期待どおり」なので、その特徴を生かすためにもBlu-rayドライブ搭載のCN-F1X10BLDを選ぶ方が満足度は高いと思う。
とはいえ、ハイエンド品ではあるがマニア向けということではない。試乗でも触れたように視認性のよさはカーナビ地図の見やすさにつながる。そうしたことからCN-F1X10BLD/CN-F1X10LDは高画質、高音質にそれほどのこだわりを持っていないユーザーにもおすすめしたいものなのだ。
近々カーナビシステムのグレードアップなどを検討している人がいるなら、まずはカー用品店などでCN-F1X10BLD/CN-F1X10LDをチェックしてみてほしい。展示されている従来のディスプレイと見比べてもらえば、その見え方の違いに感動するのではないだろうか。